『TRIANGLE HEART
BEAT 〜三人目の『不破』の物語〜』
第二話 −ENGAGING GEARS OF DESTINY−
美由希は高町家の道場の中に逃げ込んでいた。
小学校の中学年といった感じの外見から自分がすぐさま夢を見ていることに気がつく。
とそこに後ろから声がかかる。
「美由希ちゃん。」
そのどこか懐かしさを感じる声に美由希は聞き覚えがあった。
しかしそれが誰なのかどうしても思い出せない。
「ごめんね、美由希ちゃん。もっと早く言いにこれればよかったんだけど、昨日の朝はじめて聞いた話だったから今日しかなかったんだ。」
そこで振り返るとそこには寂しそうに苦笑を浮かべる男の子がいた。
(この人は...誰?見覚えがあるし、とっても大事だった気がするのに思い出せない。)
「もう聞いてたと思うけど明日から暫くオーストラリアにいってくるよ。たぶん最低で三年間。それまでたぶんこっちには戻れないと思う。」
そういうとすぐ近くに背中を向けて座り込む。
そして暫く沈黙が続く。その男の子がいったい誰だったのか、いまだに浮かび上がってくる懐かしさに困惑しつつ記憶を探る美由希とは裏腹に、その当時の美由希は涙を浮かべながらその人物に問いかける。
「美由希をおいていっちゃうの?また一人ぼっちになっちゃうの?ひとりぼっちはやだよぉ。も、もう...一人ぼっちでまつのはやだよぉ〜。ひっく...う、うぅ...うぇ〜。」
とうとう泣き出してしまった美由希を、ふりかえって寂しそうに、そして少し嬉しそうにやさしく微笑みながら見つめると男の子は美由希に近づいていく。
「美由希もつれてってよぉ〜。ひっく、ひっく...いっしょにいきたいよぉ〜。」
駄々をこねる美由希の横に座ると、男の子は肩に腕を回すようにしながらその手を美由希の頭にのせて優しくなでる。
そして諭すようにやさしく話しかける。
「一緒にきたいって言ってくれるのはとっても嬉しいよ、美由希ちゃん。僕のために泣いてくれて本当にありがとう。でもだめだよ?あんまり駄々をこねちゃ。」
泣いたことに関してお礼を言われたことなどなかった美由希は何を言われているのかわからないといった顔をしながら泣くのも忘れてきょとんとした顔を向ける。
「別れたくないって言ってくれる人がいるのは嬉しいよ。本当に嬉しい。でも美由希ちゃんは士郎さんや恭也のようになりたいんでしょ?美由希ちゃんが士郎さんたちから習うって言ってる御神の剣は何のためにあるの?」
「......普通に暮らしてる人たちを守るため...」
「そうだよね?人を守るための剣を使えるようになりたいんだよね?なら美由希ちゃんはまず守らないといけないものがあるでしょ。」
「?」
「なのはちゃん。生まれたばっかりのなのはちゃんは美由希ちゃんが守ってあげないと。桃子さんが安心してお菓子を作れるように、士郎さんが安心して人を守れるように、恭也が安心して鍛錬できるように、ちゃんとなのはちゃんが自分のことを出来るようになるまで守ってあげるのは美由希ちゃんの仕事だよ。おねえちゃんなんだから。」
そういってまたやさしく、すこしおどけるように微笑む。
「僕がもし美由希ちゃんを少しでも寂しさから助けられていたんなら...今度は美由希ちゃんがなのはちゃんが寂しくないようにしてあげて?ね?」
その言葉にすこしだけ気持ちが軽くなる感じを覚えた美由希は涙を拭いて笑顔で答える。
「うんっ、わかった。ちゃんとなのはが寂しくないようにそばにいる。剣を習い始めるまでとおさんたちが安心してお仕事できるように。」
「ありがとう。僕もいつかまたみんなに会いにくるつもりだから。それまで僕の2番目の家族の末っ子はまかせたよ?」
もはや完全におどけている男の子の顔を涙の乾いた顔で見上げて微笑むと
「まかせてっ、お兄ちゃん!」
(お...にいちゃ...ん?私今確かに......お兄ちゃん.........お兄ちゃん!)
その言葉を口にしたとたん、美由希のなかの記憶がはじけて、そして光に包まれた。
目を開けるとそこは映画館の中だった。
周りの席の人たちがジト目でにらんでいて、隣では那美が小声で誤りながら頭を何度も下げている。
(ま、まさか...私...声に出してた!?)
