『An unexpected excuse』

  〜蒼き妖精編〜







「俺が好きなのは…………」

 恭也の声で周囲が静まり返る
 その次の声を逃さぬために

「アセリアだ」
「アセリア?」
「言っても分からないと思うが、俺の恋人であり、大切にしてる女性だ」

 遠くを見つめてる瞳
 その目が自分たちに向く事が無いと分かった者たちは、その場から小さな嗚咽を漏らしたり
 励ましの言葉をかけたりして、去っていく
 恭也はその目を横目で見て、ある風景を思い出す
 この世界に戻ってきたときのことを……
 彼女もそうやって泣きじゃくった
 あの子が泣いてくるとは思わなかった
 だが、泣いたのだ……彼女は

「ね、恭ちゃん、アセリアさんって誰?」
「俺の大切にしてるたった一人愛してる女性だ……それだけじゃあ不満か?」
「そんな人が居るなんて、聞いてないんですけど」

 美由希が微妙な敬語で聞く
 恭也からしたら、なんなんだって所だ
 公園に一陣の風が吹き抜ける

「言ってないし、誰にも言う気は無い
 ただ、今回は、特別だ……アセリア」

 俺は小さく呟くように空を見上げる
 木々の葉の間から、少女が降ってきた
 白い翼を消して……

「うぉっ!!」

 俺は慌てて受け止める
 その女性は俺の首に腕を絡め、笑っている

「アセリア!?」

 蒼い髪の毛をたなびかせ、風が吹きぬけ、自分の指先にも当たる感触
 そして、特有の柔らかさ

「キョウヤ、会いに来た!!」
「いや、だが、お前、此処に居たら辛いんじゃないのか!?」

 そのために恭也は幾度だって世界を渡るために努力してきた
 夏ごろ、恭也は1つの世界へと飛ばされた
 偶然の事故……そして、そこでは差別され、戦いを強要された世界
 ハイベリアから人がやってきて、神剣を持って闘う
 そんな変な世界だった
 恭也は、それをたった一人で、スピリットにもエターナルたちにも果敢に挑んでいった
 死んでしまうかもしれないと思ったことは一度や二度じゃない
 でも、恭也にも神剣はあった……名を『八景』
 八百万(やおよろず)の思いにして、第3位神剣
 エターナルたちにも近い

「八景が力貸してくれた……ほら」

 そういって、アセリアは八景を取り出し微笑を浮かべる

「キョウヤが寂しそうって、辛いからって、笑ってくれないからって
 私が呼ばれた……キョウヤを支えて欲しいって」
「アセリア」

 アセリアを抱き寄せてる恭也はすっかり失念している

「あの〜」
「恭ちゃん、流石に武器は此処では」

 隠せてない物
 そして、行き成り降ってきた女性に誰がどう言えば良いのだろうか悩む

「すまん、少し下りていてくれ」
「うん」

 アセリアはそういって、恭也の隣、腕を抱いて嬉しそうに頬を寄せる
 幸せそうに……犬の尻尾がついてれば、ぶんぶん振られてるだろう

「紹介しておこう……この人が俺が愛してるアセリアだ」

 アセリアは可愛いとか綺麗の中間に当たる
 その様に、周りは驚いてる
 だが、その容姿容貌に皆、諦めてる者たちが離れる

「キョウヤ、どうした、急に?」
「ん、いや、此処に居る人たちが、俺に好きな人が居るかって聞かれたんだ」
「……キョウヤはダメ……私が何のために戦い、何のために生きているのか教えてくれた人だから
 私に命の煌き、囁き、優しさ、色々教えてくれた人だから……行かないで」

 最後は少し潤んだ瞳で恭也を見ている
 恭也は少し困った顔をしながらも

「行かないさ……アセリア
 俺はアセリアと共にあることを、誓っただろ」
「うん、そのおかげで、八景が連れて来てくれた」
「そうか……それには感謝しておかないとな」
「そう」

 恭也の言葉にアセリアは頷く
 周りは意味が分からないが、何か良く分からないけど、嫌な予感みたいなものに触れそうで
 諦めてる部分が多い

「すまんが、美由希、忍から俺の荷物貰っておいてくれ
 忍、後適当に任せた……俺はアセリアを連れていくから」
「分かったよ……後でちゃんと聞かせてもらうからね」
「私もね」
「分かった分かった」

 恭也は簡単に手を降って言うと、アセリアの肩に手を当てる

「行こうか……アセリア」
「うん」

 恭也の手を感じながら、アセリアの手はそっと恭也の手の甲に触れ、繋ぐ
 腕を抱いていた手を話されたのは不満だが、それ以上に恭也が優しく触れてくれるのが嬉しい
 そして、更に近づいた距離がもっと嬉しい
 それがアセリアなのだ

