とらいあんぐるハート×魔法少女リリカルなのは








魔法少女リリカルなのは〜守りたいものありますか?〜

第八話 日常の風景










 恭也は何時もを繰り返していく……それがいつか終わると知っていても
 毎日の小さな幸せを積み上げていく。小さな子供が積み木を高く積み重ねるように

「いってきます」

 にぎやかに学校に行く声
 美由希となのはだ……恭也も大学へと行く準備をして出て行く
 その際に恭也は少し早めに出る……最近増えた事
 桃子と士郎の二人はすでに家を出て仕事へと行ってるので鍵を閉めていく
 チェックも怠り無く
 なのはが学校に行く頃、恭也は恭也でフェイト宅を訪れていた
 最近の日課となった、フェイトの朝食だ
 アルフの朝食も置いていくのだから通い妻ならぬ通い夫だ

「美味しくは無いかもしれないが、こんなものだろう」

 二人は寝息を立てて寝ている
 管理局から監視を受けていても、尚自由に動けている
 板ばさみ状態だが、ジュエルシードを見つけるという行動には代わりが無い

「んっ」

 小さな声が漏れる……夜更かしして眠いのだろう
 恭也は気にせず、料理を終えると時計を見て二人にタオルケットをかける
 小さな笑みを浮かべて、そのまま静かに出て行く
 フェイトとアルフに起きる様子は見られない
 その様子を管理局、アースラの面々は見ていた

「どう、思う?」
「普通だと思うのだけど……私としてはこれをどう思ってるかクロノくんに聞いてみたかったんだ」

 その映像をエイミィは出す……それは、一瞬とも取れる行動
 いや、それとは違うと言いたいが、それは不思議な違和感

「どうって……視線が一瞬だけど、全ての監視の目を見たって事、か?」

 自分自身でも半信半疑……クロノはそうぼやくように言って頭をかく
 間違いなく恭也が監視の目に気づいてるという事に……勿論、恭也本人にもつけようとしたが
 それは出来なかった。まず第一にロストしたのだ
 夜の鍛錬の時、監視していた恭也が消え、そして違う位置に居た
 更には魔法で捕らえる探知魔法に引っかからない
 それがどういうことか本人は理解してないが、人は少しだが魔力を有する
 だが、恭也にはそれが無い……いや、それを消す術を持っていると取って良いのだろう

「恭也さんって本当に人?」
「ぼくも考えてたんだ……ぼくが恭也さんと戦ったデータある?」
「あ、うん」

 そういって戦闘データを出すエイミィ
 後ろからの攻撃までを飛ばすクロノ……フェイトからの攻撃はたった3秒
 それだけの間に恭也は10メートル近く離れていた相手の背後まで近づいていた

「確かに不可能な距離じゃない……だけど、音もなく、気配もなく
 戦闘に集中してるぼくの後ろは早々取れないんじゃないかと思う……気配があったとも言い切れなかった」
「魔法を使ってるようには見えないけど、クロノくんを倒した時ね
 恭也さんさ、壁蹴ってるんだよ……天井も」

 クロノが防ぐ分では、後ろへと兆弾していた
 だからこそ、普通なら突っ込めない
 まずクロノを壁として利用しなくてはならないが、恭也はそのたった数秒の間しかないときに走りこんでいた
 更には、クロノの背後を取った……油断無く構えていたのにも関わらず

「気配を絶つのが、かなり上手いんだと思うのだけど」
「それだけじゃない……人を倒す事に長けてるとも取れると思う」
「え?」
「一撃だ……ぼくのバリアジャケットが無い部分を狙い
 しかも、相手の頭を壊さず攻撃し、一撃で相手の意識を沈める
 ぼくでも出来ないよ……はっきり言えば、魔導師の誰もが出来ないことだと思う
 だからこそ、非殺傷設定なんて出来たわけだし」
「ということは、恭也さんは自分で人の生と死を垣間見えてるって事?」
「そうじゃなくて、そういう方法を知ってるって事なんだと思う」

 二人は恭也の戦闘能力を探っていく
 それでも、まだ穴はあるし、分からないことだらけだ……推定の域を出ない

「魔法も使わずに自分たちにダメージを与える技を持っていると……なのはに聞いたら分からないって
 でも、それじゃあ、なのはもこれが出来るって事か?」
「ううん、出来ないと思う。だって、なのはちゃんは長距離の魔法が多いもの」
「だよね……」

 そろってため息をつく。恭也の戦闘能力が未知数すぎて
 というより、本当に此処の世界の人かも怪しくなってきたりこなかったり
 エイミィは違う意味でもため息をついた……かっこいいのになぁとか色々だ
 ちなみに、戦っている恭也のスナップを大事にファイリングしていたりする

