とらいあんぐるハート×マリア様はみているSS









設定……
恭也は三薔薇を知っています(以上)
恭也が高校3年生の秋頃だと思ってください
一応オールエンドで完治してます(何ていうか適当だよなぁ)
というわけでレッツラゴ〜(ちょっと頭が飛んでます)







『薔薇は優雅に咲き誇る10』










「ごきげんよう」

 俺は声をかけられて目がさめた……
 蓉子さんだ……

「おはようございます」
「朝方までしてらしたんですか?」
「いえ、少し休もうと思って、紅茶入れて、休憩してたら寝てしまったみたいです」

 実際は嘘だ……日が昇るのを確認するくらいまで起きていた
 しかも、起きてきたお手伝いの人が驚いたくらいだ
 黙っててもらうが……流石に徹夜とまでは行かなくとも少し休んでくださいといわれて
 椅子に座って目を閉じていたのだ……
 父さんならソファで寝るだろうが、俺はそう寝れる人でもないので
 このままでも十分だろうと思ってのことだった……迷惑になったかもしれない

「あまり無理しないで下さいね……恭也さん、目の下にくまできてますし」
「えっ」

 すでにばればれだった……というか知ってて、言ったのですか?

「恭也さんの事ですから、分かりますよ」
「蓉子さん……ありがとうございます」
「いいえ、でも、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」

 俺はそう言って微笑みを浮かべる
 翠屋での店員はそれなりの笑顔を浮かべないと成り立たないらしい
 かあさんはそう言って皆に出来るだけ笑顔でといっている
 俺もそれについては賛成なので、何も言わないが……しかし、俺までやらされるとは
 何でも周囲に女の子が増えてきたんだから、笑顔くらい努力して出しなさいとの事
 かあさん、こんな笑顔で大丈夫なのでしょうか?
 蓉子さんは赤くなって固まってるし……やはり俺の笑顔は毒なのだろうか?

「えっと、大丈夫ですか?」

 なにやら小声で「卑怯」とか「あんな顔されたら」とか色々聞こえるが

「大丈夫ですわ……恭也さん、私が紅茶を入れますので、ゆっくり休んでてください」
「あ、いえ、俺がしますから」

 そういってお互いに手を出すと、おのずと紅茶のセットのところで手が合わさっていた
 お互いにぴくっと動くが、そのまま重ねられたままだ
 蓉子さんの手は綺麗で、すべすべしている……ほんの少し触れてるだけなのに
 こんなにも華奢で可愛い……確りとしている彼女だが
 手も綺麗だと思う……

「恭也さん……本当に休んでてください
 今日は忙しいと思うので」
「分かりました」

 蓉子さんに言われて、俺はそれを額面どおりに受け取る
 忙しいという言葉を使うということは、大変だという事である
 蓉子さんが大変というのだから、本当の意味合いで大変だという事だ
 俺に教えるときも大変とは一言も漏らさなかった

「恭也さん、王子様として頑張ってください」
「そうですね……これからは姉妹校とかではなく、色々な付き合いがあってもいいと思います
 だから……ふつつか者ですが、頑張らせていただきます」
「はい」

 蓉子さんはそう言って、部屋を出て行く
 手には紅茶のセットが御盆に乗せられている
 本当に気の利く人だよな……俺なんかとは大違いだ

「おはよう〜」

 少し眠そうな目をこすりながら出てくるのは江利子さんと聖さんだ
 速いなと思いつつも時計を見ると、そこまで早くは無いか
 ただ、今日が本番というのもあるのだろう
 忙しい時間をよくぞ此処まで割いたという事だろう
 助かった……俺が文化祭に入るのが凄く遅れてしまい、そのために王子様役も変えたのだから
 かなりの痛手となったと思うのに、二日で全てを整え終わるのだから
 ある意味、彼女たちの技や精神力の強さには感服する

「おはようございます」
「おはよう、恭ちゃん」

 やはり、『恭ちゃん』なのか……あまり、その言葉は好きじゃないのだが
 まぁ、仕方ないか……彼女たちが気に入って呼び始めたのだ
 嫌というわけでもないし、美由希よりドジでも何でもないのでいいだろう

「そうそう、蓉子見なかった? ちょっと祥子が起きなくて
 蓉子に相談しようと思ってたのだけど」
「先ほど、俺の紅茶を入れに行きましたけど」
「えっ?」
「何で?」
「まぁ、色々と事情がありまして」

