注)これは、私作『破滅の中の堕ち鴉』の小ネタ集です。

  一話分も話が練れなかったものを何作か合わせていますので、時間軸はバラバラです。

  キャラの設定が、作話によって違いますが、ご了承を。

  それでもよろしい方、どうぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小ネタ一

 

 

「なるほど、お前がセルビウム・ボルトか」

その言葉に、セルは後ろを振り向く。

「あんたか……」

その存在を確認したセルは、素っ気無く言う。

セルに声をかけたのは、堕ち鴉 不破 恭也。

「イムニティからの報告で見に来たが……」

そこまで言って、恭也は言葉を切った。

「今のお前では無理だ」

言葉と同時に、恭也はセルに掴まれる。

「何がだ?」

低い声を出して、セルは恭也に尋ねる。

「言われないと、判らんか?」

恭也は、真っ直ぐセルを見返しながら逆に聞き返す。

「復讐、そんなものに走ったやつが勝てる戦いなどそうありはしない」

刹那、恭也は壁に叩きつけられる。

「お前に、お前に何がわかるっ!!」

殺気を放ちながら、セルは叫ぶ。

「判らんさ……判りたくもない」

言って、恭也は掴んでいるセルの手を外す。

「奪う為に戦うやつに、未来などアリはしない」

「っ!!」

言葉と共に、セルの拳が恭也目掛けて放たれる。

しかし、恭也はそれを楽に受け止める。

「更にもう一言言ってやる。 護る為に戦うやつ相手に、今のお前では絶対に勝てん」

揺ぎ無い瞳で、恭也はセルに向かって言い放つ。

「本当に、白の主の事が大事なら……大河を、白の主の前に連れて来い」

「っ!!」

恭也の言葉に、セルは掴まれていた手を離す。

「その上で、白の主にお前の思いの丈をぶつけろ……今より、ずっといい結果になるはずだ」

そういわれ、セルは恭也に背を向けて歩き出す。

「セルビウム・ボルト」

そんなセルに、恭也は声をかける。

「お前も、護る為に戦え……白の主の、壊れそうな心がこれ以上壊れないために、その心を護る為に」

セルの背中を真っ直ぐ見つめ、恭也は言い続ける。

「大河を殺す為に大河と戦うのではなく、白の主の心を護る為に、大河と戦い、ここに連れてくるんだ」

背中越しにかけられた恭也の言葉に、セルは小さく頷き歩いて行った。

「珍しく雄弁じゃないか、恭也」

セルの背中を見送った恭也に、後ろから声がかけられる。

「あぁ、戦うにしろ戦わないにしろ……奪うために戦うやつに未来はないからな」

恭也が振り返りながら答えると、そこにはロベリアがいた。

「奪う奴に未来はない、か……どの口が言うんだかな」

自傷気味に、恭也は言う。

今まで、自分も散々奪ってきた。

護る為と言いつつ、その手で何人もの人を殺してきた。

恭也が殺してきた者の親しい者達から見れば、恭也も奪った者に違いはない。

そう思うと、今の自分の矛盾に呆れてくるのだ。

「護る為に奪い、人類の敵となって…妹まで死地に誘ってしまう様な俺に、未来などあるはずもない」

この戦いが終わった時、ロベリアやイムニティ、なのはと静かに暮らせれば。

そう思って恭也は今まで剣を振るってきた。

だからこそ、振り返って気付く。

自分の後塵には、屍の山しかない。

そんな自分が、幸せな未来など望んでいいのだろうか、と。

そんな事を思っていると、恭也は思いっきり頬を引っ叩かれた。

驚きながら恭也が前を見ると、ロベリアが泣いていた。

「恭也、二度とそんな馬鹿な事を言うんじゃないよ……」

震えながら、ロベリアは言う。

「奪い続けてきた自分に未来がない? お前がそんな事でどうするんだいっ!!」

叫びながら、ロベリアは恭也の腕の中にもたれかかる。

「私は、私達はお前との未来を望んでいるんだっ! この戦いが終わったら、皆で静かに暮らそうって言ったじゃないか!」

恭也の胸を、ロベリアはたたく。

