とらいあんぐるハート×魔法少女リリカルなのは









魔法少女リリカルなのは〜守りたいものありますか?〜

第十一話 恭也










 なのはとフェイトはアースラに戻った……そして、その場にはプレシアとクロノも入っていた
 恭也とリニスとアリシアが来てないと報告を受けたのは、自壊していくプレシアが居た場所を見ていたからだ
 その言葉に何より驚いたのはフェイトとなのはだった
 リンディは冷静に考えて、どうにか術をと思うが、全くと言って良いほど手がない

「第一に私が行くという方法……恭也くんと戦って勝つ自信がこれっぽっちも無い上に
 何処にいるか分からない人を探すとなると、ほぼ無理」

 アサシン……その言葉がリンディに浮かぶ
 恭也の事を考えれば、確かに一つのスタイルをアサシンと捕らえられる
 暗殺者という闇に紛れ、空気に溶け込み、相手を倒す、殺す
 だからこそ、そんな相手に魔法が通じない相手にリンディは勝てないと言い切った

「次に、フェイトさんとなのはさんの再度突入ですけど……あの危険な場所に行かせるわけにはいきません」
「なんで!!」
「どうしてですか!!? 恭也さんが、恭也さんが危険なんですよ!!
 そんな無茶分かってます! 分かってますから!!」

 フェイトの言葉になのはが横を振り向いてフェイトを見つめる
 その目がとても真剣で、行きたいと強く願っていることがすぐに分かる

「生きて戻ってこれるという保障が無い以上、行かせるわけにはいきません
 何より、私たちにフェイトさんとなのはさんを託したのは、恭也さんです。ならば
 行かせて怪我をして戻ってきたのを知ったら、あの人は私たちに何故止めなかったかを聞くでしょうから」

 リンディはそう言って、自壊してるプレシアのお城を見る

「自力で戻ってくると信じるしかないでしょう」

 その言葉は自分にも言い聞かせるようだったが、ただ、信じてもいるようだった
 恭也が無事で、何かしらの方法で大丈夫だという事も
 さて、その頃恭也はというと……






『此処なら大丈夫か?』
『はい、今はまだあそこの中だと思われてます』

 恭也は違う空間に居た……なのはとフェイトはエイミィが飛ばした
 それを知って、恭也も空間を渡った
 元から能力は無い……例えばだが、そこに空間を切り裂く剣があれば話しは別だ

「これが役立ったな」
「はい……時間は無理でも空間を切り裂く剣」
「乖離剣」

 神風と恭也は空間を切り裂き違う空間へと移ったのだ
 アリシアとリニスも居る……神風は二人を見つめる

「魂はありませんが、過去の記憶や言動などを全てロードしました
 もう、彼女たちを休ませましょう」
「そうだな」

 神風はそういって、小さく祝詞をささげる
 神の息吹のように二人は魔法の力に包まれ、金色になる
 それは、幻想……恭也へと吸い込まれるように、恭也は黙祷する
 武器を持ったままで、地上に足つけたままで

「戻ろうか?」
「そうですね……監視の目が無いうちに戻りましょう
 恭也はなのはの事も気にしてるようですし」

 そういわれてもなぁなんて考えてる恭也だ
 無事なのは確かだし、気にしても無理だろう
 そして、恭也は乖離剣に手を伸ばす
 コートの下、そこには数本の剣
 これら全てがロストロギア
 多分、それを知れば管理局は恭也捕縛を命じることだろう
 知らなければ全て謎なのだから、分からなければ良い……使わなければ良い物もある
 乖離剣を振るい、空間を切って穴を広げ入っていく恭也




 空間を渡る間に恭也は乖離剣を消し変身を解く
 そして、トランスポートの場所まで戻ってきた

「お兄ちゃん!」
「恭也さん!」

 二人の驚いた声
 そして、自壊し完全破壊されてしまったプレシアの居た場所

「え、でも、あの中にいたんじゃあ、それに、どうして此処に?
 あの二人は? というよりも、どうやって此処に来たの? だって、魔法
 ええええええ!!!」

 なのはは驚愕しすぎて思考がぐちゃぐちゃなようだ
 声にでも出さないとパニックを起こすのだろう……すでにパニックと変わらないが

『恭也さんが戻ってきたことは喜ぶべきだろうけど、じゃあ、アリシアとリニスは?
 まさか、落ちたとか? でも、そんな風には、でも恭也さんが元に戻ってる?
 何かあるってこと? というよりも、とりあえず』
「恭也さん」