 頬を掻きながら言うと、彼女たちは頭に?を浮かべてるのか、首をかしげる
 普段の凛とした行動やからかうのを楽しんでる行動にしたら、幼く見える行為
 でも、彼女たちは綺麗で可愛いと再認識させられる……可愛いなと思ってしまう
 年相応よりやや下に見え、でも、その中でも美があり、綺麗だ

「どうかした?」

 少し考え事が過ぎたみたいだ
 体調が大丈夫なのかどうか気にしてるようだ

「いえ、ただ朝からお三方の顔を見れて、少しだけほっとしてるところです
 何ていうか、ほっとするんですよ……蓉子さん、江利子さん、聖さんを見ていると」
「へ〜」
「ちょっと進展したのかな?」
「さぁ、でも嬉しいよね」

 2人はそういってテーブルに近づくが、そのまま通り過ぎた
 ああ、あっちの方向には洗面台があるからな……女性の身支度という事だろう
 大変だな……なのはが髪の毛を結ぶのに苦労してるのを覚えてる
 髪の毛かあさん譲りだからな……

「恭也さん、お待たせしました」
「いえ……あ、朝食までありがとうございます」
「そんな、私も分もありますから、気にしないで下さい」
「あ、でも、もう聖さんと江利子さん起きてらっしゃいますけど」
「……後で取ってきたらいいんじゃないでしょうか? 冷める前に頂かないと悪いですし」

 今日の朝食はトーストと目玉焼き、それとサラダだ
 何ていうか、ヘルシーだな……もう少し欲しいところだ
 と、何故かトーストが3枚乗っている皿が俺の前に置かれる

「あの、おなか空いてるかと思って、ちょっと量を多めに貰ってきたんです
 だから、もしまだ足りないようなら言ってください」
「いえ、十分ですよ」

 そこまで見抜かれると寂しいものがあるな……
 でも、彼女の優しさに甘えて、嬉しいと思えてしまうのも事実
 微妙な心境だ

「頂きます」

 手を合わせて、食べ始める
 蓉子さんは両手の指を絡ませて、祈りをささげる
 マリア様への祈りという事か……

「ありがとうございます、頂きます」

 そして、ご飯を食べ始める
 小さな口に入るトーストやスープ……スプーンからナイフなどの使い方は綺麗で優雅だ
 こういう風に使うのかと再認識させられてしまう
 よくティオレさんやアルバートさんのを見ていたから、見慣れたものだが
 最初の頃は意味がわからなかったな……父さんは知らなかったことだし

「どうかされました?」
「いえ、食べるのが上手だなぁと思って」
「そうですか?」
「はい」

 俺と蓉子さんは2人でご飯を食べていると、気配が近づいてきていた
 2人で、知っている気配……

「「あ〜〜〜」」

 お嬢様とは思えないような声だ……といっても、そこまで大きな声でもないが

「蓉子、ずるい」
「ずるいといわれても」
「もう、何で私たちも呼んでくれないのよ」
「恭也さんがおなかすかせてるかと思うと、先に恭也さんに出してあげたかったのよ
 だから、取りに行ったらあるわよ」

 そういうと、2人はスタスタと歩いていく
 蓉子さんは何か楽しそうだ

「2人とも、朝から元気ね」
「ま、お祭りが好きな方にはああいうのは楽しいでしょうし」
「そうですね」

 今日は文化祭というのを考えるとハイテンションになるのも頷ける
 と、そういえば、気になることがあったんだ

「あの、文化祭なのに、俺が参加してもいいんですか?
 朝から出てもいいといわれたのですけど」
「ええ、それに、志摩子のことや他にも知りたいことありますから」
「そうですか……じゃあ、朝から伺いますね」
「ええ」

 そうこうしてると、ご飯を両手に持って戻ってくる二人
 あ、飲み物も持ってきている
 紅茶だけでなく、ミルクやコーヒーまである

「あまり同じ飲み物だと飽きるかと思って、ちょっと持ってきちゃった」
「ありがとう」
「ありがとうございます」

 お互いにお礼を言って、それをカップを変えてもらう
 何ていうか、こうやって朝からお茶会気分というのも悪くないな
 家ではあわただしさが際立ってしまうから、どうしても味わえないことだ
 俺は食べ終えて、しばらく台本を読みながら、話に耳を傾ける

「今日は忙しくなりそうね」
「ま、恭ちゃん居るからね」
「本当ね……でも、頑張らないとね」
「そうね、折角の文化祭だものね」

 そういって、お互いに話してると、時間的にそろそろ準備に入らないとという時間になった
 ただ、祥子さんが起きてきてない……

「恭也さん、祥子起すの手伝ってくれますか?
 起すの毎回苦労しますので」
「はぁ、でも俺なんかが入っていいんですか?」
「いいのですよ……だって、起きないんだもの」

 蓉子さん、それはどういう意味でですか?

