とらいあんぐるハート×魔法少女リリカルなのはA's









魔法少女リリカルなのは〜守りたいものありますか?〜A's

第十話 涙











 恭也が戦っている頃、クロノは捕まえたリーゼ姉妹の親元へと向かっていた
 グレアム提督の場所へと……現場は気になるが、それよりも先に聞かねばならない答えがある
 何より……そのことを聞いておきたかったのだ
 その話し合いは大して時間を取れない
 いつか本当の意味で話をしたいのはグレアム本人かもしれないから
 はやてへと謝罪と共に
 クロノは現場が気になるのを分かりながらも話を聞き、そして、歩き出す

「現場が気になりますから」
「デュランダルを」
「お父様」

 軽く首を振り、意味の無いものだからこそ
 その言葉にリーゼ姉妹は頷き、クロノに渡す……




「この駄々っ子!」

 フェイトが夜天の魔道書に攻撃をしかけるが、それをバリアで防ぐ
 恭也のは元から魔法無効化があるからこそ避けるしかないが

「お前ももう眠ると良い……我がうちで」

 フェイトが光り輝くのをなのはと恭也は見ていた
 地上に降りた瞬間で魔法の早さで相手が上だからこそ、消えていくフェイトになのはは驚く

「なのはっ!」

 恭也の声に瞬時に頭を切り替える
 フェイトちゃんは無事だと……エイミィから大丈夫という声が届いた
 恭也はこれで殺すような事は出来ないと理解する
 相手のうちにあるとすれば、フェイトは無事だが、無事じゃない
 人質も良いところである
 生半可な攻撃では相手の防御を貫けないが
 港まで来ている
 恭也が飛べないからこれが限界だが、高いところまで飛び夜天の魔道書は見つめる
 そんな手段を持っていたのは知らなかった
 恭也本人もそこまで詳しく知ってるわけじゃないのだ

「使いたくは無いのだがな」

 恭也の言葉に反応するかのように、コート部分が再構成される
 一度ちりじりになったと思ったら、その部分が大きな翼になる
 天使の羽……それほどまでに白い

「俺は黒が好きなんだが似合わないからな」

 たったそれだけで地上で戦うことを好む恭也
 その言葉に、シグナムたちは頭を抱えた
 ああ、だからあの恭也が幼い場合は飛んでいたのかと……しかし、翼がないと飛べないとは
 普通に飛んだら良いのにと思ったが、それは違う
 恭也の翼は攻防一体型

「お兄ちゃん、飛べるなら最初から飛んでよ!!!」

 なのはの突っ込みを恭也はスルーする
 これで対等以上に戦えるが、問題は他に多々ある
 吸い込まれたフェイト救出、はやて、夜天の魔道書の救出の二つ
 正直なところ疲労も大きいし

「カートリッジも残り三つ」

 なのはのはカートリッジの消費も激しい
 シャマルは復旧作業へと戻った
 姿を見られて消されては問題だと言った恭也によりだ
 気づいてはいても姿が見えなければ大丈夫だと思った恭也の勘は当たっている
 翼をはためかせ宙に浮いてる恭也
 なのはは隣に浮いてる
 なのはには訴えられていた……レイジングハート自らが
 今のままでは相手に押し切られると
 恭也が居るからどうこうじゃない
 急ぐ必要はあるからだ……崩壊が始ってるのならば、もう急がないと





 その頃、フェイトは夢の中にいた
 アリシアと子犬型アルフが寝ているベットから起きたのだ
 声を掛けられて扉から入ってきたのはリニス
 起きてしばらく変だと感じたのだが、静かに微笑むプレシア
 その近くには恭也の姿もあった……優しく微笑む兄
 プレシアの助手としてリニスと共に行動しているとのこと
 可笑しいからこそフェイトはどうするか考えてしまう
 恭也にこのことを相談する? それとも……アリシアは恭也になついていた
 無碍にしない恭也
 どうしたと聞かれても答えが出せない
 皆が心配そうにフェイトを見つめる
 そんな中でもフェイトはどうして良いか悩み続ける
 バルディッシュも見つからない……不安なども積み重なっていく
 確かに此処ならアリシアと共に居られる
 だけど、現実には……なのはが居て、アリシアと居られない現実がある
 アリシアが居なくなったから、フェイトが生まれた

