『朧月の眠り6』
















 私が2人に抱きしめられてる間に、恭也と士郎くんの2人は

「いや、だから、引き止めるためにね」
「それでも、乙女の唇奪ったって」
「いや、だが」

 盗聴器の1つを取り外し逃したらしい……幾つ仕掛けていたのやら

「蛍お姉ちゃんも何処か行くの?」
「2人に止められたしね……それに、答えを出さないと、絶対に逃してくれなさそうだから」
「蛍お姉ちゃんモテモテさんだ」
「なのはちゃんは、たった一人の人に愛されてるでしょ?」
「えへへ〜」

 照れて赤くなるなのはちゃん
 電気はつけられて明るくなる

「まさか、士郎兄さんまであんな手段するなんて」
「何気に激しかったですよね……」
「そうだね……あれは、あれで、蛍が可愛そうだよ」
「聞いてるなよ!! そんな生中継!!」
「そ、そうだぞ……流石に人のを聞いてるなんて悪趣味だ」

 でも、2人ともノリノリだったような気がするよ
 私は、凄く逃げようとしても抑えて……しかも、逃れられないようにして

「蛍って呼んでいい?」
「はい」
「私のことは、知佳お姉ちゃんって」
「嫌です」
「ううっ」

 だから、如何してそこでうめくのですか?
 私は妹じゃないし、こんな血塗れの妹なんて要らないでしょうが……

「知佳さんなら、結婚した人の妹さんとか居ますよ、きっと」
「そんな事より、先に妹が欲しいんだよ〜
 それに、折角長期休暇貰ったのに、一月ほど……前の事件で大分休暇が取れなかったからね」

 ああ、あの大災害か……そっか、私たちの方にはその前の分の報告しか回ってなかったのか
 優先的に私は回してもらっていたのであるのだから、当たり前といえば当たり前だ
 それに、あちら側としても、私が敵となるのは痛かったから、出来るだけ避けていたように見える

「ん〜、可愛い〜
 しかも、男性二人に詰め寄られて、半分泣いてるときなんて犯罪的な可愛さだわ」

 知佳さんってこんな人なのか?
 いや、まぁ、私も可愛いものが好きだし……否定は出来ないけど
 抱きついたままなのが少しだけ不安だけど……
 小さな声で聞かれた

「どっちが好きなのかなぁ? それとも選べないかな」

 楽しそうに言い切っている知佳さん
 本当に楽しそうだ……お互いが分かるからこそ、今でも簡単に話しの乗ってくるし
 何かしらしようと声をかけてくれる……真雪さんに何が起きたかも分からないけど

「熱烈な告白されたのに、答えを待ってもらうなんて、意外と純情さんなんだね」
「知佳さん、彼氏は居ないんですか?」

 ……きちっと答えておいた
 私は、今のことで精一杯だから、今更告白なんてされてもなんて事を

「私の妹に苛められたよ〜〜〜〜〜」

 そっちなの? 苛められたって……私の方が先に苛められてた気がするのだけど
 それに、妹はすでに確定なの? そりゃあ、遺伝的に見れば、双子って事になるのかな?
 に近しい存在って事なんだろうけど……生まれてきた母親とかが違うだけで
 まぁ、ほとんど変わらないとも取れるね

「知佳さんが、最初に変なこと言うからでしょう!!
 私は、ただ彼氏いないのかなぁって」
「ふぅんだ、どうせいないですよ〜だ」
「行かず後家?」

 私を抱きしめる力が強くなった

「痛いですって」
「そんな事言う子にはお仕置きだよ」
「私だって、知佳さんの過去を多少は知ってるんですよ」
「私だって、蛍の過去を知ってるものね」

 ……お互いににらみ合う……それが、やはり同じ者としての宿命なのかもしれない
 ディスティニーって事だ……

「とりあえず不毛なことは辞めておきましょう……首を絞めるだけです」
「そうだね……でも、あまりムリしたら駄目だよ
 私だって心配はするんだから……」
「ごめんなさい」

