『満月の微笑み』





 恭也と士郎くんに告白されてから(しかも、たくさんの人の前)
 私の日常は一変するかと思ったけど、そこまで変わらなかった……
 何か変わるなら、どうにかしないとって思ったけど、そこまで変わらないのでホッと一安心
 周りの女性からの声とか、色々と……逆に心配されたくらいだ
 2人とも武術の達人クラス……そのために、襲われでもしたら、対応の仕様が無いとか
 そっち方面で心配された……ティオレさんも『養生よ』と言って日本に残ってるし
 有名人の多い海鳴だからこそ、言い訳通るけど……フィリス先生が張り切っていたし

「う〜ん、大学生も楽じゃないね〜」

 レポートを仕上げて、私は伸びをする……テーブルには、確りと本が積み上げられてる
 確か、イギリス史に寄るなんたらとかいうテーマで書かれた小論文だ
 といっても、提出レポートなので、これを出せば、休みはゲット
 試験だしね……私が来た時期が時期なので、試験までの時間も早い
 冬休みというか、春休みをゲットするのには、出さないといけないものらしい
 まぁ、私はどっちでも良いよと言われてるのだけどね……出さないといけないだろう
 あの告白されてから数ヶ月……答えを出さずじらして数ヶ月
 決めきれない私に、2人は待ってるからとしか言わない
 それが、私にとっては苦渋の選択だ……
 もうすぐ17歳
 私の誕生日は、冬から春にかけての2月の終わりにある
 その頃には答えを出したい……結婚するならしても良いと思っている
 あの時から、私は少女らしい思考というのがわかってきていた……本も読んでるし
 それに……周りから答えを急いでねみたいな言葉が良くかけられてる
 桃子さんが孫を急いてるとも言えるけど……ティオレさんも同じく
 恭也は相変わらず鈍感っぷりを発揮してるし……

「コーヒーでも入れようっと」

 ただいま、家に居て、レポート仕上げ終わったところ
 家には、恭也が居る……士郎くんは翠屋で店員として働いてる
 いいのかなぁなんて最初思ったけど、意外や意外で楽しんでるらしい
 桃子さんと楽しんでるなら、それはそれで良いかな
 少し寂しいけど……体術、気術に関しては、私も教えてる方だし、一緒に鍛錬を積む
 まぁ、今恭也はレポートを作成真っ只中だろう
 コーヒーを入れて、のんびりと一服

「はぁ〜」

 ため息も出てくるものだ……私の部屋は客間となった
 知佳さんは……私を偉く気に入って、日本の災害対策の方へと勤め先を変えたらしい
 というか、あったから戻って来たって言っていた
 此処最近になって出来たらしく、自衛隊とは違い、独自の方法で、災害を選出
 先に先にって行動していくタイプの独自先行型の災害救助隊

「知佳さんもがんばってるんだろうなぁ」

 地震大国の日本ならではの考えもあったり、台風や雪などの場合に備えてで
 あちらでの経験が色々と手助けしてくれるということで、知佳さんはチーフになってるらしい
 毎日忙しそうで……たまに愚痴のメールが入ってくる
 聞いてくれる人が居ると安心するって言っていたし
 身近な人を助けられるなら、それはそれで良いって言っていた……
 さてと、レポートも終ったし、後片付もしないとね……コーヒーをテーブルに置いて、資料を片付ける
 と、ドアのところに気配がしてみると、目の下に大きなくまを作った恭也が立っていた
 最近鍛錬とレポートで大変そうだもんね〜

「蛍」
「何?」
「手伝ってくれ……意味がサッパリ分からん」
「……はい?」

 何の話をしてるのだか?

「いや、これ」

 そういって出されたタイトルは、フランス語で書かれており
 そりゃあ、わかんね〜べさ……って程、難しい題材だった
 そっか、恭也の題材は『仏蘭西史』だったんだ……

「読めないと」

 コクコク頷く恭也……いや、これはこれで大変だぁね

「最初の前文訳すので、3時間……徒労に終った」
「えっと……」

 助けてあげた方が良いよね……しかも、フランス語って事となると
 ティオレさんは多分話せないだろうし、書くことなんてもってのほか
 と言う事は、他の人は当てにならないし、私しか居ないって事か

「ま、良いよ……私は終ったし」
「終ったのか?」
「当たり前……でなきゃあ、手伝うなんてしないよ
 で、どこら辺りから教えて欲しいの?」
「実は、革命前と後に関わる、あたりをレポートに」
「はいはいっと」