「町を案内するが、驚くなよ」
「一度見たから大丈夫……キョウヤ」
「なんだ?」
「キョウヤの両親に会って挨拶しておきたい……前、エスペリアが言ってた」
「分かった……じゃあ、行こうか」
「うん」

 アセリアの笑顔が嬉しかった
 ただ、このとき俺は知らなかった……あるどんでん返しが待ってる事に
 そして、日常が崩れ始めていることに






「初めまして、アセリア=ラスフォルトと言います
 キョウヤの恋人です……お腹の中に赤ん坊が居るのでよろしくお願いします」

 頭を下げて言ったアセリアに店の中は固まり、それは新しい客が来るまで固まりっぱなしだった












 おわり












 あとがき
 こっからが本作の重要点か
 シオン「まぁ、設定から先に洗い流しましょう」
 恭也がファンタズマゴリアへと入ったのは、夏休みの間です
 ゆうひ「んで、ユートはアセリアルートじゃないです」
 時深ルートということで……んで、アセリアは無口っていうか、大分治ってきてるけどってところ
 シオン「んで、恭也はファンタズマゴリアでどのあたりの時に参加したのよ」
 あ〜、一応、光陰たちとの戦闘の時の少し前……だから、えっと、三国のにらみ合いしてて
 ゆうひ「うんうん」
 んで、今日子がのっとられ危険域な時かな
 シオン「んじゃあ、その砂漠を抜けて、一つ目の町を占拠してからって事?」
 まぁ、そのあたりからで……落ちた場所はマナが消えた場所ね
 ゆうひ「じゃあ、どうして恭也はそんな所に行っちゃったの?」
 ロウ・エターナルたちの仲にも、味方になりそうなのを集めるんだけど
 シオン「だけど」
 恭也にも素質があるかなぁって、放り込んじゃったの
 ゆうひ「後は任せたみたいな形で?」
 うん
 シオン「んじゃあ、恭也は神剣の加護は最初無かったんでしょ?」
 持ってる武器が八景だしね
 ゆうひ「んで、恭也は神剣の力をどうやってつけたの?」
 まぁ、ぶっちゃけ、最初は神剣にのっとられたんだけど
 シオン「のっとられたんだけど?」
 アセリアとオルファリルに手を出して、ウルカにぶん殴られて元に戻った
 ゆうひ「……手を出したって?」
 え? 単にキスした程度だぞ……軽いものだ
 シオン「んじゃあ、何でアセリアは生きる目的をもったのか?」
 恭也がそれはそれは毎夜毎夜通い妻のごとく来るアセリアに根負けした
 ゆうひ「アセリアから迫ったの!?」
 正確には、アセリアが入れ知恵を受けて、毎夜どうしたらいいなどという話をし
 シオン「して?」
 最終決戦前、とうとう恭也が暴走というか、まぁ、自分もアセリアを好きだって気づいたわけ
 ゆうひ「じゃあ、最終決戦の後、恭也はどうやって戻ってきたの?」
 ユートたちが居た世界とは若干違うんだよ、恭也が居た世界は?
 シオン「ほかには?」
 それと、これが八景の特殊に近い能力……空間を切り開く、切り裂く、切り結ぶという能力
 ゆうひ「それで、アセリアを呼び、恭也を移動させたんだ……でも、何で今になって?」
 神剣は元の力が育たないと危険物でしかない……
 シオン「なるほどね……体が出来てなかったって事?」
 それも微妙に違う……恭也の心、体が出来上がってないと辛いでしょ?
 ゆうひ「……なるほど」
 んで、神剣も考えて、恭也に手ほどきしながら、足を治し、そしてって事
 シオン「本当はエターナルにってこと?」
 うん……でも、恭也は拒んだ……だから、八景は諦めた
 ゆうひ「なんで、諦めたの?」
 アセリアとの愛の勝利って事です……幾度も干渉してたんだけど、恭也とアセリアの愛の前には
 シオン「意味が無かったって事?」
 うん……まぁ、それでロウ側だったのにカオスになっちゃったって事
 ゆうひ「んで、いまやいい人状態の真剣、八景ですか」
 おう
 シオン「なんか、かわいそうな神剣ね〜」
 たまには良いだろう、こういう役柄も
 ゆうひ「でわ、これにて、説明会終了ですっ」
 ほなね〜(^^)ノシ すげ〜、疲れた……普段どれだけ考えてないか暴露した気分




裏設定が面白かったり。
美姫 「うーん、なるほどね〜。そういった事情で、このお話に至ると」
しかし、アセリアも追いかけてくるとは変わったね。
美姫 「愛は人を変える」
おお!
美姫 「ってな訳で、他の妖精さん編も楽しみね」
うんうん。
美姫 「それじゃ〜ね〜」
またまた。



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