そこに今度は一通り誤り終えた那美がジト目でにらんでくる。
それに手を合わせてごめんなさいのポーズをとると、許したのか後回しにしたのか、あきれたような視線を一度だけ向けて那美はスクリーンへと目を向ける。
おそらく後者であろうと考えた美由希は、映画のあとの質問攻め、および愚痴に覚悟を決めて、せめて映画の間だけでもと今しがた引き出された記憶へと思考を向けるのだった。
「で?なんだったんですか?あれは。」
映画館を出るなり美由希の真正面に立ちふさがって顔を寄せてくる那美。
膨らました頬がいかにも「おこってます」という感じでかわいらしくも見えてしまうが本人はいたって真面目である。
「え、な、なにがかな?那美さん。」
それに対してあくまで惚けようとする美由希。
だが今回は見逃してもらえそうもない。
「お・に・い・ちゃ・ん?」
ビクッ!!!
明らかに何かありますといった風な怪しい反応をしてしまう美由希。
柄にもなく「にやにや」と表現すべき笑みを浮かべている那美をみて、言い表しがたいプレッシャーを感じて逃げられないことを悟った美由希は深いため息のあと、話し出す。
「実はね、夢を見てたんです。昔の夢を。それで...」
「?美由希さんは恭也さんのことはお兄ちゃんて呼ばないですよね?でもたしかにお兄ちゃんって叫んでましたよ?」
「...違う人なんです。昔私がひとりぼっちで留守番をしていると必ずと言っていいほど遊びに来てくれた恭ちゃんの友達。なのはがうまれてからはなのはと一緒にその人の家に預けられたりもしてたんです。」
「それで美由希さんはその方をお兄ちゃんと呼んでいたんですか?」
「ええ、恭ちゃんはずっと恭ちゃんって呼んでましたから。ずっと士郎とおさんと一緒に鍛錬したり仕事にいったりしてた恭ちゃんよりもその人のほうがよほどお兄ちゃんだってその当時思っててそう呼んでいいか思い切って聞いたんです。そうしたらその人が笑いながらいいよって言ってくれたのでそれからずっとそう呼んでました。」
「?呼んでましたって...その方は今......まさか...」
「あっ、いいえ。ちゃんと生きてるはずですよ。オーストラリアって言ってたかな?それでちょっと行っちゃう前日の夢をみてたのでそれで...おかしいですよね?今まで忘れてたのになんで今頃になって...」
「もしかするとそろそろ会えるのかもしれませんよ?虫の知らせって言うじゃないですか。それで?どんなひとなんです?」
(うぅ、今日の那美さんはしつこいよぉ。わたしがなにをしたのぉ〜)
興味津々といったふうに聞き出そうとしてくる那美に心の中で滝の涙を流す美由希。
それが自分が誘った映画の最中で寝てしまったことに対する仕返しだとは思えていない美由希は完全に自分を正当化する。
しかしそんな心の中だけのものが生身の那美に通じるはずもなく、ぐいぐいと情報を引き出そうと寄ってくる。
なぜ教えないといけないか、という質問にも「探すの手伝いますから」の一言で言いくるめられてしまい、しぶしぶとまた語りだす。
「そういわれても顔は覚えてないんですよ。結構人気者だったらしいのでかっこよかったんだと思うんですけど...性格は...そう、なんか恭ちゃんと耕介さんを合わせたみたいな人です。あれ?そういえば雰囲気は少しいまの恭ちゃんににてるかも。」
「あのぉ〜、もう少し外見的なものはないんですか?」
「そうですねぇ、なんか記憶に靄がかかってるみたいで顔がはっきり思い出せないんですよ。夢の中でも顔だけ影になったみたいで見えなかったし......あ、そういえば髪の毛に銀色が混じってました。」
「銀色?でも昔の記憶なんですよね?当時からそんなに年上の人だったんですか?」
「いえ、歳は恭ちゃんと同じくらいだったと思います。染めたわけではないと思うんですけど...」
「とにかく銀色の混じった髪の恭也さんくらいの男の人ですね?それじゃあみんなにも声かけてそれらしい人探してみましょうよ。」
(あぁ、美由希さんの初恋の人かなぁ...もしそうなら見つけたらライバル減るかな?)