「自分を卑下しなくてもいいじゃないか…お前は、護る為に剣を振るってきただけだ……」

「ロベリア……」

泣きながら言うロベリアに、恭也はゆっくりと頭を撫でる。

「お前の、言うとおりだ……俺は、俺の護りたい者を護る為に剣を振るってきた。 残された者の哀しみを理解したつもりだったが、全然わかっていなかったようだ」

尊敬する父が、護りたいものを護って死んだ。

そのことに対して、父に怒る気持ちはない。

だが、遺された母を、姉を、妹を見て、決意したはずだ。

決して死んではならないと。

死んでしまえば、護りきれなくなる。

護りきるためには、生きなければならない。

敵対した者の命を奪い去ろうとも、己の命はなくしてはならない。

「俺は、二度とあのような事は言わん……俺の罪は、生きて償うべきものだからな」

この戦いに勝つにしろ、負けるにしろ。

生きなければ、何も変わらない。

死ねば、その分遺された者の重荷になってしまう。

だからこそ、生き残ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明

これは、未亜ルートのセルが破滅に来たときのシーンだね。

フィーア「ここは何とか一話分にしたいって、言ってたわね」

うん、本当にしたかったんだが、結局作りきれなかった。

フィーア「で、この後セルはどうなるの?」

一様生きていることにはなってるんだけど……

フィーア「話が繋がらない、と」

その通り。

 

 

 

 

 

 

小ネタ二

 

 

ホワイトパーカスの一角。

街のほぼ端っこに存在するそれは、破滅の将が一人 不破 恭也の個人宅である。

普段、恭也は破滅の将が集まる館に常駐しているが。

たまにこの家に帰ってくることもある。

まぁ、最低一週間に一度は帰ってきているが。

現在はなのはものこの家を良く使っている。

ロベリアやイムニティも、恭也がこの家にいるときは良く来る。

では、それ以外の時はどうか。

恭也は基本的に戦闘に参加するため、この家はよく留守にしがちである。

むしろ、一月ほど空ける事だってある。

そうなれば、おのずと家の掃除などが疎かになりそうなものだが。

この家は、そんな杞憂とは無縁の所にある。

それはなぜか。

答えは簡単である。

恭也に仕える……最高のメイドが居るためである。

名前はルル。

苗字は無い。

恭也が王国軍によって追われていた彼女を助けたのが、出会いである。

その出会いから暫くして、ルルには恭也の家に居た。

恭也の知らない間に恭也の家に住み込み、自分の家具一切を置いていた。

最初は恭也も警戒したが、ルル自身は恭也に仕える為に来たとハッキリと言った。

何故自分なのか、恭也がそう尋ねると……

「私はメイドです、誰かに仕えたいんです。 でも、仕える相手は自分で決めます。

一日目にたって、あなたの顔が浮かんできました。 二日目になっても、あなたの顔が消えませんでした。

三日目で気付きました、私は貴方に仕えたいんだと」

そう、答えた。

強い意思の篭った瞳で言われ、恭也は折れた。

それから、ルルには恭也の家で住み込みのメイドをしている。

たまに帰ってくる恭也を笑顔で向かえ、恭也が帰ってくる家を預かる。

これは、そんな二人のお話……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明

これは、浩さんを喜ばせてあげようとメイドのお話を考えていたんだけど。

フィーア「これも書ききれなかったと」

うむ、メイドは難しいね。

フィーア「前に書いたエレクトラみたいな感じでいいんじゃないの?」

それだと二番煎じみたいな感じだったからなぁ……

フィーア「それにしても、これ短くない?」

うっ、思いつかなかったんだよぅ。

 

 

 

 

 

 

 

小ネタ三

 

 