 目次を開けて、その辺りから調べて和訳していく
 全く、何で古文は得意なのに、こういう部類は苦手なんだろう
 古文書とか読めるのが不思議なくらいだ……日本語だけど
 私も、古文を多少はたしなんだ……っていっても、今回の試験科目にあるのだ
 レポートで丸々一冊の本なんでも良いから、現代語訳してくるようにってものだったので終ってある
 恭也もそれは終えてるだろう

「わかった?」
「あ、ああ……なんていうか、俺の3時間は何処へって感じだが」

 ……前文は本当に大したこと書いてなかった
 いや、何ていうか、注意書きにも等しいものだった
 それがフランス語で書かれてるのだから、恭也としては頑張ったのだろう
 いや、何ていうかかわいそうである
 外語が確か4つ取らないといけなくて、英語、フランス語、イタリア語、中国語って感じだったな
 まぁ、英語二つして、他二つとか、英語を三つして、英語検定の準1級を取ったら良いとかあった気がする
 で、他一つとか……まぁ、この世界史みたいな科目は古代とかじゃなく、最近のことがメインだから
 大変といえば大変なのだろうね

「終った?」
「ああ」

 レポートを書き終えて、恭也はほっと一息
 パソコン入力は学園でしてるからだ……ちなみに、忍さんや私が居ないとしない
 実際、前は間違って、自分のデータを消して困っていたし
 打ち込みが間に合わないとか言う事で、恭也のレポートを忍さんがパソコンに打ち込んでいた
 そっちの方が字が綺麗だしとか色々あるのだ

「後は打ち込みだから、明日で何とか提出できるね」
「後は、試験のみか」
「大変だね〜」
「お前も受けろよ」
「嫌だよ、面倒だし……なんで紙に書かないといけないのか本当に考えちゃうんだから」

 面倒というか、わざわざペーパーテストする理由が無いから
 それに、私は元の大学在籍のあれはあるし、院生にもなったし、博士課程も通ったって事になってる
 だからこそだけど、それなりの学力もあるつもりだ

「紅茶でも入れよう」
「そうそう、世の中不平等な部分もあるって事で」
「全くだ……蛍が頭が良いなんて、可笑しな話だ」

 ……失礼な
 これでも、徹底的な教育をうけたんだぞ
 しかも、それがどれだけ辛いか……わかってない人が言うな

「ほら」
「ありがと」

 紅茶を受取り、一口飲む
 さすが、恭也だな……紅茶の入れ方は手馴れてるのもあるけど、美味しい

「それで、1つ聞いて良いか?」
「何?」
「まぁ、面と向かって聞くのはこれで二度目だが」

 真面目な顔をして、私を見つめ聞く

「俺と士郎のどちらかを選ぶというのは出来ないのか?」
「……ごめん、やっぱり私、どっちも選べない
 2人を同じくらい好きだってことしかわからない……確かに2人のためなら、ある程度は出来るし
 やろうと思えば、助けられると思うし、護ることも出来ると思う
 でも、選ぶなんて出来ない」
「……そうか」

 恭也は少し考えて私を見て、そう言う
 2人には、2人の事を好きだと伝えた……それ以上のことはわからないとも
 2人とも嫌いにはなれないし、好きだからこそだ

「ティオレさんがな……もしも、蛍が悩むなら、どちらか一方を愛人にし
 どちらか一方を恋人もとい夫にしたらいいんじゃないかって……この場合
 基本は俺になる……士郎は親が居ないからな
 18歳では足りないんだ」

 国籍は持っていても、18歳では両親の了承が無いと結婚は出来ない
 で、今の所可能なのは、恭也って事になるのだ
 本来なら、20才になるまで、士郎くんを待ったほうがいいのだろうけど

「それでも、士郎くんが納得するの?」
「ティオレさんは俺と士郎の2人にそう話して聞かせてくれた……
 『蛍さんは悩んでると思うの、表向き、何も相談してこないし、二人を大切には思ってる
  それは、私たちが見ていてわかることよ……だからね、2人が背中を押してあげてね』ってな」

 それはまた、ご丁寧に……しかも、私という人を分かってる物言いだ
 でも、当たってるだろう……私は悩み、誰にも相談できずに居た
 2人を同じくらい好きだからこそ、どうしようもない現実
 そして、どうしたらいいのか分からない悩み
 1人を上げれば、もう片方が苦しんでしまう

「そういう風に考えられたら、どれだけ楽なんだろうね」
「そうだな……だからな」

 恭也はにやりと笑う
 その笑いは私に、不安感を抱かせる

「ティオレさんと知佳さんがこう言ってたんだ
 『蛍は嫌がるだろうから、2人で襲い掛かったら
  今度は、全身全霊をかけて、愛するって事で』
 ってな事言われてな……士郎と考えてたんだ」
「はっ?」

 何を言ってるんだ、この人は?

