「はぁぁぁぁぁぁっ!!!」

一番前にいたロベリアが、深紅の衝撃波を神に向かって打ち出す。

「せいやぁぁぁぁっ!!!」

そのロベリアの肩を踏み台にしてルビナスが飛び上がり、ルビナスも上空から紫色をした衝撃波を打ち出す。

「ルビナスッ、人を踏み台にするなっ!!」

場違いな事を叫びつつ、ロベリアは再び神に向かって衝撃波を打ち出す。

「しょうがないじゃない、ロベリアの肩しかなかったんだから」

ルビナスも、落ちて来ながら再び衝撃波を打ち出す。

「お前ら、言いあいは後にしろ!!」

その衝撃波の後ろを恭也が追いかけるように走って行き、すれ違いざまに神を斬る。

雄叫びを上げる神を尻目に、恭也はすぐさま踵を返し、再び神をすれ違うようにして斬る。

 

「「テトラグラビトンッ!!!」」

 

恭也が神から離れた瞬間、リコとイムニティの同時魔法が神に炸裂する。

隕石の雨が、際限なく神に降り注ぐ。

 

「エスト・フリーグスッ!!」

 

間髪いれず、ミュリエルの放った魔法が神に降り注ぐ。

氷塊を敵の頭上から無数に落とす魔法である。

ミュリエルが使える氷魔法の中でも最高の威力を誇っている。

そして、その隕石と氷塊の降り注ぐ中を、恭也が疾走する。

 

 

―――――――御神流(みかみりゅう) 奥義之壱(おうぎのいち) 虎切(こせつ)―――――――

 

 

