恋姫†無双戯曲 −導きの刀と漆黒の弓−

 

第五話 −再会する剣と弓−

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「星!此方から仕掛けては駄目だ!なるべくこちらの兵力を減らさないように、相手の戦力を削るんだ!」

 

「ちっ!歯痒い!こんな虫ケラ共、物の数ではないというのに!」

 

「それでもっ!無駄に命を浪費させるわけにはいかんっ!」

 

「くっ!白蓮殿……白蓮殿は優しすぎる」

 

そんな二人の声を聞きながら、一弦はただ黙々と矢を放ち続ける。

防御最優先のこの戦法の場合は弓兵こそがもっとも力を発揮するのだ。二人の気持ちも理解できる一弦ではあったが、一弦には二人の間に生じている些細な行き違いと目の前に自分達の命を奪おうとして押し寄せる黄巾党の両方の対処など出来はしない。

 

「今は……ここを護らないと。一刀を、白蓮さんを……護らないと」

 

一弦はただ自分を突き動かすこの理由だけの為に、一人ただ弓を引き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目標の黄巾党を討伐した公孫軍は、その時の生き残りから啄県の抵抗ぶりに業を煮やした幽州の黄巾党が大兵団を結成して攻め入ろうとしているという情報を得た。

 

「一刀が……攻められそうになってるんですか?」

 

それを白蓮から聞いた一弦はただそう尋ねた。

取り乱すわけでもなく、飛び出そうとするでもなくただもっと情報を得ようとする一弦に白蓮たちは安堵のため息を小さく吐いて話を進めた。

 

「どうやら一弦の友人の天の御遣いとやらは黄巾党の怒りをかったらしい。というかどっちかって言うと黄巾党は恐れてるな。その成長の勢いを」

 

県政になった一刀は仲間と共に精力的に黄巾党と戦い続けていた。

それは自衛の為でもあり、また苦しめられている人達を助ける為でもあった。

 

「ほう。その天の御遣いとやら、なかなかの人物だな」

 

星が感心したように腕を組む。

 

「一弦君もそうだけど……いきなり戦場に放り込まれて戦う決断が出来るなんてすごいわん!」

 

泉もそう言って正常な男子には目に毒すぎる胸を揺らしてみせる。

 

「一刀は……僕よりも強い人間ですから」

 

「つ、強いってマジか?!」

 

一弦の言葉に信じられないと身を乗り出した白蓮。

それもそのはず。白蓮がこれまで聞いていた報告には一刀が前線で戦っていたというものは一つもなかったからだ。

そんな白蓮の誤解を理解した一弦は少し頬を緩めて、

 

「戦う、ということなら一刀は僕の足元にも及びません。僕が言っているのは心……信念、覚悟の問題です」

 

と少しだけ誇らしげに笑った。

 

「僕は結局、白蓮さんを護る為に弓を引きました。それは……卑怯な覚悟の仕方です。人の為、という事は人の所為にも出来るから。でも……多分一刀なら自分が、護りたいからと覚悟を決められます。何も迷わずに……自分がそうしたいからと言って」

 

「でもっ!」

 

白蓮は声をあげた。

 

「それでも私は嬉しかった!頼りにもしてる!それに分かってる!そうは言っても一弦は絶対に私のせいになんかしないだろっ?!」

 

むきになって声を荒げる白蓮に一弦は驚いたが、

 

「……ありがとうございます」

 

そう言って柔らかく微笑んで見せた。

自分を本当に頼りにしてくれている。本当に信頼してくれている。白蓮が本気で怒っていたのが自分の為だと分かる。

 

「ばっ?!そ、そんな大層な事なんか言ってないよ!い、いいから話先に進めるぞ?!」

 

「……照れてるわん♪」

 

「間違いなく照れているな」

 

「うぅうるさいっ!とにかくだ!たとえ小さな県といえど私の領地内の出来事だ。このまま見捨てて潰されでもしたらそれだけ奴らも勢力を増すことになる」

 

完全に力技で誤魔化して話を先に進めていく白蓮。というかかなり急ピッチである。それだけ照れくさくてしょうがなかったという事なのだろう。

 

「他に攻め込めそうなところはそれなりに大きい。ほっといても曹操やらなんやらがどうにかするだろ。だから私達は啄軍が戦の準備を整えるまで県境で防衛、その後追いついてくるだろう啄県の奴らを手を組んであわよくば軍勢を一網打尽という運びでいければそれが理想だとおもう。最終的に啄県の奴らが出てこないほどに腑抜けなら私達は一度戻って軍勢を編成。準備を整えた上で再度討伐に出る」

