恋姫†無双戯曲 −導きの刀と漆黒の弓−

 

第十二話 −もう一波乱の訪問者−

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あのぉ…………もしかして、なんか滅茶苦茶悪い時に来ちまったかな? あたし達」

 

「あははっ! なんかそ〜みたいだよお姉様っ♪」

 

一弦を囲んでなにやら寒めな空気が流れる中、曹操達と入れ違いのように北郷陣に入ってきた二人。

長い髪を後頭部で一纏めにした活発そうな少女と、その彼女を姉と呼んだ、同じく髪を、こちらは側頭部で一纏めにした利発そうな目をした少女。共に意思の強さを表したような少し太めの眉が特徴的なその二人は、少ししり込みしながら一刀達に近づいてきた。

 

「……お主等は誰だ? 我が軍の陣に何用だ?」

 

そんな二人に愛紗が不信感を隠そうともせずに問いただそうとする。

先ほどの曹操との一悶着で気が立っているらしく、態度も普段よりかなり高圧的になっている。

 

「あ、愛紗。色々あって気が立ってるのは分かるけど、そんなにツンケンすんなって」

 

「うっ……すみません」

 

慌てて割って入った一刀に窘められ、しゅんとしてしまう愛紗。

さすがに自分の態度がまずかった事は理解したらしく、恥ずかしげに俯いて一歩下がった。

 

「……やっぱりなんかあったのか?」

 

「なんかど〜んよりした感じだったよ?」

 

何かがあったことは二人も既に分かっている。

その視線は、主に愛紗と白蓮、そして自分の肩を抱いて何かに怯えている一弦に向けられていた。

 

「なんでもないのだ!……そ、そういう事にしておくのだ

 

「そ、そうか……」

 

「わ、分かりました……」

 

鈴々が誤魔化そうとするも、すぐに無駄だと判断して、その件に関しては触れないように二人に小声で囁く。

二人もまた、そんな鈴々の態度に事態の深刻さを理解したらしく、それ以上は何も言わなかった。

 

「それより、お前達誰だー?」

 

「おうっ。あたしは馬超ってんだ。 よろしくっ。んで、こっちが従妹の……」

 

「たんぽぽは馬岱で〜っす♪ よっろしく〜♪」

 

「よろしくなのだっ!」

 

一瞬にして意気投合する鈴々と馬超。

シュタッと右手を挙げて挨拶した馬岱は、そんな二人を見て嬉しそうに微笑んだ後、驚いた表情の一刀に眼を向け、

 

「ん? どかしたの? おにーさん」

 

と、きょとんと首を傾げた。

 

「馬超と馬岱って……」

 

「あれ? おに〜さん、お姉様とたんぽぽの事知ってるの〜?」

 

「あ、ああ。えっと……」

 

知っている。

何しろ馬超と馬岱とは、史実でも演義でも劉備玄徳に仕える事になる二人だ。

馬超は五虎将軍の一人として劉備に使えた蜀五強の将の一人だし、馬岱は諸葛亮孔明にも認められた忠義の士である。

現在劉備の位置にいると思われる一刀にとって二人は重要な人物である可能性が高い。

しかしそれを直接伝えるわけにもいかず、馬岱の「どうしたの? おに〜さん」的な無邪気な視線にさらされ続けていると、

 

「馬超って言やたしか……」

 

「ええ。たしか西涼の領主、馬騰さんの娘さんが同じ名前のはずです。そうですよね? ご主人様」

 

と、白蓮と朱里が確認するように一刀に視線を向けた。

 

「あ、そ、そうだ! たしかそんな話聞いたなっ」

 

それをこれ幸いとばかりに話をあわせる一刀。

多少不審がられはしたが何とか切り抜けた事に安堵のため息を漏らす。

 

「あ、そりゃあたしの事だ。馬騰はあたしの父上さ」

 

「ほう。ではあなたがあの名高き錦馬超か」

 

「あなたなんて言い方やめてくれ。なんだか体中が痒くなってくる。馬超って呼んでくれよ」

 

