『つきは回る3』








 殺した人たちがたくさん居る夢……血溜まりの中、立っている
 でも、もう殺したくなんて無かった……何人殺したかなんて知らない
 でも、むやみやたらと殺してないのが信条だった
 たくさん殺したら、大変だから
 護衛を無視して、標的だけを目指してた
 それでも、数名を殺してしまう……殺さなければ殺されるから
 でも、俺がしている事がいいことでは無いと分かった
 教えてくれたのは、ある人の心を覗いてしまった時
 その人の心は綺麗だった……裏を知りながらも表の美しさを持った人
 ティオレ・クリステラ

「あ!」

 目がさめて、周りを見る
 朝か……

「おはよう、目が覚めたかい」
「ごめんなさい」
「いや、良いよ……どうする、やっぱり此処を出るつもりかい?」
「はい」
「まだ高校生だよ、君は」
「それでも、滝川蛍という人は存在しません
 勿論、俺という人も」
「蛍……」

 美沙斗さんの悲しそうな顔
 俺という存在は地球上探しても、無いのだ
 そう、無い……実際には、居るのに、世界的な政治的な面から見たら無いのだ

「蛍、違うよ……君は存在してるし、戸籍など無くても居るんだ」
「それでも、龍に狙われかねません」
「大丈夫……香港警防隊に所属してる私が居る
 それに、恭也だって、君の本心をはかりかねてるけど、助けてくれるはずだ
 娘の美由希だって」
「それでも、命を狙った人が居ます……だから、近くに居たら駄目なんだと思います」

 布団を取って、自分の服を確認
 知らない服だけど、自分の洋服なんて数着も無い
 下着しかお金かけてないし……下着は枚数合ったほうが良いってだけだけど

「もう出ます……俺は此処でのんびりとしてて、龍に見つかったら」
「周りも殺される」
「……はい」
「相変わらず優しい子だ」
「そんな事無いです……唯一の成功例である俺を逃すと思えないだけです」
「偽装はしたのだろう」
「まぁ、相手の死体は海に入れたし」
「アポートか」
「はい」

 他人を違う場所に送る方法
 深海万メートルの場所に捨てた……血は俺のって事にしておいた
 携帯もかけて、捨てた……持ってても邪魔になるから
 足を掴まれたくないし

「蛍は此処に居るべきだと思う……」
「駄目です……一般の桃子さんやなのはちゃんを護る自信はありません」
「違う! 家族の温かさを知るのは、必要だ」
「その前に奪われるのが怖いですから」

 冷静に話せる自分……分かってる
 此処に居たら、幸せを感じられるだろうこと
 でも、それを知れば、失ってしまうのが怖い

「大丈夫だよ、私だって護るから」
「俺は攻撃しか出来ません……守るとか言っても知りませんし」
「護衛経験が無いのだっけ」
「ええ、それに、守りたいと思える人は全て強かったです
 美沙斗さんも、お母さんも強い人でした」
「そうなのか……知らないとはいえ、すまなかった」

 美沙斗さんは俺を見て、少しだけ考えてる
 何時もの癖なのだろう……軽く頬を掻いてる

「だからこそ、君には家族が要る……また龍みたいなものに戻ってしまうことになる
 それだけは、絶対に避けるべきだ……香港警防隊に入りたいなら20歳を過ぎてからだ」
「元から警防隊には入るつもりないですよ
 ただ、しばらくは身を隠さないとって話ですし」

 やっと脱線が過ぎた?

「だったら、ここでも良いんじゃないのか? 灯台下暗しとも言うしね」
「迷惑になりますよ……」
「良いじゃないか……それに、此処なら君は目立たない
 違うかい? HGSの病院もある
 悪い話じゃないだろう」
「それでも、俺は……」

 髪の毛を撫でられる
 優しい手

「蛍」

 優しく語り掛けてくれる美沙斗さん

「居ていいの? 迷惑になるし」
「良いと思うよ……桃子さんが良いというのだから」
「……全員の許可が下りたら
 全て話したのは数名ですし」
「分かった……じゃあ、その方向でいこう」

 美沙斗さんもそれで頷いた
 俺の汚い部分を知って、良いって言う人は居ないだろう
 さすが、それくらいの常識をわきまえた人が数名は要るはずだ……多分
 頭の中で幾人かが候補に上がるけど、最後の砦はなのはという女の子になる

「とりあえず、もう朝食もできてるだろう」
「分かりました」

 リビングに顔を出すと、確かに小さなといっても、同い年くらいの子たちが料理を作っている
 といっても、此処の家族構成を考えると、レンという子と晶という子

「おはよう、2人とも」
「おはようございます」
「美沙斗さん、お知り合いの方ですよね
 朝ご飯、中華と和風の作ったので、どちらかどうぞ」
「ありがとうございます」