 

そして一弦と星に視線を向けた。

その頬はまだ多少赤く、照れていたことを再確認させたがそれでも白蓮の方案は最善と思えた。

 

「ありがとうございます」

 

一弦にしてみれば友人のピンチを助けると言ってくれているのだ。たとえそれが一時的なものだろうともし一刀達が戦いに出てこないのならそれ以上を白蓮や公孫軍の皆に求める訳にはいかない。むしろこれは白蓮が今後の利益を予想し、そのために無理して出来る最大限の譲歩である。

 

「そこに敵がいるならば叩くまでだろう。なんとなく一弦びいきな案ではあるが、まぁ白蓮殿が個人的な事情のみで仲間を危険に晒すような人間ではないということくらいは心得ている。私に依存はない」

 

星としても、彼女はもともと戦場でこそ映える華である。

好戦的で少々自己意識が強すぎるきらいはあるが、それでも戦う目的は苦しめられている力無き人達のため。啄県が襲われれば間違いなくそこに暮らす人達は犠牲になるだろう。

それを未然に防げる可能性ならば、星が反対するなどありえなかったのだ。

 

「よし!それじゃその手筈でいく。あくまでもオレ達は防衛することが目的だからな!星、頼むから勝手に突っ走るなよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして何度かあった攻撃を白蓮の必死の采配で被害を最小限に抑えながら退け、星の不満が段々と募り始めた頃、

 

「ご主人様!隣に陣を布かれた北郷軍の大将がお目通りを願い出ております」

 

外を任せていた兵士が飛び込んできた。

白蓮達が待ちにまっていた人物。そして一弦の友人である彼がやってきたのだ。

一弦は現在泉と一緒に負傷兵の手当てを手伝っている。その場にいないのは少々残念ではあったが、今は私情よりも現状の打破が優先だった。

 

「ごくろうさん。通してくれ」

 

そう言って兵士を下がらせかけた白蓮だったが、

 

「あ、ちょっと待て」

 

と兵士を呼び止める。

はい、と振り返った兵士に白蓮は少々頬を染めながら告げる。

 

「一弦を……。負傷兵の救護に当たっているはずの嶋都一弦を呼び戻してくれ。なるべく早く」

 

「はっ!了解しました!」

 

そうして兵士が出て行って暫くして一人の男、光り輝く白金のような不思議な衣装を身にまとった男が小さな少女を連れてやってきた。

 

(コイツが……一弦の友達か。一弦が私の前に護っていたっていう……)

 

多少の嫉妬心と悪戯心が白蓮の中で混ざり合う。

別に男に対して嫉妬というのもどうかと思うが、白蓮にしてみれば手放しで信頼を置いている一弦を自分と出会うより前から知っている男。何か面白くないという感情が芽生えてしまう。

 

「へぇ……お前が天の御遣いと噂されてる男か」

 

白蓮は不躾にそう言って目の前の男、北郷一刀を頭の天辺から足の先まで眺め回してみる。

白蓮のそんな挑発じみた行動に、しかし一刀はただ不機嫌そうに返事を短く返しただけ。

白蓮はすぐに自分のやっている事が馬鹿らしくなり、自分の非礼を素直に詫びた。

 

「いや……俺のほうこそいきなり天の御遣いか、なんて聞かれたからつい……」

 

一刀はそんな白蓮に安心したのかバツが悪そうに頭をかいて笑って見せた。

一弦の優しくて何処か落ち着く微笑とは違う、人懐っこい笑み。

白蓮はすぐに、

 

「気にしないでくれ。それより……これからよろしくな」

 

と微笑んで見せた。

その後一刀は散々白蓮をお礼攻めにし(もちろん無自覚)、白蓮はその度に照れくさくて身もだえしていた。なんとか強引に戦力の話に持ち込むと、

 

「それに関しては……朱里。よろしくな」

 

と一刀は隣の小さな少女を促した。

こんな小さな子が?と一瞬疑問が浮かんだ白蓮だったが、そんな疑問を根こそぎ解消するように、

 

「先ほど黄巾党の別働隊を撃破したときに受けた損害と、その時の負傷兵と交代した補充兵の数を考えると……大体五千前後と言った所でしょうか」

 

と殆どよどみなく答えて見せた。

なかなか出来る軍師らしいと予想をつけた白蓮は、そのまま話を続けた。

 

「こっちも大体同じくらいだから、併せて一万ちょいってところだな」

 

「敵の総数は?」

 

「二万五千前後ってところだ。数が違いすぎて足止めしとくしかなかったんだ」

 

