『恭也と美咲もながされた藍蘭島』

03 〜何故かこっそりいなくなって〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり、あたりを照らすのは月明かりだけとなった藍蘭島。遮るもののないその光は、都会では信じられないほど明るく道を、村を照らし出す。

そんな皆が寝静まった島を、音もなく歩く影が一つ。その影は歩いているとは思えないほどの速度で、しかし物音を全くたてることなく真っ直ぐとどこかを目指して歩いていく。やがて長い階段の前に差し掛かったその影は、一度警戒するようにあたりを見回した後その階段を一気に駆け上がっていく。ついたのは神社の境内。そこからさらに脇の林の中に足を踏み入れていくと、暫くして影はやがて開けた場所に出る。

 

「やっといらっしゃいましたねぇ。今夜は随分と遅かったですよ」

 

「こちらからお願いしているのにすいません。何か出来る事であれば埋め合わせはさせていただきますので」

 

「本当ですか? 嬉しいです♪ それじゃあ今夜ははりきっちゃいますよ♪」

 

「では……、いきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? 恭也お兄ぃちゃんが夜何処かいってる?」

 

暫くしてそんな噂が美咲の耳に入った。情報源はメイメイ。

 

「それって本当なんですか?」

 

にわかには信じられないといった表情でメイメイに確認すると、

 

「た、たぶん本当ですヨ〜。私も人から聞いた話ですからはっきりとは言えないですけど……」

 

と自信なさげにそれでも肯定の返事を返すメイメイ。

話によるとどうやら恭也が住んでいる離れた小屋を出て、夜に村を通って何処かに歩いている所をたまたま目撃した人がいたらしい。

気になって何度か後をつけてみたものの恭也の歩く早さがあまりに早すぎて追いつけず、いつも途中で見失ってしまっていたとか。

 

「その人絶対ついてって恭也お兄ぃちゃんと二人きりになりたかったんだ」

 

「あ、あはははは……そ、それについては否定できないですヨ。でもその人も結局自分一人じゃどうしようもなくて皆に噂として情報を流したみたいですヨ?」

 

「そうですね。でもそれって今誰かが恭也お兄ぃちゃんとこっそり会ってるとしたら邪魔しないとって思ったんじゃないですか?」

 

「あ、あはははは……」

 

恭也が夜な夜な誰かと会っている。それだけで何故か心中穏やかでない所為か口をついて出る言葉がかなり辛辣なものになっている美咲。まさか噂を流したその人物が自分の目の前にいるなどとは思ってもいないのだろう。

そう。夜出歩く恭也を見つけて何度か後をつけていたのはメイメイだった。というよりも恭也の実力を正確に知っている人間ならばおのずとわかってしまう。忍の一家であるみこと達が村はずれの山中に住んでいる以上、この島で気配をある程度を消して行動できる人間などメイメイ以外ありえないのだから。

美咲とメイメイが二人でそんな話をしていると、

 

「お? 美咲ちゃんにメイメイ。今日は恭也と行人君はいっしょじゃないのかい?」

 

「あれ? ダンナ達の練習みれるっつーから来たのに」

 

とりさとりんがやってきた。

 

「今日は恭也お兄ぃちゃんの考えでそこの林の中です。しのぶさんとすずさんも一緒にいっちゃいました」

 

「感覚を鍛える鍛錬なんだそうですヨ」

 

「へぇ……おいりん。お前もいって一緒に鍛えてもらいなよ。怪我減るかもよ?」

 

「余計なお世話だっ! それにもうそろそろ昼時だから帰ってくるだろ?」

 

そこで美咲はりんが抱えた大風呂敷に気がついた。

 

「それ、お弁当ですか?」

 

するとりんはとたんに照れて頬を真っ赤に染めながら、

 

「い、いやさ、ダンナ達が頑張ってんだから美味しいもんでも食ってもらおうと思ってさ……」

 

と苦しい言い訳をし始める。

しかしそれは昼食の準備を仰せつかった美咲としては願ったり叶ったり。料理自体は苦手ではないがどうしても冷たい料理ばかりになってしまう美咲は、

 

「それじゃりんさん、悪いんですけどお兄ぃちゃん達を呼んできてくれますか? 準備は私がしておきますから」

 