「分かった。ならそう呼ばせてもらおう」

 

いつの間にか復活した愛紗。

どうやら武人として、将として、馬超の名前を聞いて黙っていられなくなったらしい。

ずずいっと前に出てきて一刀のとなりの位置に戻っていた。

 

「私は関羽。そして……」

 

「鈴々は張飛なのだ!」

 

「私は諸葛亮。字は孔明です。よろしくです♪」

 

「よろしくなっ!」

 

そして始まる自己紹介。

しかし、彼女らは現在この陣での最高権力者を完全に無視していた。

 

「馬岱ちゃん、俺は北郷一刀。よろしくな」

 

「うんっ! たんぽぽはね〜、馬岱だよっ♪ 字は伯瞻っ。よっろしくお願いしま〜っす、天の御遣いのおに〜さん♪」

 

無視された最高権力者は、馬超の横に控えていた馬岱と話始める。

 

「そんなに畏まらなくてもいいよ。あ、それとこっちにいるのが公孫賛の軍の皆。ちょっと用があってこっちに来てたんだ」

 

「私は公孫賛。字は伯珪だ」

 

「あ、あたいは張燕っス! よろしくっス♪」

 

「あたしは華佗よん。お医者さんやってるから、怪我したらお世話してあげるわん♪」

 

「あ、あとあっちにいるのが嶋都一弦。俺の親友で、今は公孫軍の将やってる」

 

「はぁ……なんか震えてるよ?」

 

「色々あったんだ。まぁ皆俺の大切な仲間だよ。俺の事を忘れたりしない大切な仲間」

 

どうやら相当根に持っているらしい。

ちらっと愛紗達に視線を向けた後、わざと目を逸らして馬岱に笑顔を向ける。

 

「はうっ!? ご、ごめんなさいです主人様ぁ」

 

「わ、わざとじゃないのだっ! ちょっと馬超と話してるのが楽しくなっちゃっただけなのだっ! ごめんなのだ、お兄ちゃん」

 

「あ、そ、その……も、申し訳ございませんご主人様っ! どんな罰でも受けますから、どうか私達を見捨てないで……」

 

そんな一刀の冷たい態度に一秒ももたなかった一刀大好きな三人。

問答無用の平謝りに、ほんの仕返しのつもりだった一刀のほうが何故だか罪悪感を覚えてしまう。

 

「にゅふふっ♪ 許してあげたら? おに〜さん♪」

 

「そうだよ北郷。ちょっとやりすぎなんじゃない?」

 

それに加えて馬岱と白蓮の、“可哀想だよ”といわんばかりの視線。

まぁ馬岱に関してはかなり“面白い♪”という気持ちがあふれ出ていたが。

 

「お仕置きしちゃったらぁん? どんな罰でも受けるっていってるわよん♪ つまりあ〜んな事とかこ〜んな事しちゃってもいいってことよねん? ほらほら一刀くん、女の子にここまで言わせて手も出さないんじゃ逆に可哀想よんっ♪」

 

変に煽る痴女、もとい泉。

 

「一弦さんだいじょぶっス。あたいは一弦さんが男の人だって分かってるっス。一弦さんは男の人じゃなきゃ嫌っス」

 

「あ……ありがと。いい子だね、瑠那ちゃんは」

 

そんな事お構いなしで一弦を慰める(堕とそうとしてるように聴こえるが本人自覚無し)瑠那と、ようやく復活し始める一弦。

もう一刀にも何がなんだか分からなくなってくる。

 

「だぁぁぁぁ! もう分かった! 分かったから愛紗、鈴々、朱里もっ! 悪気がなかったことは分かったからそんなに縋りつかんばかりに俺を見ないでくれ! 華佗さんは頼むから煽らないでっ!俺の理性にも限界があるからっ! 張燕と一弦は……はぁ、もういいや。 ったく、ちょっと仕返ししたつもりが罪悪感やらなんやらに押しつぶされそうだ」

 