擦れ違い様の抜刀から放たれた奥義により……神の腕に切れ目が走る。

「ちっ、流石に斬りおとせなかったか……」

再び小太刀を鞘に戻し、恭也が言う。

「確かにな……先ほどからかなり全力で衝撃波を放ったが、傷一つつかないとは……」

恭也の隣に立ち、ロベリアが言う。

「流石に、そんなに簡単に決着がつくとは思っていなかったが……これはこれで、時間がかかりそうだな」

「違いないな」

言って、二人は再び神へと斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

未来(アス)を斬り開く黒き刃

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!!!」

神に向かって恭也は鋼糸を放ち、それが神の腕に巻きつく。

そして、徐にそれを引っ張る。

少しだけだが、神が引っ張られた方向へと体勢を崩していく。

「ネクロマティック奥義っ!!!」

その神へと向かって、巨大な球体状の魔力の塊をロベリアが放つ。

「エルストラスメリン…我は賢者の石の秘蹟なり……万物の根源たる長に命ず…爆ぜよッ!!!」

それが神へと衝突し、ルビナスの叫びと共に大爆発する。

「緩めるなっ!!」

叫び、恭也も小太刀から衝撃波を打ち放つ。

「ハルダマーッ」

爆炎の中へと、リコが唱え出てきた七色のページが降り注ぐ。

「レイダット・アダマーッ!」

さらに、イムニティが黒い雷を幾重にも降り注がせる。

「ファルブレイズンッ!!」

最後に、ミュリエルが爆炎の中でさらに大爆発を起こさせる。

「ハァ…ハァ…どうだ!?」

ロベリアが肩で息をしながら、叫ぶ。

「判らん……気を緩めるなよ……」

恭也も構えながら、そう言う。

次の瞬間……爆炎の中からレーザーのような一閃が放たれる。

「ちぃっ!!!」

まさしく閃光のように飛んでくるレーザーを、恭也は小太刀で軌道を逸らせる。

そして、煙がはれると……其処には、殆ど傷ついていない神の姿があった。

「化け物か……」

忌々しげに呟いて、恭也は小太刀を鞘に戻す。

「むしろ、私達の攻撃は効いていないのかもしれないわね……」

恭也の隣に立ち、ルビナスが言う。

「しかし、俺の奥義は傷を負わせられたのは何故だ?」

襲い来るレーザーを避けながら、恭也が言う。

「恭也っ、ルビナスっ、ロベリアっ、こっちに!!!」

ミュリエルの叫びに、恭也達は後退する。

6人が固まった所で、リコとイムニティが強力な結界を張る。

「恭也の召還器は、きっと神にとって特別だから、攻撃が効くのかもしれないわね」

ルビナスの仮説に、恭也は考える。

「単純な話、攻撃力が足りないと考えた方がいいかも知れんな……」

恭也が、そう呟く。

「どういうことだ、恭也?」

ロベリアが恭也に尋ねると、神の攻撃が結界に直撃し、地面が揺れる。

「くっ……つまり、赤、もしくは白だけの力では勝てないと言う事だ」

先ほどから考えていた事を、恭也は言う。

「これはプレアデスから聞いたことなんだが、救世主とは赤と白を統べた瞬間、神の支配下に陥る」

恭也の言葉に、皆がうなずく。

「その時救世主に与えられる力は神と同等だそうだ……その力ではないと、神に対抗できないらしい」

同等かそれ以上の力をぶつければ、神に傷を負わせることが出来る。

「だから、赤か白……どちらかだけでは神に対して傷を負わせられないそうだ」

その言葉に、5人は息を呑んだ。

ルビナスとリコ、ミュリエルは赤……ロベリアとイムニティは白……

そう、片方だけでは神を倒す事は出来ないのだ。

「では何故、恭也の攻撃は通じた?」

「俺が、いや…召還器が、赤と白を統べた状態だからだ」

恭也の答えに、全員が驚く。

「神に対抗するには、赤と白を統べた力が必要……しかし、統べた瞬間に神の支配下に陥る…だが、俺はこのプレアデスの力がある」

神によって与えられた力……最愛だったゆえに……自分を殺しえる最高の力を授けてしまった。

赤と白を統べた時以上の力を、プレアデスは有しているのだ。

「ならば、役割が決まったな」

「えぇ、そうね」

ロベリアとルビナスが、言う。

「恭也……お前は神に対して攻撃を仕掛けろ……私達が、やつを防ぐ」

ロベリアの言葉に、恭也は驚く。

「無茶だ! 一撃でも貰えば死ぬかもしれないんだぞっ!」

「判っている……しかし、神を倒さない事には皆死ぬんだ……ならば、賭けに出たほうがいい」

まっすぐに、ロベリアが恭也を見る。

「しかしっ!」

「恭也……私達は絶対に死なないわ」

叫ぶ恭也に向かって、ルビナスが静かに言う。

「絶対に皆で生きて、帰るわ」

ルビナスの言葉に、ミュリエルもリコも頷いた。

「恭也、今までの救世主戦争はこの時の為にあったわ……そして全ての願いを、あなたは今背負ってしまった」

「それはあなたにとって重荷にしかならないのかもしれない……でも、あなたじゃないともう駄目なのよ」

ミュリエルとルビナスが、恭也に言う。

「全ての願いを、背負う事などできん」

静かに、恭也が言う。

「全ての願いを背負う以上に、それ以上に…俺は数多の願いを斬り捨てて来てしまっている」

敵として戦ったものには、容赦は決してしなかった。

それがどんなに弱いものであろうとも……恭也は手を抜く事はなかった。

相手にする最大限の礼儀……全力でかかってくる相手には、恭也も全力を出して戦った。

その結果、恭也はいろんな人々の願いを、斬ってきた。

「だが、俺は誓った…護ると……今回は、必ず護りきると」

千年前に、恭也は誓った……必ず護ると。

一度は破られた、いや破ってしまった……だからこそ。

「必ず、護る」

その言葉に、ロベリアもイムニティも……ルビナスも、どこか安心したような表情を見せた。

「では、行くぞ」

恭也がそういい、皆は構える。

「リコとイムニティが結界を解いたら、私とロベリアで神に対して牽制を仕掛けるわ……ミュリエルは、魔法でサポートして」

ルビナスの言葉に、四人は頷く。

「頼んだぞ、恭也」

ロベリアが呟くと同時に、結界が消え去る。

そして、ルビナスとロベリアが一気に神に向かっていく。

「ロベリアッ!!」

「判ってるっ!!」

叫び、ロベリアが振りかぶる。

「ネクロマティック奥義っ!!!」

巨大な魔力の塊が、再び神に向かって打ち出される。

それと同時に、ルビナスがエルダーアークの力によって分身する。

分身した一体が、上空へと舞い上がり、ロベリアが放った魔力の塊が神にぶつかると同時に神の前に着地する。

「せいやぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

そこに、間髪いれずにルビナスがエルダーアークからレーザーのような光線を放つ。

そのレーザーが魔力の塊と分身を貫通して、大爆発を起こす。

「アーク・ディ・アクルッ!!!」

大爆発した瞬間、ミュリエルの放った魔法が、神を爆炎ごと凍らせる。

「恭也ぁっ!!!」

ロベリアが、叫ぶ。

「アルキュオネ・タユゲテ……行くぞっ!!!」

恭也の小太刀から爆発的な魔力があふれ出す。

高純度かつ、高密度の魔力が、恭也を取り巻く。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

―――――――御神流(みかみりゅう) 奥義之極(おうぎのきわみ) (せん)―――――――

 

