注)これは私が書いている『破滅の中の堕ち鴉』シリーズのオリジナル設定の話です。

DUEL SAVIOR本編のどのシナリオにも属していませんので、ご了承を。

オリジナルな展開がお嫌いな方は、どうぞお引き換えしを。

見てからの批判は極力おやめください。

それでもよろしいかたは、どうぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴女達は……」

ミュリエルは、目の前で起こっていることを何とか理解しようとしながらも呟く。

ミュリエルの目の前には、それぞれ暁のような赤い髪をした3人の女。

その身を包むものは、真紅の服。

そして、幾多もの頭を持つ、巨大な竜が鎮座していた。

「私達の事を知らずに呼び覚ましたと言うのかしら?」

そんなミュリエルに、地面につくまで髪を伸ばした女が尋ねる。

「エリュテイア、それは無理もないと思うわよ」

膝までの赤い髪をした女が、エリュテイアと呼んだ女を宥める様に言う。

「アイグレの言う通りだ。 私達がここに封印されてから、どれだけ刻が経ったのか見当もつかん」

首元までの赤い髪の女性も、アイグレと呼んだ女に賛成する様に言う。

「アイグレにヘスペリア、貴女達は呑気ねぇ」

ため息をつきつつ、エリュテイアはミュリエルを見る。

「どうやら本当に知らないようだから教えてあげるわ」

そう言って、エリュテイアはスカートの裾を少し持ち上げて……

アイグレは頬に手を当てて……

ヘスペリアは腕を組みながら……

 

「私の名前はエリュテイア…赤々と燃える娘の異名を持つ、ヘスペリデスの一人」

 

「私の名前はアイグレ…輝く娘の異名を持つ、ヘスペリデスの一人」

 

「私の名前はヘスペリア…夕暮れの娘の異名を持つ、ヘスペリデスの一人」

 

3人が、自分の名前を名乗った後、3人の後ろに鎮座していた巨大な竜が雄叫びを上げる。

「この子はラドン…百頭竜と呼ばれる伝説の竜よ」

竜、ラドンの首を撫でながら、エリュテイアは説明する。

「そして…その台座に納められているものこそ、全装着型召喚器の原型にして三大古参召喚器の1つ」

 

 

ヘスペリデス

 

 

その言葉に反応するかのように、ヘスペリデスの宝珠が輝きを放った。

 

 

 

 

 

 

魔女と暁の女神達

 

 

 

 

 

 

 

「ヘス…ペリデス……?」

呟くように、ミュリエルは目の前の3人に尋ねる。

「そう…【開闢星団プレアデス】【星乙女アストライア】と同位種の召喚器【守護女神ヘスペリデス】よ」

そんなミュリエルに、エリュテイアは答える。

「だが、よくこの部屋を見つけられたな」

感心するように、ヘスペリアがミュリエルに言う。

「どういう、事ですか?」

「この部屋はですね、アストライアとプレアデスを持った人に反応してその姿を現すように仕組んであったんです」

尋ねてくるミュリエルに、アイグレが答える。

(アストライア、と言うのはなのはさんの召喚器…そして、あの場にいたのはなのはさんの他には私と……)