などと考えつつあくまでも善意でといったふうに申し出る那美。
それを珍しく鋭く感じ取ったのか、
「私の初恋は恭ちゃんですよ?その人はわたしにとって恭ちゃん以上にお兄ちゃんなんです。一人ぼっちだった私を守ってくれた人なんですから、変な勘繰りはよしてくださいね?」
思わぬ形で釘を指された那美は乾いた笑いとともに、
「や、やだなぁ。それじゃあそろそろ行きましょうか?」
そういって美由希の手をとって歩き出す。
それを予想していなかった美由希は引っ張られてつんのめる形で那美ともつれ合う。
「わ、わわわっ!」
「あ、あううぅ」
ふたりとももはや慣れっこになった地面との衝突にそなえて身を強張らせ、目をきつく閉じる。
しかし、地面とぶつかるはるか手前で二人はおなかの辺りにやわらかい感覚を感じる。
おそるおそる目を開けると、前髪で顔が隠れるくらいの長髪にヘッドホンをした男に二人そろっておなかの辺りを抱えられている。
あわてて飛びのいて礼を言おうとする二人だったが、それよりも先にヘッドホンをはずして首にかけた男に声をかけられる。
「突然申し訳ありません。ご気分を害されたようでしたら謝罪させていただきます。ですがお怪我はありませんでしたか?」
少し低めのやさしげな声で心配そうに尋ねる男にどこかの朴念仁が重なり二人とも唖然とするが、なんとか先に気を取り直した那美が、
「だ、大丈夫です。ありがとうございました。」
と取り繕うと美由希も横で同意するように首を縦に振る。
「よかった。それではお気をつけて。」
と男は言うとすぐにヘッドホンを耳に戻して歩き出してしまう。
唖然と見送った二人が正気に戻った頃、もうすでに男は視界の外に消えていた。
二人で顔を見合わせると、
「「なんか恭ちゃん(恭也さん)みたいでしたね。」」
完全に同じ事を考えていた二人は暫く笑いあうと、
「そろそろいきましょうか?神社のお掃除しなきゃいけませんし。」
「そうですね。私も戻らないと晩御飯の前の鍛錬が出来なくなってしまいます。」
といってまた歩き出す。
暫く歩くとすぐに神社と高町家との分かれ道に到着する。
いつもならここで別れの言葉を言い合って別れるのだが、今回は少し違った。
「あの男の人...雰囲気は美由希さんの行っていた方と結構にてるんじゃないですか?」
「私もそう思ったんですけどさすがに雰囲気だけでは...それにそうなら向こうも何か反応があってもいいと思いますし...」
「そうですね。はっきりした手がかりは髪の色だけですもんね。」
そういって本当に残念そうな表情をする那美。
それをみて美由希は心配してくれる友人に嬉しさを覚え、
「大丈夫ですよ。お兄ちゃんはなのはが笑っていればいつか戻ってきてくれますから。」
と昔交わした彼との約束のことを那美に話す。
そして探してくれるといってくれた那美に気にかける程度でいいといって礼をいうと、なのはの待つ家へと少し早足に歩き出す。
(でも那美さんのいうとおり、虫の知らせってやつなのかなぁ?恭ちゃんにも今度聞いてみよっと。)
美由希が那美と帰り道を歩いている頃、晶とレンは珍しく一緒に空き地で近所の子供たちと一緒に苦虫をかみ締めるような表情でいた。
事の発端は二人が買出しに出ていたときのこと。
小競り合いをしつつ帰り道を歩く二人の前に、晶の通う道場の小学生が現れて晶に、野球をしていたところに高校生たちが無理やり入ってきて邪魔をしていることを告げる。
聞いた晶はすぐさま駆け出し、レンも呆れ顔でそれに続く。
そして高校生グループと話をつけ、空き地の使用権を野球の試合で決着をつけることになるが、すでに高校生たちに泣かされて帰ってしまった子供もいて人数が二人足りない状況に陥って今に至る、というわけだ。
「どーすんのや、おさる?あと二人おらな野球にならんやろ?」
「んなのわかってるよ!しょうがねえ、その辺で適当に二人入れるか。」
「んなことゆーたって多少出来るやつやなきゃ、うちら二人だけじゃいくらなんでも...」
「どーにかするしかないだろ!?打たれなきゃなんとでもなるって!」
それを聞いた高校生がニヤニヤとした笑みを向けるのを感じて晶が食って掛かる。
「何が可笑しいってんだ!?」
「クックック、そりゃ可笑しいだろ?俺ら地区予選ベスト8の野球部員だぜ?」
「クッ...」
さすがに厳しいと思ったのか心底悔しそうな顔をする晶とレン。
そこに突然声がかかる。
「なあ、俺らが手伝おうか?」
突然の声に二人が驚きながらそちらを振り向くと、そこには短髪のトゲトゲした頭の切れ目の男と、目まで隠れそうな長髪の男が立っていた。
