『新・恋姫†無双 〜降臨し不破の刃〜』




第五話

























蓮華の努力と意外に役に立っていたシャオ、そして思春の俺に対する嫌がらせによって呉に江賊達が迎え入れられてから数日が経過した。
思春の思惑通り丸ごと俺直属の部隊となった周泰達江賊部隊だったが、俺はここ数日で既に将という仕事がいかに大変かという事を思い知らされていた。
いや、周りを見ているとどうやら、こんなに苦労をしているのは俺だけのようだ。

「まぁ……原因が分かっている事が何よりの問題だったりするんだが……」

「はっ? 何か仰いましたですか?」

「あ、いや。なんでもない」

「ははっ! ではそろそろ本日の我々の部隊の修練を始めたいと思いますが、いかがでしょうか?」

「いや、その前に各部隊の隊長格を集めてくれ。報告を聞く事になっていただろう?」

このやたらハキハキ喋る気持ちのいい感じの娘が周泰。字は幼平で、真名は明命。
江賊達を束ねていた娘で、今はそのままの立場で俺の副官になった。
まぁ実質、一番上に俺が入っただけな感じなわけなので、当初彼女の役割は専ら俺とその他の元江賊の兵達とのパイプ役だったのだが……

「あぅ、そうでした! 直ちに!」

といった具合にまぁよく働く。
模擬戦も何度かしてみたが、この世界の人間は異常に身体能力の高い人間が多いらしく、彼女もそれに漏れなかった。
正直、御神を教えてみたいと思ってしまったくらいだ。
使っている得物も日本刀と酷似していたし。

「それじゃあ……修練場でいいか。兵は俺がまとめておくから、部隊長連中をよろしく頼む」

ただ……一つ問題がある。
それも、俺がここで生きていくうえではかなり切実な問題。
それが……

「はいっ! では行って参りますっ、兄上様っ」

……これだ。
最初の模擬戦で俺が一本取ったその瞬間から、彼女は何故か俺を兄と呼ぶようになってしまった。
いや……正確に言うなら、彼女が俺を兄と呼ぶことそのものに問題があるわけではない。
まぁ多少、気恥ずかしい気はするが。
しかしそれよりも問題なのは……

「し、思春? 確かにこれで恭也の立場は確立出来たわ。でも……でもね?」

「れ、蓮華さま? え、笑顔のようですが心なしか笑っていない気が……そ、それにさ、先ほどから肩が……れ、蓮華さまに掴まれている肩がなにやら不穏当な音をぉぉぉぉぉぉお!?」

「ぷぅ〜っ! なぁにっ!? 恭也ったらいつの間にかお兄ちゃんになっちゃって! そう呼んで欲しかったんならシャオに言ってくれればよかったのにっ!」

その事を知ったこの国の中心人物三名によっていつ、俺の不名誉な噂が流されるか、という事。
そして、いつこの三人の内の誰か、もしくは複数、あるいは全員によって、新たな騒動に巻き込まれるのか、という事だった。

「はぁ……いくか」

というわけで俺、高町恭也は現在、呉で将軍の立場を授かっていた。
与えられる覚えのない苦労と、受ける覚えのない心労と共に。

























「あ、あのっ!」

「……どうした? 蓮華」

明命と分かれた直後、自分の部隊の連中を呼びに行くべく歩いていた俺の前に蓮華がいきなり飛び出してきた。
まぁ、いきなりと言っても気配で分かってはいたが。

「そういえば、最近は自分の部隊の事で忙しくてあまり話せていなかったな。すまない」

「あ……うん」

とたんに嬉しそうにはにかむ蓮華。
……何故謝っただけで嬉しそうにされるのだろうか?