 フェイトは変身をとき、恭也に抱きついた
 恭也は驚きつつも、受け止める

「ふぇ、フェイトちゃん!?」
「甘えん坊だな」

 そういいつつも、なのはも似たようなことしたしと思い出していた恭也
 なのはの場所まで歩くと、軽く抱き寄せる

「ただいま」
「あ、おかえりなさい、お兄ちゃん」

 何時もの声になのはも何時ものように答えていた
 ……ただ、恭也がこうやって抱きしめる事にはちょっとどきどきはしている
 どこか疲れた恭也の声
 乖離剣を使うというのが何らかのデメリットを含むのだろう
 でなければ、空間を切って歩くというのにもデメリットがあるはずなのだ
 距離と空間を飛ぶのだから

「とりあえず頼みがあるんだが」
「頼み?」
「ああ、フェイトさん、降りてくれないか? なのはも離れてほしいのだが
 歩けない、動けない……結構疲れてるんだが」

 全然見えなかったことに二人は反省して
 恭也を医務室に連れて行く
 フェイトはさすがに誰かの監視が付かないといけないし、一応もっとも悪いのがプレシアだが

「すまない、フェイト」

 クロノとリンディが入ってきた医務室
 そして、恭也は座り込んでるし、二人とも怪我の治療を再度受けてる
 ただ、リンディとクロノが謝ってる理由が分からないのだ

「重度の病気で、プレシア・テスタロッサが……ぼくがもっと急いでたら」
『違う、あれは私がもっと急いで転送してたら』
「私の指示が遅かったせいで」

 それぞれが反省の色を見せる中、フェイトは分かってしまった
 プレシア・テスタロッサが死んだということに
 恭也はため息をついた……そして、上を見る
 天井のしみを数えるように恭也は上を見ている
 なのはは沈痛の面持ちでうつむく

「何となく分かっていたが、辛いものだな」

 恭也はプレシアが長くないと気づいていた

「フェイト」
「え?」

 恭也はフェイトの頭を軽く撫でて言葉を続ける

「泣きたいときは泣いても良いんだぞ」

 その言葉にフェイトは驚いていた……恭也の言葉は核心を貫く

「感情を制御するのは難しいんだ。だから今は泣いて良いんだ」

 それをきっかけにフェイトは恭也の胸に抱きつき泣いた
 クロノとリンディ、なのははどうしようか視線を送りあう
 恭也はただフェイトの頭を撫で続ける

「なのは」
「え?」
「一緒に居たいのだろう?」
「うん」

 なのはは頷きフェイトの横顔を見る
 フェイトもなのはを見て、なのはの目に涙が溜まってることを気づく
 一緒に泣くことも重要だということに気づいたのだ

「リンディさんとクロノくん……とりあえず、廊下で話をしましょう」

 此処だと邪魔になるからという意味を込めて言うと、二人は頷いた
 恭也には多々聞きたい事があるから
 ただリンディとクロノの間にある思考の差はあるのだが

「どこに行ってたのですか?」
「それは秘密です」
「じゃあ、プレシア・テスタロッサがもう近いことも?」
「大体見てたら分かりますよ……あの人の目や肌などを見れば」
「そうですか……では、一つ聞かせてください。どうして、私たちの救出を拒んだのですか?
 私としてはリニスさんとアリシアさんの情報も得たかったのですけど」
「それは、彼女たちが望まないでしょう……何より、リニスたちの遺言は俺が受け取り
 フェイトのみに伝えたら良いでしょうから」

 その言葉には聞かせたくないこともあるのかと存分に含まれる
 ただ、それは聞かせたく内容があるのかとも読める

「ああ、二人が思ってるようなことじゃないですよ。
 ただフェイトのことを心配してたリニスは、生活のことも触れたんです
 また泣かしてしまう俺ですから」

 自嘲的にもらす恭也に何となく二人は分かった
 クロノやリンディが言うより、恭也が言うほうが良いだろうということも
 心を許してるといえば良いのか、近くに居た恭也の方が良いだろうと

「どうやって転移したんですか? ぼくらはトランスポートなしでは早々転移は出来ないはずです」
「それも秘密だ……これでもロストロギアというか、まぁ、アルハザードの文明を使ってということで」

 アルハザードの力。ロストロギア
 それが世に知らしめるのは、力のありようが全く違うからだ

「そこまで徹底して秘密があるということは、恭也さんが使ってるデバイスと言って良いか
 それは間違いなくロストロギアですね……敵意はありませんし
 善意で動いてくれてるようですが」
「俺は神風の中に居る凪が、ロストロギアを変な風に使われたくないって想いを汲んで
 手伝ってるにすぎません
 多分、ロストロギア事態で考えるなら、凪がもっとも詳しいでしょうけど」

 そういうと、クロノとリンディの二人は見合わせる
 その意味に気づけばおのずと分かることもある
 恭也の扱ってるのはロストロギアだが、かなり特異な部類に入るというのも