「俺らがやってやるよ。なあ、アニキ?」
「はぁ、お前本当に好きだねぇ?まあ暇つぶしにはちょうどいいか。」
「そんで?どうなんだ、お二人さん?俺らにやらしてもらってもいいか?」
「そらうちらはねがったりやけど...なあ、晶?」
「ああ、二人とも野球できるんですか?」
レンに促せれる格好で二人に聞く晶。
一応年上らしいということで敬語を使う。
それに対して短髪の方が可笑しそうに、
「出来るも何も俺は風校の掛け持ち野球部員だ。アニキは部員じゃないけどな。そっちのヤロー共はいいか?」
「べつにいいぜ。ただし短髪のお前は投げるなよ。投げるのは長髪のお前だ。」
「と、相手はいいって言ってるんでいいよな?」
「そらまぁ...」
「ああ、まぁ...」
と曖昧な返事をする二人を楽しそうに見ると、
「お許し出たぜ、アニキ。どうする?」
「そうだね。えっと、関西弁のお嬢さんはセカンド、そこの野球少年はサード、そんで短髪のお嬢さんはファーストってところかな。あとの少年たちはいつものポジションで...いいかい?お嬢さん方。」
「......あ、おう、りょうかいです。」
「......え、あ、はい。わかりました。」
「............」
上からレン、晶、そして短髪の男は3人とも似たような理由で脳が正常に動いていなかった。
レンと晶は晶が女の子だと一目で分かってしまったことに対して驚き、短髪の男は晶を女だといったアニキと呼ぶ長髪の男に対して、だ。
そんなことは意に介さず長髪の男は話を進める。
「時間も時間なんで勝負は手っ取り早いほうがいいね。そっちは9人いるんだし、全員一回ずつ打席に立って点が取れたらそっちの勝ち。無失点ならこっちの勝ちでどう?」
「それでいいぜ。んじゃ早速はじめようか!」
「キャッチャー頼むよ。いつもどおりで。」
「任せろって。アニキのボールは捕りなれてんよ。」
そして空き地を賭けた勝負が幕をあげる。
そして...
「......すげぇ...」
「...正規の野球部員相手にあないなことできるなんて...」
「「「「「お兄ちゃんすげー!!!」」」」」
終わってみればあっけなかった。
左手の、しかもアンダースローから放たれるボールは一度としてバットにかすることすらなかった。
そしてキャッチャーの短髪男はそのボールをすべて小学生用のミットで受けきって見せた。
「まあ、こんなもんか。アニキ、やっぱ野球部はいろうぜ?」
「だめだよ、俺はやらなきゃいけないことがあるからね。」
余裕の会話を繰り広げる二人を前に、大喜びでグラウンドにもどる子供たちと唖然としている女の子二人、そして放心状態の9人の野球部員。
「あんたらなんなんだ!?俺らのうち5人はベスト8のスタメンメンバーだぞ!?」
「僕はともかくコイツとは君ら春に試合であってるはずだよ?覚えてないの?風校の5番サード。」
「...ああぁぁぁぁ!!!!!!コイツ俺からバックスクリーンに2発打ち込んだアイツだぁ!!!!!!」
「「「「「「「「なにぃぃぃぃ!!!!!!!!!」」」」」」」」
「でも今回はカンケーねーだろ!!!投げてたのはあんただ!!」
「アニキは本当に部員じゃねーよ。あんたらが下手なだけだろ?分かったらさっさとかえんな。二度とここにくんじゃねーぞ!わかったか、あ゛!?」
「「「「「「「「「は、はいっ!」」」」」」」」」
脅す短髪に速やかに返事をする9人。走って逃げようとするところに後ろから長髪が声をかける。
「仕返しは考えないほうがいいよ?コイツは剣道部も掛け持ちしてるほどの実力だし...」
と、短髪の肩に手を置きながら告げると長髪は一呼吸置いて決定的な一言を放つ。
「...今回のことのうわさも流すから...わかった?」
「「「「「「「「「はいぃぃ!!!」」」」」」」」
そうして今度こそ何の迷いもなく高校生は逃げていった。
子供たちは野球に夢中になり、助っ人4人は帰路に着く。
途中まで同じ道らしく、一番前に短髪、中に晶とレン、そして最後尾に長髪があるく。
会話らしい会話もなく歩く4人だったが道が分かれるところに差し掛かり、晶が口を開く。
「あの、ありがとうございました。正直俺らだけじゃどうしようもありませんでしたから、助かりました。」
「ました。」
晶の馬鹿丁寧な挨拶にレンの便乗する。
それに照れくさげに短髪が返事を返す。
「まあ、そんなに改まんないでくれよ。俺としちゃアニキをあの場に引っ張り出して野球したかっただけなんだし...それに俺、お前の事男だと思ってたしな。あいこってことにしとこうぜ。」