「すまんが、これから分隊の連中からの報告を聞いて、その後俺の部隊の訓練をしなければならないんだ。折角会いに来てくれたのに申し訳ない」

「あ、ううん。いいのよ。恭也には無理を言って将になってもらったんだし」

「それこそ構わんさ。俺のここでの立場を確立しようとしてくれたのだろう? これが一番良い方法だというのなら、そうなのだろう」

そう。蓮華はただ、俺の身を案じてくれただけだ。
いつまでも得体の知れない人間でいるわけにもいかんし、第一それでは俺を保護してくれた蓮華の立場も好ましくないものとなりかねない。
悪意があったとするならば、蓮華ではなく思春だ。
実際俺をこうする事を進言したのは彼女だし、その時確かに俺をみて不敵な笑みを浮かべていた。
以上の理由から、それは間違いないと思う。

「あ、そ、それでね? 私も王として、新設部隊の現状を知っておきたいのだけれど……」

「ん? 明命が文書で報告しているはずだが……」

「そ、そうなんだけど……ほ、ほらっ、彼女もつい最近まで江賊をやっていたのだし、まだ色々と不備が……」

……そうか。
自信満々で「任せてくださいっ」などと言うから、てっきり弁えているのだと思っていたが……まぁたしかに生い立ちを考えれば、最初からそつなくこなすというのは無理な話だったか。

「すまない。今度穏さんにでも教わるように言って……」

「あっ、それはいいの」

「ん?」

「近日中に文官を一人、貴方達の隊にいれてもらう事になったわ。以後報告はその子がきちんと文書にしてくれるから……」

そう言う蓮華は心なしか俯き気味に見える。
ふむ……そうか。

「いや、助かるよ。正直俺達は皆、そういったものとは無縁な人間ばかりだからな」

「あ……そ、そう。良かった」

やはりそうか。
要するに、良かれと思って手配はしたが、それを俺がどう思うかどうかが心配だったと。
しかし蓮華。部下にそんな遠慮をしていて大丈夫なのか? 一言命令してしまえば誰も断らんだろうに。

「しかし大丈夫か? こう言ってはなんだが、並の人間には務まらんぞ?」

「え?」

「何せ荒くれ者の集まりだからな。理由も無しに乱暴はしないとはいえ粗野な奴は多いし、何より元江賊だからな。偉ぶる奴や気位の高い奴にあまり好印象はもたんと思うんだが……」

ようは身分や気位の高い、俺達を元海賊として扱うような人間には皆それ相応の態度を取るだろうという事だ。

「ああ……それは大丈夫。その子は農民の生まれなの。とても勉強熱心で、一度読んだものは決して忘れないし、とてもいい娘なのだけれど……」

ああ、なるほど。

「まわりの人間は皆それなりの家柄の出だから、農民上がりのその子に対しての感情は良いものじゃない、といったところか?」

「ええ。私が引き抜かせたから何とかしてあげたくて、それで……」

「ああ、了解した。その子を迎え入れよう」

「……え?」

いや、そんな意外そうな顔をされても。
渋るとでも思ったのか?

「その子の為にも早い方がいいだろう。幸いこれから各分隊の報告があるから、その子の都合が付くならそこで紹介すればいい」

俺がそう言うと、蓮華は胸の痞えが取れたように晴れやかな顔になる。
が、すぐにまた最初の、俺の様子を伺うようなものになった。
……まったく、王だというのに……
しかしこういった態度のほうが自然な感じがするな、やはり。

「あ、あの…ね?」

そんなこんな考えていると、蓮華がまた遠慮がちに口を開いた。

「その子の紹介も、しないといけないし……それに、わ、私もまだ、恭也の部隊を見てないから…だからその……」

……はい?
な、何を遠慮しているのかと思えば……そんな事か?
尻すぼみに声が小さくなってしまって最後の一言が言えなくなってしまったらしい蓮華。
……しょうがない娘だな、まったく。

「そうだな。俺はその子を知らないし、蓮華に来てもらえると助かるな」

「え……」

「これから俺は俺の小隊の連中を呼んで修練場に行く。明命が部隊長達をそこに呼んでいるから、蓮華はその子を連れて来てくれ」

これでいい…か?

