つよきす×とらいあんぐるハート3
『キスとハートの協奏曲』









 妄想日記・続









「おい赤星。どうしたんだ? 急に」

 いつもと同じに過ごしてきた一日の最後に、恭也は勇吾に剣道場に呼び出された。
 しかも机の中にメモという、まるで告白する時の女の子のような方法で。

「こんな方法で呼び出すとは、まったくお前らしくない」

 そう言って恭也はそのメモをヒラヒラと勇吾に向かって振ってみせる。
 そこには、男が書いたとは思えないほど繊細な達筆さ加減でこう書かれていた。


“高町へ、

 今日の放課後、部活が終わった時間に剣道場まで来てくれ。
 誰にも言わず、誰にも見られずに一人できてほしい。
 
                        赤星勇吾”


 最後の名前さえなければ女の子から告白の呼び出しともとって見える。
 後は呼び出す場所が道場ではなく何処かの恋愛成就の木の下とかなら完璧だ。
 ともかく勇吾からのそんなおかしな呼び出しに、恭也は律儀に従った。
 美由希達と一度家に戻り、翠屋で暫く手伝いをし、そして途中で用事と言って抜け出す。
 そこまで丁寧に裏工作を済ませて勇吾の要求に応えた恭也。

「用があるのなら普通に話しかけるなりすればよかっただろう。お前と俺の仲なのだから」

 そう言いながら恭也は道場の壁にかけてある木刀の一振りを掴む。

「それとも……」

 そう言って振り返った恭也が見たもの。
 それは今しがた恭也が入ってきた道場の入り口の鍵を閉める勇吾の姿だった。
 そして勇吾はそのまま道場内のカーテンというカーテンを閉め、そして……

   ・・
「……恭也ぁ……」

 切なそうな声で恭也の名を呼び、着ていた胴着の袴を持ち上げる。

              ・・
「……そういうことか…………勇吾……」

 そんな勇吾を見てらしくなくにやっと笑う恭也。
 恐らくその耳にはもう既にとどいているのだろう。
           ・・・・
 その携帯電話の振動音のようなものが……。
 
「……本当に言いつけを守っていたのか。まったくお前という奴は……」

「だ、だって恭也……ま、守らないと…んっ!……お、お前が……」

「ん? なんだ? 俺がどうした?」

 言いよどんでいる勇吾に意地悪い笑みを浮かべて聞き返す恭也。
 その真っ赤に染まった顔を俯かせて必死に何かに耐える勇吾。
 そんな勇吾を暫くみて満足したのか恭也は、

「ふふっ……分かったよ勇吾」

 と少し表情を和らげて微笑む。
 すると勇吾はその表情をみて堰を切ったように、

「も、もう……ダメだ……恭也ぁ……」

 と恭也に駆け寄ってそのまま押し倒した。
 本当ならば軽く避けてしまえるところをされるがままに倒された恭也。
 自分の上に跨って切なそうな勇吾に、恭也はその状態でなお余裕の笑みを浮かべ……