「朝が弱いっていうか、低血圧っていうか、大変よね……
 あの子、普段は確りしてるけど、朝はとことんまで弱いみたいで
 ちょっと心配だわ」

 そういって頬に手を当てて、ふぅとため息をつく
 その様子が変に似合っていて、ちょっと年上の人に見えた
 そして、立ち上がると、俺の横に立ち、俺も立ち上がるように即す
 といっても、言葉にしてないのでいまいちつかめないが

「じゃあ、俺は起してきますね」
「ええ、案内します」
「はい」

 一応、知ってはいるが黙っておく……というのも、部屋の見取り図を全て覚えてるからだ
 何かあったら彼女を守らないといけない
 此処でそれがあっては困るが……警戒するに越したことは無い
 そして、ある部屋の前に立ち止まる
 祥子さんの寝室だ……衣裳部屋もあるが、此処で勉強などもほとんどの生活をする
 ノックをして入る
 蓉子さんもそれをしても起きないと分かってるのか、中に入って俺も入れる

「寝てますね」
「そうですね」

 く〜す〜と寝息を立てる彼女は可愛らしい年相応よりやや下に見える
 可愛いといった感じが本当に似合う……
 凛とした姿が多く見られる彼女だが、やはりそこはそれ、彼女らしいって所だ

「く〜」

 まだ寝るか……そういえば、なのはも朝が弱いな
 でも、起きるし……ということは、なのは以上のつわものか?
 う〜ん、どうしたら起きるだろうか?

「恭也さん、お姫様はキスで目覚めるものです
 よろしくお願いしますね」
「はっ?」

 蓉子さんがニコニコと微笑みを浮かべてる
 というよりも、いたずらっ子のような笑顔だ……
 本当に楽しそうに言うと、お願いしますと言って、じ〜と見る

「マジ?」
「はい、本当にお願いします……むちゅうってやっちゃってください
 初めてかもしれないですけど、お姉さま権限で大丈夫です」
「いや流石に問題では無いでしょうか?」
「祥子なら喜びますよ、きっと」

 そういって、どうぞという風に手を祥子さんに向ける

「もし、しないなら、恭也さんの携帯の中にあるデータが消えますよ」
「え?」

 何故か蓉子さんは携帯を持っていた
 しかも、俺の? 俺のかばんに入ってるものだ
 多分だが……

「させていただきます」

 流石に誰かから電話などがあっても困るからな……
 俺は祥子さんの傍に近寄ると、ふわっと何か香りが漂う
 そっか、祥子さんの香りなんだな……少し安堵する
 俺はそっと彼女の額に掛かってる髪の毛をどかせて、あごに手をかける
 寝息を立てる彼女は穏やかな寝顔があらわになる
 もう一度蓉子さんを見る

「お願いします」

 もしかして、本当に起きないのではないだろうか
 これだけ人の気配や声が聞こえて寝てるというのも凄いものだ
 俺は、ベットに負担をかけて、そのまま彼女の唇に自分のそれを重ねる
 蓉子さんは声も上げずにそのまま見守っているようだ
 お姉さまとしての心配かもしれない……

「ふんっ」

 覚醒が近いのかもしれない……俺は気配を頼りに彼女の頭を何度か撫でる
 さらさらと流れる髪の毛が指から零れ落ちる
 と、顔がぴくっと動く
 俺は目を開いて、離れる

「え、あ、う、え、あ……ふぅ〜」

 祥子さんは一度目を覚ましたようだけど、再度眠りに落ちた

「やっぱり、刺激が強かったかな」
「って、それで俺を呼んだのですか?」
「大丈夫よ……祥子、そんな驚かないでも大丈夫よ
 夢じゃなくて事実だから」
「お姉さま、そんな起し方しないでください」
「あら、普通にやって起きないから起したんじゃない
 それにそろそろ時間よ……ほら、洗面台行くわよ」
「あ、はい」