「……うんっ! 待ってて!」

俺の言葉を聞いた蓮華は……満面の笑顔でそう言って走り去っていった。
……なんと言うか……子犬みたいだな…………って、何を考えてる、俺。
さ、さて、さっさと連中を呼びに行くか。



























「……ってわけでよ。ちっとばかし内容によって結果がバラバラだけど、大体上手くいってる」

「そうか。結果に大きく差が出てしまう兵がいたら即報告してくれ。明命を通してでもいいし、俺に直接でも構わん。まだ大まかに割り振っただけだから、場合によっては他の部隊のほうが適している可能性もあるからな。なるべく適材適所で犠牲を減らしたい。蒋欽、報告御苦労様」

「あいよっ、旦那」

というわけで、なかなか蓮華がこないので先に報告を聞いておこうと思ったのだが、それももう終ってしまった。
ちなみに最後に報告してくれていたのは蒋欽。字を公奕という、明命と同じ元江賊だ。あまりプライベートで話す機会がなく、真名は預かっていない。知ってはいるが、呼んではいけない事はもう学んでいるしな。
ともかく蒋欽は、浅黒い肌に細かく編みこんだ……ドレッドヘアーといったか? そんな感じのラテンな感じの女性だ。
外見に伴ってスタイルが大変女性らしい事と、露出の多い事が俺としては少し困りものだが、しかしまぁ戦力としてはあの大きな戦斧を軽々と振り回す豪快さはとても頼りになるし、部隊長としてもあの姉御肌な所は高評価で好印象。
元は明命とは別に活動していたらしいが、今回自分の部下300人を引き連れて明命と共に呉に来てくれたらしい。
さすがに300人を一人で纏めていただけあって、頼りになる。

「んじゃ旦那、今日はこんだけだよな? ちいっとばかしオレも訓練に参加させてもらっていいか?」

「ん? ああ、それは構わないんだが……」

「あん? まだなんかあんのか?」

「玲っ! 兄上様に無礼なのですよっ!」

「いーんだよ、旦那は。普通にしてていいって言ってくれてんだ。なぁ旦那?」

いつの間にやら俺そっちのけで小競り合いを始める明命と蒋欽。
こいつら仲は悪くないんだが……すべてにおいて生真面目な明命と、逆に大雑把な蒋欽だけあって些細なことでぶつかる。
まったく……晶とレンから解放されたと思ったら、また別の小競り合いか……
ちなみに今明命が呼んだ玲(レイ)というのが彼女の真名らしい。
俺も早く預けてもらえるくらいの信用を得なければ、この隊でやっていけないな。
それにしても……遅い……

「すまない恭也。遅れたようだな」

丁度そんな事を考えている時、蓮華が姿を現した。
少し頬の血行が良くなっているところを見ると、早歩きで来たか?
一応皆の手前王としての仮面を被ってはいるが、表情はいつものまま。
後ろに小さな少女を引き連れているところを見ると、彼女がそうなのだろうな。

「いや、いい。いい……んだが……」

そう。きちんと来てくれた。これは問題ない。
例の子も一緒にいる。これも問題ない。
だが……

「ふん。一応真面目にやっているようだな」

「やっほ〜恭也。見に来たよ〜♪」

「……蓮華」

「……な、なにかしら?」

「……何故増えている?」

「…………」

そう。増えていた。
話のとおりなら蓮華と新しい子だけのはずだったのに、二人ほど増えていた。
……俺としてはあまり望ましくない組み合わせが。
いや、決して好ましくないわけではない。ないのだが……

「王が行く所に私がいなくてどうする。護衛なのだぞ?」

さっきはいなかったぞ? 思春。

「ほほぉ〜。これが恭也の部隊かぁ〜……むむっ! そういえば明命! お兄ちゃんって思うのは勝手だけど、それ以上の関係はシャオが許さないからねっ!?」

……なんの話だシャオ。
明命も……何をあぅあぅ言っている? まともにとるな。

「まったく……蓮華。気にせず用件を済ませようか?」

「あ、そ、そうね。では……カン沢、来なさい」

俺に同意してくれた蓮華は、とりあえず俺に突っかかってくる思春と、明命に突っかかっているシャオを視界の隅あたりに追いやってくれたらしい。
背後に控えていた少女に声をかけて話を進めてくれた。
前に一歩歩み出たのは、袖の長すぎる着物を着た少女。
背丈はシャオと同じくらいだろうか。
第一印象は……な、なんというか……小動物、と言った感じ、か?
俺や蒋欽、他の部隊長がその少女に視線を向ける中、蓮華は話を進める。

「恭也に預けた部隊は貴方達も知っているとおり少々特殊だから、こちらから文官を一人加えさせてもらう事にした。今後は彼女が中心となって報告の書簡などまとめるので、よろしく頼む。カン沢」