「はいはい、二人とも……それよりもちょっと問題があるの気づいてる?」
「ジュエルシードが消えてることだよね?」
「ええ」

 リンディが入ってきて、事を考える
 アースラの中は大変である……フェイトの監視は勿論のことなのだが
 消えたジュエルシードも探さなくてはならない
 このことについては、フェイトも協力しているし、なのはも協力している
 といっても、見つからないものは見つからないのだが

「かあさ、艦長は何か気づいてるのですか?」
「……そうね。まず一つは今回の事件を解決したら分かるかもしれないわね
 プレシア・テスタロッサを捕まえれば……それから高町恭也さんの結果出た?」
「あ、はい。人であることは確かです。ずいぶん鍛えてるようですけど
 それと一つ分かったことですけど、剣士だと言うことくらいでしょうか?
 後はなのはちゃんが提出したとおりのことだけですね」
「そう」

 リンディも恭也の事については、不思議と考えている
 何より可笑しいと思えたからこそだが……魔法をああも簡単に受け入れられるだろうか?
 多感な時期でもなく、普通の20歳くらいの青年が……まず目を疑うだろうし
 何より、魔法攻撃をああも簡単に防ぐものなのだろうか?

「これは例えばの話だから聞き逃してくれても構わないのだけど
 恭也さんが魔法を使えたなら、話は別よね?」
「……それって」
「まさか!」

 エイミィとクロノはそろって画面を見る

「例えばなんだけどね……ドアでクロノの魔法を防いだこと
 普通ドアが鉄製だとしても、防がれるのかしら?
 何より、上下左右関係なく動き回るっていう事が普通の一般人には出来ないと思うの」

 それはそうだ……だが、実際にあるものを受け入れて考えなければならない
 魔法が使えるからこそ、クロノたちは不思議に思い考えてる

「でも、恭也さんから魔力反応がありません」
「ええ……例えば内面のみに特化し、自分の周囲に魔力無効化を張っていれば?」

 その言葉に驚いたのはクロノとエイミィだ
 もしもそんな理論が確立しているのならば、ある種凄いことでもあるのだろう
 魔力を自分にのみ使い、活性化させ、身一つで戦う
 周囲の魔力攻撃は通じないし、逆に肉体的な攻撃は喰らっても痛み半減などの効果が得られる

「無意識でもそうしてるなら、不可能じゃない」

 リンディの言葉に頷く二人

「でも、理論がさっぱり分からないわ
 もしそんなことしても無駄に魔力を消費するだけだし、動いた分だけ疲れるはずだものね」

 理論はあっても、使うに当たり魔力の消費量が半端じゃない
 そんなものを使うのに意味は無い……それなら大量魔力で一度に長距離魔法で殲滅するほうが早い
 非殺傷設定にしておけば良いのだから、それこそ難しいし
 何より短距離なんてのは、ほとんどの魔導師は好まないのだ

「監視の目に気づいてる事も不思議よ……後、これ見てくれる」

 それは、クロノが最初の出撃の時。恭也は近くに居た
 それもタイヤキを食べている姿で……カレーとチーズなのは置いておくとして
 のんびりと食べてるのだが、時折、上を見たり横を見たりしていく
 そして、そのシーンとクロノたちの戦闘シーンを合わせる
 クロノとエイミィは驚いていた

「魔法が見えてる?」
「ええ……私もどうしてか不思議に思ったのよ
 それから、これ」

 目線が一度、監視の目に向いた……高町恭也が監視に最初から気づいていたと
 そのことに驚きを隠せない、エイミィとクロノ

「だから、捕まえてって」
「……もっと早く言ってよ!!」
「そうですよ、こんな重大なこと……それなら、恭也さんはもっと前から気づいてるって事に!」

 それは確かにそうかもしれないのだ
 何より動く視線は全て魔法を追いかけ、クロノが唱えた魔法も全て見ていることとなる
 そして、自分が一切当たらない位置に移動しながら食べてるのだ
 普通に見たら歩いてるようにしか見えない

「私だって疑ってかかったのよ……だから、確定するまで時間かかったんじゃない
 そこまで攻めなくても」
「す、すみません」
「ごめんなさい……でも、これって」
「ええ、もしも最初から気づいてたなら、一番注意しなくてはいけないかもしれないわ」

 リンディの言葉にクロノとエイミィは頷く
 まだプレシアの場所が特定できないが、出来たら突入して捕まえる
 まだこちらの方がはっきりと目標が定まってるので良いが
 高町恭也はどうしたら良いのかさっぱり分からないのだ……というよりも底が見えないからこそかもしれない