 そして、祥子さんはそのまま降りる
 ただ、その姿は……あられもない姿というわけじゃないが
 パジャマが着崩れていて、肩が見えていた……ぐっ、綺麗な肌だな
 しかし、俺は彼女にキスなんてして良かったのだろうか?
 流石に問題なんじゃ……寝てないから思考が回ってないのかもしれない

「ふぅ〜」

 部屋を出て行って、俺は祥子さんのベットの上に腰を下ろす
 お姫様が目覚めるって、白雪姫じゃなかったか?
 まぁ、それよりもだ……問題は台詞が大分飛んだような気がする
 お、俺もとちるかもしれないな
 どうしよう、そうなったら……迷惑をかけてしまうかもしれない
 祥子さんの顔見るたびに思い出してしまいそうで
 先ほどの柔らかな唇や髪の毛のさらさら感、それに……彼女の香りまでも……
 ぐっ、正直な自分の体が憎い……
 体を倒してしまう……体全体が柔らかな温かさに包まれる
 祥子さんの体温だろう……それと香り

「む、少し眠い」

 そう言いながらも、このまま寝てしまいたいような……寝たらいけないような
 うつらうつらになっていたのだろう
 時間の経過というものを忘れていた






 誰かの気配がして、起きる……目をあけると、ごそごそと音がしている
 絹すれの音もする……と、目をあけて、周りを確認すると、誰かが着替えてる?
 太陽の光で輪郭が明らかになる……俺はすぐさま目を閉じた
 見たらいけないものを見た気分だ……マリア様はお怒りになるかもしれない

「祥子、ちょっと失礼していい」
「着替え中でよければどうぞ」
「じゃあ、失礼するわよ」

 江利子さんだ……どうかしたのだろうか?

「あ、やっぱり恭ちゃん、此処に居た」

 俺の間近くで声がする
 というか、足元に立っているようだ

「えっ!!」
「恭ちゃん、起きて〜」
「ま、待って下さい……起したら私が見られるじゃないですか!?」
「まぁまぁ、祥子……もし、それで恭ちゃんが責任とってくれるならもうけものよ」
「もう、黄薔薇さま!!」

 すみません、すでに一度拝見させていただきました
 綺麗な白い肌でした……どうしましょうかと密かに悩んだぞ

「とりあえず、待って下さい」
「え〜、でも〜、蓉子が見つけたら、祥子のことなんて気にせずに連れてきてって」
「それでもです」
「まぁまぁ、良いじゃない……ちょっと見られるだけだって」

 それこそ問題なような気がするのは俺の気のせいですか?
 なんてことをふと思うのだが、何も言われない……どうしたらいいのだろうか?
 起きないで寝てる振りをしてよう……流石に問題だ

「とりあえず、恭ちゃん、寝てる振りしなくても大丈夫だよ
 祥子は着替え終わったみたいだし」

 って、気づかれてるーーーーーーー!!!
 俺は何でという風に目を開いて、起き上がる

「きゃぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 けたたましい声が耳に入る
 江利子さん、全く着替え終わってないじゃないですか?
 俺はそんな視線を送るが江利子さんは……

「まさか、本当に起きてるなんて……」
「いや、一応俺は護衛ですから、起きますって」
「でも、このタイミングは痛くない?」
「脳裏に焼き付いちゃいましたよ」
「ま、それはそれで置いておいて、蓉子が呼んでるのは事実だから行くわよ」
「あの、祥子さんはあのままでいいんでしょうか?」

 声を上げて、祥子さんはそのまま倒れた
 といってもベットの上、俺とは反対側に居るので大丈夫だろうが

「後で、蓉子か聖か私が起しに来るわよ」
「じゃあ、お願いします」

 流石に俺が起したら悪いだろうし、混乱するかもしれないからな
 夢だとでも思ってくれるとありがたいのだが……極力顔に出さないようにしないとな
 俺も油断していたのが悪いのだろう
 そして、俺は蓉子さんに会うと最終チェックをする
 といっても、台本を暗記してるかどうかなのだが……






 祥子さんとは結局、起きてから顔を合わした
 何故か頬を赤く染めて、『夢よね』などと言っている
 見られたのは夢だと思い込んでいるようだ
 いい傾向だ
 一応、江利子さんにはお願いしておいた
 これから劇をするのに、険悪な雰囲気とかも悪いだろうから
 その話はまた終わった時にでも話しますって事で……