 

一瞬にして、モノクロの世界へと恭也は突入する。

全てが零になる空間の中を、恭也は疾走する。

この奥義を極めた者の前では……全てが零になる。

間合いも距離も……武器の差も……

恭也は神へと向かって駆け抜けていく。

後一歩、その場所で恭也は小太刀の柄に手を当て、構える。

(うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!)

 

 

―――――――御神流(みかみりゅう) 奥義之睦(おうぎのろく) 薙旋(なぎつむじ)―――――――

 

 

神速の中から、神速の四連撃抜刀術が放たれる。

「うぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

雄たけびと共に、恭也が神と交差する。

「はぁ…はぁ……ぐっ」

神に背を向けたまま、恭也は膝をつく。

「「「恭也ぁっ!!」」」

ロベリアとイムニティ、ルビナスが叫ぶ。

しかし、動くわけにはいかない。

神から視線を外さずに、構え続ける。

刹那……

神の両腕が本体からゴトリ、と言う音と共に落ち……胴体が真っ二つになる。

「やった…………の……」

ミュリエルが、呟く。

「恭也ぁっ!!!」

それを見た瞬間、ロベリアが恭也の方へと走っていく。

それを追いかけるように、ルビナスとイムニティも恭也の方へと走っていく。

「大丈夫かっ、恭也っ!!」

恭也を支えながら、ロベリアが言う。

「あぁ…魔力を使いすぎただけだ……問題はない」

少し辛そうにして、恭也は答える。

「神を、倒したのよね?」

ルビナスが、恭也に尋ねる。

「たぶんな……」

曖昧に答えて、恭也は神を見る。

「神よ……貴様の作った下らない道はここで終わりだ……」

ロベリアの肩を借りて、恭也は立ち上がる。

刹那……

「なっ、なんだっ!!?」

ガルガンチュワが、再び揺れ始める。

そして、神の死体の後ろに巨大な穴が出来、そこに神の死体が吸い込まれていった。

「くそっ、まだ死んでいなかったということかっ」

言って、恭也はプレアデスを拾う。

「しかし、どうするのだ……」

ロベリアの言葉に、誰も答えない。

「神を、追いかけるんだ」

そんなロベリアに、後ろから大河が声を掛けた。

その後ろには、未亜やリリィ達もいた。

「赤の主……どうするつもりだ?」

「トレイターの話じゃ、神は一度は赤と白を統合した俺に拒絶されて、さらに傷を負った為に自分の次元へと逃げ込んだらしい」

大河の言葉に、皆が驚く。

「リコ、イムニティ……こっちへ来てくれ」

大河の呼びかけに、イムニティは訝しげに近づく。

その後ろに、リコもついていく。

そして、大河が二人の頭に手を置くと、一瞬二人を光が包んだ。

「なにを…したの……」

急激な、何か判らない感覚が全身を襲い、イムニティは大河に言う。

「私達を…書の精では……なくした?」

リコのその言葉に、またもや皆が驚く。

「未亜、お前の白の力も、俺が貰うぞ」

そして、先ほどと同じように大河は未亜の頭に手を置いて、未亜を光が包む。

「ジャスティ、トレイター……待たせたな」

大河が未亜からジャスティを取ると、それが光に包まれ……一つの大剣へと姿を変えた。

「それが、真の姿と言うわけか……神殺しの剣……トレイターの」

その剣を見て、恭也が言う。

「今の俺なら、破壊の力だけなら俺は神と同等になっている……神と同等の力を振るいながらも、神に支配されない存在といってもいい」

赤と白を統合し、神の力を得てなお……神に反逆する者として活動できる。

「まさか……お兄ちゃん……っ」

未亜の考えに、リリィ達も行き着いたのだろう……皆が大河を見る。

「俺が、神を足止めする……神と俺が戦っている間は、神を世界に手を出せないからな」

「でもっ、あんたはっ!!」

「愛する女の為に戦う、俺らしくていいじゃねぇか」

苦笑いをして、大河は言う。