「あ、はい。えと、あたし、姓はカン、名は沢。あ、字は徳潤ていいます。た、戦うのは不得意ですけど、が、がんばりますので、よ、よ、よろしくお願いします」

促されて自己紹介する彼女は、やはり小動物のようにおどおどしていた。
……人付き合いは上手いんじゃなかったのか? 蓮華。

「おうっ! よろしくなっカン沢。オレは蒋欽ってんだ。うちらの事はそこの旦那かそっちであぅあぅ言ってる周泰、それかオレの誰かに聞けば大体分かるから、遠慮なく聞いてくれ」

そんなこんなしてる間に、蒋欽が声をかけていた。
さすが姉御肌。面倒見がいいな。
おっと。そんな事に感心している場合じゃないな。

「紹介が遅れたが、俺は不破恭也。少々名前が特殊なんで、不破が姓、恭也が名であり字でもあり、真名でもあると覚えてくれ。呼び方は任せるよ。これからよろしく頼む」

「あ、は、はい。ふ、不破様と、蒋欽様ですね。よ、よろしくお願い致します」

「そぉんなかしこまんなよ。こちとら大歓迎なんだ。実はよ、たまに明命の書類仕事手伝わされてたんだが、これが訳わかんなくてな。奴も人に教えられるほど分かってるって感じじゃなかったし、正直お手上げだったんだ。よろしく頼むぜ?」

ふむ。なるほど。
思っていたより状況は切迫していたらしい。
これは思っていた以上に助かったようだな。

「カン沢」

「あ、は、はい」

「俺達は皆素性が曖昧な奴等ばかりでな。俺も含めてほぼ全員読み書きはあまり得意ではないんだ。荒くればかりで申し訳ないが、暇な時は希望者に読み書きなんか教えてやってくれると助かる」

「おっ! そりゃあいいなっ。皆も喜ぶと思うぜ? なぁ皆」

蒋欽の言葉に頷く他の部隊長達。実は皆読み書きが心許無い。
カン沢は……意図を掴もうとしている、といったところか?
伺うような視線は、蓮華のそれよりもずっと小動物のようだ。
なんというか……怯えのような感情が入り混じっている。
まぁ、相手が俺のような無愛想では無理もないか。

「皆と打ち解けるきっかけにでもなればと思ったんだが、どうだ?」

「うむ。私もいい手段だと思う。補佐役を選ぶ意味でも、無駄にはならないだろう」

蓮華も俺の意図を汲んでくれたのか、後押ししてくれる。

「不破恭也にしては悪くない考えだ」

思春は……蓮華の後押しなのだろうが、相変わらず俺を睨みつけているな。
最初からそうだったんだが……それにしても一体俺は何をしたんだ?
まぁ腕を信頼してくれてはいる様なのが救いだが……
……まぁいい。今はカン沢だ。
彼女はなにやら右手を余った袖ごと口元にもってきて何かを考えているような素振りを見せていた。
……もう一押し、か?
ならば……

「明命、シャオ、その辺にしておけ」

「はぅっ! あ、兄上様ぁ」

「もうっ! 恭也ってば! 妹が欲しかったなら私が“お兄ちゃん”って呼んであげるのにっ!」

シャオ……お前にそう呼ばれると本当に妹を思い出すから勘弁してくれ。

「いや、俺にそんな趣味はない。明命も別に他意があってそう呼んでいるわけではないしな。だろ?」

「はいですっ! 私はただ兄上様の剣技や立ち居振る舞いを見て、是非とも肖りたい一心でっ!」

「……ま、まぁ、そう言うことらしい」

「む〜……ここは退いてやるか」

……なんだ? 退くって。
それはともかく、今は最後の一押しだ。

「それはそうと明命。聞いていたかは分からんが、今後はそこのカン沢が中心になって報告書などをまとめるのに力を貸してくれるそうだ。学問にも長けている様なので、出来れば読み書きの指導も受け持ってもらいたいと思っていたんだが、明命はどう思う?」

「ほ、本当なのですかっ!?」

お? なにやら思った以上の反応だな、これは。
と思ったらおもむろにカン沢に駆け寄った明命。
おいおい。面食らってるぞ?