だから道を塞いで籠もり、防御に徹した。そうすれば絶対的な武将が二組存在している公孫軍はそう簡単に破られはしない。白蓮は口には出さなかったが、これも星がいてこその作戦だったのだ。だから星が一人で突っ込まないよう細心の注意を払った。多少汚れ役をやってでも、あの時点で星を失うことは絶対に許されなかったのだ。

 

「白蓮……失礼。公孫賛殿、少しよろしいか」

 

白蓮が一人そんな事を考えていた丁度その時、タイミングがいいのか悪いのか星が会話に割って入ってきた。

 

「援軍が来たようで重畳。さればもう待つ必要はないかと。即刻策を出し、奴らを一網打尽にせねばならぬと存じます」

 

白蓮の唯一の失敗。それは先ほど自分自身で思っていたことを星に伝えなかったことだ。

冷静な状態の星ならばおそらく感じ取るだろうと信頼したゆえだったのだが、星は先の戦いの昂りがまだ冷めていなかった上、目の前の奴らがそれまで散々暴虐をつくした人間だということが分かっていても追撃できないという状況で冷静さを失ってしまっていた。

言葉こそ礼儀をわきまえていたが、その口調は苛立ちと焦りを隠そうともしなかった。

しかしそれももはや今更。とりあえず後で冷静に話し合おうと今は退くように言ってみるが、

 

「貴方の家臣ならばそうするべきでしょうが、私は貴方の家臣となった覚えはない」

 

と一向に話を聞こうとしない。

これ以上この場をかき回されてしまっては上手くいくものも上手くいかなくなってしまう。

そんな苛立ちがだんだんと白蓮のほうにも募り始め、一刀と朱里の目から見ても明らかに険悪なムードになりかけたその時、

 

「いい加減に、してください」

 

ゆったりとした、それでいて決して聞こえないという事はない、白蓮が全面の信頼を寄せる男の声が割って入ってきた。

 

「星さん、今はひいて下さい。策は……焦っていてはいいものが出ないでしょう?」

 

ゆったりと、落ち着いた、それでいて絶対に有無は言わせないという力が篭った言葉。

一弦が怒っていた。

 

「人の命を救うのならば、力の無い人達だけじゃなくて同じ想いで戦う人達の命も救うべきでしょう」

 

「……失礼する」

 

一弦にそういわれて星はその場を言葉少なに飛び出していった。

まさに一瞬の出来事。

そして一弦は何事も無かったかのように白蓮の隣に立った。

 

「随分と久しぶり、に感じるね……一刀」

 

そしてゆったりと口を開いた。その口元に小さな笑みを浮かべて。

 

「お前……一弦?一弦だよな?嶋都一弦!俺の幼なじみでいつも護ってくれてた一弦なんだよな?!」

 

対して何も知らなかった一刀はとにかく捲くし立てる。今は白蓮との会見の最中であるのにもかかわらず、その足はフラフラと一弦のほうへと手繰り寄せられているように動く。

一人事情を全く理解出来ていない朱里だけが首を捻っていたが、白蓮はそれも仕方ないと苦笑こそ零していたが暫くは傍観する構えを取った。

後は感動の再開となるはずだったのだが、

 

「色々積もる話は、あるんだけど……白蓮さ、伯珪さん」

 

一弦は少しだけ申し訳なさそうな表情を一刀に見せた後、白蓮に話を戻した。

名指しで話しかけられればいくら気を利かせていた白蓮と言えど返事を返さないわけにはいかない。仕方ないとばかりに頭を掻くと、一弦に向き直った。

 

「星……趙雲さんですが……あの勢いだと飛び出します」

 

「……あぁ。かもな」

 

一弦が折角旧友との再会を果たしたというのにあの無粋者は、と小さく呟く白蓮に小声で礼を返す一弦。どうしようかと二人で頭をひねろうとした時、

 

「な、なぁ?今趙雲っていったか?」

 

感動の再開に水を差されたもう一人が素っ頓狂な声をあげた。

 

「うん。あの人は趙子龍、趙雲さんだけど……知ってるの?」

 

首を傾げた一弦の頭をを一刀は問答無用で羽交い絞めにした。

その奇行に驚いた白蓮と朱里だったが、一弦は一刀が自分だけに何かを話そうとしていると感じ取り、抵抗をしない。それほどまでに一刀の腕には引き寄せる以外の力が篭っていなかったのだ。

 

「一弦、お前気付いてなかったのか?!三国志だ三国志!この世界、三国志なんだよ!」

 

一弦の耳元で一刀が声を極力抑えて怒鳴るという器用な芸当を見せている。

 