「『シンデレラよ、私の妻になってくれないか?』」
「『はい、よろこんで』……そして、抱き合って終りね」
「ありがとうございます」
「いいのよ……私たちが巻き込んだんだし……でも、完璧に覚えたみたいで助かるわ」
「そんなことないですよ……緊張して間違うかもしれないので」
「そのときはフォローするわよ」

 そういってそれぞれが頷く
 祥子さんもいつのまにか元のように戻っている
 あれは夢として片付けたようだ……言わない方がいいかもしれない
 ふと、そんなことを考える

「さてと、そろそろ登校しないと間に合わないわね」
「はい」

 皆が皆準備をして、玄関へと向かう
 祥子さんが車の確認をしている……送ってくれるのだろう
 俺は前にのっておこう……面と向かって祥子さんを見るのは恥ずかしいし
 思い出してしまいそうだ……下着に隠されて光の影で見えた、肢体が……
 うっ、脳裏に焼きついたものを、忘れるというのは難しいものなのだな

「今日は俺も一緒に行っていいんですか? 何か入場券みたいなのとかあるのでは?」
「ああ、それにつきましては、私たちの方で恭也さんだけ特別という事で許可を得てますので
 大丈夫ですよ」
「そうなんですか」

 蓉子さんの説明になるほどと納得する
 祥子さんと今日は踊ることになるだろうが……祥子さんも祐巳さんも仲がいいのだから
 このままスールのロザリオを渡せればいいのだが……
 祥子さんも色々と考えるところがるみたいだし

「そういえば、俺は詳しい配役しらないのですけど……」
「そういえば、恭ちゃんは知らないんだっけ?」
「ええ」
「じゃあ、簡単に説明しますね」

 そういって、自らを指して説明をする江利子さん

「私は義理の母役ですよ」
「そういえば、居ませんでしたけど」
「あの時、服の製作手伝っていたからね」

 なるほど
 そして、聖さんが指差して……

「私は王子様役、妹の志摩子は花嫁候補だよ」

 そういえば、居たな……流れてやっていたときは、ところどころ飛ばしながらしてるから
 あまりにも辛い部分が多い

「私は、シンデレラをします」
「私は、妃役よ」
「なるほど……じゃあ、残りは姉の2人と、王様、それに、他の面々で
 ダンスの相手などを務める男性も入るわけですか?」
「そうなるわね……私たちも踊るわけだし」

 そういう事か……俺はシンデレラとだけ踊るわけだから問題は無いわけだが
 あれだな……俺なんかが王子様で良いのだろうか?
 そんな考えが浮かぶのだが

「車の準備できました」
「じゃあ、行きましょう……最終のチェックも残ってるし」
「そうね」

 そして、昼のシンデレラに向けて、それぞれの準備をして車で行くことになった
 明日かあさってには一度海鳴に戻ろう
 仕事につくというのは決まったけど、もし大学を卒業しろなんていわれたら大変だし
 蓉子さんと一緒の大学ということはレベルが馬鹿ほど高いだろう
 いくら一緒に行ってもらうとか言われても、学力不足は否めなさそうだ
 頑張らないと……あまり自信はもてないが、蓉子さんたちと一緒に居たいのだから








 そして、車はリリアン女学園前で止まる……バス停と反対方向につけてくれたのは好都合かもしれない
 人通りは少ないものの、今日のことを考えて早くにくる人が多いかもしれないからだ
 それに俺の顔がバレてる人数は少ないらしい
 そのために今回は本当に最後まで隠しておくつもりらしい
 隠しておいて、誰が王子様か秘密にしておこうというたくらみらしい
 俺はそれに関しては何も言わず、薔薇の館で待っていてくれといわれた
 準備が終わって、王子様役の出番となるまで出来るだけ居てくれといわれた
 まぁ、何かあったら飛んでいけばいいかもしれない
 SPがそこそこに見張ってるし……俺を想ってくれているお姫様たちに何かあれば
 相手を許すことは出来そうに無いな……

「暇だ……台本読もう」

 とりあえず、間違って覚えてたら問題だからな……
 ちゃんと台本を覚えておこう
 流石に、何かあってからでは遅いわけだし
 皆さんはそれぞれがばたばたと走り回っている
 何ていうか、大変だな……俺とは大違いで
 何か手伝おうかと聞いたが、断られたし
 令さんや祐巳さんは逃亡するしな
 悲しいものだ……逃げたというより、赤い顔をして、すぐに用事見つけて出て行くという事だが

「恭ちゃん、ごきげんよう」
「ああ、志摩子……おはよう」

 挨拶を交わした……

「一応、これからしばらくは校内の展示を見て回ったりで、演技は昼になりそうなの」
「そうなんですか」
「ええ」
「じゃあ、俺はどうしましょうか?」
「えっと、その……お姉さまと黄薔薇さま、紅薔薇さまが買い物してます
 祥子さまももうすぐ来るそうです」
「そうなのか……大変だな」
「いいえ、そんなことないです」

 そうなのか……?