「わ、私っこの部隊の副官をさせていただいている周泰と申します!」

「あ、か、カン沢です」

そしてガバッとカン沢の両手を握った明命は……

「ありがとうございますっ!」

礼を言っているな。
困惑しているカン沢。
だが、正直な話困惑したいのはこちらも同じだ。
事実、それを見ていた人間は皆困惑している。

「兄上様のお手を煩わせては申し訳ないとこれまで私をはじめ数人で数回報告書などを手がけてみましたが、正直私達にはまだ出来なかったのです。だから是非とも隊の者達の読み書きも含め、我々に学を授けていただきたいです!」

……大成功、か?
とりあえず明命も賛成してくれたようだ。

「恭也の為なの? ならシャオも賛成〜♪」

うん。分かっていないようだが、感謝する。

「とまぁこういうわけで、君が引き受けてくれるととても助かるんだが」

「うっ……えぐっ……」

……待て。
何故泣き出した?

「ど、どうした? 嫌なら無理にとは言わないから」

こういう時男は弱いな。どうすればいいのか検討もつかない。
とりあえずなのはが小さい頃のように目線を合わせて頭を撫でてみたんだが……ってシャオ。お願いだからこんな時にそんな敵意むき出しな視線を向けないでくれ。
思春も、俺が困っていてそんなに嬉しいのか? せせら笑うような表情が隠せていないぞ?

「あっ……ありがとうごじゃいましゅうぅぅぅぅ! わたっ、私っ、今までこんなに人に、ひっ、必要とされた事なくてぇぇぇぇぇぇ! うわぁぁぁぁぁぁんっ!」

いや、喜んでくれて何よりだ。
何よりなんだが……俺に抱きついて泣き出してしまうのはどうだろうか?
蓮華とシャオからの視線が妙に痛いんだが……まぁ……仕方ない、か。
結局落ち着くまであやしてやる事になってしまった。




























「それでは蒋欽、聡里をよろしくな」

「あいよっ旦那っ! ほれ聡里、いつまでもぐずってたら他の連中に笑われっちまうぞ?」

泣き止んだカン沢は、皆に自分を真名で呼んで欲しいと頼み込んできた。大切なものだと聞いていたのだが……まぁ、本人がそうして欲しいといってくれるなら、むしろありがたい。
ともかく落ち着いた聡里を蒋欽に預け、他の隊の連中との顔合わせに行ってもらい、やっとこれで鍛錬が出来る……はずだったんだが……

「恭也? どうやら隊は円満にいっているようね?」

「そうだね恭也。何の問題もないよねっ?」

「ああ。問題はないようだ。さすが不破恭也。恐れ入ったぞ」

……どうやら今日の鍛錬は諦めたほうが良さそうだ。
というか思春、白々しいにも程があるぞ? 棒読みもいいところだ。

「蓮華さまぁ〜! なんか恭也さんが面白いことになってるって聞いたんですけどぉ〜!」

……穏さん……素で止め刺しに来ましたか?

「…………はぁ…………仕方ない。明命」

「はい兄上様っ!」

「俺は鍛錬には出られそうもない。やる事は変えんでいいから、今日は明命が指揮を取ってくれ」

きょとんとする明命。
いや、混乱するのは分からんでもないが、仕方がないんだ。

「きちんと隊をまとめられるのは、今の所明命と蒋欽だけだからな。よろしく頼む」

「は……ははっ! 了解です兄上様っ! なんとかご期待に添えて見せます!」

「……頼んだ」

はぁ……もう自棄だ。
最近は顔を見せられていなかった俺も悪いんだし、今日は付き合うとしよう。

「だぁかぁらぁっ! 今日はシャオが恭也と遊ぶのっ!」

「いい加減になさい小蓮っ! 恭也は毎日仕事で疲れているのよっ? 今日は私と部屋でゆっくりお茶を……」

「小蓮さまも蓮華さまもずるいですぅ〜。私だって恭也さんに色々お話ききたいんですよぉ〜」

……挫けそうだ。

「あ、兄上様?」

「……ん?」

「そ、その……御武運を」

「……ありがとう」

とまぁこういった感じで、俺の呉での日常は過ぎていく。
……正直に言おう。海鳴にいた時となんら変わらん。

「差し出がましいようですが、皆で遊びに出かけて、帰ってきたら皆でお茶をすればよろしいのではないでしょうか? 穏も、話はお茶と一緒に聞けばよいだろう?」

思春……お前俺に恨みがあるんだな? そうだな?