そこまで考えて、ミュリエルには1つの答えが導き出される。

「恭也は…召喚器を持っている……?」

呟くように、ミュリエルは自分に問いかける。

「でも、プレアデスもアストライアも目覚めたとなると……」

「あぁ、神との決戦が近いと同意義だろう」

自問自答を繰り返すミュリエルの前で、エリュテイア達も今の状況を整理している。

「と言う事は、マスターを決めないといけないと言う事ですね」

アイグレの言葉に、エリュテイアとヘスペリアは頷く。

「そして、今私達のマスターになりえるのは……」

そこまで言って、エリュテイア達は目の前のミュリエルを見る。

ミュリエルも、自分に向かってくる視線に気付き、エリュテイア達を見る。

「あなただけになるわね……」

まるで見定めるように、3人はミュリエルを上から下まで見る。

「ねぇ人間、貴女……力は欲しい?」

その問いに、ミュリエルはどう答えるか迷う。

力が欲しいか、そう問われれば殆どのものが頷くだろう。

少し前のミュリエルなら、迷わず頷いていただろう。

だが、今のミュリエルは迷っていた。

信じてきた今までの行いが、想いが、空回りしていたことに。

破滅は悪、そう信じ込んで戦ってきたと言うのに……

ホワイトカーパスの街を見て、そこに住む人々を見て、その思いがいかに馬鹿げたものだったのかを痛感した。

そこに住む者達は、自分達となんら変わらない……普通の、人達だった。

そんな光景を見て、ミュリエルは以前のようなことを口には出せなくなっていた。

だけど……

「私は、力が欲しいです」

「それは、何のため?」

ミュリエルの答えに、直ぐにアイグレが尋ね返す。

何のため…以前なら、敵を倒すためだと答えたかもしれない。

でも、今は違う。

今力を欲する理由はただ一つ…それは。

「護る為に、私は貴女達の力を欲します」

ハッキリと、信念の篭った瞳で、ミュリエルは言いきる。

その瞳に、迷いなどはない。

護る為に、手の届く範囲でも良いから…自分の目の前の人達でも、護りとおす為に。

「私に、貴女達の力をください…ヘスペリデス」

ミュリエルの言葉に、エリュテイア達は黙っている。

「これは、久しぶりの上玉かな」

「えぇ、清々しいほどのお方ですね」

「うむ、我等を束ねるに相応しい想いの持ち主だ」

そして、3人はこう言いきった。

「人間、貴女の名前は?」

「ミュリエル…ミュリエル・アイスバーグ」

ミュリエルの名前を聞いて、3人はミュリエルの前で片膝をつく。

「ミュリエル、私達3人はこれより貴女の力となるわ」

「それと同時に、貴女を護る盾にもなります」

「そして、私達はミュリエルと共にある事をここに誓う」

それぞれが、ミュリエルに対して誓いの言葉をたてる。

「ありがとう、ございます」

そんな3人に、ミュリエルは心から感謝をあらわす。

「さぁ、ミュリエル…ヘスペリデスを」

エリュテイアの言葉に頷き、ミュリエルはヘスペリデスが置かれている台座に近づく。

そして、ヘスペリデスを手に取り…その腕に装着する。

刹那……

「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!?」

当然、ミュリエルが叫び声をあげる。

(これは…熱いっ、体が、心が、焼けるっ!?)

ミュリエルがヘスペリデスを装着した瞬間、凄まじい魔力がミュリエルの体へと流されていく。

「ミュリエル、ヘスペリデスを使うためには、ヘスペリデスを従えないといけないわ」

そんなミュリエルを見つめながら、静かにエリュテイアは言う。

「私達だけではない、ヘスペリデス本体も…持ち主を見極める」

続けるように、ヘスペリアがミュリエルに言葉を放つ。

「それに耐えきった者だけが、ヘスペリデスを使うことを許される」

アイグレの言葉に、ミュリエルは反応できない。

実際に燃えているわけではない…だが、体を焼き尽くさんばかりの炎を全身から感じる。

髪の先から爪の先まで、全てが炎に包まれている感覚。

体だけでなく、意識も、人の根底にあると言われる魂でさえも、焼き尽くされそうになっている。

しかし、ミュリエルは膝を折りはしない。

今のミュリエルを支えているものはただ一つ。

 

【愛する者と共に生きて、護る】

 

その思いだけで、ミュリエルはこの身を焼き尽くさんばかりの魔力の胎動に耐える。

震えながらも、ミュリエルはヘスペリデスを装着した手を前に突き出す。

魔力の胎動の中から、あるひとつの言葉が途切れ途切れながらも、ミュリエルの頭に入ってくる。

ミュリエルは、迷わずにその言葉を叫んだ。

 

ヘスペリデス

 

叫びと共に、ミュリエルの体から凄まじい魔力の柱が天井まで伸びる。

その瞬間、ミュリエルの頭の中に見たことのない風景が入ってくる。

 

【―――――、どうしてもやると言うのか?】

黒くて長い髪をした女性が、紫の髪をした女性達に尋ねる。

【えぇ――――、だって私達は―――を好きじゃないから】

そんな黒髪の女性に、紫の髪をした女性は言い返す。

【でも、だからって―――――さんがそんなことをしなくても!】

黒髪の女性の後ろから、銀色の髪をした女性が叫ぶ。

【心配してくれてありがとう―――――。 でもね、もう決めたの】

母のような微笑みを浮かべて、紫の髪の女性が言う。

【出来る限りの事はしたわ。 そして、喩え私が負けてもその先どうなるかは大体予想は出来ているもの】

【ごめんなさいっ、私が――――システムなんて作り上げてしまったばかりにっ】

銀の髪の女性が、泣きながら紫の女性に言う。

【いいえ、――――システムがあるからこそ、私は戦えるのよ―――――】

あやす様に、紫の髪の女性は微笑む。

【―――――については任せておけ。 お前の意向通り、きっちりとしておく】

【ありがとう、―――――】

黒髪の女性の言葉に、紫の髪の女性は感謝する。

【この時代でもう会う事は出来ないと思うけど…私達は、貴女達と知り合えてよかったわ】

微笑みながら、紫の髪の女性は二人に言う。

【それはお互い様だ、―――――】

【私もっ、―――――さんや――――――さんと知り合えて、幸運でしたっ】

それに、黒髪の女性は苦笑しながら、銀色の髪をした女性は泣きながら答える。

【じゃぁ、行ってくるわ】

そういい残して、紫の髪をした女性達はその場から消えた。

 