そうして笑いあう割と大雑把な二人。
それをみてレンが思い出したように声を上げる。
「それでおもいだしたんですけど、お兄さんのほう、でよろしいんでしょうか?」
「うん、そうだけど...なに?」
「なんで晶が女やってわかったんですか?」
「え?」
「そうそう、それ俺も知りたい。自分で言うのもなんだけど俺初対面でちゃんと女に見られるのって初めてかもしれないし。」
「そ、そりゃー結構ひでーな。まあ俺がいえたこっちゃねーけど。」
「うーん、何でって言われても...どう見たって女の子じゃない?」
「「「.........」」」
「ん?どうしたの?」
「いや、まさかそうくるとは...」
「俺もそんなこといわれたことねーよ...」
「...まあさすがアニキってことだな...」
まったくの予想外の返事に返す言葉もない二人と、なにやら大分無理やりな納得の仕方をする短髪。
「それじゃあこの辺で、だね?」
「そうだな、んじゃあな。」
「あ、ちょうまってください。」
去ろうとした二人をレンが呼び止める。
「ん?なんだい?」
「うちは海中1年の鳳蓮飛ゆいます。そんでこっちが...」
「じ、城島晶です。海中2年です。」
「そんでお二人は?」
「僕は風校3年の...まあイチって呼んで。」
「...俺は風校1年の...ケイってんだ。」
「いまはフルネームは勘弁してね。またあったときにはちゃんと教えるから。」
「んじゃあとりあえずイチさんとケイさんでよろしですか?」
「うん。」
「おう。」
「それでは助けてくれてありがとでした。またおあいしましょー。」
「ありがとうございました。それじゃあまた。」
「ああ、二人ともまたね。」
「またなー!」
そして四人は帰路に着く。
「なあレン。あのイチさんって師匠に感じにてないか?」
「珍しく気が合うなぁ。うちもおもっとったんや。なんやお師匠と赤星さんがごっちゃになっとるみたいな...不思議な人やったな。」
「ケイさんはまったく正反対って感じだったな。」
「そやな。ちょう晶に似とる感じがしたわ。」
「...たしか3年と1年っていってたよな?師匠と美由希ちゃんならなんか知ってるかもしれないな。」
「そやなぁ、きいてみるか?なんか知ってるかもしれへんし。」
「ほんとに今日は気が合いすぎて怖いな。まあいいか。晩飯食ったら聞いてみようぜ。」
「おっけーや。にしてもほんまにちょう怖いな...」
「アニキ、どうして名乗んなかったんだ?」
「どうせそろそろ向こうからもう一度会いに来るはずだからね。彼もそろそろ思い出してくれるだろう。大きな山場も過ぎたし余裕も出来たはずだしね。ありがとうな、あわせてくれて。」
「ど、どーってことねーよ、それくらい。そ、それより相変わらず底意地悪いな、アニキ。」
「まあね。でも状況としては向こうからこっちに来ないと意味がないんだよ。彼らの意思でないとしかたがない。こればっかりは中途半端な意思じゃだめなんだ。」
「そんなもんなのか。俺にはわかんねーし。まあともかくこれで肝心のあの人以外にはあってきたんだから、あとは待ってるだけだな。向こうから来るのを。」
「そうだね、そろそろこのウィッグともお別れは近いかな?」
そういって自分の長い髪を掴んで手前にひく。ロングヘアーの下には黒髪に銀メッシュの青年がたっていた。そして小さく呟くように、
「そろそろであることを祈ってるよ、恭也。」
そして歯車はかみ合い始めた...
つづく
あとがき
どうも、第一話のさい、あまりにてんぱっててあとがきでのご挨拶すら忘れていたアインです。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
不安定な更新状況になると思いますが初めての試み、なんとか最後までやり遂げるつもりですので最後までお付き合いいただければ幸いです。
こんどのあとがきではあこがれの先人さんたちのようなパートナーとの掛け合いにも挑戦したいです(そんなこといいから続きかけよw
まあふざけたやろうですが下手なりにまじめに、必死に書いてますのでなにとぞよろしくお願いします。
動き始める〜。
美姫 「運命の歯車〜」
いよいよ、恭也はイチと再会するのか!?
美姫 「それとも、まだ先になるのかしら」
うーん、どんな再会になるのだろうか。
美姫 「今からとっても楽しみね」
おう! そして、再会した時、何があるのか。
美姫 「次回も非常に楽しみにしてますね」
次回も待ってます!
美姫 「それじゃ〜」