『乃木坂春香と高町恭也の秘密』











第三話 その3













 昼ご飯の時間となった……それは、いいのだが
 こちらで昼ご飯を食べることは無かったので、初体験といえば俺も同じなのだが……
 いかんせん店が何か分からない点もある
 春香の手により作成されたしおりには『キャロット・キュロット』と書かれていた

「春香」
「はい?」
「これは店の名前なのか?」
「はい」

 しおりを見ながら住所地まで進んでいく
 春香が先導してるのがミソだ……なにせ、みみずとへびの格闘している地図を読解できるほど
 俺は人間が出来てないらしい
 というか、これを地図と言い切った春香の能力が凄いのかもしれない
 独特の回路が付随してるのだろう

「こちらです」

 そういって、店の前まで到着する

「あ、空いてるようですね……入りましょうか?」
「そうだな」

 ご飯と聞いて、少し嬉しさがあったが……中はファンシーだ
 外見は女の子受けしそうな程で、まぁ、うちとは違った感じの店だ
 うちがシックと捉えるなら、こちらはファンシーだと捉えたというだけだが
 意外と普通のお店だと思われるが、海鳴では見かけないタイプのお店であるのは確かだ
 メニューを開いて、とりあえず目が違う文字を写したかのように感じたが
 違うみたいだ……これが此処のメニューらしい

「『不思議の国のパスタ』?」

 意味が分からないが……他にも、『黒き妖精のロンド』とか『七人の小人のアップルパイ』とか
 意味が分からないんだが

「パスタだと思いますよ」
「そうか」

 春香の言葉に頷きつつ、暫く考える
 まともなのは期待しない方が良いだろう……コーヒーって頼めば来るだろうか?
 お昼は諦めよう……それが良い

「いらっしゃいませ〜、ご注文はおきまりでしょうか?」

 そういって、声をかけてきた女性を見て、俺は遠くを眺め、春香を見て
 そして、納得した……春香が此処を選んだ理由がわかった気がした
 それでも、貴方にはいつも傍に居てくれるでしょうに……

「お連れと俺もまだ決ってないので、あとでお願いしても良いですか?」
「はい、構いませんよ、ご主人さま」

 にっこりと笑顔

「それでは、後でお聞きしに来ますね、お嬢様、ご主人様」

 そんなことをのたまって歩いていくメイド服の女性
 耳には、ねこだろうの耳が出ている
 カチューシャと呼ばれるものだろう
 皆つけたらそれぞれに似合うかもしれない……実際、どうか分からないけど

「恭也さん?」
「ん、決ったか?」
「いえ……どうかされたんですか? どこか遠い所を見ているようでしたので」
「ああ、気にしないでくれ……単に慣れてしまった自分が悲しいだけだ」
「悲しいですか?」
「気にしないで良い……春香のせいじゃないし」
「そうですか」

 慣れてしまった自分が、恐ろしい
 なんていうか、非現実な事なんだろうけど、納得してしまう自分がいるし
 確かに看板にメイド喫茶と書かれていたような気がしたが、こういうものなのか
 父さん、今の世の中は変わったものが受けてるようです

「春香は決ったか?」
「あ、はい……『長靴の猫サンド』にしようかと」
「飲み物はどうする? 俺はコーヒーとパスタにしようと思うが」
「あ、私はお水で良いですので」
「そうか」

 店員さん(ねこみみメイドさん)を呼んで、注文する
 復唱された言葉が少し気になったが気にしない事にした

「春香は此処のことを知っていたみたいだが、どうしてか聞いてもいいか?」
「いえ、丁度、アキハバラを調べていて、出てきたので知っていた程度ですよ
 それに可愛いからいってみたいと思いまして」
「そうか……」

 それについては、大体の予想が立っていたので良かった

「じゃあ、此処には最初から来たかったのか?」
「はい」

 嬉しそうに応える

「本当に可愛いメイドさんですよね……」

 うっとりという言葉が合うのかどうか考え物だが、嬉しそうに言う春香
 俺は慣れてしまっていたので気にしない
 ねこみみな……ノエルさんに言えば、忍あたりが楽しんでつけてそうだ
 ノエルさんが困りそうなので絶対に言わないが

「そうだな」

 とりあえず、春香の言った事に頷いておこう

「いいなぁ、かわいいなぁ」

 そういって、少し考え込んでいる様子だ
 まぁ、小さく何か言っているが……聞いてはいけないことなのだろうで、聞かないことにした
 『着てみたい』とか、『今度葉月さんに借りよう』だとか
 俺は聞いてない……聞いてないったら聞いてない

「恭也さん」
「なんだ?」
「いい事を考えました」
「どうしたんだ?」
「はい、写真を撮らせてもらおうかと思って……再現するのには、資料が必要ですから」
「そうか」

 俺はとりあえず頷いておいた
 もう、何も言うまい……春香自身が困る事態になるかもしれないから
 俺の常識は当てはまらないという事が分かっただけ今日の収穫はあっただろう
 ということにしておこう
 そういえば、こういうのはデートというのだろうか?
 買い物ついでに、付き添い……違うな……うむ