「あははははっ! いやぁ面白いなここはっ! んで、あんたが天の御遣いなんだろ?」

 

そんな一刀と愛紗達の見事なまでのうろたえっぷり大爆笑する馬超。

その無邪気な少年のような笑い声を聞いて、もう全てどうでもよくなってしまった一刀は苦笑を零しながら、

 

「北郷一刀だ。一応天の御遣いって事になってるけど……まぁよろしく」

 

と右手を差し出した。

差し出された手をなんの躊躇いもなく、おうっ、と笑顔で握る馬超。

見た目は活発そうな美少女だが、その態度や行動は完全に少年のようだ。

しかし、それまで笑顔だった馬超の表情が、一刀の手を握った瞬間少し怪訝そうに歪む。

 

「こうして握手してみると分かるけど、やっぱり北郷ってそんなに強くないんじゃない?」

 

そんな馬超の真っ直ぐな疑問に、一刀は笑って答える。

 

「そりゃそうさ。今ここにいる人間の中じゃ、俺は……そうだな。たぶん下から三番目って所じゃないか?」

 

「そうなのか?」

 

「確かにご主人様の自己評価は正しいと思うが……決してご主人様が弱いという事はないぞ。初めて出合ったとき、ご主人様は三人の賊を相手に立ち回っておられた」

 

「そりゃ必死だったからな。確実に勝てるって分かるのは、頭脳労働専門の朱里くらいさ。華佗さんは得体が知れないし」

 

「あらん、失礼ねぇ一刀君」

 

「で、でも、ご主人様は人の上に立つ者としての強さを持っていますっ!」

 

そんな一刀の謙遜を、一刀が決意した、一刀の戦い方を知っている朱里は真っ先に否定した。

そしてそんな朱里に同調するように、愛紗と鈴々が続く。

 

「そうです。ご主人様が後ろで、決して目を背けずに私達を見守っていて下さる。それだけで私達は戦えるんです」

 

「そうなのだ。鈴々はお兄ちゃんが見ててくれるだけで、一緒に戦ってくれてるみたいでとっても心強いのだ!」

 

「一刀は、そういう奴だよね。いつの間にか中心にいて……それだけでなんか安心する」

 

最後には復活した一弦まで一言加えて一刀を褒め倒す。

そしてそんな仲間たちの評価を聞いた馬超と馬岱は納得顔で、

 

「なるほどね。そういう強さを持ってるわけか。それに人を惹きつける力……やっぱ噂もあながち嘘じゃないって事か」

 

「そだね〜お姉様っ♪」

 

うんうんと頷きあう。

そして、そんな二人の評価を聞いて、当然だとばかりに胸を張る愛紗。

当の本人である一刀はそれを過大評価だと言い張るが、

 

「なんだ、テレてるのか?」

 

「テレてるわねん♪」

 

「テレてるっスね」

 

と、馬超に泉と瑠那も加わってまったくとり合ってもらえない。

 

「ったく……で? それはもういいからさ。馬超達はどうして俺達の陣に来たんだ?」

 

結局その件に関してはもう否定する事を諦めた一刀は、あまりの間の悪さからまったく話が進んでいなかった、そもそも馬超達が何故ここにいるのかというところに話を戻した。

問われてようやく思い出したのか、

 

「お、そうだった」

 

と、忘れていた事を恥じているのか頭を掻く。

 

「あ、公孫賛のおね〜さんもここにいるし、丁度良かったね、お姉様っ♪」

 

「ん? 私達がいて丁度いいって、どういう事だ?」

 

「ああ、なんか袁紹から伝令が来てさ、配置転換を全軍に伝えろってさ。で、あたしは北郷んトコ、馬岱はその後公孫軍に行く予定だったんだ」

 

「ああ、それで丁度いいって」

 

「配置換えって事は、いよいよ攻撃開始か?」

 

馬超の言葉に納得した白蓮と、全軍の動きが気になる一刀。

それに少し神妙な顔で頷いた馬超だったが、すぐに、

 

