その日、破滅の堕ち鴉 不破 恭也は奇妙な感覚を感じて目を覚ました。

いまだ日は出ておらず、暗闇と静寂が支配する中で、恭也は奇妙な感覚を感じ取った。

(何だ、この感覚……敵襲、ではないようだな…そんな嫌な感じではない)

そう恭也は判断するが、慢心などしない。

故に、手早くいつもの服に着替え、小太刀などの武器を装備して部屋を出る。

(何かあったときは、あれも出さなくてはいけないかもしれんな)

そう思いつつ、恭也は感覚を頼りに、歩き出す。

(…………いた)

そして、御神流の心により、奇妙な感覚の出所を掴む。

(ここは…食堂? こんな場所で何をしているんだ……)

考えつつ、恭也は小太刀の柄に手を置いて、ゆっくりとドアを開ける。

「う〜ん、久しぶりの食事だけど、いまいちだね」

「まぁ、私達は食事なんてしないからね」

小声だが、恭也にはその会話が聞き取れた。

(声からして女性が二人か……だが)

相手が女性だからと言って、恭也は手を抜かない。

そんな考えでは、命がいくつあっても足りないからだ。

そして、恭也は一気に女性達に向かっていこうとして……

「あーっ、御主人様だっ」

向こうの女性に恭也は見つかり、声をかけられた。

「ホントだ、御主人様だ」

一人の女性の言葉に、もう一人の女性も恭也を見て言い返す。

いや、二人とも女性と言うよりも少女と言った方がいい見た目だった。

一人は紫の髪をツインテールをした少女で、もう一人は同じく紫の髪をポニーテールにした少女である。

「御主人様、こんな所で何してるの?」

ツインテールの少女が恭也に尋ねる。

「何のことだ? それに君達は……」

小太刀の柄から手を離さずに、恭也は尋ね返す。

「あっ、そっか。 この姿ではまだ初めてだったね」

ポニーテールの少女がそう言い、二人は立ち上がる。

「改めて、始めまして御主人様、私はアステロペ」

「私はマイアだよ、御主人様」

二人はそう言って、頭を下げる。

「アステロペ…マイア……」

その名前に、恭也はどこか聞き覚えがあった。

「まさか……」

そして、恭也はその考えにいたった。

「プレアデスの、二人か?」

その言葉に、二人は満面の笑みになって恭也に抱きつく。

「さっすが御主人様、名前を聞いただけで判ってくれるなんて、愛だよね、愛」

マイアはそう言って、恭也の体に頬擦りする。

「これはもう、以心伝心をこえて相思相愛ですね」

アステロペもそう言って、恭也の体に、自分の体を押し付ける。

ちなみに、ツインテールがマイア、ポニーテールがアステロペである。

「何が、どうなっているんだ……?」

恭也の呟きが、夜更けの食堂に消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

召喚器大戦…?

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそのまま、恭也は状況の理解に努めていたが、結局どうすることも出来ず、朝まで食堂で待っていた。

(イムニティなら、何か知っているかもしれんな)

そう考え、恭也は食堂でイムニティを待っているのだが……

(遅いな……)

いつもの時間になっても中々来ないイムニティ達に、恭也は不安を覚える。

そう恭也が考えていた時、廊下がなにやら騒がしくなる。

(来たか……)

