『しんげつのかおり2』











「おまたせ〜、桃子さん特性シューよ〜」
「桃子さん、お昼は?」
「ごめんね、一緒に取らせて〜」

 隣に座って、食べ始める
 何気に自分の分とシュークリームが置かれてる
 甘いの嫌いじゃない……後で食べよう
 カルボナーラが先

「それで何を話してるの?」
「その、昔のご飯のことを少々」
「へ〜、何を食べたのか聞いてもいい?
 好きな食べ物とかあるなら、晶ちゃんやレンちゃんも喜ぶし」

 桃子さんはそれとなく気を使ってくれる
 だから、優しい……それがとても嬉しい

「基本的には、携帯食ばかりだったので
 此処の朝食や御昼が凄く美味しくて」
「えっと」
「かあさんが前、間違って俺や美由希の携帯食の更にまずくしたものだ」
「……あれ?」
「ああ」

 どんな物を食べたのか知らないけど、それよりまずいだろう
 俺からしたら、あれもあれで美味な部分があったりするのだけど

「美味しい〜」

 でも、此処のは美味しい……目的なくても寄りそう
 ご飯とかも、教えてもらったのは食べてたけど、それは美沙斗さんからでないと食べなかったし
 美沙斗さんは本当に色々教えてくれた人だから

「は〜、こういう所でバイトできたら幸せかも」
「何で?」
「賄い食美味しそうですから」
「……目的がそれ?」
「食いっぱくれ無さそうですし」
「厳しい生活してたのね」

 ご飯食べるのに、人殺すような仕事してた俺だし
 っていっても、給料良かったし、生活に困ったことは無いけど
 今も多分あるだけ使えば問題なく生きていけるような気が

「うちでのお手伝いとかなら良いわよ、バイトはしばらくしてみてからね」
「お手伝い良いの?」
「してみたかったの?」
「エプロンしたことないから」
「……もう可愛いわね〜」

 横から抱きしめられて頭を撫で撫でと撫でられる

「も、桃子さん、苦しい」
「ああ、ごめんね……でも、貴女可愛すぎだわ」
「それは置いておいて……ご飯食べて買い物にも行かないと」
「ああ、そうだったわ」

 桃子さんもそれに気づいて、すぐさま食べ始める

「しゅーふりーふもふぁふぇふぇね」

 『シュークリームも食べてね』かな?
 口に放り込んで話したんだろうけど……ちょっとかっこ悪い

「高町母よ、それは行儀悪いぞ」
「煩いわね……今日の午後は蛍ちゃんの服を買うんだから」
「カードの変更もしないといけないのですけど」
「そうね……後携帯も持つって」
「はい……前のは壊して捨てましたから」

 流石に服には発信機もついてないだろうし
 携帯にはついてたら困るから捨てた……ぽいって

「そっかそっか……」

 そう言って笑顔で俺を見る

「で、その恰好は何故?」
「実は、服が無くて」
「ということは、今着てるのって」
「恭也の服を……腰だぼだぼ、足も袖も折り曲げました〜」
「なんていうか、小さな女の子が無理やり男性の服を着たように見えたけど
 犯罪的に可愛いわね」
「またまた〜、ご冗談を」

 髪の毛は後ろに流してるから、男とは間違われないだろう

「さ、今日はバンバン行くわよ〜、男を誘惑する服から、普通の私服まで」
「えっと、はぁ」

 とりあえず頷いておく……桃子さんって何処か、こう高町家の弾け体質の保持者だよ
 悪いわけじゃないし、いいのだけど

「1つ貰いますね〜」
「どうぞどうぞ」

 シューを1つかぶりつく
 甘くて美味しい〜、食べれる幸福かな

「美味しい〜、シュークリームってこんなに美味しいものなんですね」
「あら、ありがとう」
「いえ、本当に美味しいです」

 食べてるシューの甘さは本当に美味しい

「恭也は食べないの?」
「俺は甘いの苦手なんだ」
「へ〜」

 頷いておく……手ついたクリーム
 食べ方が粗雑だからかな? 一口では食べてないつもりだけど
 3口で食べたのが駄目だっのかな?
 でも、周り見た時、それくらいで食べてたし

「すみません、美沙斗さん、ナプキン取ってもらえます?」
「ああ」

 クリームを見て、美沙斗さんが頷く
 貰って、クリームを見る……勿体無い気がする
 でも、やっぱり手についたのは……拭くべきなのだろうけど

「恭也」
「なむぐっ」

 指を恭也に入れてみた……甘いの苦手っていうのだから、食えないわけじゃないだろう

「えっと、蛍ちゃん、やることえぐいわね」
「いえ、丁度目の前に憮然としてたので、食事楽しまないとって……体を張ったギャグですよ」
「そろそろ離れてあげたらどうかな」
「ですね……指に舌絡まれたし」

