注)これは私作【破滅の中の堕ち鴉】のIF番外編【白の剣士、赤の剣士】の続編です。

  設定は前回のものを引き継いでおります。

  DUELのキャラは殆ど出てきませんので、あしからず。

  それでもよろしいかたは、どうぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なのは」

自分の名前を呼ばれ、なのはは体を震わせる。

「俺と、美由希の戦いは……もう、止められん」

その言葉に、なのはは無言で首を横に振る。

「俺とあいつの信念が違えた時から、こうなる事は判っていた筈だ」

ポンと、恭也はなのはの頭に手を置く。

「だからこそ、邪魔はさせん」

「おにいちゃっ」

なのはが恭也を呼ぶよりも早く、なのはの首元に恭也の手刀が振り下ろされる。

それがなのはの意識を刈り取り、なのはは恭也の腕の中で意識を失う。

「お前には、まだ命の殺りとりは早すぎる」

慈しむような顔で、恭也はなのはに言う。

「良いのかい、恭也?」

そんな恭也に、ロベリアが近づいてきて尋ねる。

「愚問だな、ロベリア……なのはは、戦いに巻き込んでいい存在ではない」

「そうだね……なのはには、私らがやるような事はしてもらいたくないからね」

苦笑しながら、ロベリアは言い返す。

「ロベリア、なのはを頼む」

「あぁ、任されたよ」

なのはを抱きかかえながら、ロベリアは言い返す。

「俺は、決着をつけてくる」

一瞬にして、恭也の顔つきが変わる。

剣士としての顔……命を刈り取る、死神の表情。

「恭也、死ぬんじゃないよっ!」

ロベリアは叫ぶが、恭也は振り向かない。

「……約束は、できん」

その言葉の後、恭也はその場から消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

白の鴉、赤の鳳

 

 

 

 

 

 

 

 

美由希が召喚されて以来……王国と破滅の戦いは均衡状態にあった。

今まで王国側を苦しめていた堕ち鴉である不破 恭也と対等に戦える。

その点において、美由希は凄まじい戦果を挙げていた。

そのお陰で、今まで押され気味だった王国側は反撃を開始。

そして、今の均衡状態に陥る事となった……

 

 

「待たせたな……」

荒野を踏みしめながら、恭也が言う。

「恭ちゃん……」

恭也の目の前には、美由希が立っていた。

決着をつけるため、二人はこうして誰の邪魔も入らないような場所にて、落ち合った。

「救世の閃く鳳と呼ばれているらしいな……大層な通り名だ」

苦笑しながら、恭也は言う。

そう、今現在…美由希は【救世の閃く鳳】と呼ばれていた。

破滅に彩られそうな世界に閃いた、救世の鳳。

そう、美由希は王国の騎士達から呼ばれていた。

「恭ちゃんだって……破滅の堕ち鴉だなんて、呼ばれてるじゃない」

美由希も、小さく苦笑しながら言い返す。

「俺は千年前からそう言われていた…もっとも千年前に俺を初めてそう呼んだのは、アルストロメリアだったがな」

思い出すように、恭也は言う。

白鴉(はくあ)と言うものを知っているか?」

恭也の言葉に、美由希は首を横に振る。

「白鴉とは、一人誇り高く立ち向かう者の喩えだそうだ……俺には、ご大層な名前だった」

誇り高い恭也を、アルストロメリアやルビナスはそう称した。

「だが、俺は破滅…いや、ロベリア達の下へと進んだ……ゆえに、堕ち鴉」

堕ち鴉の由来を、恭也は語る。

「破滅の中に在りし、堕ちた白鴉……それが、俺だ」

その白い羽が、全て漆黒に染まる……誇り高き、反逆者。

「美由希、俺は……お前を倒す為にここにいる」

その言葉に、美由希は一瞬体を強張らせる。

「お前は、何の為にここに立つ?」

鞘に納まったままの小太刀を美由希に向け、恭也は尋ねる。

「勿論……恭ちゃんを、止めるためだよ」

同じように、美由希も鞘に納まったままの小太刀を恭也に向け、答える。

「ならば、ここからは破滅と救世主の戦いなどではない」

向けていた小太刀を腰に挿し、

「御神と不破……八門の戦いだ」

そう、宣言した。

 

