恭也のハーレム伝説(in神咲家編)





第8話 変わらない君








 光が周囲を照らし続けている
 今どれくらい経ったのか、わからない
 気配は変わらない……ただ、何かが起きてる気がする
 そして、光が収まった
 そこには……

「へ……」

 間抜けな声を出してしまった
 何も変わってない……うん、誰もどこも変わってない
 雪乃さんにも変化はみられない
 さっきの光は何だったのだろうか?

「えっと、すみません、ここは何処ですか?」

 ……………………
 ……………………
 ……………………

「お母さん?」
「母さん?」
「誰がお母さんですか!?」

 いきなり怒り出してしまった
 しかも、薫さんと和真さんに対して……どうしようか?
 というか、何で怒ってるんだ?
 楓さんがそれを聞いて、ちょっと考えて言っている

「あの、雪乃さん、あなたの子供だからお母さんで……あってるはずですよ」
「私は子供なんて産んだことありません!!」

 きっぱりはっきりと言ってしまわれたみたいだ
 そして、葉弓さんが箱を手に取る
 凝視している箱……と、十六夜さんも出てきた

「あ、十六夜……何で私から離れてるの?」
「雪……乃……」

 十六夜さんも驚いているみたいだ
 どういうことだ……!?
 全く変化のみられなかったと思ったのに……
 って、何故か雪乃さんが俺のほうを見ている
 ジーという感じに近い

「十六夜、この人誰?」
「高町恭也様です……えっと、私の好きな……」
「そうなんだ……高町恭也くん♪
 へ〜、驚きだなぁ……私より遙か上ってところかな」

 そうだ……剣士としての目……
 雪乃さんの目にはそれがある……そう、過去剣士としていた時の目
 体がよわかったために少しの間しかしてないと言っていた
 退魔もできたと聞いている

「なぁ、和真、どう思う?」
「薫姉、母さんが変になってしまった!!」
「あわてるな……私たちは退魔師なんだぞ……何か原因が」

 薫さんと和真さんは何かいろいろと話している
 那美さんも考えているのか見ている
 葉弓さんが箱を手にかけて、力を見ているのだろう

「なるほどね……そういうことですか」

 葉弓さんが箱のふたを閉めて、封印をする
 それを薫さんと和真さんと那美さんは見ていた
 楓さんと十六夜さんが雪乃さんに説明しているのだが埒があかない
 それに、何故か雪乃さんが俺との間合いを近づけているように思える

「原因がわかりました……」
「え!?」
「本当ですか?」
「簡単に言います……この箱にはすごい力が入ってました
 過去の体へと思いを持つものへのために作られた箱です
 言うなれば逆浦島太郎ですね……」
「そんな!! じゃあ、母さんは?」
「もう、術中にはまってしまいましたし……今のところ手だてなしですね」
「確かに文献を当たるしかないかもしれないですね」
「じゃあ、雪乃さんって全部過去の経験しか……」
「はい……だから、母親とわからなかったんですよ」
「どうしよう……」
「連れて帰るしかないでしょう」

 神咲の退魔師たちの話は終わったみたいだ
 で、俺は少しそれを聞きながら、考えていた
 何か大変な事になった気がする
 というか、大変な事になっているんだよな
 そう、本当に大変な事に……

「あの、高町恭也くん、恭也くんって呼んでもいいかな?」
「はぁ、どうぞ……」
「恭也くんは、剣してるよね?」
「ええ、してますが……」
「今度手合わせ、願えない?
 ちょっと天狗になっている自分の目を覚ましたいから……」
「俺じゃなくても……」
「いいの、恭也くんと闘いたいから……剣士として、一人の女性ととしてもね」

 ウィンクをして俺に笑いかける
 この人今いくつなんだ?
 雪乃さんは確かに年齢を感じさせなかった
 じゃあ、この人は……

「あの、雪乃さん、これから神咲に行くのですけど
 車で一緒にどうですか?」
「いえ、ここからなら裏山通ればすぐなんで、私は歩いて帰りますよ」
「え!!」
「マジ!?」
「嘘!!」

 なにやら車の中で呻いてる
 薫さんが顔を出すと……

「あの、裏山は今人があまり入ってないので荒れてるんですよ
 だから……」
「大丈夫よ……十六夜持って行くから
 それと、恭也くんもついてきてくれるでしょ」
「俺はかまいませんが……」
「では、後で」

 いつの間にか雪乃さんは十六夜を持って歩いていく
 その姿は10代……後半だな
 そして、俺はついて行かないといけないのだろう……
 俺は薫さんたちを見ると……

「恭也くん、先にうちらは戻ってるから……母さんを頼む
 何か考えてる顔なんだけど、うちらも混乱してるし
 ばあちゃんと相談してみるから」
「わかりました……では、また後で……」