 ……周りは沈黙

「美味しかった?」
「その前に何か言う事があるだろう」
「……『あ〜ん』が欲しかったの?」
「違う!」

 俺を見る

「あ、直接シュークリームが欲しかった?」
「もっと違う」

 やっぱり恭也をからかうのは楽しい
 こう、真面目に返してくるのが

「そっか、ああやって、恭也を苛めるのね」

 桃子さんがなにやらメモ取ってる

「かあさんも何メモを取ってる!?」
「え〜、でも、蛍ちゃんって恭也の事好きなのね」
「嫌いだったら、連れられませんよ〜」
「そう〜、本当可愛いわ〜」

 またなでられた……慣れてるけどね
 でも、お母さんやお父さんが居ない俺には、頭を撫でられるというのは気恥ずかしい
 桃子さんはそれも狙っているのかもしれない

「さ、買い物に行きましょう」

 食べ終えた桃子さんがそう言う
 俺も頷いて

「いこいこ〜」

 喜んで立ち上がる

「恭也、何固まってるの」
「そうだよ、ほら、荷物持ちのお兄さん、行くよ」
「恭也、がんばれ」
「美沙斗さん、止めてくださいよ」
「前から人をからかう癖があるんだよ、彼女は……元々寂しがり屋な所もあって
 ああいう性格なんだろう……良いじゃないか、地の彼女が居てくれたほうが」
「そうですけど」
「桃子さんも、それを見越してああしてるんだろう」

 後ろから声が聞えるけど、外へと出る
 俺は、こんなに多人数で買い物なんて事は無かったし……

「デパートよね、先に」
「はい」

 駅前のデパートは、プラチナ使えるところだから、すぐにカードの書き換えをすませる
 案内板のお姉さんが困った顔しながら、資料を渡してくれて、全てにサインをした
 もう一枚のカードも渡して2枚1組で戻ってくる
 よし、これで、プラチナ使える
 皆さんには服売り場に居てもらうことになってるので、連れて行ってもらう
 場所わからないし……此処のデパートの社長自らが案内してくれるって、意外だ
 行く場所行く場所に人が居るのも多いなって思うけど……ま、このデパートの社長で上は居るらしい
 大変だね〜などと密かに思ってると皆が居る場所発見

「居ましたので、行きますね」
「どうも、これからもごひいきに」
「はい」

 そう言って、離れていく
 居る場所まで行くと、誰って聞かれたので

「此処のデパートの社長……幾つか物買ったけど」
「物?」
「その、生活必需品? 手鏡とか櫛とか……」
「あ〜」

 そういった類の物まで全て捨てたのだ
 これで、完璧とまでいかなくても5割は安全だろう

「色々と捨てたんだね」
「まぁ、手がかりを残さないように頑張りましたから」

 能力でアポートしまくって、色々な所へと飛ばした
 といっても、近場じゃないところってだけで、色々だ……日本国内とか海の中とか
 警察が見ても怪しまれないようにしておかないと、もしも事件とかで取り上げられたら大変だし

「それじゃあ、まず100円均一見る?」
「100円で何でも買えるという奴ですか?」
「そう」
「リボンとかあるなら」
「リボン?」
「ええ、長い髪をどうにかしてるので」
「何時もはポニテとかツインテール、他にも団子にしたりしてたよね
 蛍は髪の毛弄るの好きだから」
「唯一ですね……お母さんがしてるの真似て、一生懸命できるようにしたんです」

 だから、髪の毛を切られる瞬間は悲しい感じがする
 それでも、また伸ばして好きなように遊ぶ
 お手入れはしてないけど……シャンプーとリンス
 後は血液を吸った程度だろう……血の雨を降らせたし

「そっかぁ、私も今度髪の毛触ってもいいかな?」
「してくれるの?」
「ええ、私で良いなら」
「お願いします」
「じゃあ、可愛いリボン探さないとね」

 桃子さんが嬉しそうに俺の手を持っていく
 この人のちょっと強引な所、嫌いじゃないな……何ていうか、優しさに溢れたものだから
 暖かくて……嫌いじゃない
 100円均一のところで、リボンとケースを買う
 後手鏡と櫛もついでに……髪留めも幾つかかって、ゴムも買った
 それだけで2000円くらいかかったけど、美沙斗さんがすっと出してくれた
 出すのに……という視線を送ったら
 気にしないでって目で語ってきたので諦めた

