『壊れかけの剣士たち』




     〜第01話〜






これは『An unexpected excuse 〜沖田総詩編〜』に繋がるお話です。
原作がお好きな方はおススメいたしません。
それでもよろしければどうぞ






「……ここか」

と呟いたたがその学園について恭也は何も知らなかった。
今まで全く関わったことがないのだから当然である。

「なんで俺がこの学園に……」

その学園の名前は愛津女学園。
れっきとしたお嬢様学園なのだ。

「はあ……」

深いため息を吐く恭也であったが、背中に隠してある八影に触れ気を引き締めなおす。
普段の恭也なら無闇に小太刀を持ち込んだりはしない。
だがこの愛津女学園だけは別なのだ。
なぜならば、この学園は帯刀許可された武家学園だからである。

「すごい学園だな、今更だが……。それにしてもあまり入りたくないな」

だが学園長に挨拶しなければならかった為、校内に入る恭也であった。
廊下を歩きながらこんな事になった経緯について思い返していた。



-回想-

長期休暇が始まり恭也は家で寛いでいた。
家人たちは全員出かけており恭也は一人。
特にする事もなかったので盆栽の雑誌を読んでいると、
電話が鳴り響いた。
出てみると

「恭也!大変なの!!」

とティオレさんがすごい慌てようで話てきた。

「まさか、フィアッセに何か!?」

「もっと大変な事なの。だから今すぐ杏都に来て!!」

"ブツッ、ツー、ツー、ツー……"

全く内容がわからなかったがあの慌てようは尋常じゃないと思い

"少々遠出する。心配なきように"