『フェイトはフェイトだ……俺はそう思ってるが、皆がどう思ってるか分からないが
 俺がそう思ってるだけじゃあ駄目か?』

 それだけで強くなれる気がした
 たったそれだけの事なのに、その人は強い思いをくれた
 なのはの友達としての自分。過去の事と今回のことで自分の心が壊れそうだったのに声をかけてくれた
 それが嬉しかった……優しい人だとも分かった
 会った時から、何故か心を許してしまっていた気がするから
 だからこそ、フェイトは考えていた……此処から出てなのはたちと共にと
 今、確かに幸せではあるが、かけがえの無い幸せもあるから
 アリシアと恭也がフェイトを探して、雨をしのぐために木の下で雨宿りしてるのを見つけ
 近くに座るアリシア、恭也は立っていた
 その二人にフェイトは話す。もう居ないと相手に話すのは辛かった
 だけど、恭也もアリシアも受け止めていく。本来なら居ないという事を
 恭也も此処に居るのとは違うと……それぞれに頷き、金色の光に包まれる
 過去と決別したわけじゃない
 だけど、フェイトはバルディッシュを受け取り、変身する
 元の世界に戻りたいと願うから

「バルディッシュ、ザンバーフォーム」
「イエッサー」

 魔力を帯びた雷が当たりへと満ち、剣に這う

「雷光一閃」

 小さく唱えていく
 涙が流れそうになるのを前を見ることでごまかす
 確かに良い夢だと信じた方が良いから







 その頃暗い中で、はやてと女性が話していた
 夜天の書と……
 眠ってくださいと言う夜天の書にはやては必至に首を振る
 恭也の声が、思いが、なのはの思いと声が、フェイトの声と思いが届くから
 だからこそ、眠りに落ちず、闇の書に溶け込まずに済んでいる
 今は、まだ寝たら駄目だと……

「マスターのいう事は聞かなあかんで」

 その言葉を皮切りにはやては目を開けて、相手をしっかりと見つめる
 確かに眠たさもあった……だけど、今は
 外で戦ってくれてる人たちが居る。自分たちのために……そうじゃなくても

「いう事聞かない子は嫌いやで」

 眠そうでも、辛そうでも、微笑む少女
 そして、外へと通信を飛ばす……何とか防衛プログラム以外の部分を切り離した
 攻撃プログラムの方は動かない
 だから、その間に……と

「夜天の主の名において、汝に新たな名を贈る
 強くささえる者
 幸運の追い風
 祝福のエール」

 一つ一つ刻むようにはやては続けていく




 恭也となのはの戦いは一方的にならずに済んでいた
 まず一つに恭也の近接戦闘の効果が高い事、そして、溜め時間をなくしての
 なのはの攻撃がかすっていること
 ぎりぎりでも避ける
 いくら放とうが、自分の最も酷いダメージまで浸透しないように
 防衛プログラムとしての選択だ
 何より、恭也の攻撃を受けるくらいならと幾度か攻撃を受け止める
 だが、シールドにより防がれてる点で届かない

「ディバインバスター!」

 なのは、幾度目かのバスターはシールドによりはじかれる
 恭也の攻撃を避けて、尚且つ追い詰めても尚、その能力は侮れないものとなりつつある
 何より、舌を巻くのは

「俺の攻撃の型を吸収してるのか?」

 恭也の攻撃方法を見切ってきていることにある
 実際は今まで蓄積した知識全てを総動員してるからというのもある
 フェイトの魔力を吸収されたのが仇となっているのだ
 だが、それでもまだ恭也の方が勝る

「お兄ちゃん」

 なのはは恭也の様子を見ながら、レイジングハートの様子を知らせる
 エクセリオンモードへの変更をと頼んでることを
 壊れる可能性があり、なのはがどれだけ自分の力を抑えられるか次第であるということも

「信じる信じないは自由だが、レイジングハートは信じてるみたいだぞ」

 恭也はそういうと、ため息をつく

「俺に聞かず、自分で答えを出せ……その間くらいは俺が時間を稼ごう」

 なのはは、冷たく聞こえたが、その背中が語っていた
 『なのはなら、大丈夫だ』と……そして、自分が何をぐずっているのだと
 パートナーが答えを導きだして、今、この場に居るのだから

「そうだよね……私が、しっかりしなきゃ
 エクセリオンモード、ドライブ」

 その言葉にレイジングハートも答える
 恭也は背中越しにその様子を知り、少しだけ微笑む
 なのはが成長してると分かるからこそ
 また突き進む……なのはは恭也の補助がありながら
 ディバインバスターを一発至近距離で当てる
 その反動で離れるが、そこには無傷で立っている夜天の書

「そこに居る管理局の方、お願いします」

 はやての言葉になのはは頷いていく……一時的に自動防衛プログラムを止めれば
 管理者として戻るはやての説明にユーノが付け足していく
 全力全開の魔法ダメージを与えたら良いと
 そして、恭也は羽を広げ、離れる
 最後の仕上げのために、恭也は行かなければならないから
 なのはにその様子は分からない
 恭也が離れていったことに気づいてない




「スプラッシュザンバーっ!」
「リィンフォース」
「ブレイクシュート!」





 三人の少女は時を同じくして解き放つ
 ただ三人の少女の願いは似ている内容であった
 それは……友達との朝を迎えるために








 つづく








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