「……三国志?三国志……あぁ」

 

「分かったか?ここでは皆女の子になってるみたいだが、俺の仲間には関羽と張飛がいる。そしてお前が世話になってるらしいあの子は公孫賛伯珪。北の勇者とは白馬長官とか呼ばれてた武将だよ!」

 

一刀に言われて一弦はやっと気が付いた。

まぁそもそも一弦も趙雲の名前を聞いたとき何処か聞き覚えがあるといった程度には思っていたのだが、それもそのはずである。それまで一弦があってきたのは三国志では比較的序盤の事件にのみ絡む公孫賛や、名前が出ていたかすら怪しい華佗だけだった。その二人だけならば確かに読み込んだ人間でないと気付かないかも知れないが、趙雲となれば話も違ってくる。何せ趙雲と言えば三国志では主人公扱いの蜀の最強武将の一人。ちらっと三国志を漫画ででも読んでいれば名前は前の二人よりも確実に多く出てくるのだ。

 

「……って事は……まずいよね?」

 

そしてその事実を知ってからの一弦の思考は早かった。

 

「何が?」

 

「何が?じゃないよ。星さん……趙雲さんはほぼ間違いなく飛び出していっちゃう。いくらなんでも一対二万五千じゃ……無理でしょ?一刀の所に関羽と趙雲が仕えてるっていうなら……」

 

「あ、諸葛亮もいる。あそこに」

 

「……なら、ほぼ確定。一刀は多分……『劉備玄徳』なんだと思う」

 

一弦の言葉に一刀は少しの躊躇の後頷いた。一刀もそれはなんとなく予想がついていたらしい。

そして頷いたとたん、一刀は一弦の言いたいことに気がついたらしい。

 

「朱里!趙雲が一人で飛び出した場合、助け出しつつ戦える策はあるかっ?!」

 

慌てた様子でいきなり自分を振り返った一刀を朱里は目を白黒させながら見つめる。

 

「趙雲はたぶん俺達の理想に必要な人材だ。出来れば助けて、仲間になってもらいたい」

 

そう。趙雲とは三国志では劉備の元でその生涯を尽くす名将。いくら話が所々変わっているとはいえ大事な仲間になりうる人物がこんな所で死んでしまってはこの先一刀が劉備の代わりに話を進めざるを得ないとしても不都合が多すぎるのだ。

 

「え?あ、は、はい!」

 

なんだか分からないけどとにかく主の要望に応えてこそ軍師。朱里は見た目からは想像もつかないその優秀の頭脳をフル回転させる。

しかしそれも虚しく、

 

「殿っ!趙雲殿が一人で陣を飛び出して敵部隊に突撃してしまいました!!!!」

 

公孫軍の兵から予想していたとはいえ非常によろしくない事実が持ち込まれた。

とっさに一刀が朱里に救助最優先の策をと要望を変更しているその間に、一弦は上手く白蓮を説得にかかる。

 

「白蓮さん。僕達も……星さんを、助けましょう」

 

しかし白蓮は一弦の願いでもそれは素直には聞き入れられない。何せ仕方がないとはいえ一刀達の前で仲違いを見せてしまったのだ。

 

「白蓮さん。僕は、星さんが悪い人ではないと……分かっています。星さんは星さんなりに、兵士達の事を考えたんだと……僕は思ってます」

 

確かに星自身が勝負を焦っている面もあり、そして攻めあぐねている状況に苛立ちを覚えていたことも事実だ。しかしそれは何も星に限った事ではないのだ。他の兵士達だって、好戦的なものは星と同じように苛立っていただろうし、それに何より一戦終えた後の防衛線は兵士達の精神を少しずつ蝕んでいた。

いつ終えるとも知れない戦い。そんな戦いを慣れていない兵達に長期にわたってやらせるのは決して得策ではなかったのだ。だから星は一刀達が当初の予想どおり自分達と合流したこの時こそ好機と信じ、無理をしてでも戦況を動かしたかったのだ。攻めている時の勢いは不安を忘れさせるから。

普段は物静かで言葉少なな一弦がおそらく星の本当の気持ちであろう事を口早に白蓮にぶつける様に語る。

 

「白蓮さん。貴方も……星さんを一度は信じたのでしょう?きちんと……最後まで、信じましょう」

 

そう言いながら一弦が白蓮の手を優しく握ったその時、白蓮は素直に首を縦にふった。

 

「それならば急ぎましょう!ここで将を一人失ってしまっては兵隊さん達の士気にも関わってしまいます」

 

いつの間にか策を出していた朱里が小さな体目一杯に声を張り上げる。

 