そう思って恭也はドアまで移動し、ドアを開けて……

「あっ……」

誰かが、恭也の胸に倒れこんできた。

「大丈夫ですか?」

恭也はそう言って、倒れこんできた人を見る。

見れば、この屋敷では見たことのない女性であった。

「失礼、注意不足でした」

そう言って、女性は恭也から離れる。

「おにいちゃん、おはよう」

その女性の後ろから、なのはが現れ挨拶をする。

「あぁ、おはようなのは……こちらの女性は?」

恭也もなのはに挨拶を返し、女性の事を尋ねる。

「何て説明したらいいのかな……」

困り気味に、なのはは苦笑する。

「あっ、アっちゃんだ」

そこに、恭也の後ろからマイアが顔を出し、女性に向かって手を上げる。

「マイアさん!?」

アっちゃんと呼ばれた女性は、マイアに驚く。

「あれ、お兄ちゃんこそそっちの娘達は誰?」

バックに燃え盛る炎を宿しつつ、なのはは表面上は穏やかに恭也に尋ねる。

「あっ、あぁ……こっちも何と説明していいのやら……」

少々どもりながら、恭也も苦笑する。

「失礼、紹介が遅れましたね……私の名はアストライア、マスターなのはの召喚器です」

優雅に、女性…アストライアは自己紹介をする。

「召喚器……?」

半信半疑に、恭也は聞き返す。

「はい、マスターなのはの絶対なる剣にして盾です」

そんな恭也に、アストライアは至極真面目に答える。

「じゃ、私達も自己紹介しとこっか」

マイアがそう言うと、恭也の後ろからアステロペもやってくる。

「私はアステロペ、御主人様の召喚器が一人です」

「私はマイア、私も御主人様の召喚器の一人だよ」

笑いながら、二人はなのはに向かって自己紹介をする。

「二人とも、おにいちゃんの召喚器なの?」

驚きながら、なのはが尋ねる。

「うん、後5人いるけどね」

なのはの質問に、マイアが答える。

「それにしても、久しぶりだねぇアっちゃん」

「えぇ、最後に会ったのが確か……84千年前でしたか?」

「もうそんなになるんだねぇ」

そして、3人は和気藹々と昔話に花を咲かせていた。

「なのは、お前のほうも起きたら召喚器が、あぁなっていたと言うことか?」

「うん、朝急にアストライアさんに起こされて驚いちゃった」

恭也の質問に、なのはは苦笑しながら答える。

「しかし…召喚器が人の姿になって現れるとは……」

「だね、一体どうなってるんだろう……」

恭也となのはが揃って首をかしげていると、またしても廊下が騒がしくなる。

「恭也っ!!」

食堂のドアを蹴破るようにして、ロベリアが叫びと共に入ってくる。

「ロベリア、どうかした…か……?」

入ってきたロベリアに挨拶をしようとして……恭也は、言葉をなくした。

「ロベリアお姉様〜〜〜」

ロベリアの腰に抱きついて離れようとしない、一人の女性が目に入ったからだ。

「だぁ〜〜、離れろ!!」

ロベリアはその女性を何とか離そうとするが、全然離せない。

「ロベリア、まさかとは思うがその女性は……」

「いっ、いや恭也! 私はそんな軽い女ではないぞ!! 私は千年前からお前一筋であって…」

恭也の言葉を遮って、ロベリアがトンデモ発言をする。

そして、その言葉に反応したのはなのは…と、マイアとアステロペの3人である。

「ロベリアさんってそんなに軽い人だったなんて……」

「御主人様、止めておいた方がいいよ」

「そうですね、止めておいたほうが良いかもしれませんよ」

上からなのは、マイア、アステロペの順番である。

ここぞとばかり、言いたい放題である。

「お前ら!! 私をそんな眼で見ていたのかい!!?」

マイアとアステロペの存在を気にもせず、ロベリアはそう叫ぶ。

いや、単に思考が動転してまともな判断が出来ていないだけである。

「恭也っ! 恭也は信じてくれるよな!?」

まるで捨てられそうになった子犬のように…まぁ、目は隠されているので判らないが…ロベリアは恭也に言う。

「いや、俺はその女性はもしかしてお前の召喚器か、と聞こうとしたんだが……」

「へっ?」

恭也の言葉に、ロベリアは素っ頓狂な声を出す。

「マイア、アステロペ」

「はーい」

「はい」

恭也に呼ばれ、マイアとアステロペは恭也の近くに移動する。

「アストライアさん」

「はい、マスターなのは」

なのはも、アストライアを自分の近くに呼ぶ。

「朝からどうも奇妙な感覚がしてな……それで、朝早くに起きて調べてみれば、こうなっていた」

苦笑しながら、恭也は説明する。

「私も、起きたら急にアストライアが人になっていて……」

なのはも、苦笑しながら言う。

「わっ、私も起きたら目の前にこいつがいてだな……」

「こいつだなんて酷いですよぉ、ロベリアお姉様〜〜」

ロベリアの言葉に、女性は泣き真似をして更に抱きつく。

「と言う事は、その女性はダークプリズンか……」

こめかみを押さえつつ、恭也は言う。

「待てよ……プレアデスに続きアストライア、ダークプリズンも人の姿になっていると言う事は……」

恭也がそう思ったのと、食堂の扉が開いたのはほぼ同時だった。

「恭也……」

食堂に入ってきたのはミュリエルと……艶やかな黒髪をした、見知らぬ女性。

「ミュリエル……その女性は、ヘスペリデス…か?」

恭也の言葉に、ミュリエルは驚きつつも頷く。

「恭也、何故彼女がヘスペリデスだと?」

「あぁ、似たような事がこちらでも起こったからな……」

小さなため息をつきつつ、恭也は自分の後ろにいる4人を指差す。

「紫の髪をした二人が俺の召喚器 プレアデスの二人マイアとアステロペ。 なのはの側にいるのがなのはの召喚器 アストライア。 そしてロベリアに抱きついているのが、ダークプリズンだ」