とりんのお弁当と自分の作ったものを一緒に出してしまおうと考える。それに快く返事をして林に入っていくりん。

 

「それじゃメイメイさんとりささんも手伝ってもらえますか?」

 

そういって美咲が席を立つ。

 

「なぁ二人とも、ちょっと教えてほしいんだけど……」

 

メイメイが美咲の後を追って手伝いにいこうとしたとき、後ろからりさが二人に声をかけた。

きょとん、と振り向く二人にりさは何処か真剣な表情で、

 

「あの、さ……恭也の噂の事なんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその晩、恭也がまた皆が寝静まった頃合を見計らって準備を始めていると、

 

「ん? 人が来てるな……りささんですか?」

 

人の気配が扉の前に立ったところで声をかけた恭也。その効果は絶大だったらしく、その気配は扉を叩く直前で声をかけられてうろたえてしまっていた。

その後も暫く扉の前で右往左往しているらしい気配を感じ取った恭也は、しかしその気配がりさのものだと確信していたため、

 

「どうしたんですか、りささん?」

 

と苦笑を零しながら躊躇なく扉を開けた。

 

「うひゃ?!」

 

驚いておかしな声をあげるりさを、恭也は苦笑したまま迎え入れる。

 

「これからいかなければいけない所があるのであまり時間はありませんが……何かお話ですか?」

 

「あ、あのさ! あの…………」

 

何とか用件を切り出そうとするりさだったが、いつもの快活な話し方とはうって変わってもじもじと頬を染めながら何かいいにくそうに口をまごつかせている。

普通なら「用がないなら」と出て行ってしまう状況だろう。しかし恭也にはこのいつもとは違う雰囲気のりさを放って出かけることを躊躇った。そしてりさの隣に腰を下ろすと、

 

「どうしたんです? いつものりささんらしくありませんね。俺みたいな若輩で答えられるような事なら精一杯答えさせてもらいますから、話してみてください」

 

年上の女性のはずがいつの間にかその態度はどちらかといえば那美などにたいしている時と大差なくなってしまっている恭也。

 

「……噂、聞いたんだよ……」

 

「噂、ですか?」

 

意を決したように話し始めたりさ。

 

「恭也が夜な夜な誰かと、そ、その……あああ逢引してるって噂だよっ!」

 

「…………は?」

 

「……今だってこれから行くところだったんじゃないのか?」

 

そうはいいながらりさもいい加減何かおかしいことに気付き始めた。恭也の表情が本気でわけがわからないといった表情をしていたからだ。

 

「……違うのかい?」

 

「……違いますよ? というかそんなわけないじゃないですか」

 

心底心外だとばかりに苦笑を零して見せた恭也は、

 

「そうですね。説明するより見てもらったほうが納得してもらえるでしょう」

 

といって脱いだ靴を履きなおし、抱えていた鞄を持ち直した。

そしてりさに、

 

「いきましょう。どうせここから出れない以上いずれは知られる日も来るでしょうからお見せしますよ」

 

と振り返って声をかけた。

素直にその言葉に従って恭也の後をついていったりさ。

二人がついたのは、

 

「ここって……神社じゃないか」

 

「ええ、神社です。まぁ神社そのものに用事があるわけではないんですが……いきましょう」

 

まちとあやねの住む神社だった。しかしそんな事はお構いなしとばかりに階段を上がる恭也。気配できちんとりさの上がるスピードにあわせているところはさすが朴念仁紳士といったところだろう。

上りきった恭也は、境内のほうではなくそのまま脇にそれて道のない所を林の中に踏み込んでいった。

 

「葉などで怪我をしないよう気をつけてください」

 

そういいながらまたしてもりさを気遣って足元の草を踏み分け、身体に当たりそうな木の枝などを払って進んでいく恭也。今度はりさもさすがに気がついたのか嬉しそうに心なしか軽い足取りで後をついて行く。そして、

 

「お待ちしてましたよ〜♪ あら? りささん?」

 

「?! ちずるじゃないか!? 恭也、いったいどうなってんだ?!」

 

開けた場所に出たと思ったらそこにはまちたちの母親であるちずるがにこやかに佇んでいた。

逢引ではないと聞いてついてきたらそこにいたのは大人の色香漂う女性であるちずる。そんな状況でりさは完全に混乱してしまうが、恭也は特に変わった様子もなく鞄を置き、そしていつも行人達との鍛錬で使っているのと似たような木刀を取り出した。