「それでな……蛍にとって、大切な物を奪うのは俺や士郎には出来ない」

 そうだね……優しいからこそ出来ない二人
 唇を奪うのだって、最初凄く考えていたし、思いがあったからこそ出来たこと

「まぁ、奪うなら、蛍を女にするくらいしか出来ないわけだし
 蛍が大事にしてるものは、少ない……俺たち家族くらいだ」
「そうだね……私もそれには否定しないよ」

 恭也の物言いに引っ掛かりを覚えつつ答えておく

「だからな、蛍がどうしても逃げるなら……俺と士郎の2人で相談したんだが
 蛍を2人のものとして、跡をつけておいたら、周りからのやっかみは無いだろうって考えたんだ」

 どこから、そうなるんだろう?

「それで?」
「蛍を傷物にする」

 まさか!?
 対HGSのアンチシールド……お金かかる上にほとんどの人が持ってないのに

「矢沢医師がな、貸してくれたんだ……対抗手段が欲しいといったらな」
「……なんで、そうなるのか聞きたいんだけど?」
「士郎と決めたことだ……士郎ももうすぐ帰って来る」
「誰かが帰って来るよ」

 時間的には厳しいけど、私が暴れて、相手を何とかできても、1時間くらい
 その間に帰って来る時間まで2時間

「それまでに終ってるさ」
「卑怯者」
「好きな人にはそう言うものだ」
「そうだな」

 士郎が扉を閉めて、待っている
 窓側には恭也……逃げる場所はたかがしれてる
 こうなってしまえば、私は小娘でしかないのだ

「奪えないと思っても、お互いに決めた一歩だから」
「そんな一歩しないでよ」

 私は2人から逃れるための手段を考える
 それでも、屈服しそうだ……知佳さんもティオレさんもそれを先読みしていたように思える

「一応、周期も調べたからな……今ならストライクコースだと言う事も聞いてる」
「といっても、情報は桃子からだがな」

 恭也と士郎くんは順にそう言う……

「士郎くんはそれで納得してるの!? 私が奪われることに関して?」
「まぁ、思いが通じれば良いし、それに……俺だって、最初凄く反対しようと思ったんだぞ
 だがな、俺は所詮ゴーストのような存在だ
 だったら、蛍と共に居れるだけで十分だしな」

 とっても、嬉しげにそう言う士郎くん
 私に触れられるということを喜んでいるのか、それとも……

「家全体に対HGSのシールドをはってあるなんて、気づかなかったよ」
「仕掛けたのは、士郎だぞ」
「ま、それは、蛍が寝てる間とかじゃなく、おきて、鍛錬してる間の事だからな」

 気づかないほどだった……スイッチ式のものなのだろう
 士郎くんと恭也の2人に捕まる……今日の服装はシックなジーパンとブラウスとカーディガン
 それなりにあったかい……冬場でも、家の中はあったかだしね
 抱きしめられてる……2人の男にサンドイッチ……どっちも美男
 普通の女の人なら喜ぶところだけど、私にとっては……こんな手段に持ち込まれるとはって所

「2人とも辞めてよ」
「蛇の生殺しだったからな」
「好きな人に触れる事が出来ても、その先には進めないというのは、苦しいんだぞ」

 だからこそ、二人は相談したのだろう……ティオレさんと知佳さんに
 如何したら良いのか……そして、私も悩んでることに気づいていたから
 2人のどちらかを振って付き合うには、どうしたら一番傷付けないか
 はっきりと言えば良いのだけど、気持ちがハッキリしない……

「それはわからないでもないけど、もう少し待ってよ」
「それで、答えが出るのか?」

 核心を突かれた問いかけ……そうだね……
 それで、どうにかなるならどうにかなっていただろう
 今は、丁度、あの時期でお腹も痛いし、力もあまり出ない
 貧血というわけじゃないけど、ちょっと辛い
 2人に捕まり、近くに2人の顔と声……