「じゃぁな……っ!!」

振り返り、神が逃げて言った穴へと入り込もうとした瞬間、恭也の拳が、大河の腹に決まる。

「がほっ……な、にを……」

少しばかり血を吐き、大河は倒れる。

「恭也っ!!?」

その行為に、皆が驚き恭也を見る。

「愛する者がいるのならば、残れ……お前のやろうとしている行為は、彼女達から見れば最悪の行為だ」

倒れる大河にそう言って、恭也はトレイターを持つ。

「俺が、行く」

まるで何でも無いかのように、恭也は言った。

「恭也っ、貴様どういうつもりだっ!!」

ロベリアが、恭也の胸倉を掴み、叫ぶ。

「神を倒せるのは、トレイターと、このプレアデスだ」

持っている小太刀と剣を握り締め、恭也は言う。

「そして、プレアデスは俺以外では使えん……さらに言えば、これは護る為の戦いだ…ならば、俺が行くのが普通だ」

「お前はっ!! 今言っただろうっ、愛する者がいるなら残れと……お前は、お前はっ……」

恭也の胸倉を掴んだまま、ロベリアは泣き出す。

「俺は、人を愛するには、余りに人を殺しすぎている……」

「そんなもの……私だって、一緒だ」

「ならばこう言おう……俺は、お前達を護る為に行くのだ」

ロベリアの手を離し、恭也は言う。

「必ず、帰る……だから、待っていてくれ」

そういった恭也の顔は、今まで見た事がないほどの晴れやかな……笑顔だった。

そして、恭也はその神が逃げ込んだ穴へと走っていく。

「恭也ぁっ!!!」

「ロベリアっ!!」

追いかけようとするロベリアを、ルビナスが止める。

「離せルビナスッ!!! 恭也ぁっ!!!」

「抑えてロベリアッ!! 恭也の気持ちをくみ取ってあげて!!!」

泣きながら叫ぶロベリアを、ルビナスも泣きながら抑える。

「恭也ぁっ!!!」

ロベリアの叫びの後、恭也が一度立ち止まり、振り返る。

「ありがとう」

先ほどと同じ晴れやかな顔で、恭也は言った。

そして、穴へと飛び込んで行った。

 

 

 

 

「恭也ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 

 

ロベリアの叫びが、空間へ響く。

しかし、その叫びに答えるものは……もうここにはいなかった。

     

     


あとがき

 

 

EX話の未来を斬り開く黒き刃をお届けしました。

フィーア「やっぱり、恭也が大河の代わりに行くのね」

まぁ、そこはずっと考えてた所だからね。

フィーア「何だか、最初の神鳴る剣 堕ちた鴉に似てるわね」

う〜ん、その間も否めないなぁ……

フィーア「でも、最初の構成と最後を変えたのね」

うむ、本当はロベリアも恭也と一緒に神の次元へ行くはずだったんだが……

フィーア「何で削除したの?」

前回の赤白デート?のアンケートがまだ終了していないから。

フィーア「でも、これ殆どカップリングロベリアじゃないの?」

いや、いつか個別なイムニティとカップリングとかルビナスとかも書くよ。

フィーア「まぁその前に、アンケートもあるしね」

以外にミュリエルとアルストロメリアはって意見もあったね……どうしようかなぁ。

フィーア「また後日、アンケートしたら?」

2弾でか? まぁそれもいいかな。

フィーア「とりあえずはあの4人から選んでもらって、次にミュリエルとアルストロメリアを追加した5人でやればいいのよね」

前回当選者はなしでね……でも、後日談的なことを書いてもいいなぁ。

フィーア「あんた、そのうち自分の首絞めるわよ?」

そんな気がしてきた……

フィーア「やれやれ、皆様アンケートはまだまだ募集中なのでどうぞ」

ではでは〜〜〜





神を追って行く恭也。
美姫 「うんうん。いいお話よね〜」
アンケートの方は、今のところはロベリアが優勢か!?
美姫 「今後どうなる!?」
いやはや、アンケートの結果も楽しみだな。
美姫 「そんな所で、今回はこの辺で」
ではでは。



頂きものの部屋へ戻る

SSのトップへ