 

「遅れてすいませんでした。お願いします」

 

「りささんまでついてきちゃったのは残念だけど、でも頼まれた事はちゃんとやりますよ」

 

そして次の瞬間、りさの混乱はとけ、すべての疑問は氷解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫く経ち、恭也の噂は収ま……っていればよかったのだが実際はそうもいっていなかった。それどころか、

 

「恭也さん! かあちゃんと夜逢引してるってのは本当か?!」

 

「恭也様! 夜うちのお母様に色々口には出せないような事してるってホント!?」

 

「……なんだそれは?」

 

噂はさらに悪化し、あろう事か相手の名前まで出てきてしまっていた。

りんとあやねが駆け込んできてそれこそ頭突きでもしようかという勢いで詰め寄ってきて、行人との鍛錬の休憩中だった恭也は思わず身を引いてしまう。

 

「恭也様、私は三人で逢引って聞いたわ。どういうことか教えて」

 

二人の後からまちもやってきてなにやらお札を取り出している。

 

「教えろも何も……」

 

さすがに行人や美咲が怯えるほどの勢いで詰め寄られ続けてはたまらないと恭也が真相を伝えようと口を開きかけたその時、

 

「お〜い、恭也ぁ〜! ちょっと手伝ってほしいんだけど! 報酬は好きな家具で〜」

 

「恭也さん、少々お手を借りてもいいですか? 男手が欲しいのですけど」

 

と噂の張本人が三人とも揃ってしまうという異常事態が発生した。しかも二人同時に恭也を呼んでいる。

 

「ちょっとちずる? あたしが先に声かけてんだ。くだらない用事ならまた今度にしてくれるかい?」

 

「あら、くだらないなんて。私は神社のお手伝いをお願いしようと思っただけです。りささんこそ村の男の人達より力があったのに今更恭也さんに何をお願いするつもりなんです?」

 

「恭也は身軽だし仕事が速いんだよ! 今日はトゲ太しかいねぇから人手が足りねぇんだ!」

 

「それならあちらにりんさんがいらっしゃいます。ご自分の娘さんでしょう?」

 

「アイツは全く役にたたねぇ! それよりちずるの所だって娘二人もいるだろう。そこに両方暇そうにしてるけど?」

 

「ぐはっ?!」

 

「あやねさんはいつも頑張ってくれてますから今日は行人さんと遊んでらっしゃいといっておきました。まちさんはいても役にたちません」

 

「うぐぅ?!」

 

言い争いをしながら着実に自分達の実の娘達にダメージを与えていくりさとちずる。もはや二人の娘は虫の息。それを見て笑っていた一人褒められていたあやねはお約束のようにワラ人形に釘を刺されて自業自得にまき沿い。

見かねた恭也は行人に目線で詫びると、

 

「分かりましたから二人ともやめてください。まずはりささんの所をちずるさんも一緒に手伝いましょう。トゲ太一人ではさすがに無理がある。で、その後今度はりささんも一緒にちずるさんのほうを手伝ってください。時間的にはこれが最適だと思いますが、いかがでしょう?」

 

と二人の間にわって入った。

 

「しょうがないね。ちずる、それでいこうや」

 

「そうですね。素晴らしい考えだと思います♪」

 

「ではそれでいいですね? 行人、すまんが後はしのぶの面倒を見てやってくれ。きちんと型を覚えさせるんだ」

 

「あ、はい。わかりました」

 

「お気をつけてでござる」

 

ぺこっと頭を下げる行人としのぶ。

 

「美咲とすずは……」

 

「りんとあやねとまち姉だね?」

 

「任せてください、恭也お兄ぃちゃん」

 

分かっているとばかりに笑って返事を返す二人に、恭也はよろしくと頭を撫でてやってりさとちずるを連れだっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「恭也様が出ていったわ」

 

「ねぇまち、やめようよ」

 

「そうだよまち姉。よくないよ〜」

 

「いいえすず。ここははっきりさせておかないといけないわっ!」

 

「そうだぜダンナ、すずっち。何せ本当だったら恭也さんがあたいの父ちゃんになっちまうかもしれねーんだ」

 