「すみません、注文をお願いしても良いですか?」

 同じ人に声をかけたようだ
 そして、注文をして、写真を撮ってもらえるかどうか聞いてみた
 春香は堂々と笑顔で聞くので、少し待ってもらって、お店の奥でなら、その人のみを撮ってもいいことになった
 俺はそれを見て、皆もこういうの好きなのだろうか……
 でも、美由希とかがお嬢様……なんていうか、少しありえない想像だ
 フィアッセやレン、忍、那美さんは確かにお嬢様でも問題は無いだろうけど
 一般庶民の晶や美由希はやはり合わないのでは無いだろうか?
 なのはは、論外だ……とりあえず気にしない方向だったら問題ないだろう
 春香の笑顔は男女共同で効果があるって事だな
 どんな人でも効果があると思っていいのかもしれない……






 そして、色々な精神的虐待から俺は何とか助かった
 というか、あの後、何故か俺と春香の服、執事服とねこみみメイド服を持ってきて
 笑顔で『着てください』とのたまわれた上に、食べた代金要らないので着てくださいと店長に言われ
 そのままお金美味しさに2人で着てしまい、撮影し、更には残った写真
 春香はとてもいい笑顔だった
 で、今は、お店を出て少ししたところで春香が数度目の突貫していった
 多分、人形か何かを見ているのだろうが……買わないあたり、自分のお小遣いと相談してるのだろう
 本人の努力を無にしてはかわいそうなので何も言わないことにする

「高町くんじゃない」
「ああ、藤代か……どうかしたのか?」
「うん、私は赤星くんとデート」
「違うぞ、高町……俺は朝早くから連れてこられた
 哀れなスケープゴートなんだ」

 何か困った顔でも、確り言う事は言う赤星
 藤代さんと仲がいいからな

「何か買い物か?」
「私がね……赤星くんはこの前、私に迷惑かけたついでに手伝ってもらう事になった」
「というか、重たいのですけど」

 何かたくさんの紙バックを持ってる赤星に俺は少しだけ同情した
 まぁ、赤星らしいと言えばらしいけど

「赤星頑張れ……明日の話題は決りだな」
「ん?」
「赤星、藤代さんと付き合う……ラブラブ?デート」
「聞かないでくれ」
「ん〜、でも私じゃあ、赤星君とつりあい取れないわ」

 と、不意に走ってくる気配
 というか、あちらから見える
 赤星と藤代さんの2人が目に入ってるだろう

「恭也さん、お待たせしました……それと、こんにちわ、赤星先輩、藤代先輩」

 2人がきょとんという顔をしている
 俺はふむと頷いて

「見終わったのか?」
「はい」
「そうか……それじゃあ、次へ行くか?」
「はい……あの、でも、赤星先輩と藤代先輩が」

 そう言ってると、帰ってきた
 固まっていた藤代さんが先に

「たたた、高町くん!! な、なんで『白銀の星屑』が!!?」
「いや、何でって……彼女が買い物に行くからついてきて欲しいと頼まれたんだが」
「高町って、そんなに親しかったか?」
「ああ、たまたま駅であったんだが」

 要らない誤解されないためにさらっと嘘をつく
 春香は見事に誤魔化せないだろうから

「あ、そうなのか……なんだ、てっきり」
「私も」
「赤星先輩、藤代先輩どうかしたんですか?」
「いや、何でもない……まぁ、確かに高町がな」
「そうよね」

 何か凄い失礼なことを言われた気がする

「それに方向が同じなら、一緒に行かないか?」
「ううん、私はもう帰るところなの……たまたま高町くんが居たから声をかけようって思って」
「そうか」

 頷いて分かれる
 変なことは言われないだろう
 激しく感謝した……春香が自分から誘いましたと言わない事が

「でも、高町」
「ん?」
「乃木坂さんとそんなに親しかったっけ? 名前で呼んでたし」
「ああ、まぁ、ちょっとあってな」
「そうか」
「そうなんだ」

 深くは詮索しない
 それはお互いの恋愛のこともそうだから
 というか話すほどの事ではない……
 そして、2人と分かれて俺たちは、俺たちで動く事となった
 多分、藤代さんの買い物は同じ物だろう
 俺の左手には下げられたものと同じものが











 つづく













 あとがき
 ふぅ〜
 シオン「いや、ため息ってどうかしたの?」
 進展しない2人……そう思うと、ため息が
 ゆうひ「方や1人は天然、方や1人は鈍感」
 そうだ! そのためのため息なんだ
 シオン「どっちも考えがあっても、進展しなさそうだよね」
 分かっただろ? 大分先に出来てる作品でこれだ……だから、フラグ立たせるの大変
 ゆうひ「そこまで言われる二人って」
 俺からしたら、この2人、絶対周りの助けないとくっつかないぞ
 シオン「『乃木坂春香の秘密』に出てくる主人公以上の鈍感だもんね」
 そういうことだ!! これ、はっきりと言ってしまえば、己が自覚するまで恭也は絶対気づかないし
 ゆうひ「……いたっ!! それは確かにため息もでるわ」
 だろ……俺悪くないぞ……書き出して、こんな事で悩むなんて……は〜
 シオン「が、頑張れ……本編が進んできたら、大丈夫よ、きっと……多分」
 そ、そうだよな……でも、流され流されしそう……OTZ
 ゆうひ「そんな、凹まないの……でわ、また〜」
 ほなね〜(^^)ノシ




鈍感と天然。
美姫 「果たしてこれから先、どう展開を見せるのかしら」
いやはや、どう変化していくのが楽しみだな。
美姫 「本当よね〜」
とりあえずは、このお買い物編がどうなるのか。
美姫 「次回も楽しみにしてますね〜」
待っています。



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