 和風のを取る……中華はたくさん食べたこと無い
 というか、中国に居たことは少なかったから
 日本に逃げて、日本での活動がメインだったし

「中華食べるかと思ってました」
「じゃあ、私が中華を貰おうかな」
「どうぞ……材料が中途半端で」
「いえ、食べられるだけマシですよ……食べられないことが多々ありましたし」
「それは、大変でしたね」
「そうですね」

 真顔で答えて、ご飯を食べる
 白いご飯って久々な気がする……

「そういえな、このお人」
「あ、悪い……滝川蛍って言うんだ……よろしくな
 2人のことは聞いてるから、晶さんとレンさんだよな」
「えっと、はぁ」
「あってますけど」

 顔を見ながら言うと、二人はあっけに取られて応える

「私が説明したんだよ、悪いね」
「いえいえ……ある程度の話は師匠から聞いてます」
「恭也からかい」
「おししょ〜、久々にあんなに話してるの見ました」
「何でも、此処の居候が増えるか増えないかだし、聞いておいて損はないだろうって」

 恭也のやつめ……美沙斗さんが何かしたに違いない
 ちらりと見ると、そっぽを向いてご飯食べてる
 確定だ……いじめだ

「うちらは良いですよ」
「ああ、俺も賛成だ」

 なのはちゃん、頼みます……

「蛍さんが一緒でも、大丈夫ですよ」
「そうですよ」

 2人ともそう言って話してくれるけど……
 それでも、良いのか如何か考えてしまう

「さて、後はなのはちゃんと桃子さんだな」
「美由希さんとフィアッセさんはいいのですか? それにティオレさんだって
 1度は命を狙った相手ですよ」
「全て君が悪いわけじゃない……何より、悪いのは龍であって、君じゃないわ
 ね、蛍ちゃん」

 桃子さん、後ろに立たれると怖いです
 まぁ、それでも分かってましたけど

「なのはもOK出したし、今日から、此処が貴女の家よ」
「でも、服も何も無いんです
 それに、元は敵ですよ」
「あら、それなら美沙斗さんもって事になるわ」
「それに、中学も卒業してないし」
「そんなことはティオレさんたちに任せておいたら良いわよ
 多分、悪いようにはしないわ……帰国子女とでもしておけば、学校だって行けるわよ」

 どこぞの捜査官ですか、貴女は? 桃子さん
 しかもキッパリ言ってくれるから、最初悩んでしまったし

「そんな悪いですよ……普通に何処か仕事探しますから」

 それが妥当だ……私が出来ることは、何処か普通に仕事を探して働く事くらい
 でも、中学も出てないガキを何処が雇ってくれるだろうか?

「あ、忘れてました」

 取り出したるは、自らのお財布
 それとカード

「あの、これ、今日のお宿代とこれからの生活に」
「えっと、通帳見せてもらってもいいのかしら?」
「はい」

 見てもらう

「ん〜、まぁ、こんなものだね」
「あの、美沙斗さん、なんか億まで届いてるのですけど」
「あ、私プラチナカードも持ってますから」

 プラチナカードを見せる……○○会員のプラチナ
 なんであるか……偽造じゃなくて、単に欲しいものがあって、それを買ったためだ
 得点として、会員になれるならって何でもいいって言ったら、プラチナくれた

「お金もちなんだね」
「仕事こなしてたら、そんなものですよ……それに、普段から使わない生活でしたし
 身一つでしてましたから」
「そう……これからは私をお母さんと思って」
「桃子さんは桃子さんですよ」
「ううっ」
「おふぁよう……えっと、蛍さん?」
「はい、おはよう、なのはちゃんであってるよね?」
「はい、高町なのはです」

 お辞儀をして、可愛い子だ
 桃子さんに似ているな……大きくなったら童顔確定かな

「お兄ちゃんから聞きましたけど、私も良いと思います」
「でも、お兄さんの命を狙ってる人かもしれないよ」
「それだったら、なのはの命ありませんから」

 サラリと言ってのける
 確かに、本気モードの俺なら、間違いなく相手を殺すために、周りも殺す

「そうだね……ありがとうね、信用を少しだけでもしてくれて」
「ううん、お兄ちゃんとお母さんがね、変な人なら追い返せば良いって」
「そうだね」

 軽くなのはちゃんの頭をなでる

「なのはちゃんで良いかな?」
「はい」
「いい子いい子」
「えへへ」

 嬉しそうに微笑む……本当に純粋なんだなぁ

「ただいま〜」
「お帰り〜」

 全員が来たことになる
 そして、俺を見て固まる美由希さん……小太刀(練習刀)が俺に向けられる

「母さん、何でこの人がここに居るの!?」
「馬鹿者、この人は龍を抜けたって言っただろうが!!」

 スパーンとスリッパで叩かれる
 緑色の来客専用スリッパ……痛そう

「ううっ、段々突っ込みが酷くなってるよ」

 酷くなってるの?