順に、恭也は4人を紹介する。

すると、ヘスペリデスが歩き出して……

「マイア、アステロペ、アストライア……久しいな」

3人にそう挨拶をした。

「あっ、ヘスちゃんだ」

「久しぶりだね、ヘスちゃん」

「ヘスペリデス姉さん、お久しぶりです」

された3人も、普通にそう言い返す。

「なんだ、4人とも知り合いなのか?」

なのはやミュリエルも思っている疑問を、恭也が4人に尋ねる。

「そりゃね、御主人様。 私達は最古参……つまり、初期の召喚器だもの」

その言葉に、四人は驚く。

「で、私達プレアデスを最初に使ったのが、そこにいるヘスちゃん」

「更に言えば、私を召喚器として使ったはじめての救世主が、アストライアだ」

マイアとヘスペリデスの言葉に、四人は更に驚いた。

「私達プレアデスが全ての召喚器のハジマリ、それからヘスちゃん、アっちゃんって続いていってるの」

召喚器の系譜が、ここで明かされた。

「じゃぁ、私のダークプリズンは誰か知っているのか?」

いまだに離れようとしないダークプリズンを指差しながら、ロベリアは尋ねる。

「うんにゃ、私達はそんな娘知らないよ」

「私も、存じ上げません」

「私も知らんな」

それに、3人は揃って知らないと答える。

「だって、私達はアっちゃんと会った最後の救世主戦争の後、次元断層の狭間に封印されてたし」

「私は、私と同じ魂の波動を持つものがいなかったため、殆ど仮眠状態でしたから」

「私はガルガンチュワでずっとほって置かれてたんだから、判るはずもない」

そして、その理由を話す。

「とにかく、これからどうするんだ?」

軽くため息をつき、恭也が尋ねる。

「もっちろん、御主人様と一緒に過ごすに決まってるよ」

「えぇ、それ以外は選択肢などないですよ」

ニコニコと笑いながら、マイアとアステロペは恭也の腕を掴んで言う。

「私も、マスターなのはと共にあります」

アストライアは、なのはの横でかた膝をつき、言う。

「私からロベリアお姉様を離そうたって無理よねぇ〜〜」

もはやロベリアも抵抗を諦めたのか、なすがままにダークプリズンに抱き疲れている。

そして、そのままの状態でダークプリズンが言う。

「私も、久しぶりの人の生活を満喫したい。 それに、ミュリエルには私がいないと困るだろう?」

横目で笑いながら、ヘスペリデスはミュリエルに言う。

そして、女性陣(恭也以外)は和気藹々と話を開始する。

「はぁ……どうなってるんだ……」

小さく、恭也はため息をついた。

 

 

それから後ほど、人の姿になった救世主候補達の召喚器をも巻き込んだ騒ぎがあることを…

今の恭也は知るよしもなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

 

堕ち鴉第24弾は番外編です〜〜

フィーア「召喚器が人の姿になったらって、やつよね」

うん、結構昔から考えてたからやっと形に出来たよ。

フィーア「でも、プレアデスは全員でてこなかったわね」

まぁ、まだ考え中なところもあるから……何れは出すけど……

フィーア「で、海鳴に行くやつはどうなってるの?」

う〜ん、構想は出来てるんだけど、文に出来てない……

フィーア「このヘタレは……」

ううぅ、そういわないで……

フィーア「で、次回は?」

オリジナルルートロベリアENDか、はたまた違う場所か。

フィーア「結局、また何も考えてないって事ね」

…………テヘ?

フィーア「気持ち悪いことするなぁぁぁぁっ!!」

ぶべらっ!!

フィーア「はぁ、全く……ではでは〜〜」





うん、このネタは面白い!
美姫 「確か、アンタも似たようなのをやってなかったっけ」
いやいや、あれは召還器じゃないからね。
美姫 「そうだったわね」
ともあれ、アハトさん、グッジョブ!
出来れば、メイドさんが一人ぐら……ぶべらっ!
美姫 「バカの戯言は兎も角、今回の番外編は華やかでしたね。
     次も楽しみに待ってますね〜」
うぅぅぅ……。



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