「それでじゃあ、次はメインの服ね」
「お手柔らかにな」

 恭也の手にはすでに小さな袋……リボンなどが入ってるだけだけど
 重たくは無さそうだけど、かさむだろうなぁ

「あ、これは?」
「フォーマルは要りますからね」
「じゃあ、後は、動きやすい服でこれとこれもだね」
「あ、ジーパンだ」
「シャツも要るわよね?」

 そんなこんなで恭也に荷物もちさせる
 お金はプラチナ一枚で、右往左往してる店員を他所に置いていく

「スカートも必要ね」

 そんなこんなで、籠三つ分

「そういえば、寝巻きはどうするんだい?」
「あ、それは頼れるというより、どうしても寝巻きにしたいのがあるので」
「寝巻きにしたいの?」
「ええ」

 というより、意外なことに気づいた
 うん、これは寝巻きにもってこいだ

「なになに?」
「恭也のシャツ」
「……」
「…………」

 桃子さんと美沙斗さんが俺の服を見る
 納得したようだ

「なんか、だぼだぼだけど、気持ち良いんですよね
 こう柔らかさとか、着古したというけど、意外と着心地は悪くないみたいで」
「それを寝巻きにしたいと」
「はい……駄目なら買いますけど」
「いや、悪くないんじゃないかな……それに、捨てようとする服を再利用するのは悪くないし」
「本当ですか!? 良かった……断られたら、下着だけで寝ようかと思いましたよ
 普段寝袋とかだし、服着替えるの面倒とか思ったら着替えなかったし」

 それはそれで問題だろうって視線が美沙斗さんから
 だって、面倒なんだ……あれはあれで

「それじゃあ、次は何があったかしら?」

 桃子さんの傍まで行って耳元で言う

「その下着関係を」
「あら、そういえば、無いのだっけ?」
「数日分なら持ってるのですけど……」

 といっても、あるのは本当にあと1日分くらい
 洗濯なんて余裕が無いし……コインランドリー行けばいいのだけど
 それこそ難しい

「さ、恭也行くわよ」
「あ、ああ」

 荷物をたくさん持っている恭也
 まぁ、良いか……

「あんたは此処で待ってなさい」
「何故に?」
「どうせ、荷物持ってて重たいから休みたいでしょう
 それに、これから行くところにあんたが居たら」
「恭也のスケベ」
「って事になるわよ」

 1度、腰を肘で突付かれた

「了解しました」

 婦人服の端っこにある下着売り場
 でも、ブラするほど胸ないし、サラシとかあったら、さらし巻こうかな
 でも、美沙斗さんがブラしないと駄目って言ってたし

「さ、買うわよ〜」

 桃子さんに言われて、カードでがんがん買う
 黒とか白とか透けてるのとか、妖艶なのから清純なのまで色々
 というか、レース見えちゃいますよ
 アンダーが……恥ずかしいですって
 恭也には見られて、すっごく恥ずかしかったし
 もしも、相手が本気で殺すつもりなら殺してただろうな
 何で殺す気も湧かなかったけど

「どうかしたの?」
「いいえ……でも、こんなにも要るのですか?」
「そういえば、最後にこれも買った方が良いわね」

 そう言われて、見せられたのはドレス
 綺麗なものが並んでいる

「似合わなさそう」
「大丈夫だよ……恭也にもきてもらうね」
「ええ、お願いします美沙斗さん」

 桃子さんとドレスを選ぶ
 服も多々選んで、今尚この元気のよさは羨ましい
 恭也らもきて、ドレスを幾つか取る

「試着しても良い?」
「どうぞ、此方になります」

 案内されて、着替える……う〜ん、全部脱がないと着れない
 やっぱり体小さいし、似合わないかも……
 140しか無いし……
 ドレスを着て、背中のジッパーを上げる
 白のふわりと広がるタイプのスカート……そして、白の布の上
 てぶくろもして……

「桃子さ〜ん、これ、花嫁衣裳みたいですよ」
「あら、可愛いわ」
「本当だね……結婚式の新婦みたいだよ」
「冗談ですよね?」
「でも、本当、似合うわ」

 そう言われて、照れてしまって恭也と目があった

「似合ってるぞ」

 まさかこいつが、こんなこと言うとは!? 驚きだ

「恭也、病気?」
「違う、かあさんが前、女性の服選びはちゃんと感想言えって言ってたから参考にしただけだ」

 なるほど〜

「ん〜、でも、その翠色のドレスと白いケープ
 黒と紫のも惹かれてるんですよね……その三つとも買おうかなぁ」
「蛍は普段買わないものだし、目移りもするのだろうね」
「そうなんですけどね……ま、良いか
 持つのは恭也だし」
「まてぃ! 全部持たせるつもりか? 今でも両手一杯なんだが」
「あ、大丈夫……ちゃんと俺も持つし」