 とりあえず謝っておいた……もう、如何いわれても仕方ない所まで来ている
 それに、この人は私と同じだから……私が知佳さんの分身だから
 年下だし、双子の妹……遺伝子により生まれた双子の片割れだ

「く〜」

 なのはちゃんは私の服を握って寝ている……眠かったのに起きていたからだ
 そして、分かっていたのだろう……こうしたら逃げないということも……
 抱きついて寝てるなのはちゃんに、私は手の拘束を解いてもらいたくて恭也と士郎くんを見る

「士郎くんでも恭也くんでもどっちでも良いから、拘束とって」
「どこかに行ったりないか?」
「逃げたりしないよな?」

 光がある時点で逃げるって……この光なら、羽で飛ぶというのもありだ

「逃げないよ……2人の気持ちが痛いほど分かったし」
「ほっ」
「それは、良かった……」

 2人とも安堵の表情を浮べて、私の手の拘束を丁寧に解いてくれる
 髪の毛を1つに纏めて、先ほどの拘束の鋼糸で後ろで纏める

「うわっ、凄いね……」
「何が?」
「ほら、ポニテ……何ていうか、可愛いよ〜」
「あまり騒がないで下さいね」

 座らされている状態だし……羽を出して、毛布をアポートさせる
 とりあえず、なのはちゃんのためだ……私を逃がしたくないと思ってくれてる子のために残ろう
 そして、護れるだけ護ろう……逃げていたら駄目だといわれたし
 2人が追いかけてきたら、悲しむ人が更に増えてしまう
 それに……

「お姉ちゃん」

 こんなに慕ってくれてる子が居るのに、何も出来ないのは悪いじゃないか
 なのはちゃんは、私を本当の姉のように慕ってくれてるのだから

「なのはが珍しいわね……あんなに慕うなんて
 人見知りする子だと思ってたのだけど」
「違いますよ……なのはちゃんは、人を見る目があるんです
 多分、恭也や士郎くんの影響でしょうし、桃子さんの影響でしょうけど……」
「じゃあ、貴女は自分がいい人だと理解してるの?」
「違います……なのはちゃんは、誰が自分を護ってくれるか……
 それを理解してるんです……だから、私はなのはちゃんに危害を加えないから大丈夫
 そう言う事なんですよ」

 ……そう言う事だ……なのはちゃんは自分を護る、大丈夫と思う相手なら懐いていく
 それは、久遠も同じだと思う……

「そう……でも、良く分かってるわね……」
「私は、HGSですから……わかりたくない事までわかってしまって
 人の心を読んじゃうような悪魔のような人ですから」
「でもね、白い私と同じリア−フィンは、私と同じでないと発現しない……違う?」
「そうですね……心の持ちようだと聞いてます」
「そう……だったら、蛍は、私と同じであるって事だよね」

 純白の翼の天使……金色に光り輝くとかは無理でも、そう言う事が出来るということだ

「自分のしたことを悔いするのは悪い事じゃないわ……
 だからこそ、蛍は人生をやり直すために、組織を抜けたのでしょう」
「……ティオレさん」
「それに、綺麗な翼だったわ……白い、本当に純白だと思える翼
 光り輝く翼だったわ……それが何よりの証拠よ」

 ……そこまで言われたら納得するしかない

「この悪魔みたいな性格の蛍が純白とか言われると、凄く理不尽な気がする」
「まぁ、だが、これでも良い所もたくさんあるからな
 それに、蛍は本当に善悪が難しい所にいたんだ
 龍からしたら、あくどいことしてる奴らを殺してたことになるし
 蛍からしても、心を読んじゃうと、よどみなく相手を殺していく
 ただ、ティオレの時は違ったのだろうな……」
「そう言う事ね……だからこそ、私は生き残っていたとも取れるわね」

 ティオレさんは私を見て微笑みを浮かべる
 私は、なのはちゃんの頭を軽くなでる……ありがとうね
 心配してくれて嬉しかったよ……私は、皆が思ってくれてるほど強くないし
 こんなに強く思われてなら、私は残るべきだったのに
 引き止められたし……