「仕方のない奴だな、勇吾は……ほら……」

「あっ」

 一瞬で体勢を逆転させた恭也。
 驚きと喜びの入り混じった勇吾の嬌声に嬉しそうに口元を吊り上げると。

「お前の……望みどおりにしてやろう」

 とその剣を握る為の手をゆっくりと焦らすように勇吾の…………









「だ、ダメェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!」

「わっ?! な、なによよっぴー? これからがいい所なんでしょ♪」

「ももももう駄目だってばそんなの!」

 そう言って良美が目を逸らしながらある一点を指差す。
 そこにあるのは竜宮専用のデスクトップ。
 そして開かれているドキュメントは……



『親友の放課後 〜剣道場の秘密の稽古〜』



 というテキストファイルだった。
 妙にタイトルがフランスなんとかとかそっちらへんの文庫本っぽい。

「これからがすごいんだってばよっぴー♪ やっぱこの二人の場合は奇をてらわないで王道が一番よね」

 そう言ってあきらかに良美を嵌める為にやりましたと言わんばかりの笑みを浮かべるのはエリカ。

「恭也センパイが攻めで赤星センパイが受け。この二人はこうじゃないと♪」

 楽しそうに良美に力説しながら自分の書いたそれを読み返し始める。

「正直対馬君とスバル君の時みたいな逆も考えたんだけどさ、なんかイマイチ想像しにくくて」

「……さ、さっきの、アレ?」

「そう。対馬攻めのスバル受け。あれはありそうでしょ? スバル君は積極的だけど最後の一歩がどうしても踏み出せなくて、そこに対馬君が、みたいなシチュ」

 そう言ってエリカはフォルダの画面で一番初めに読んで聞かせたテキストを指差す。

「でもやっぱ恭也センパイ達だと普段消極的な恭也センパイが積極的にって方が萌えるし♪ でしょ?」

「赤星センパイは力押しに弱そうだもんね、ってエリー!」

 思わず乗せられてしまって相槌を返してしまった良美が慌てて真っ赤になりながら叫ぶ。
 もう羞恥心で体中の血が沸騰しているようにも見えるが……

「…………そ、そこかぁ…………」

 からかえて満足げにフォルダを閉じていくエリカの脇からこっそりとそのファイルの場所を確かめていたりする良美。
 もちろんそんな良美の視線はモニターに映ってしまっていて、それを見たエリカがいやらしい笑みを浮かべていた。

「さ、よっぴーもからかったし、そろそろ皆来るし。よっぴー、仕事始めましょ♪」

「……もう。エリーったら……」

 こうして生徒会メンバーが竜宮に集まる前の二人だけの時間は、まぁ大体いつもこんな感じで過ぎていくのでした。










 ちなみに後日、いつの間にかこの恭也×赤星なお話が生徒会の女性メンバーやその関係者達の間に流れてしまい、そこから渡りに渡って学園の女子の大半の手に渡る事になった。

「……なぁ赤星」

「……なんだ高町」

「……何故か最近俺達二人でいると、その……普段と向けられる視線の質が違う気がするのだが……」

「……奇遇だな。そんなに鋭いほうじゃない俺もそんな感じがしてる」

 そしてそんな二人に好機、というか最早狂喜の視線を向ける女子生徒達。

(ねぇねぇ、あの二人ってやっぱり……)

(アレはただのお話だけど……でも二人見てるとどうしても想像しちゃう♪)

(あたしも〜♪ もうご飯5杯くらい軽いわよ〜♪)

 そんな視線に疲れた二人は、同時に溜め息を吐き出す。

「……何処かで落ち着いて飯が食いたいな」

「……道場にいくか。あそこなら俺が鍵もってるし」

(きゃあぁぁぁぁ♪ きききききき聞いた今の?! どどどどどど道場って!)

(ままままさかっ?! でででも、ほほほ本当にっ?!)

(こっこれは一大事よ! 早く皆に招集かけて! 撮影班と録音班もっ! あのお話が実現するかもっ♪)

 …………もう悪循環ここにきわまれリとでも言えばいいのかとさじを投げたくなるほど間の悪い二人だった。
 ちなみにこの騒動の現況の彼女はというと……

「あっ! ちょ、エリー?! や、やめてぇぇぇぇ……」

「ホレホレホレホレ♪ ここがええのんか♪」

 しっかりと原作者様からきっつーくてちょっと甘美で百合百合なお仕置きを食らっていましたとさ。

「た、高町先輩赤星先輩ごめんなさ〜い! あっ! だ、だめそこはっ! つ、対馬君助けてぇぇぇ……」











 あとがき

 …………………………………
 ………………………………………………………………
 ………………………………………………………………………………………………
 ……………………うわぁ……………………………………やってもーた………………………………
 どどどどどどうしましょこれ?! ってかホントに私が書いたのコレ?!
 う、うわぁあぁぁっぁぁぁぁん! あ、遊び人さんのばかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
 うぅぅぅぅぅぅ、汚されちゃったよぅ……………………………………………………………………
 ………………もう錯乱しすぎて後書きどころじゃないので失礼します……………………死のうorz




いや、汚されたも何も思いっきり書いてるやん!
美姫 「と、思わず突っ込みたくなったと」
うーん……。よし! ぎりぎりセーフ。
全年齢対応と言う事でアップだ!
美姫 「エリカの妄想日記はどんどん過激になっていきそうで怖いわね」
今回の主役は、うーん、一応恭也と赤星になるのかな。
美姫 「エリカの妄想だけれどね」
あはははは。次回はどんなお話が待ってるかな〜。
美姫 「それじゃあ、待ってますね〜」
ではでは。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る