「神の力の宿る玉座の力、それをお前たちの召喚器に与えれば……」

「古の強大な召喚器と同等…あるいはそれをも超えるものとなる」

静かに、恭也とロベリアは言う。

「しかし、どうやって……」

恭也達の前には、巨大な金の鎧……

呪われし救世主の鎧が、行く手を阻んでいる。

「まぁ、待っていろ……今その光りを取ってきてやる」

救世主の鎧の方を向き、恭也とロベリアは構える。

「死ぬ気なんですかっ!!? 駄目ですっ!!」

二人の意図を感じ取ったのか、ベリオが叫ぶ。

「優しい言葉、感謝する」

「心配は要らないさ。 救世主の鎧がガルガンチュワを乗っ取った時、私達は既に殺されているからね」

その言葉に、リリィや楓、ベリオは驚く。

「その名もアンデット……往生際の悪い者が、生き延びるための魔術」

「……聞いたことがあります。 使用すれば、二度と輪廻転生も出来ず、永遠の苦しみを与えられると言う……

貴方達はそこまでして……」

恭也の言葉に、ベリオは震えながら言う。

「恭也っ!! ロベリアっ!!」

「来るんじゃないよっ、ルビナスッ!!」

恭也達に近づこうとするルビナスに、ロベリアは叫び、骨で出来た堅牢な牢を作り上げ、リリィ達と一緒に閉じ込める。

「私達は、無駄死にをするわけじゃない」

「未来を、繋ぐために行くんだ」

二人はルビナス達にそう言って、救世主の鎧を見る。

「ふぅ……行くぞロベリアッ!!」

「あぁ、恭也ッ!!!」

叫びと共に、恭也とロベリアは救世主の鎧、その後ろの玉座へと向かっていく。

おぉおぉおおぉぉぉぉおおお!!!

その二人に向かって、救世主の鎧はその豪腕からは想像できない速さで拳を振るう。

「縛糸ッ!! 八門甲龍陣(はちもんこうりゅうじん)ッ!!!」

その拳を、恭也は小太刀を突き刺すことで受け止める。

更に、その小太刀に無数に巻きつけられた鋼糸の先を、幾重にも地面に突き刺す。

その間に、ロベリアが救世主の鎧を避け、玉座目掛けて走る。

その後ろを、恭也も追随する。

「ハァァァァァアアァァァアアッ!!!!」

凄まじい気合と共に、ロベリアは紅き大剣を玉座目掛けて振るう。

恭也も、気合と共にもう一刀の小太刀を玉座目掛けて振るう。

大剣と小太刀が玉座に突き刺さり、凄まじい光を撒き散らす。

(ふっ……やっぱり私達には、眩し過ぎる光だね……)

自傷気味に笑い、ロベリアと恭也は大剣と小太刀を玉座から引き抜く。

「しっかり受け取れっ、救世主達よっ!!」

叫びと共に振るわれた大剣と小太刀から、凄まじい光がリリィ達に向かう。

刹那、大剣と小太刀が砕け散る。

「ぐぅっ!!」

「あぁっ!!」

「うぅっ!!」

「くっ!!」

そして、光りが4人を包み……

光が晴れたとき、四人の召喚器が凄まじい光を放つ。

「魔道大帝:ライテウス…大僧正:ユーフォニア……極忍:黒耀……」

「そして魔道騎士:エルダーアーク……ふふっ」

満足げな笑みを浮かべ、恭也とロベリアは玉座に向かって倒れる。

「短い、付き合いだったねぇ……」

「いや、結構長かったぞ……」

玉座に向かって倒れていくロベリアと恭也の体が、まるで砂のように消えていく。

「じゃぁ、な」

「ああ」

そして、ついに二人の体は消え去った……

「ロベリアッ!!」

「恭也ッ!!!」

ルビナス達の悲痛な叫びが、あたりに響く。

「彼らに、神のご加護を……」

祈る神は、目の前にいる神ではない。

彼らの世界の、神に祈る。

「恭也、ロベリア……貴方達の思い、きっと晴らしてみせるッ!!」

ルビナスの叫びと共に、四人は救世主の鎧へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

え〜、これはとあるシーンを見て堕ち鴉風に改変したものです。

フィーア「っていうか、あの召喚器の称号は何?」

こじ付け設定、召喚器の真の力を発揮したときの名前、かな。

フィーア「ちなみにジャスティは?」

……………………

フィーア「何、その沈黙?」

…………考えが、浮かばなかった。

フィーア「このどあ阿呆っ!!!!」

びでぶーーーーーーー!!

フィーア「まったくもぅ……小ネタ集は此処で終わりです。 ではでは〜〜〜」





小ネタ二、ルル! いやー、ありがたや、ありがたや〜。
美姫 「煩い!」
ぶべらっ!
ひ、久々のメイドなのに…。
美姫 「はいはい、バカはそのぐらいにして。今回は短編集みたいな感じね」
だな。最後の恭也とロベリアの話はちょっと悲しいけれども、良いお話だよ〜。
美姫 「ジャスティだけが称号ないわね」
閃冠の射手ジャスティ。
美姫 「いや、アンタが勝手につけても。
いやいや、アハトさんの為にも! これでフィーアにぶたれる事はないはず。
美姫 「もう遅いに決まってるんだけど」
…………テヘ。
美姫 「アハトさんの為に、アンタも一緒にぶっ飛びなさい!」
な、なんでやねぇぇぇぇぇぇんっっっっ!!
美姫 「それじゃあ、フィーアまったね〜」



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