「自らでロストロギアを管理するシステム、掌握システムとも言うのでしょうか?
 まぁ、処分とも言いますけど、ジュエルシードも言ってくださればこちらで処分しますよ
 どうせ世に出てもろくな使われ方しないでしょうし、使われたけど大した力じゃなかったとでも書けば
 全くこれっぽっちも問題も無いでしょう……次元にのみ特化したとでも言っても良いでしょうし
 一度使えば壊れるまがい物だったとでも言っておけば問題ないでしょ」
「それをあくまで通せばの話だけど、事はそう簡単じゃないだろう?
 何より恭也さんの事が一切分かってません……高町家の人間で魔力を持つのは貴方となのはの二人
 いえ、なのは一人でした……貴方は一般の方で、魔導師とは見えなかったんだから」

 そう、恭也は全然魔導師に見えなかった
 まず一つに言えるのは恭也の魔力が無いということ……一般人レベルでは普通にあるとは分かるのだが

「それが神風の力だ……相手に魔導師と思わせない
 油断させて、相手へと一撃食わらせて終了……ロストロギア回収か破壊
 もしも使えそうなら使う。直せそうなら直す。再利用可能なら再利用
 いくつか俺もストックを見せてもらいましたが、使えるのは限られてます」
「それじゃあ、いつかそれも見せてもらえるということかしら?」
「さぁ……ですが、俺は貴方たちと一緒に居るつもりもありません」
「……やはり」
「かあさん」
「分かりました……でわ、すみませんが、次元振動の余波もちょっと起きていて今は戻りにくいと
 ですからしばらくうちに居座っていてくれて構いません」

 リンディはそういって頭を下げる

「今回はありがとうございました……それと上への報告は止めておきましょう
 皆にも言わないようにと」
「本気ですか?」
「もしも恭也さんの事をしれば、上は動くでしょうね
 恭也さんの獲得を……それでロストロギアを発動されて全滅でもなったら
 馬鹿みたいじゃないですか? それに私たちは表立って手助けもできません
 恩を仇で返すようなことはしたくありません
 良いですね」
「分かりました」

 クロノとリンディ、エイミィはそういって放送で流れる
 プレシアが居ない今、重要参考人はフェイトだがそのあたりは口利きでどうにかするつもりだ
 元からそこまで罪も無いということも分かっているのだし、弁護士たちも良いものが居る

「なのはたちも落ち着いたようだな」

 恭也がそういって入ると、確かになのはとフェイトは落ち着いていた
 恭也が入ってきて涙の跡を拭く。二人の頬にはしっかりと残っている

「さて、俺はそろそろ帰る、なのははどうする?」
「もう少し残ってたら駄目かな?」
「それは、なのはが決めることだ」
「じゃあ、残ってる」

 そういって、なのはは恭也に言う
 保護者といえば、恭也に当たるのかもしれないが、なのはの意思を尊重した恭也

「それじゃあ、俺は帰ります……ああ、早々、これが先ほどの秘密ですよ」
『恭也さん、どうぞ』

 声が聞こえて、恭也の前に1本の剣
 先ほど恭也が持っていた乖離剣だ
 すっと恭也があげておろすだけで空間が切れた
 普通なら、それで周囲のものを巻き込みふさがれていくのだが、その様子が無い

「え?」
「空間を切ったの」
「凄い」

 それぞれ感想はあるが非常識すぎるのだろう
 そして、恭也はそれを開けて中に入る……

「じゃあ、フェイト、また会えるだろうと思うから、なのはと良い友であってくれな」
「はい」

 恭也はそういって、空間を閉じた
 リンディたちは、データ集積できたかどうかをエイミィに聞く

「無理ですよ〜〜〜、あんなのどうやったって出来ません
 何より、魔法が複数展開されてます……魔方陣無くしたって事は
 ほとんど現存する魔法の域を超えてます」
「で、データは?」
「一応、どの魔法に近いかくらいは」
「分かった」

 探求者としてなら、間違いなくレベルは神懸りのような状態
 恭也の神懸りの剣にあれもロストロギアだとはわかっても考えさせるものだ

「あれで空間渡ったのね……もう何も無い
 何か固まってたりもしない……もしかして、あれがロストロギア、乖離剣?」
「母さん、何か知ってるの?」
「凄い昔って言えばいいのかしらね……一度だけ世界に出たのよ
 でも、それを扱ったのが剣術下手で何とかそれを抑えた……どこかに消えたって言ってたけど」
「それが、あの人の手に渡ってたと?」
「多分よ……知らないものは知らないもの」
「だよね。ごめん」

 リンディたちの言葉にフェイトとユーノとアルフは言葉をかけない
 なのはは、神速じゃないんだ〜としみじみ感心していた
 神速なら消えれそうなどというとても不可思議なことを考えてるし
 なのはらしいと言えばらしいのだろう








 つづく




 次、最終です、一応







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