「わかったよ……抵抗しない」

 そうだね……これは罪と思おう
 それに、2人だったら優しくしてくれるだろう……多分

「だから、出来るだけで良いから、優しくしてよ
 初めてなんだから……」
「勿論だ」
「分かってる」

 2人はそう言って、私を連れて行く
 何処に? って思っていたらお風呂場だった
 浴用マットがひいてある
 準備のいいことだ……血が流れるの覚悟だろうし、私自身も気づいていた
 妊娠するのだろうと……どちらかの子が生まれることも
 そして、2人を我慢させたのは私……2人が傷つくくらいなら……私が少し傷つくだけでいい
 ティオレさんと知佳さんが如何思ってこう言ったのかは分からない
 だからこそ、私は受け止めるしかないのだろう
 抱きしめられて、服に手がかかる……前の時とは違い、荒々しさがあまり無い
 それが少しだけ嬉しいと思う……気恥ずかしさもあるのだけど














 腰が立たない……お布団に包まってる私
 腰にはタオルを巻いて、体は素肌そのまま……あったかいところで、うつらうつらというか
 失神していた……2人が心配そうに覗き込んでいる

「エッチ、変態、ロリ、ペド、馬鹿っ、サド!!」

 とりあえず、並べられるだけ並べてみる

「いや、何ていうかな」
「そ、そう俺たちも男だったというか」
「狼、変人、何が優しくするよ!! 無茶苦茶痛かったんだからね!!」
「ちゃんと責任は取るさ」
「卑怯者!!」

 こういうからくりだったのだ……私は見事に忘れていた
 ティオレさんと知佳さんは、どちらかといえば苛める属性であると……
 実際のところ、私は気を失うまで、2人にいたぶられたのだ

「第一、私が苦しんでるのをいいことに、あんなことまで!!」
「良かったじゃないか、忘れられない初体験で」

 体が元に戻ったら、とりあえず、殴ろう
 2人はとりあえず殴ろう

「一応、ティオレさんと知佳さんは呼んだから
 美由希たちはまだ忙しいし……」
「う〜〜〜〜〜〜〜」

 うめく……そらぁもう、相手に対して言いたいことは山ほどある
 でも、もう笑うしかないような状態だ
 ティオレさんと知佳さんにとっては、2人の幸せを願っていたのだろう
 そして、私のことも……

「ただいま〜」
「お邪魔します……蛍を襲ったんだって〜」

 にこやかに扉を開けて、言う
 私は、そのまま布団に突っ伏している
 体には布団が巻かれていて、あられもない姿

「あらら? 蛍如何したの? その恰好」
「腰が抜けて、動けないんです」
「あら〜、それは大変ね……ということは……」

 そう言って、ティオレさんは2人を見る
 すっごく楽しげに……

「とうとう襲ったのね!?」
「危険日じゃなかったっけ?」
「無茶苦茶危険日ですよ、教えた本人が言うんですか?」
「あはは〜、ごめん」
「対HGSのシールドまで張られて、逃げ場無く、男2人に弄ばれて
 多分、このままぽいって捨てられるのかな」
「いや、それは無いから」
「うむ、無いな」

 ……2人とも酷いよ……もう少しいたわりを持ってくれても
 2人のせいで、私は、立てない上に、着替えもままならないんだし
 2人が着せ替えようとしたらしいのだけど、興奮するから辞めたって……

「とりあえず、2人に頼みたいのですけど、私の着替えを
 それと、その生理用の物」
「あらら、大変ね〜」
「本当だね……出血して尚更って
 しかも、これって、本当に凄い想い出だね」
「知佳さん、苛めて楽しい?」
「うん、とっても……最近メールも返してくれないし」
「あれは、本当に忙しかったんですってば……レポートを書いてたんです」
「士郎くんから聞いたのだけど、『蛍はメール来ても、気づいてないかのように過ごしてた』って」

 余計なことを……だって、知佳さんのメールって

「そんな毎日送ってこなくても」
「もう、ちょっとは動きがあるかなぁって……最初メールが返ってこなかったときは
 どちらかの男に走ったかなんて思ったのに、そういうんじゃないのだから、私の方が寂しいものだよ」

 それって、私の責任か?