 そして、俺は走って、追いかけた
 先に歩いていって、しまって早かったのだ

「あ、すみません、ちょっと先に歩いてしまって……
 その、この辺が変わってしまって
 道はわかるのですけどね……」
「あなたは本来ならもっと年をとっている人ですからね……
 それが若返った……どうしてかわからないけど」
「雪乃、本当の事ですよ……私も本来なら薫についてましたから」
「そう……じゃあ、ここは未来なのね……
 私が住んでいた世界と違う未来の世界なのね」
「はい」
「そうですよ……でも、不安に思わないでください
 確かにここは未来ですけど、ここにも助けてくれる人はいます」
「そうね」

 3人で歩いていく……山道に入ると確かに少し荒れているとわかる
 獣道をすたすたと歩いていく雪乃さん
 十六夜で前の草をさっと凪いだように切っていく
 ただ、俺にはその姿に驚かされた
 この人は強い……そう、殺意もなく、透明感のある斬り

「剣士の目ですね……本当にお強い……私より強い」

 前の声に我に戻る
 我を忘れるほどに見取れていた
 なんて人だ……

「さてと、ここまで来ていたら邪魔も入らないわよね……
 恭也くん、勝負しましょうか?」
「好戦的ですね」

 俺は何となくわかっていた
 そう、ここに来るということが相手の挑戦状だと……
 雪乃さんの力が相当なものだとわかった
 雪乃さんも俺の中にある力を見切っていた
 だから……二人は同じ見解に達していた
 闘いたい……と

「本気ですか?」
「本気よ……十六夜、誰にも言わないでね
 それから……後で癒しするから霊力は使わないからね」
「はい」

 俺は準備しておいた小太刀を構える
 構えを解けない
 そう、相手の気迫と剣気だ!!
 これほどまでとは……いやはや驚きだな

「さて、あなたの本気を見せてもらいます」
「そうですね……ここなら俺とあなた、どちらが有利もありませんから」

 そう、どちらも有利であり、不利である
 そして……俺たちは剣士だった

「小太刀二刀術 御神流 師範代 高町恭也 参る!!」
「神咲一刀流 門下生 神咲雪乃 参ります!!!」

 お互い剣を軽く一度当てると間合いをとった
 お互いの剣の間合いは違う
 でも、これは間合いも重要な部分だ

「本気で来てくださいね……手加減なんてされたら迷惑になりますから」
「いいですよ……俺も本気にならないと勝てないでしょうから」
「わかってるんですか? それとも気づいてるんですか?」
「わかってますよ、短期決着と……お互い身体に対しての不安は消せませんから」
「私に恭也くんほどの力があれば良かった……
 そしたら、悩む事なんてなかったのに……」

 お互い、違う事を言っているように思えるが……
 違う!!
 雪乃さんは悩んでいるんだ……さっき言っていた目を覚ます
 それは確かにあっている……でも、本当のねらいは違う
 自分がどこまでできるか? 試してみたいんじゃないだろうか?
 剣士としての高みへと上るために……

「でわ、戦いましょう……死闘という中で見させてもらいます」
「そうですね……行きます」

 俺はすぐに決着をつけたかった
 でも、それはさせてもらえないだろう……
 雪乃さんは剣才と言われていたらしい……那美さんがうれしそうに話していた
 そして、その力は神咲の最初の人よりも強いと考えられていたらしい
 そんな話を聞いていて、俺も少し考えていた
 若い頃の雪乃さんと戦いたいと……
 それが望まざるもかなうとはな

「考え事の時間はないですよ」

 俺の鼻先に切っ先が触れそうになる
 上半身をひねって、避ける
 そして、何も考えないで行く
 闘っていて初めてわかる……剣の動きが速い
 小太刀で翻弄しているのに……相手もそれについてきている

「あなたも悩んでいる時間はないはずだ!!」

 俺はそういうと左の小太刀を振り抜く
 すっと切っ先に手応えがあたる……服だけだな
 そう、服だけが斬れていた
 袈裟懸けに……

「くっ!! まだまだ!!」
「全身全霊をかけて……」
「お互いの死力を尽くし……」
「お互いの志をもって……」
「闘います……」

 剣士としての志
 一人の人としての決めたこと
 俺は……完全にわかっていた……彼女に勝つのは難しい
 俺が無傷でとなるとまず無理だろう
 ただ、俺は彼女と剣を交わしていた






 つづく〜







 あとがき
 結構、雪乃さんって好戦的だと思うのだよね
 シオン「って、本当にかってね」
 ゆうひ「しかも、逆浦島太郎って」
 ま、頭にそれしかうかばなかったんよ〜
 シオン「頭の悪い」
 ほっといて
 ゆうひ「でわ、また〜」
 早く出すとあとがきが確実に短くなるな。またね〜



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