「あ、でもあたしの聞いた話じゃ北郷んトコは後曲らしいぜ。関羽と張飛は強そうだけど、軍としちゃ人数少ないからな。あ、ちなみにあたし等は左翼だから。関羽も張飛もあたしの暴れっぷりちゃんと見ててくれよっ」

 

と苦笑を零して見せた。

 

「あ、公孫賛のおね〜さん達は最右翼に配置される予定だって聞いてるよ〜♪」

 

「そうか。ありがとな、馬岱。まぁそれにしても、袁紹らしいよな、この配置」

 

「そうですね。私達は最初から侮って後曲、公孫賛さん達は袁紹さんと仲が悪いから一番端ですもんね」

 

伝令役の馬岱に礼を述べた後、その見え見えな配置に苦笑を零す白蓮と朱里。

鈴々は馬超と一緒に戦えなくて残念そう。

瑠那も、鈴々と引き離されて少し残念そうな表情をしていた。

この三人、似たような種類の人間なだけに打ち解けるのが早いらしい。

 

「それじゃ、あたし等はそろそろ行くよ」

 

「んじゃまたね〜♪」

 

当初の用件を伝え終わると、馬超と馬岱は少し名残惜しそうにそう言って陣の外へと足を向ける。

馬岱は元気よくブンブンと手を振って、ニッコリと微笑んだ。

そんな笑顔に一刀が癒されていると、

 

「お、それじゃ私達もそろそろ自分の陣に戻ろう。配置も決まったし、準備進めるぞ」

 

「そうですね。一刀……頑張って」

 

「んじゃまたっス!」

 

「またねん♪ か・ず・と・君っ♪」

 

と、公孫軍も帰り支度を始める。

 

「おうっ! 皆、またなっ!」

 

そんな皆に一刀はそう言って懐っこい笑顔で手を振った。

そして、

 

「さて、愛紗、鈴々、朱里。俺達も準備を始めるぞ!」

 

北郷軍も動き出す。

皆とまた、生きて必ず会えると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

反董卓連合軍が攻撃準備に追われていた丁度その頃、董卓軍きっての猛将として知られ、水関にて連合軍を待ち構える華雄は一人、何処までも続くようにも見える大地を見下ろしながら、連合軍が攻めてくるのを今か今かと待ち構えていた。

 

「ふんっ! 賈駆といい張遼といい、どいつもこいつも烏合の衆相手に臆しおって」

 

そう言いながら華雄が見つめる先は、連合軍が攻めてくるはずの道筋。

華雄は今、洛陽を出てくる前の最後の軍議を思い出していた。

袁紹が発起した連合軍に曹操と孫権が加わった事を問題視していた賈駆と張遼。

しかし華雄にはとある確信があり、それらを烏合の衆と吐き捨て、賈駆の作戦も碌に聞かずに飛び出してきたのだ。

そしてその確信とは、

 

「確かに曹操には夏侯惇が、孫権には甘寧がいる。これらの力は武人として賞賛に値するものだろう。しかし賈駆と張遼は肝心な事を忘れている。連合軍を纏めているのは、あの袁紹なのだっ!」

 

連合軍の指導者。

発起人であり、家柄と戦力は申し分ない袁家は、間違いなく連合軍の指導者に自分自身を据えると華雄はよんでいた。

よしんばそうでなくとも、袁紹が大きな顔をしていれば連合軍はまともに機能などするはずがない、と。

 

「本当に曹操と孫権が手を組んだというのなら、私とて危ないかも知れんがな」

 

そう言って皮肉げに口元を歪めて笑う華雄。

 

「指導者が袁紹。曹操と孫権以外で気をつけるべき敵など、噂に聞いた錦馬超程度だろう。そのような烏合の衆に舐められてしまっては、武人としての私の誇りと尊厳が損なわれる」

 

「そう簡単にはいかないと思いますよ、華雄さん」

 

そんな華雄に、突如として物陰から声がかかる。

 

「誰だっ!?」

 

瞬時に剣を掴んで振り返った華雄が見たのは、

 