「で、走ってる最中だったが、いいんだな」
「そりゃあ、美沙斗母さんも良いって言うし、私自身もそこまで悪意があったと思えないし」
「ああ……というわけだ」

 桃子さんが頷く

「晴れて居候ね」
「よろしくお願いします……」

 諦めよう……此処はこういう場所だと
 そして、それが此処だと
 月が回るように、地球も回るし日がそうやって過ぎていく
 時間は止まらない……此処はそういう温かい土地柄って事なんだろう
 この家限定でって事にしておこう

「学校行った方が良いわね」
「でも、俺は一応大学卒くらいの学力は持ってるのですけど」
「じゃあ、飛び級使って恭也と同じ大学に入る?」
「それだったら、護衛プラス逆のことも出来るし」
「そうだね……美由希だと不安だけど、恭也なら大丈夫そうだ」
「でも、16歳のガキが入り込んで良いのか如何か」

 大検受けた方がいいのかな
 あ〜、でも、大学って高校卒の認定書が無いと入れないのでは?
 偽造しちゃえば出来るけど

「ママに聞いておいたら良いのかな」
「ティオレさんなら、多分喜んでしそうだが」
「常識とか、ちょっとぶっ飛んでるものね」

 あの人のはっちゃ気振りは心で見せてもらった
 歌ってるとき、思いは何時も、皆を思っている
 それが凄く綺麗で……俺には無いものだった
 汚く汚れた俺には、無理なもの

「そういえば、病院とか行かなくていいの?」
「ん〜、行くの嫌いだし……医者は凄いなぁとは思うけど」
「とりあえず、大丈夫だとは思うが、今日は病院と買い物ね」
「そうだね」

 桃子さんと美沙斗さんが会話して決めていく
 恭也を見る

「恭也」
「なんだ?」
「おはよ」
「ああ、おはよ」

 周りの反応を見る……美由希さん、レンさん、晶さんがむっとした顔をしている
 もう少しだけからかおう

「昨日は激しくて、寝たのに思い出してしまったわ」

 ギラリと光る剣……う〜ん、さすが双剣の弟子

「な、何を言ってる!? 戦闘のことか?」
「しかも、視姦されるし」

 ……周りの視線が厳しいものになっていく

「視姦ってなぁに?」
「異性の裸や下着姿を見て、感じたり楽しんだりすることよ」
「お兄ちゃんがしたの?」
「ええ、辱められたの……もうお嫁にいけないわ」

 よよよっと崩れ落ちてみる
 教えてくれたのは、美沙斗さんだけど……冗談で教えてくれた
 腕で体を抱きしめて、ううっと下を向く

「冗談に決ってるだろう、俺がそんな事するわけ」
「でも、昨日の夜中、ランニングに乗じて、人の水浴びを見ていた
 しかも、隠せないようにタオルのところで待っていて
 敵同士だったからって、もろに」
「昨日も言ってたわね……そう言う事」
「はい、事実ですから」
「恭ちゃん、そんな事したの!?」
「あれは、たまたま居た位置がそうなだけで」
「でも、見たんだよね」
「うっ」

 事実で否定できないから、考えてる
 俺は、楽しそうだなと納得
 これが家族のやり取りなのかもしれない

「どうかしたの?」
「いえ、温かい家族だなって」
「そう? あなたも家族と思って良いのよ」
「考えておきます……」

 桃子さんの声が優しく自分の心に響き渡る

「さ、今日は病院とか色々行かないとね」
「そうなりますね……えっと、美沙斗さんもご一緒しますか?」
「そうだね……私が一緒しよう
 桃子さんは買い物の時にでも」
「そうね……恭也も着いて行きなさい」
「何故に!? そりゃあ確かに、大学の講義も無いが」
「決ってるじゃない……あんたが一番余裕があるからよ
 美由希やなのはたちは学校だからね……今日は月曜だし」

 日曜に仕事して、あれだものなぁ
 それでも、足りないものがある

「荷物もちくらいしなさい」
「分かったよ」
「女性は得てして買い物に時間かかるのだし、ついでにフィリス先生とこ寄れるでしょ」
「分かった」

 恭也も諦めたようだ……ま、仕方ないよな

「それに、この子、自分の魅力に気づいてないし」
「そうだね……私も最初の頃、凄く手を焼いたよ
 裸で歩き回るし」
「あれは、服が無かったから取りに」
「でも、恥ずかしいくらい感じて欲しかったよ」
「あはは……良いじゃないですか」

 そうは言うけど、思い出す
 ま、今から1年ほど前のことだし……

「皆さん時間大丈夫なんですか?」

 それぞれが時間を確認して、『遅刻だー』と言いながら走っていった
 元気元気……悪いことじゃないし

「ふぅ」

 紅茶を一杯入れて、飲む
 美味しい……ほっと一息
 普段ならありえないね

「さてと、我々も行く準備をしよう」
「そうですね……で、蛍さんも着替えて」
「へっ? 着替え?」
「ああ」

 ……ああ!!