「……なるほど。吸収した江賊達の部隊をそのまま不破恭也に与えたか。一本気だが荒くれ者の多い江賊達を引き込んで纏めさせるとは……良い手だ」

「はい〜。もう江賊の長だった明命ちゃん…周泰の信頼を得て、皆恭也さんを新たな長みたいに受け入れてますよ〜? 冥琳様のご心配は分かりますけど、恭也さんは間違いないと思います〜」

「それは、感じてはいる。蓮華様の人を見る目を信じていないわけでもないし、お前達が相手の容姿が優れているというだけで信頼するような人間でない事も……な?」

「あぅ……た、たしかに恭也さんすっごい美形ですけど〜……でもそれを抜きにして、あの人の覚悟……私は信じられます」

「……ならばよい。引き続き私の代わりに蓮華様の補佐を頼む」

「は、はい〜。それはいいのですが……冥琳様は?」

「……もう暫く、揺さぶってみる。皆を疑っているわけではないのだが……雪蓮との約束の為に万全を期すためだ」

「それだけ慎重になっておられるという事は〜……冥琳様も恭也さんは切り札に成り得るとお考えですね〜」

「あぁ……天が呉に遣わした守護神、不破恭也の存在を蓮華様と並ぶ孫呉の象徴とする。その為、蓮華様との関係をより強固な……私と雪蓮以上の強い絆で結ぶ為……」

「はぁ……まったく冥琳様も、損な性格ですねぇ〜」



あとがき

さてさて、とりあえず前回の停電の時に必死に考えた真名のうちの一つが出てまいりました。
カン沢ちゃんの真名、聡里です。
何か何処か別のSSとかで出てきてそうなので怖くなってきたのですが、まぁそれも今更ですね。
流石にカン沢出すようなSSは珍しいでしょうし、まぁ完全に被らなければよしとしておいてください。
と、お伝えしたい事はしつこくなってしまうであろう謝罪以外wもうすべて伝えてしまったので……では、キャラ紹介でも。


蒋欽

字は公奕。真名は玲。
明命と一緒に江賊をやっていた仲間で、実質No.2。
荒っぽかったり粗野な人間の多い江賊の中で実質的な頭だった真面目な明命と他の皆とのつなぎ役。
明命よりも大柄で、浅黒い肌と細かく編みこんだドレッドヘアーが特徴の明朗快活な女の子。
露出がかなり多く恭也も戸惑っているが、本人はまったく気にしていないし恭也には寧ろみて欲しいとすら思っている。
巨大なバトルアックスを振り回す、いわゆる脳筋タイプ。
外見のイメージはハガレンの師匠をあのまま少女にした感じ、かな?



カン沢

字は徳潤、真名は聡里。
蓮華が取り立てた文官の少女なのだが、身分が低い家の出ゆえに肩身の狭い思いをしていた所を新設された恭也の隊に引き抜かれる。
オドオドした態度で誤解されがちだが、文官及び軍師としての実力はかなり高い。
ただ自分で命ずる事が苦手な為、恭也の補佐役の仕事にとてもやりがいを感じている。
ダボッとしたパーカーのような形状の上着を着ており、いつもフードを被っているうえに前髪が長め。
外見のイメージは、大き目のフード付きパーカーを来たネギまの宮崎のどか(初期型)……を小学校低学年くらいのサイズにした感じ。



一応私はこんなイメージで二人を動かしてます。
今後これに追加されたり微妙に変わったりすることはキャラの生長と共にあるかも知れませんが、大元はこんな感じで。


では、今回はこの辺で失礼させていただきます。



まず初めにお詫びをば。
カン沢のカンという字は門構えの中に敢と書きますが、これは通常では表示できません。
なので、作中ではカンとカタカナに変換させて頂いてます。ご了承ください。
美姫 「恭也の部隊にも文官の誕生ね」
だな。これで面倒な書類関係が少しはましになるかな。
美姫 「何はともあれ、皆との信頼関係も出来つつあるわね」
だな。裏で色々としている冥琳がちょっと楽しいかも。
美姫 「表立っては敵対している感じだものね」
いやー、これから先どうなっていくのか、本当に楽しみです。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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