「むむっ? それはなにやら羨ましいような悔しいような……」

 

「たぶん皆の思ってるようなことじゃないと思いますよ〜? ……まぁ言っても無駄なんだろうけど」

 

その晩、まち、行人、すず、あやね、りん、しのぶ、そして美咲の7人は毎晩恭也が何処へいって何をしているのかを突き止めることになった。

恭也が出て行くのを見てのりのり、というより気合の入った様子で後をつけるまち、あやね、りん。それに気乗りのしない様子で行人とすずが、そして興味深々といった表情でしのぶ、最後尾を呆れた様子で美咲がついて行く。

 

「それにしてもゆきのんとこからフクフク連れてきてよかったな」

 

「そうね。恭也様ったら視線とか気配とか言ってちょっと離れてるくらいじゃすぐに気付いちゃうんだもん」

 

そういいながら全員細心の注意を払ってフクフクの後についていく。そして、

 

「あ、あれって……」

 

「か、かあちゃん?!」

 

「ホントだ。りささんだ」

 

無事神社の下まで尾行できた皆の目に飛び込んできたのは階段のところで大きく手をふるりさ。暗いのではっきりした事はいえないがおそらくその表情は満面の笑みだろう。

会話の内容までは行人達のところまで聞こえてこないが、二人は一言二言かわすと並んで階段を上がっていった。

 

「まっまままままさかかあちゃんホントに?!」

 

「ででででもここって……」

 

「私達のお家ね」

 

「「…………ってことは?」」

 

「私の聞いた三人で、ってゆーのが有力ね」

 

完全にパニック状態のりんとあやね。一人冷静に見えるまちも良く見ると顔が少し引きつっている。

行人は三人一緒に、を想像してしまい必死に鼻血を押さえ、すずとしのぶは全く分からずに頭の上にはてなを浮かべ、そして美咲は、

 

「う〜ん。でもここって神社だし……やっぱり……」

 

と一人答えの予想がついているような呟きを続ける。

すぐに気を取り直した行人達はここでつったっていてもどうにもならないと恭也達の後を追って神社の階段を駆け上がった。しかし上りきったところには誰もいない。全員であたりを暫く探し回っていると、

 

「ねぇみんな。こっちのほうで声がするよ?」

 

とすずが無邪気な声をあげた。声に惹かれるようにワラワラと集まってくる行人達。

 

「あ、ここ道になってる」

 

行人が指を指した場所は、たしかに草が道になるように分けられている。

すぐに恭也達はそっちに向かったと判断したまちとあやねを先頭にしてその道を進んでいくと、

 

「! しっ! しずかにっ!」

 

と暫く進んだところであやねが小声で鋭く行人達を制す。全員で何事かと耳を澄ますと、

 

「はぁぁぁぁ……ふぅ。さて、次いいですか?」

 

「はぁ、はぁ……んはぁ……し、しかし無尽蔵だな恭也は」

 

「ええ。私一人の時は大きいのを連続でしたから大変でした。ちょっとりささんに感謝しなきゃいけませんね」

 

「そんな人を化け物みたいに言わないでくださいよ。りささんだって少し前より確実に長持ちするようになってますし」

 

「毎日やってるしなぁ」

 

「では……んっ! …………い、いきます」

 

この場で顔が赤くないのはすずとしのぶの二人だけ。ある程度の性知識のあるほかの皆は顔を真っ赤にして必要もないのに俯いてしまっていた。

 

「ま、まさか二人同時とは……さすが恭也さん」

 

なにやら失礼な納得の仕方をする行人。もうマヂで噴き出す5秒前といった感じで鼻を押さえている。他の皆も似たり寄ったりで、すずとしのぶが自分たちだけ分からないことに何処となく不貞腐れ気味。

 

「何がさすがなんだ?」

 

「それはもう……ねぇまち?」

 

「ええ。恭也様以外にお好きなのですね♪」

 

「あっあたいは恭也さんのこととうちゃんなんて……」

 

「あ、あたしだって呼べないわよ?!」

 

「ねぇねぇ皆ぁ〜、何の話なの?」

 

「恭也殿は分かりますか?」

 

「さあな。ただ何か決定的な誤解を受けている事だけは理解できる」

 

「ってゆーかお兄ぃちゃん達さ……いい加減気付こうよ?」

 