「仕方ないなぁ」

 そう呟くしかなかった
 もう、私には此処に居る意外の道は無いようにも思えて、出て行こうと思えば
 出て行けるのに、此処が居場所だと……

「ふふっ、蛍は恭也と似てるわね」
「……かもしれないですね」

 そう答えておく……どっちでも良いよ
 誰かと似てるとか、誰かと似てないとか……散々弄ばれたわけだし

「士郎と恭也が取り合いね……楽しそうね」
「楽しくなんて無い……恋敵が息子だぞ」
「俺も同じくだ……恋敵が年下の父親(仮)だぞ」
「なんだ、その仮ってのは?」
「いや、だって、遺伝子同じでも、記憶持ってても、仮になるんじゃないのか?」
「それはそうだが……」

 そう言って、不服そうな口調になる
 まぁ、私や士郎にとっては名前なんて物はなくてもあってもどっちでもいいのだ
 単なる認識をはっきりするためのもの
 だからこそ、士郎くんと私が呼ぶのは、2人で居る時だけ
 他の時は、何も言わない……それに、他の誰かが居る時に、士郎くんなんて呼んだら厄介だから

「だがな、恭也……良く考えてみろ……相手はあの蛍だ
 幾人の男を間違った道に引きずるかわかったものじゃない……此処は早めに落とすことをお勧めだ」
「それについては否定しない……大学でもすでに幾人かが落ちてるだろう」

 何の話だ、何の……理解はしてるが
 人を危ない先駆者みたいに言うな……私が全て悪いみたいじゃないか
 大学行って思ったのは、思ったより人が多かったことかな
 うん、あれはあれでいい経験になったし、お寿司おいしかったなぁ

「なのはちゃんとお寿司でも食べたいな……今度、赤星くんとこ連れてこ」

 なのはちゃんの頭は温かくサラサラだ
 折角、私を待っていてくれたのだ……それくらい御礼でしても良いだろう
 甘いものの方が良いかな?
 ん〜、以前食べた甘くて美味しいものなぁ
 私はあまり美味しいものって食べた記憶が無いから……
 晶さんやレンさんの食べ物の方が美味しく感じるし

「翠屋だと食べ飽きてるだろうし、たまには高級なのを」
「なのはを何処に?」
「いえ、折角待っていてくれたから……御礼を」
「私には?」
「桃子さんは大人でしょうが」

 私より倍生きてる大人なんだから、わかってください

「私にも無いのかしら?」
「ティオレさんを連れて行ったら、間違いなく周りが倒れちゃいます」
「そうね……それに、イリヤに場所がばれちゃうわ」

 だから、あまり動かないって事か
 そのほうが良いだろうな……エリスさんも護り易いだろう
 恭也たちも気は張ってるだろうし
 美沙斗さんも居るから

「私には無いのかな?」
「姉というなら、私に奢ってみやがれ」
「そうね……じゃあ、今度、一緒に買い物でも行こう
 何時でも良いし、私はお休みだから」
「わかりましたよ……その代わり」

 知佳さんに一言言う
 これはとても重要なことだから

「私も何か奢ります……これでも、お金持ちですし」
「ん〜、わかった……そういえば、お金持ちってどれくらい持ってるの?」
「小国の国家予算くらいは」
「……ごめん、もう一度」
「小国の国家予算程度」
「はぁ、予想以上だね」
「使わないんですよ……お金って、あまり
 本物になればなるほど、自己鍛錬とか、後は、本当に趣味に走るんです
 殺人狂とかなら、変な所で拘るからお金かかるけど
 私や士郎くんは身一つでするから、尚更かからない
 低コストなんです……その分1人殺したら、しばらくはゆっくりと出来ますけどね」