「こ、皇甫嵩、か?」

 

「ええ、皇甫嵩義真です。久しいですね、華雄さん」

 

少しウェーブのかかったボブカットの、少し小さめの眼鏡をかけた利発そうな美女だった。

皇甫嵩と呼ばれた彼女はそのまま華雄に歩み寄…

 

「ふぇ!? っとっととふみゅっ!?」

 

…ろうとして何もないところで躓き、盛大にズッこけた。

そんな様子を唖然と見ていた華雄は、毒気を抜かれたように呆れた溜め息をついて皇甫嵩を助け起こす。

 

「相変わらずだな、お前は」

 

「ったたた……す、すみません」

 

「それで……何故お前がここにいる。例の奴等を探っていたはずではなかったのか?」

 

「……詠ちゃんから連絡がありました。月ちゃんが……危険だと。逃がすから時間を稼いで欲しいと」

 

「それで、お前はこんなところに来たのか」

 

「大分切羽詰っていたようでしたので。それに華雄さん、油断してはいけません」

 

そう言って皇甫嵩は片手で眼鏡を押し上げる。

 

「黄巾党の時に見かけたのですが、北の公孫賛さん、中々のもののようです」

 

そんな皇甫嵩の言葉を、しかし華雄はせせら笑う。

 

「はっ! 公孫賛!? たしかにそれなりに名は通っているが、夏侯惇や甘寧とは比べるまでもないだろう」

 

「それがそうでもありません。何処から来たのかは不明ですが、補佐役に変わった弓兵さんを据えていました。二人で一人といった様子で、多対二では前者の二人に引けを取らないと思われます。貴方とその二人の討ち合いならば貴方に分がある事は間違いありませんが、その二人に当たってしまうと兵達の消耗はかなりの数になるだろうと思われます。それに……」

 

そこで皇甫嵩は一呼吸おき、そして眼光をより鋭く光らせる。

 

「貴方はおそらく連合軍の前曲が水関に攻め込もうとしている間に後ろに回りこむ策を考えているのでしょうが、この公孫賛さんの軍は、袁紹さんはともかく、同じく後曲に置かれるだろう北郷さんの軍と懇意にしているようです。北郷さんの軍の力がどれほどなのかは分かりませんが、貴方が北郷さんの軍に攻め込めば公孫賛さんはかなり高い確率で助けに入ってくるでしょう」

 

華雄の態度を気にも留めずに話を進めた皇甫嵩に、華雄も次第に彼女の言わんとしている事が分かったのだろう。

さらに、自分がまさに取ろうとしていた策を見事なまでに的中され、冷静さを取り戻し始める。

 

「……つまり、お前がそいつ等を止める、と?」

 

「ええ。互いに面識こそないですが、名前は聞き及んだ間柄。なにより月ちゃんを逃がさなければいけないのなら、私も出来る限り時間稼ぎをさせていただきます」

 

「私は時間稼ぎのつもりなどないっ! 見事連合軍を打ち破ってみせるっ!」

 

「それで構いません。私とて負けるつもりはありませんし、こちらが勝てば暫くは攻めてこられないので、時間稼ぎの役は十二分に果たせます」

 

つまりは利害の一致という事。

華雄は、その自尊心ゆえに以前から誰かと組んで行動する事を苦手としてきた。

他人の力は基本的に信用しないし、自分の力を侮る人間は仲間であろうと容赦しない。

そんな彼女が唯一他人と組むとき。それは互いの利害が一致し、なおかつ互いに干渉せずに行動が出来るとき。

自尊心が高く、自分の力に絶対の自信を持っている華雄にとって、利用出来ないならいないほうがマシなのだ。

そして、そんな華雄とそれなりに長い付き合いである皇甫嵩は、そんな彼女を充分理解していた。

 

「……いいだろう。確かに、互いに馴れ合わないと分かっていての烏合の衆だ。救援に来ると分かっているのならば、それを抑えてもらおうじゃないか」

 

皇甫嵩の提案を呑む事にした華雄。

 