 さて、そんな話をしている頃恭也は大学の講義を
 フェイトは起きて、朝食を食べていた……冷めてるのが少し残念そうではあるが
 その顔を見てリンディが、作ってあげたなら一緒に食べたら良いのになどと思っていた
 なのはも授業を聞いて、それぞれが今までと変わらない平日を送っていた
 なのはは明日から学校を休み、事件の解明に当たるつもりだ
 その際にフェイトとも少し話せたらと思っていたりして、アリサとすずかの言葉を逃すこと数回だ
 少し怒られたりしながらも、友達同士仲が悪くなるというほどでもない

「なのはちゃん、数日前から恭也さんって買い物袋持って大きいアパートへと入っていくの見たけど
 その理由って知ってる?」
「すずかちゃん、それ本当!?」

 なのはは未だにフェイトの住んでる場所を知らなかった
 というよりも、知らされていないというのが正しい……なのはの事だしそのまま走り出しそうだから
 ある意味、なのはの行動を考えてだ

「うん。ちょうど夕方くらいに塾に行くときに一度家に戻ってから送ってもらったときに
 一番大きなアパートあるでしょ? あそこに入っていったの
 なんか、買い物袋持ってたし、他人かなぁって思ったけど、でもやっぱり恭也さんだったの」
「お兄ちゃん、誰にも言わずに何してたんだろう?」
「なのはちゃんも知らないんだ」
「ってことは、何をしてるかもさっぱり?」
「うん、普通に袋の中身は食材だったけど」
「料理研究?」
「まさか……それに、あそこの部屋代高いから」

 ちなみに部屋代のことである……なのはは、そこにフェイトが居ると分かった
 管理局の人たちは何も言わないし、恭也から聞こうにも時間が合わない
 朝食に聞いたら良いのかもしれないが、そうなると全てを説明しなくてはいけない
 その全ての説明はさすがに大変だし、士郎が切れるかもしれないから

「恭也さんの事だし、なのはに手料理とか考えてるんじゃない?」
「そういうのじゃないと思う。でも、お兄ちゃんのことだし理由はあると思うし、聞いてみるよ」
「そうね、私も気になるし」
「アリサちゃんが?」
「好きな人のことは気になるものなのよ」

 さらっと言われ、なのはが『へっ』て顔になり、すずかも少し驚いた顔になる

「アリサちゃんも?」
「……そう、すずかもね」

 言葉を間違えたすずかは、アリサに言われ口を手で押さえるがすでに遅い
 アリサの目が窓の外を捉える

「恭也さん、相変わらずなんだ……というより、そんな人が私の彼氏になるんだ」
「あ、アリサ〜、それはそうと限らないんだからね」

 すずかがそういってアリサを揺する
 確かにその通りなのだが、なのはは頬を小さくかく

「お兄ちゃん、私の友達に手を出す=ロリコンだよ」
「ちっがうわよ!! なのは」
「そうだよ、なのはちゃん……清い交際を経て、私たちが16歳以上なら結婚だって可能なんだから」

 クラス全員の脳裏に浮かんだ言葉は

『いや、それでもロリコンじゃないのか?』

 その言葉だったそうだが、それは皆あずかり知らぬところである
 そして、そんな少女たちの会話を聞いて、女の子たちはなのはの兄に興味を持つ
 高町恭也がどういう人かを……
 何時もの日常が終わっていく







 その日、なのはは桃子と士郎に話したとおり、アースラへと向かう
 学校を休むことも伝えていたし、なのはは準備をして、公園へと向かう
 アリサやすずかにも休むことを伝え、大丈夫と信じて
 恭也のことをたずねられたことに少し不安を覚えながら

「いってきます」

 そういって歩いていくなのは
 恭也は鍛錬の準備をし走っていった……ただ、その準備の中に合宿用の服なども混じっていた
 それに気づいていない……士郎も、桃子も、美由希も
 恭也の机の上には、一通の手紙が置かれていた
 少しの文面

『少し出かけてくる。美由希はちゃんと父さんの言うことを聞いて鍛錬するように。
 それから、母さんは無理しないように、父さんもな
 美由希は、手伝うなら無理するように。それで倒れたら、軟弱なお前が悪い。
 後で、ランニング足すからな……後、絶対帰ってくるから』

 それだけだった……だが、それを読んだ士郎と美由希と桃子は焦った。
 間違いなく恭也が戦いに行くみたいに読めるから
 強大な敵に立ち向かうかのように……それが、どうしてか分からないが
 不安に駆られた……剣士としての勘が警告音を鳴らしている士郎
 恭也に何か大きなことが起ころうとしていると
 そして、なのはが出て行った後、恭也も姿を消した






 つづく









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