『…………え?』

 

美咲の一言にすず、しのぶ、美咲以外が一瞬固まる。全員今の会話の中に本来ここで聞こえてはいけない声があったことに気付いて油のさされていないネジのようにギギッと首を回すと、

 

「で? 誰かに見られているのは気付いていたが、どういうことか説明してもらおうか」

 

『恭也さんっ?!』

 

両手に小太刀サイズの木刀を携えた恭也がすず、しのぶ、美咲の後ろに静かに佇んでいた。心なしか空気が剣呑なものになっている。

 

「あっ?! りん!」

 

「あらあらまちさん、あやねさん、なんでこんなところに?」

 

恭也とここで“逢引”していた二人もやってくる。とたんに全員の視線が二人に集まり、それこそなめ回すように頭のてっぺんから足の先まで見られる。まじまじと見られて落ち着かないといった感じに身じろぎするりさと、のほほんと頭上にハテナマークを浮かべているちずる。

やがて皆の視線がはずれ、全員がほっと一息ついたところで美咲が恭也に説明を始める。

 

「実は恭也お兄ぃちゃんがりささんと夜にどっかに出かけてるとかまちさん達のお母さんと夜に会ってるとか噂がいっぱいたってたから確かめに来たの」

 

「本当なら恭也さんはりんかまち達の父親になっちゃうって」

 

行人の一言に恭也、りさ、ちずるの三人は全員頬を赤らめる。

 

「で!? どうなんだかあちゃん!?」

 

「みたところそんな感じじゃないけど……」

 

「でもお姉さま! さっきの声は!?」

 

娘三人の様子にどうやら先ほど上から下まで見回されたのは着衣の乱れなどを見られていたらしい事に気付いた母二人。

 

「ばっ、おまっ、――――!!!!」

 

「あらあら。困った子達ね♪」

 

「? 声?」

 

そして全く理解出来ていない恭也は首をかしげた後、仕方ないとため息をついて事情をすべて説明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『た、鍛錬〜!?』

 

「そうだ。夜の鍛錬」

 

「場所を探して家の神社に来たところで会ったのよ」

 

案の定脱力する行人達。美咲は一人で「やっぱり」といった表情を浮かべて苦笑している。

 

「ちずるさんは強力な式神を使役できるから手伝うと言ってくれてな……」

 

「それにあたしも後で加わってこれを恭也に投げつけて強力してたんだ」

 

そういってりさは小さめの石の礫を見せた。おかげで疲れる疲れると不満を言うりさだが、その表情はむしろ充実感に満ち溢れていた。

 

「まったく紛らわしい」

 

「本当だぜ。でもまああたい達はこれで恭也さんを父ちゃんって呼ばなくていいわけだ」

 

「そうね。それが分かっただけでもよしとしておきましょ」

 

『あはははははは!』

 

そう言って胸を撫で下ろす娘三人と、その表情を見てとりあえずよかったと笑う他の尾行メンバー。

それを憮然とした表情で見ていた恭也に当の母親二人は頬を染めてはにかむ。

 

「あたし達なら……」

 

「いつあの娘達のお父さんに……」

 

「「なってもらってもいい(です)よ?」」

 

 

 

 


あとがき

ちょっと長くなりました第3話をお届けしました。

前回の宣言のとおり次の獲物はまちとあやねのお母さん、ちずるさんでしたw

なんたってこの人ぽけぽけ巫女お母さんですよ! お母さんってとこ以外は島の外にも同じ様な人がいましたけど……でもいってみれば未亡人巫女! ……いや、ひかないで

とまあそんなわけでもう分かっていただけたとは思いますが、基本的に恭也に積極的に関わってくるのはこの島では行人としのぶ以外は殆どお母さん達! とまではいきませんが出番は増えます。行人では為し得なかったマダムキラー、恭也君にやってもらいましょうともっ!www

それでは、ちょっとハイになってますんで今回はこの辺で〜♪





奥様方に大人気の恭也。
美姫 「今回は深夜の鍛錬と逢引を勘違いされたみたいね」
だな。この調子でドンドン奥様たちの出番が増えていく?
美姫 「今後のお話も楽しみね」
うんうん。次回も楽しみにしてます。
美姫 「待っていますね〜」



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