「賢明ですね。孫権さん、曹操さんを初めとした有力所は、おそらく後方から北郷さんと袁紹さんが襲われたところで何も気にせず水関を落しにくるでしょうから、私が公孫賛さんを抑えさえすれば後は貴方次第という事です」

 

「ふんっ! 精々役にたってみせろ。せめて私が北郷を潰して袁紹を殺すまでは持ちこたえろよ」

 

「問題ありません。一軍貸していただきますが、よろしいですね?」

 

「好きにしろ」

 

そういい残して踵を返した華雄。

遠ざかっていく背中を見つめながら、皇甫嵩は小さく呟く。

 

「貴方が北郷さんを倒せるのならそれで月は助かるのですが……しかし、あの方々は本当に…………上手くいけばいいのですが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛紗、どうしたんだ?」

 

「い、いえ……一弦殿の件でうやむやになっていましたが……ああっ! 私が欲しいなど、思い出しただけで寒気がっ!」

 

「……曹操の件か」

 

「愛紗モテモテなのだ〜」

 

鈴々が楽しそうに言うが、本人にしてみれば堪ったものではないらしい。

しかし一刀はそんな愛紗に、少々遠慮がちではあるが問う。

 

「愛紗、本当によかったのか?」

 

「……なんの話です」

 

「曹操の話だよ。いろいろと問題はあるけど、話自体は悪くなかったんじゃないか? たしかに曹操なら愛紗の理想だってすぐに……」

 

しかし一刀はそれ以上言葉を続けられなかった。

なぜなら、

 

「……それ以上言うと本気で怒りますよ?」

 

そう言った愛紗がもの凄い目で一刀を見ていたから。

そのあまりの威圧感に、それまで笑っていた鈴々も、ただ聞いていただけの朱里も怯えて思わず身体を縮ませる。

 

「私はご主人様と共に理想を実現すると誓ったのです。たとえ天地がひっくり返ろうと、絶対にそれを変えるつもりはありません。それとも……私はもう必要ないのですか?」

 

強気に言ってのけたと思えば、一刀に不安そうな目を向ける愛紗。

そんな視線に縋りつかれたような気がした一刀は慌てて首を横に振る。

 

「そんなことあるもんかっ! 愛紗にはずっと傍にいて欲しいって、そう思ってる。もちろん鈴々も、朱里も」

 

顔を真っ赤にしながら、しかし強く断言する一刀に頬を染める三人。

 

「まだまだ頼りないかもしれないけど、これからもよろしく頼むよ」

 

 

 

 


あとがき

 

というわけで、感謝ディスクに収録されていた新キャラ、馬岱が出てまいりました。

見た目は馬超を小さくした感じで、馬超よりも少し鈴々よりな幼い顔をした、サイドテールの可愛い女の子です。

従姉である馬超よりもしっかり者だけど、ちゃんと子供っぽい部分もある普通の子で、馬超のよりも一回り小さい槍を振り回しますw

かくれんぼが得意で、伏兵として働かせたらかなりの実力を発揮します(正史や演義を知ってる人なら理由が分かるはずww

とまあそんな感じで、ようやく連合軍もいよいよ水関に攻め込む事に相成りました。

敵は自信過剰な華雄と、オリキャラ皇甫嵩。

黄巾の乱で実際に手柄を立てまくった皇甫嵩だからこそ公孫賛を警戒しているわけですが、彼女にはそれ以外にも色々と考えがあって公孫賛にあたります。

さぁ、次はいよいよ戦闘開始。

皇甫嵩の思惑なども織り交ぜながら上手く書けるといいのですが……どうでしょうね?(無責任

それではまた次回〜♪

 

 

 

 

 

恋姫†無双のアニメ化、期待していいのだろうか?www




いよいよ激突なのか。
美姫 「皇甫嵩というキャラの参戦で、どう転ぶのかしら」
うーん、早く続きが読みたいところ。
美姫 「どうなるのかしらね」
ワクワクドキドキ。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
待ってます。



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