「ないよ」
「何故に無いんだ!?」
「だって、前の事があって死んでることになる人物の服が消えてたら怪しいじゃないですか」
「そのまま放置してきたんだね」
「ええ」

 ま、それが一番だ
 そう思ってるからこそ、下着くらいは手持ちので何とかしたけど
 普段が普段でつかえない……カードは足がつかない方法のひとつで名義変更しておこう
 書類だけでささっと終るだろう
 それくらいの融通が利くカードだし……本人の名前とドライブカードがあれば、可能だ
 自己表明書って言うか、プラチナカードの悪用を避けるためにってもう一枚カードが渡されてる
 それを無くさない限り、悪用は無い
 ちなみに、私はそちらをずっと持っていたわけだから平気というわけ

「しかし、蛍は相変わらずだね……抜けてるというか、何と言うか
 誰かの服を借りるかい?」
「誰から?」
「……」

 周り沈黙
 桃子さんも居ないので、今居るのは、美沙斗さんと恭也のみ

「恭也、服かせ」
「何故に命令形!?」
「まぁまぁ、照れ隠しじゃないかい……とりあえず、貸してあげたらいいじゃないか」
「分かりました
 でも、どんな服がいいんですかね」
「胸は美沙斗さんと変わらないけど、背丈が違いすぎるから
 だぼだぼにして、引きずるから捨てれるの」
「おおぃ」

 恭也が慌てたように言うが無視
 服を貰い着替える……恭也と美沙斗さんは黒
 で、俺も黒なのだが……シャツ一枚でもいけそう

「ワンピースみたい」
「シャツでそれは勘弁してください」
「ズボン、ウェストぶかぶか」
「当たり前だろうが、ほらベルト」
「あ、ども」

 ……借りて着替える
 裾……袖……折まくり
 いくど折っただろうかってくらい

「さ、行こうか」
「はい」
「なんか、どっと疲れた」

 新たな生活が始ろうとしている……まだ見ぬ、知らぬ世界が開けようと
 この町にこれて、此処で出会えたことに初めて神様という存在に感謝しようと思った
 出会える運命に感謝と喜びを……













 つづく












 あとがき
 ながっ!!
 シオン「というか、最後のつづくって」
 よくよく考えたら、これ視点が蛍だったからだ
 ゆうひ「珍しいね、これ」
 ちなみに、滝川蛍って名前はある場所からパクって来た
 シオン「パクって来たの?」
 まぁ、多分だけど……違う名前だった気がするけど
 ゆうひ「おいおい」
 さて、プロフィール公開
 名前、滝川蛍、年齢は17歳で、女性ね、精神的には純情でいたずらっ子
 骨抜き骨接ぎという力を使い相手の骨を折ったりして倒していく武術家
 HGSで名前は追々公開
 シオン「って、こら、重要項目を追々にするな」
 ヒントだしてるし本編読んでたら分かるよ、多分(書いたはずだし)
 で、背は小さいですが、140センチと小柄
 B/W/HはB70/W47/H71と仁村知佳の胸でか、背ちこい版
 髪の毛は案外金髪で目は藍色、顔は可愛い系っと
 服は、何でも着るが、演技も出来るので、意外と親父受けしている
 それがコンプレックスにもなり、襲われそうになったことから相手を叩きのめすことも度々
 ゆうひ「度々なの?」
 まぁ、そう言うシーンかけたらね
 シオン「書けたらかい!?」
 さてと、こんなものかな
 ゆうひ「こんなものって」
 ま、服は着れたらいいっていう無頓着さだ
 シオン「それでいいのかよ」
 いいの
 ゆうひ「小さな頃からそう言う世界にいたらそうかもね」
 だろ
 シオン「他にはとりあえず無しで」
 ああ
 ゆうひ「でわ、また〜」
 ほなね〜(^^)ノシ



高町家に加わった新たな家族。
美姫 「彼女のを巡る物語はこれからどうなるのかしら」
遊び人さん、ありがとうございます。
美姫 「それじゃあ、早速、続きを」
ではでは。



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