「これ、は……」

ふらつきながらも、ミュリエルは目の焦点を合わせようと前を見る。

「ヘスペリデスに、見事と認められたみたいね」

目の前には、苦笑しながらエリュテイア達が立っていた。

「エリュテイア……今の、光景は……?」

まだ少々ふらつきながら、ミュリエルは尋ねる。

「私達の過去…もはやどれ程の刻が経ったのかすら判らない昔の、召喚器が誕生する瞬間」

その言葉に、ミュリエルは言葉を失う。

「では、あの3人と言うのは……」

「そう、私達ヘスペリデスとアストライア、プレアデスの3人よ」

ミュリエルの考えに、エリュテイア達は頷きながら答えた。

「これから先、ヘスペリデスを持つ者はプレアデスの助けになる事が定められるわ…覚悟は、いいわね?」

最後の確認のように、エリュテイアは尋ねる。

アイグレもヘスペリアも、まっすぐにミュリエルを見つめる。

そんな3人に、ミュリエルが答える言葉は決まっていた。

召喚器の宿命じゃない、本心からプレアデスを持つであろうあの男の背中を支えたいと思っているから。

「もちろんです、エリュテイア、アイグレ、ヘスペリア。 私は、プレアデスを持つ者を助け続けます」

喩え、その結果どうなろうとも…この気持ちに、偽りなどはないから。

その答えに納得したように、3人は頷く。

「ミュリエル、ヘスペリデスの能力を教えておくわ。 貴女なら、必ず使いこなせるわ」

そう言って、3人はミュリエルに近づく。

そして、ミュリエルのヘスペリデスの宝珠に手を置く。

「我が名はエリュテイア、赤々と燃える娘の異名を持ち、ヘスペリデス第一の力【魔力シリンダー】の持ち主」

言葉と共に、エリュテイアが宝珠の中へと消えていく。

「我が名はアイグレ、輝く娘の異名を持ち、ヘスペリデス第二の力【魔力吸収】の持ち主」

続けるように、アイグレも言葉と共に宝珠の中へと消えていく。

「我が名はヘスペリア、夕暮れの娘の異名を持ち、ヘスペリデス第三の力【守護竜召喚】の持ち主」

最後に、ヘスペリアも言葉と共に宝珠の中へと消えていった。

そして、雄たけびと共に台座の後ろで鎮座していた百頭竜ラドンもその姿を消していった。

【ミュリエル、ヘスペリデスを使う上で……これだけは覚えておきなさい】

ミュリエルの頭の中に、直接エリュテイアの声が響く。

【ヘスペリデスはその強さと比例するようにリスクもある…ヘスペリデス装着時は、いかなる魔法治療を受け付けなくなるわ】

その言葉に、ミュリエルは驚く。

【でも、プレアデスとならそんな心配もなくなるわ…だから、プレアデスの守護を】

そこまで言って、エリュテイアの声は聞こえなくなった。

静寂だけが、部屋の中を支配する。

「……ヘスペリデス、これからよろしくお願いします」

ヘスペリデスの宝珠を包み込むように持って、ミュリエルは呟いた。

そして、その言葉に反応するように…ヘスペリデスの宝珠が、赤い輝きを放った。

 

 

 

 


あとがき

 

 

堕ち鴉第37弾をおおくりしました〜〜〜

フィーア「今回は、ミュリエルがヘスペリデスを手に入れるところね」

どうやってミュリエルはヘスペリデスを手に入れるかってのは、結構書きたいシーンでもあったしね。

フィーア「そして、ミュリエルは恭也が召喚器を持っていることに気付いたみたいね」

その件についてはまた後々ね。

フィーア「で、これからどうなるの?」

王国との戦いかな、大河達が救世主の鎧を取りに行っているのと同時間帯で。

フィーア「ねぇ、救世主の鎧ってもう取りに行ってたんじゃなかったっけ?」

これはいわゆるオリジナルルートだからね、そこのところはまぁお見逃しを。

フィーア「じゃぁ、ミュリエルは何で大河を殺そうとしたのよ?」

それは勿論、大河がどんどん力をつけて救世主になりそうだったから、かな。

フィーア「どんどん原作からかけ離れていくわね……」

うぅぅ、そう言わないでよ。

フィーア「まっ、いっか。 ではでは〜〜〜〜」





ミュリエルも更なる力を手に入れた。
美姫 「破滅側にいる恭也、なのは、ミュリエルが三大古参召還器を持ってるのよね」
圧倒的に破滅側有利かな。
まあ、恭也たちの最終的な目標は神だから、そう言う意味で行けば破滅とも敵対してしまうんだけれどな。
美姫 「第三勢力みたいよね」
まあ、正確には違うけどな。それに、今の所は破滅として行動している訳だし。
第三勢力と言えば、昔アハトさんとテンさんとで色々とネタを出し合ってた時に第三勢力のネタなんかもあったな〜。
美姫 「懐かしい思い出ね」
まあ、それは置いておいて。
次回はどんなお話になるんだろう。
美姫 「楽しみよね」
うんうん。次回も楽しみにしてます。
美姫 「待ってますね〜」



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