一瞬にして、恭也と美由希の姿が消える。

神速を使い、お互いを視野に入れながら動いているのだ。

恭也と美由希、武器は同じ小太刀、魔法は使えない。

そしてその身体能力も、ほぼ互角。

(美由希が救世主候補でないことが幸いしたな…この身体能力で、召喚器の補正など受けた日には勝てる気がせん)

内心苦笑しながら、恭也はそう判断する。

(そして、故に勝てる見込みも見えてきた……最悪、俺はあれを使う)

小太刀を握り締め、恭也は美由希に向かって駆ける。

甲高い音を響かせながら、二人の小太刀はせめぎあう。

お互いが小太刀を交差させた瞬間、もう片方の小太刀を振るう。

合わせ鏡のような攻防が数刻続き、二人は距離をとる。

「ふぅ……美由希」

構えを解かずに、恭也は美由希に話しかける。

「高揚感を、抑えられない自分がいる……こう言っては何だが、お前とは敵同士になれてよかった」

「私も、だよ……恭ちゃん」

お互いが、充実した高揚感に見舞われている。

それは、きっと他の誰と戦っても得られないものであると、二人は思った。

目の前の…半身だからこその、高揚感。

御神流を共に修め、その剣を極めようとした二人だから……

こんなにも、気分が昂ぶる。

「行くぞ、美由希」

言葉の後、二人はすぐさま神速の領域に入る。

握る柄に、力を込める。

そして……――――――――

 

御神流(みかみりゅう) 奥義之陸(おうぎのろく) 薙旋(なぎつむじ)

 

御神流・裏(みかみりゅううら) 奥義之参(おうぎのさん) 射抜(いぬき)

 