「じゃあ、父親は恭也になると……なるほどね」
「まぁ、実際そうだろうな」
「士郎はそれで良いの?」
「蛍の子なら、俺は愛せるよ……それに、次は俺だからな」

 そこで、笑顔で言わないで欲しいものだ
 私にとっては、辛いことなのだし……

「桃子も喜ぶでしょうね」
「そうだね……桃子さんは嬉しいだろうね」

 2人して、そんな事をにこやかに言う
 着替えを貰い、着替えようとする……

「士郎、恭也の2人は出てなさい」

 士郎『くん』の『くん』が抜けた
 というか、抜いてくれって頼まれたから……どっちでも良いけどね

「な、何故に!?」
「着替えるからよ……出て行かないなら、嫌いになるよ」
「はい」

 2人は大人しく、そのまま廊下へと出る
 それを確認して、着替え始める
 といっても、のっそりのっそりだ

「ううっ、腰がへにゃって……いまだに挟まった感じする〜」

 愚痴りでもしないと、嫌だよ

「あらあら」
「まぁ、初めてだとそうなのかもね」
「知佳さんは?」
「私は、お兄ちゃんと1度か2度ね……」
「そうですか……もう良いです」
「うふふ」

 笑って、私の着替えを手伝ってくれる……お姉ちゃんとは呼ばないけど
 やっぱり私を妹だとは思ってるみたいだ

「2人は気にしてるでしょうね……蛍に無理させたとか色々」
「あの2人に私は、腰砕けになるまで、襲われたんですよ……」
「でも、凄いね……2人はぴんぴんしてるじゃない」
「どっちも、剣術を使うから……私も体術使う者として、恥かしいですけどね」
「最初痛みだけじゃないの?」

 そんな言葉を言われても……なんていうか……
 時間にして、2時間半……ずっと攻められ続けたわけだし
 仕返しなんて事出来ないし

「初心な寝んねなんで、知識なんて吹っ飛びましたよ
 最初痛いし……今は動けないし」

 ソファまでよいしょと上がる

「あらあら」
「これは責任重大だね」
「でも、付き合っても居ないのに、妊娠となったら、やっぱり責任は取らないとね」
「それが狙いだったんでしょう!! 卑怯ですよ
 私が、罪の意識で抱かれることも予想して、子供抱きたいからって」
「あはは、さすがだね〜」
「私大学生なのに」
「良いじゃない……海外だったら、そう言う人も居るわけだし」
「まだ16歳ですよ、私」
「もうすぐ17歳でしょ」

 悪魔が此処に居る……『世紀の歌姫』と『災害を救う天使』という悪魔が居る

「2人とも如何したの?」
「あ〜、いや、反省を」
「そ、そうそう……」
「妄想してただけじゃないの?」

 2人して沈黙……顔を真っ赤にして
 とりあえず、動けるようになったら、蹴ろう

「ま、まぁ、ほら、蛍のサポートは俺や恭也と知佳さんも居るし」
「今日はたまたまお休みだったしね……お休みの時立ち会えるなんて嬉しいわ」
「そうね……私は、フィアッセに物事教えたから、後はのんびりと余生を送れるわ」

 2人して、そんな事を言いつつ、二人に指示を出す

「ほら、紅茶でも持ってきて、のんびりしましょう」
「士郎、お菓子あるわよね?」

 そう言って、二人を召使のごとく使う
 いや、まぁ、良いのだけど

「恭也と士郎も座ってね」
「ん、ああ」
「そうだな」

 これは重要なことだ……私自身言っておかねばならない事

「私がHGSであることからして、子供もHGSの可能性がある
 それに、しばらく不安定にもなるんじゃなかと思う……今日はストレートに危険日
 今でもどうなるかわからないし、私は自分が女性の幸せを手にすることなんて、数ヶ月前じゃあ考えなかった
 だからね、1つだけ……私を好きなら、私を愛してくれてるなら
 支えて欲しい……私は多分、自分の重責に堪え切れなくて、倒れたり、落ち込んだりすると思う
 もう、2人に対して、悪いとも思っているから……だから、受け入れた
 2人の思いを数ヶ月にも渡って、私は答えが出てないって理由で、断り続けた
 だから、支えて欲しい……妊娠してても、してなくても」
「わかった」
「任せろ……蛍がそう言うなら、俺も恭也と協力してでも、支えるさ」

 2人はそう言って、にこやかに笑う
 っていっても、こういう場合も兄弟っていうのだろうか?
 そして、私は2週後に病院に行く日を考えて、少しだけ憂鬱になる
 診断結果が出たら、如何しようかしらと

「これで、しばらくは帰りたくないわね」
「確か、2週間後は非番なはず♪」

 嬉しそうにしている2人……
 何で、こんな事に……私が何をしたっていうのかしら?

「ま、これで恭也もパパか」
「いやいや、わからんぞ……妊娠してないかもしれないし」

 親父会話がなされてるのか、どうなのかもわからないけど
 とりあえず一言だけ言わせて……2人ともケダモノだよ
 私がどれだけやめてって言っても、弄るし
 この日の夕飯は、見事にお赤飯だったとだけ追記しておく
 誰が如何とかは誰も聞かなかった……ただ、その場に那美さんと忍さんとノエルさんが居た








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