「恭ちゃん、しばらく待ってたら、食べ物と飲み物は来ます
 で、多分暇してるだろうからって……久々の再開なら、談話でもしてなさいって
 お姉さまに言われて……何かはなすことってあるのでしょうか?」
「難しいですね」
「本当ですね」

 お互いにそういって少し考える
 そして……一言漏らした

「……志摩子は何か知りたいんじゃないのか?」

 志摩子の体がピクリと動く
 俺はそれを見逃すほどお間抜けじゃない……つもりだ
 それに……ちゃんと見てたら分かる

「何で、人との距離をとらないのですか? 私の時でもとっていたのに」
「なるほど……そういう事か」
「え?」
「俺は距離は置いてるつもりだ……ただ、彼女たちが暖かで、俺の我侭で傍に居てもらってるだけだ」
「そうだったのですか?」
「ああ」

 志摩子は驚いたように言って納得したようだ
 そう、俺もどちらかという人を引き離すほうに部類する
 誰も俺の家庭のことで巻き込みたくないから……
 志摩子は人の仲を大切にはする……ただ、自分が……という考えがあるから

「聖さんと姉妹に居るなら、聖さんに頼っては如何かな?
 俺が言うとダメかもしれないけど、自分のことで一人抱え込まず、少しだけ歩み寄ればいい
 甘えたらいい……受け入れてくれない場合もあるけど
 俺は、それ以上のことをしてだめになった……それで分からないか? 志摩子」
「あっ」

 無理をすれば、体は負担に耐えられない
 どれだけ頑張っても無理難題であることは多い……そう、たとえば、膝が壊れるとか

「俺みたいにはならないでくれ」

 俺は志摩子を昔抱きしめたように抱きしめる
 頭が肩にあたり、柔らかな体が俺の腕の中にある

「恭ちゃん、ありがとう……少しの勇気をもてそう」
「それでいい」

 そして、志摩子は離れて顔を洗いに行ってくるらしい
 確かに、涙が少し流れたのか、目の端に跡があるからだ
 何とかしておかないと、化粧で誤魔化せるがとの事らしい
 時が過ぎて、それぞれが俺の分も持ってかえって来てくれて
 食べながら、時間が過ぎていく
 此処は本部なので、誰か居ないといけないらしい
 そして……昼の2時に……










 つづく











 あとがき
 まてぃ!! 何で続くねん!!?
 シオン「あのさ、自分で書いておいて、それは無いんじゃない」
 いや、自分の意思というか、オラクルを受けてこうなったわけで
 ゆうひ「それって、単に神託受けて、書いてるから分からないと」
 マリア様のお告げじゃないか?
 シオン「どうでもいいけど、それで書いてて問題ないわけ」
 さぁ……どうだろう
 ゆうひ「……問題ありまくりね」
 ま、秋頃に持ってきて、この話を突然浮かんだ自分も自分なんだが
 シオン「シンデレラ忘れて焦っていた人の台詞かそれ?」
 全く……久々に童話なんて読んだぞ
 ゆうひ「で、全容掴んだみたいだけど、大丈夫なの?」
 多分な……でも、自信は全くこれっぽっちも無い
 シオン「おいおい」
 ゆうひ「というか、それで次回ラスト?」
 の予定だけど、予定だけに未定かもしれないな
 シオン「……遊び人、ちょ〜と来なさい」
 ゆうひ「本当ね……来なさい」
 い、いやだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!(ダッシュ逃亡)
 シオン「待ちなさい」
 ゆうひ「まてぃ!!」





 八雲「というわけで、遊び人はお仕置き中です」
 スラりん「あ、テンプルに一撃入った」
 八雲「でわでわ、また〜」
 スラりん「マウントポジションだ……うわ、蹴り上げてから繋ぎえぐっ」
 (遊び人のその後、涙と包帯だらけで原稿の前で手を動かしていたという)



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