神速の抜刀と、神速の刺突が放たれる。

恭也の放った四連撃のうち、最初の二撃が突き出された美由希の刺突を相殺する。

そして更に放たれる二撃が、美由希の纏めた後ろ髪を切り裂く。

だが、美由希の放ったもう一刀の刺突が、恭也の左肩にわずかに早く突き刺さった。

それゆえに、恭也の狙いがずれたのだ。

「ぐぅぅっ!」

お互い距離をとり、恭也は突き刺さった小太刀を抜き取る。

対する美由希のほうは、手元に残った小太刀を構える。

「やるな、美由希」

抜き取った美由希の小太刀を地面に落とし、恭也は言う。

肩から流れる血が腕を伝い、地面に落ちていく。

「恭ちゃん、お願いだから……剣をひいて」

懇願するように、美由希は言う。

いくら戦うと決めたからとはいえ、これ以上恭也を傷つける事は躊躇われた。

兄妹なのに……どうして、戦わなければならないのか。

「美由希、言った筈だぞ……俺達は、この剣で語り合うしかないと」

傷口を押さえていた手を離し、恭也は小太刀を構える。

「俺を止めたいのなら、その剣で止めてみせろ」

言葉と共に、恭也は駆け出す。

美由希も、つられるように駆け出す。

そして、お互いが交差する一歩手前で……

「っ!!!?」

恭也は美由希の後方から飛来してくる炎の塊を見て、それに向け小太刀を振るった。

しかし美由希の小太刀が、恭也の腹に、突き刺さる。

「がふっ」

「恭ちゃんっ!!?」

突然体勢を崩した恭也に、美由希は驚いて叫ぶ。

「ちっ、王国の軍か……」

恭也がそう呟くと、美由希はすぐさま自分の後ろを見る。

そこには、明らかに王国軍とわかる鎧などを着た軍隊がいた。

「これは…これは、一体どう言うことですか!!」

それを見た美由希が、叫ぶ。

「美由希殿、後は我等にお任せを」

隊長格の男が、美由希に向かって言い返す。

「これは、私と恭ちゃんの戦いです! 手出しはしないでと言った筈です!!」

「そうは申されましてもな、その鴉に我等がどれだけ同胞を殺されてきたか」

「自分達の事を棚に上げて、よく言う」

体調格の男の言葉に、恭也は毒づく。

「さぁ、美由希殿…そこをお退きください」

「出来ません!!」

男の言葉に、美由希ははっきりと言い返す。

「恭ちゃんは、私が説得するって決めたんです……だから、ここは退けません!!」

揺ぎ無い信念を持って、美由希は叫ぶ。

「やはり、貴様もその鴉の妹、と言うことか」

突然、男が口調を変えて言う。

「皆のもの、構わん……そやつごと鴉を殺せ」

言葉と共に、数十もの魔法が恭也達目掛けて放たれる。

「くそっ!!」

腹と口から血を流しつつ、恭也は立ち上がる。

そして、飛来してくる魔法を、全て切り捨てる。

幾つかは斬り損ねるが、恭也の体に魔法は効かない。

しかし、先ほどの傷などの所為で、恭也の力も徐々に低下していた。

「恭ちゃんっ!!」

「動くなっ!!」

そんな恭也の方へ行こうとする美由希に、恭也は叫ぶ。

「しっかりと見ておけ……これが、王国のやり方だ」

魔法を切り捨てながら、恭也は言う。

「一部の腐った連中の所為で…救世主戦争はいつも泥沼の戦争になる……虐げられるのはいつも力ない民達だ……」

魔法を切り捨てていた小太刀が、根元から叩き折れる。

「だからこそ、俺は戦う……弱い者達を、虐げられた人たちを」

魔法が、恭也の体に当たる直前で、全て無効化(キャンセル)されていく。

「美由希、お前も考えろ……今の王国に留まるか、否かを」

両手を前に突き出し、恭也はその名を叫んだ。

 

Pleiades(プレアデス)ッ!!

 

凄まじい唸りを上げ、大地が振動する。

そして、大量の魔力が恭也の両の手に収束されていき……

その収束が終わった時、そこには白く光る小太刀が握られていた。

「恭ちゃん…それ、は……?」

驚きながら、美由希は尋ねる。

「俺の召喚器、プレアデス」

その美由希は、恭也は答える。

「エレクトラ、癒し続けろ」

言葉と共に小太刀が光り、恭也の体を青白い光が包み込む。

「さぁ、行くぞ」

小太刀を握り締め、恭也は駆け出した。

その姿は正しく……誇り高き者の名、白鴉――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

 

随分とお久しぶりですが、堕ち鴉第27弾をおおくりしました。

フィーア「あんたこの長い間なにやってたの?」

風邪ひいたり、色々と……

フィーア「この軟弱ものぉっ!!」

ぶべらっ!!

フィーア「12月に入ってぜんぜん更新してないじゃない、どういうことよ!!」

ううぅ、年末はネタが思いつきにくいんだよぅ……

フィーア「全く、お姉さまを見習わせたいわね」

いや、浩さんの間違いじゃ……

フィーア「だから、お姉さまは効率よく浩さんにネタを出させてるじゃない」

強引にね……

フィーア「だから、私ももっともっと頑張らないと」

頼むから落ち着こうよ……

フィーア「問答、無用!!」

あべしっ!!

フィーア「やれやれ、ではでは〜〜」





アハトさん、調子の悪いときにありがと〜。
美姫 「フィーア、頑張って〜」
いや、その声援は何か違う…。
美姫 「今回は前回の続きのようなものね」
だな。王国の悪い部分が出ていると。
美姫 「これを見た美由希は何を思い、何を考えるのかしらね」
IFのお話だけど、これはこれで見てみたいな。
美姫 「本当よね。それはそうと、フィーア、ご苦労様」
アハトさん、本当にお疲れです(涙)
美姫 「それじゃあ、まったね〜」
ではでは。



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