「策があります。時間が惜しいので詳しく話している時間はありませんが、公孫賛様には迂回して敵軍の背後に回っていただきたいのです」

 

朱里の要望を聞いて白蓮は頭を武将として切り替えて、その真意を探る。

 

「……そちらが囮となって引きつけ、おりを見て挟撃、か?しかしそれではお前達にはある程度もたせてもらわないと……」

 

「それに関してはこちらで何とかする。公孫賛、頼めないか?」

 

一刀はそういうとすっと頭を下げた。

そしてすぐにその隣で一弦も、

 

「白蓮さん、お願いします。一刀に……手を貸してやってください」

 

と頭を下げた。

朱里はもう驚いて目を白黒させている。

なにせ自分の主が、いくら相手が立場的には上とはいえ目の前で深々と頭を下げているのだ。しかもその隣には、おそらく今までの会話と態度から推測するに天でのお仲間。朱里は慌てて自分も、

 

「おっ、おねがいしましゅでしゅ?!」

 

とかみながらも懸命に頭を勢いよく下げた。

 

「お、おいおいやめてくれ!私は助けないなんていってないだろ?!早く頭上げてくれ!か、一弦も……そんな改まって頼み事するような仲じゃないだろ?」

 

その状況に一番困惑していたのは頭を下げられていた白蓮本人だった。

白蓮としても星はもはや友人。多少の仲違いのようなものがあったとはいえ、先ほど一弦が予想をつけていた星の本心が本当だとするならば気持ちは痛いほど理解できる。むしろ自分が一緒に戦ってきた兵達のそんな心理状況を見抜けていなかったのが恥ずかしいくらいだ。

それに一弦には白蓮自身一度命を助けられているし、それからも背中を預けて戦っている。今更こんな、言ってみればお互いの友人の救助に頭を下げられてしまってはむしろ白蓮の立場がない。

 

「そっちの方が危ない仕事だが、いいんだな?」

 

「ああ、元々俺が彼女を死なすには惜しいと思っての我侭だ。俺の仲間には負担をかけちまうけど……それは俺が頭でもなんでも下げてくる」

 

改めて確認をとる白蓮に一刀はそう言って笑って見せた。

となれば白蓮にも異論はない。あとは、

 

「あと、一弦はこっちにもらうぞ。星……趙雲が居ない今一人でも此方の主力が減るのは好ましくない」

 

一弦がいつもどおり自分と背中を合わせて戦ってくれるかどうかだ。それ一つで公孫軍の戦力は大きく変化する。

しかしそれに関しては、

 

「当然です。今の僕は……貴方の弓です。一刀……それでいいよね?」

 

「……わかった。積もる話は後で、だな」

 

お互いの事を理解し合っている友人同士。そう言って微笑みあう。

 

「それじゃ朱里、俺達はさっさと愛紗達と合流するぞ!」

 

「は、はいっ!」

 

「公孫賛、一弦……よろしく頼むぜ」

 

「……武運は祈っといてやるさ」

 

「また、あとで」

 

そして一刀達が自分達の陣に戻っていくのを見送ると、白蓮は一弦を振り返って悪戯に笑った。

 

「さって!それじゃオレ達もあのメンマ娘を助けに行くか!」

 

 

 

 


あとがき

 

泉が殆ど出てきませんでしたが、戦ともなると医者は大忙しですのでないということはちゃんと仕事してるんだなぁ、くらいに思っといてくださいw

さて、今回は捏造しまくりでしたねw原作の流れが好きな人は申し訳ございません。しかし白蓮と星が友人である以上流れを変えてあげないといけなかったので、本当はたぶん考えなしにつっこんだんだろう星に華を持たせる形を取ってみました。白蓮は白蓮なりに、星は星なりにきちんと兵達の事を考えて動いた結果ああなってしまったと……ま、でも結局大筋は一緒なんですけどね。

そして次回、星と愛紗を語る上では絶対に外せないあのシーンがやってまいります!でもアインの実力ではどうにもならんので原作に忠実にいくか、白蓮達のサイドからのみのお話にするかの二択しかありません!(いばるなっ!

まぁ少しでも楽しんでいただけるよう頑張ってみますので、よろしくお願いします♪

それでは、今回はこの辺で〜





うーん、一弦が居る事で少しは変化しているけれど。
美姫 「やっぱり飛び出すのは飛び出すのね」
だな。救出に向かった一刀たち。
美姫 「この後はどうなっていくのかしらね」
ゆっくりと再会する暇もなく、事態は即座に動き出す。
美姫 「次回も待ってますね〜」
ではでは。



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