 にこやかに言って、幾つか荷物を取り上げる

「それに、あまり無理させて、フィリスさんに怒られるのは嫌だから」
「って、そっちなのか?」
「ええ」

 といっても、ドレスを三つもプラスに幾つかの小物とかもあわせたら結構な荷物だ
 送ってもらうと言っても、今日から使う物も幾つかあるから、どうしようもないか

「さて、これで終わりかしら?」
「そうですね……あの、桃子さん」
「なに?」
「えっと、ごめんなさい、やっぱり良いです」
「そう」

 桃子さんはどうかしたのって顔をして、見てる
 でも、どうにもしようが無い事もある
 レシートを1つにしてもらい、見ると400万ほど飛んでいた
 ま、良いか……どうせ、こんなに買うことは少ないから

「どうもです」

 サインをした……

「じゃあ、帰りましょうか」
「桃子さん、お仕事は?」
「あ、そういえば、夜には一度戻らないと」
「ありがとうございます……桃子さんが居なかったら、3人で悩んでたかもしれないし」
「何言ってるの……これからは家族みたいなものでしょ
 それに、蛍ちゃんを着せ替え人形に出来た嬉しかったわ」

 そういって嬉しそうな桃子さん
 今にも歌でも歌いそう
 外に出てふと考える

「車要ったかな?」
「そうね〜、でも、恭也が持ってくれてるし、先に帰ってたら良いわよ」
「分かりました」

 美沙斗さんと恭也と俺とで帰る
 桃子さんとは翠屋の前で別れた

「そういえば、蛍」
「なんです?」
「言葉、男言葉たまに使ってるんだ、まだ」
「う〜ん、癖でしたからね……一応、普通に戻せますよ
 私って言うのが少し気恥ずかしいだけで」
「可愛いのだし、私のように話したら良いんだよ」
「ん〜」

 少し上を向いて考える
 でもなぁ、男の言葉の方がよってこないし

「街中歩くと、ナンパとかの手合いが多くて……邪魔だから、男言葉なら、小学生で通るかなぁって」
「無茶苦茶な理屈だけど、それで通りそうなのが怖いね」

 美沙斗さんが苦笑いしながら応えていく
 恭也は後ろからゆっくりとだけどついてきてくれてる
 といっても、俺と美沙斗さんが歩調をあわせてるだけだけど
 家までついて、ふと思い出したことを聞いて見た

「そういえば、部屋ってどうするんですか? 美沙斗さんの部屋は駄目でしょうし」
「あ、そういえば、私も知らない」
「俺も知らないぞ」

 玄関を開けて、荷物を入れる
 何処か部屋ないかな……マンションでも借りたらいいか
 そしたら少しは楽に出来るかも

「とりあえず居間に置いておいて、後々聞いてみよう」
「じゃあ、桃子さんのところまで行きませんか? 荷物だけ置いておいて」
「それは良いね……デザートも食べれるだろうし」
「いや、多分忙しいから無理だな」
「じゃあ、辞めておこう……此処で恭也が居ないのは辛い」

 恭也も手伝ってたのか……ま、家が喫茶店なら助け合うよな
 勿論、他の事でも、周りが手助けしてるのだろう
 なのはちゃんが働いてる姿ってのも微笑ましいものがあるし

「とりあえず、今回はどうしますか?」
「そうだなぁ……此処で待つか?」

 大人しく家でのんびりというのも良いな……普段ない事だし
 そういえば、家の間取りは知ってるけど、恭也のある物を見たかったんだ

「恭也」
「なんだ? 鍛錬なら駄目だぞ、今朝注意されたばかりで」
「違う……人を何だと思ってるんだ」
「すまん」

 謝らなくても良いが

「謝るくらいなら、お前が持ってる盆栽とやらを見せてくれ」
「盆栽を?」
「蛍はそっちに興味があるのかい?」
「いや、単にお庭に出れる趣味を何か考えただけ
 縁側に座ってのんびりなんてすぐ飽きそうだから」
「なるほどな」

 それに荷物は袋詰と箱詰と相当量あるから……誰か帰ってきたら聞くという方向性は変わらない
 恭也もそれで良いかと思ってるみたいだし
 リア−フィンの力を蓄えるのに、光は必須だ……ま、溜めておくと言っても微々たる量だし
 使うのは、本当に困ったときのみとかで対応してたからな
 そのおかげで、キリングドールがHGSという話はほとんど流れてない
 裏ではそれこそ良い事なのだ……ま、見た奴は殺してたし、例外は目の前に居た2人のみ
 美沙斗さんは仲間だし、恭也は、何故か殺す気が無かった
 ま、元々逃げて戻るつもりだったし、時間が稼げたら良しだから

「こっちだ」

 案内された場所はお庭の一角
 光が注いでる中、ある盆栽の数々
 たくさんあるわけじゃないが、恭也が育ててきたものがほとんどだろう






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