 まぁ、休みが無いといえば無いのだけどね
 なんせ、そのままでも香港警防隊やらが襲ってくる場合もあるのだし
 余裕なんてあるわけが無い

「とりあえず、そろそろ寝ませんか? 私も寝ますし
 どこかに行ったりとかしませんから」

 そう言っても聞いてもらえるかどうか微妙だ
 それでも、言う必要がある

「わかった……蛍がそう言うなら、信じよう」
「ありがと」

 それはそれで感謝すべきことだ
 しかも、それを言ったのは恭也だ

「我侭馬鹿娘が最初から出て行くとかなければよかったのに」
「そう言うな……蛍にとっては、当たり前の行動でも
 家族からしたら、可笑しく写ることもあるさ……それに、蛍には家族と呼べる人はすでに居ない
 自らの手で」
「士郎くん」
「すみません」

 ま、良いか……誰も言わないだろう

「美沙斗さんは知ってると思うけど、私のご両親はいない
 お父さんは勿論居ないのは分かってるけど、問題はお母さんだった
 お母さんは私を護るために死んだ……でも、それは、展開された羽の力によってだった
 暴走という暴力により」

 それは忘れてはならない現実
 暴走すれば、私は間違いなく、回りを全て破滅させる
 だからこ、そのために、自らを高めたかった
 拳法はその中で学んだこと

「私はね、力の暴走で初めて、力を使い
 それにより、自分の母親を殺したの……翼が黒くなったのは、そのとき
 止められない力により、自分の心が負に染まった
 でも、私が落ち着いてきて、力を使えるようになったときに羽根は白く輝いた」

 そして、その特性は元の倍以上の働きをするようになった
 『己を憎むな……己を攻めるな……お主は良く頑張っておる、それは私が認める』
 師匠はそう言って、私を褒めてくださる……もう、居ない師匠
 居たら何を言えば良いのだろうか? 今、大学通ってま〜すって言えばいいのかな

「じゃあ、私はなのはちゃんと寝てるから……此処でしか寝れそうに無いし」
「そうか……じゃあ、俺も」
「恭也が変なことしないように、俺も」

 えっと

「じゃあ、お願いね」

 皆、正常な思考を持ってるなら……こういうのは、ちょっと
 流石に今、3人一緒ってのはちょっと
 なのはちゃんは寝てるので、除外させてもらう
 失礼だけど

「近づいてきたら、怒るからね」
「分かってるよ」
「そうそう……布団とか持ってくる」
「わかったわ」

 なのはちゃんの寝る場所がすでに私の服を握ってるので仕方ないからそのまま私も眠る
 服は着替えたら良いだろう
 明日の講義は昼からだったはずだ……どの講義出ても良いって言ってるし
 恭也の方が問題だろうけど

「おやすみ」
「って、そのまま眠るつもりか?」
「なのはちゃんが寝てるし……私にかけたら、起きちゃうかもしれないし」

 それはそれで困るから

「ああ、もう、わかった」

 そして、2人は扉のところを陣取って眠る
 本当に出ていかさないつもりだ
 もう出て行かないよ……

「おやすみ」
「「おやすみ」」

 二つの声があがり、私はそのまま瞼を閉じる
 これから、2人がどうするかなんてわからないけど
 体力回復というか、寝てないとね……力を全て使い切ったといえば使いきってたのか
 だから、かなり疲れていた
 もう、寝よう……






 翌朝……私は、悲鳴をあげて、周りの人をたたき起こす結果となった
 それは……恭也と士郎くんの2人が私に添い寝をしていたから
 なのはちゃんは私に抱きつく形で寝ていたために
 足に引っ付いてる
 2人がなにやら言い訳っぽいことを言っているが、大きな貸しだ
 後々利用させてもらおう……

「お嫁にいけない」

 なんて事を言ったら、二人ともにやりと笑って

「「俺がもらってやるから安心しろ」」

 何て事を開けっぴろげて言ってくれるものだから、周りは呆然としていた
 私は、もう、どう言ったら良いのか悩んでしまい
 暢気に寝れるなのはちゃんを羨ましいと思ったくらい
 そして、私と恭也と士郎くんの恋物語が始るのかな?








 つづく









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