と余りにも簡潔すぎる書置きを残し、出掛ける恭也であった。

「しかしなぜティオレさんが日本にいるんだ?」



杏都につくと、ティオレさんがこちらに気づき笑顔で迎える。
その顔は全く慌てる事もなく

「それでティオレさん、一体何が!?」

「実は……」

なんだか嫌な予感がひしひしと伝わる空気を恭也は感じていたが
こういう時は良く当たるのだ、恭也の感は。

「愛津女学園に行って欲しいのw」

「……はっ?」

「だから愛津女学園に短期留学して欲しいのw」

その学園の名前は知っているが、正真正銘のお嬢様学校なのである。

「何を言ってるんですか!」

「そこの理事長と友達なのよ」

「全然話が繋がりません!」

「恭也にしか頼めないの」

「それだったら美由希の方が適任でしょう。なんで男の俺が」

確かにその通りである。
その学園は男子禁制で有名なのだから。

「今ね、愛津女学園が大変なの。
共学化するかしないかで生徒同士でケンカしてるのよ」

「普通に考えればそうでしょう」

「愛津女学園の理事長はね共学化には反対なの。
でも愛津女学園の教頭が強引に共学化を進めているらしいの」

「それだったら、俺が行ったら尚のこと問題ではないですか!」

「今のままだとずっと争いが絶えないの。
だったら一度テストとして男子生徒を入れて判断してみようという事になったの」

「それでしたら、俺じゃなく共学する学園の生徒に頼むべきでは?」

「それがね〜…」

「何か問題が?」

「共学に反対の生徒は渋々この案は認めてくれたんだけど、
テストするなら共学するところの生徒じゃいやという話になったらしくて」

「……まさか」

「そうなの。愛津女学園の理事長から相談されてだったらって事で…!」

ティオレは恭也に指を指してきた。

「だからお願い♪」

「しかしですね…」

「その学園の子たちにとっても、いい機会だと思うの。だからね」

しばらく考えてから

「……わかりました」

渋々ながら恭也も了承した。

「ありがとう!さすが恭也ね。じゃあ明日からよろしく!」

「えっ?」

「今日は帰って必要なものを持ってきて。明日には転入させるから」

判断を誤ったと思う恭也であった。

「そうそう、愛津女学園でやってる争いはみんな刀でやってるから。
あまり危ない事はして欲しくないんだけど、恭也ならなんとかなるでしょ」

どんな学園だと恭也は考えた。



その日は家に帰り、家人に明日からの事について話し始める。

「明日から少々用事で出かける。夏休み中はいないと思ってくれ」

それを聞くと桃子・美由希・晶・レンは旅に出るのかと勝手に判断した。
まあいつもの事だと思い、特に何も気にしなかった。
だがなのはだけは落ち込む表情をしていた。

「おにいちゃん、いないんだ……」

「すまんな、なのは。だから帰ってきたら行きたいところ
何処へでも連れて行ってやるからな」

「本当!?」

「ああ、兄が嘘ついたことあるか?」

「割とたくさん」

「うぐ、だが今回は嘘は言わん」

「じゃあ遊園地とかも連れて行ってくれる?」

「ああ。だが最近の遊園地はよくわからんからな。
先に調べておいてくれると助かる」

「うん!」

「そういうことだ。晶・レン家のことは任せたぞ。
それから母さんもあまり無理しないように」

「「はい!」」

「もちろんよ」

「とりあえず俺は明日の準備をするので、今日はもう休む」

「体には気をつけるのよ」

「ああ、わかっている」

そこから恭也は離れ、自分の部屋へ行く。
恭也が出て行くと一人床にのの字を書いているモノがいた。

「どうして…どうして…恭ちゃんは私にだけ何も言ってくれないの……」

その願いが通じたのか、恭也が戻ってきた。

「美由希、言わなければいけない事があった」

「なに?(やっぱり私のことも信頼してくれてるんだ)」

とまだ何も言ってないのに喜んでいる美由希。
そして恭也は口を開いた。

「絶対に料理はするなよ。するなら一人で作って一人で食べろ。
家のモノに食させようと思うな。
ましてやなのはに食べてもらおうなどと思ったら判ってるな?」

そういうとまた自分の部屋に戻っていく恭也であった。
美由希はというと

「何もあそこまで言わなくても!そんなに酷くないよね!?」

と皆に確認しようとすると、そこには美由希以外はいなかった。

そんなこんなで今日、恭也はこの学園に来たというわけである。

-回想終了-



廊下を歩いているとチャイムが鳴り響いた。
どうやら授業が終わったようだ。
すると各教室から女子生徒が多数出てきたが、廊下で二つのグループに分かれはじめた。

「今日という今日は決着つけてあげようじゃない!学園の衰退を支持する佐学派めっ!」

「黙りなさい。この愛津女学園の由緒と伝統を踏みにじらせはしないわ!」

女子生徒たちは己の刀を抜き放ち、そのまま剣劇へとなだれ込んでしまった。
その女子生徒たちの剣劇について恭也は

「(ふむ、あの子はもう少し振りを小さくしなければ。一方のあの子は…)」

と勝手に品評していたのであった。
そんな時、廊下の奥より

「杏都守護職・愛津園長預かりっ!新選組ッ!!」

という掛け声と共に登場する一人の女子学生がいた。
その姿をみた女子生徒たちの反応は様々であった。

「きゃあっ、土方様ぁ!」

「素敵です〜」

佐学派といわれる女子生徒たちは歓喜の声を上げ

「くっ出たわね!新選組!!」

「さすがに不味いかな」

と苦汁を飲んだような声を上げる討学派の女子生徒たち。
土方と呼ばれた女子生徒の後ろから同じほどの実力を持つであろうメンバーが数人姿を見せていた。
そんな彼女たちは浅葱色のダンダラ模様の羽織をしていた。

「(なるほど、あの方々は中々の腕前だな)」

羽織をしている女子生徒の腕間について恭也はまたしても勝手に品評していた。
そんな時、

「あっ、坂本さん!」

討学派のある女子生徒が声を上げる。

「やぁれやれ、新選組の皆様は熱心じゃね。のう、桂?」

「そうですね、涼華先輩。新選組の方々は血気盛んですから」

「抜かせ!今日こそ成敗してくれる!!」

お互いのリーダー格らしき生徒たちの現われで、場が盛り上がり始める。
そんな中恭也はというと

「(結局どこが学園長室なんだろう)」

と余りにも緊張感を持っていない恭也であった。
そんな考えをしているとき、不意に足元の消火器を蹴ってしまった。

「む?」

土方と呼ばれた女性がこちらに目を向けた。
そんな恭也は

「すいません、学園長室へはどのようにして行けばよろしいのでしょうか。
急遽こちらに来ることになってしまい勝手が分からないのです」

「ああ、それでしたらこの廊下から……と行けばいいです」

「そうですか。ありがとうございます」

恭也は翠屋でやる笑顔を向けると、その生徒は顔を赤くしていた。
こうして恭也は無事に学園長室に向かう事が出来ました。

(壊れかけの剣士たち 完)
















「待て待て待てーーーーーー!終わってしまったではないか!?」

顔を赤くしながら土方は恭也に怒鳴りつけた。

「え?」

「なぜここに男がいるのだ!!」

「そりゃ決まってますよ副長。いつもの不逞生徒ですよ」

扇子を持った大人びた女性がそのように言う。

「でもこのにーさん刀は持ってますね。うまく隠してますが。
どうやら覚悟はしてるみたいですね」

恭也が小太刀を隠している事を見事に見抜く。

「(さすがだな、これだけの生徒を纏めるだけの事はある)」

恭也はその女性に感心していた。

「とりあえず侵入したとかではないんだが」

「やかましい!とりあえずひっとらえろーーーっ!!」

佐学派の生徒たちが一斉に向かってきたので

「(とりあえず逃げるか、面倒な事になりそうだし)」

と考えすぐ逃げ出した。
すでに面倒事に巻き込まれているのだが……。

「涼華先輩!今の彼はもしかして……!」

「そうか…!今の男が今回佐都間の生徒の変わりに来るっていう男か!
よおしみんな、あん男を守るぜよーーーっ!」

その追いかけっこですぐに学園中に噂が広がる。
まあ恭也の容姿の話が一番広まるのが早いが…。



「「「こらっ、どこだーーー!」」」

佐学派の女子生徒からは追われていたが、恭也は気配を察知しては
手近な誰もいない教室に隠れていた。

「(なんでこんな事してるんだろう)」

訳がわからず追われている恭也はそんな事を考えているのであった。
いつの間にか至る所で佐学派と討学派のチャンバラが繰り広げられていた。
そんな光景を見ながら恭也は

「とりあえずどうするかな」

悩んでいた為に気配の察知を忘れていた恭也は突如教室に入ってきた
女子生徒に驚いていた。

「いよっしゃあ、追いつめた!そこまでだぁっ!」

「!?」

「新選組十番隊組長、原田紗乃!貴様の首、貰い受けるぅっ!!」

「まいったなあ、あまり争い事はしたくないんだが。だが死にたくもないしなあ」

「それがイヤなら、お前もその剣でかかって来い!行くぜーーーーっ!!」

槍で恭也に攻撃を仕掛ける紗乃。
一体これからどうなる!?





<終わり>



何と言う学園だ。
美姫 「日常茶飯事な感じで刀での争いって」
しかし、そんな所へと強引に行かされるとは。
美姫 「恭也も不幸というか、何と言うか」
初日に早速、斬りかかられているし。
美姫 「まだ学園長室にも行ってないのにね」
本当にどうなるんだろうか。
美姫 「次回も待ってますね」
待ってます。



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