『壊れかけの剣士たち』




     〜第05話〜






これは『An unexpected excuse 〜沖田総詩編〜』に繋がるお話です。
原作がお好きな方はおススメいたしません。
それでもよろしければどうぞ





前回のお話

恭也は新選組の面々の誤解をなんとか解けた話をしたが
聞きたい事が違うという事で再度語り出す。
いよいよ馴れ初めがついに!?



時刻が夕方になり始めた頃、恭也は愛津女子寮内にある新選組専用の部屋にいた。
その場所は"屯所"と呼ばれる場所らしい。
最初恭也は屯所に行くことを拒んだ。
土方はその態度にやはり恭也が言った事は嘘かと思い刀を振り回してきた。
恭也は全てかわしながら言うのであった。

「女子寮に男が入ったら不味いでしょう!?」

その言葉に土方は刀を納め、

「たしかに……」

と素直に納得した。
恭也は同年代の男に比べると、しっかりしている。
女性に興味が無いわけではないが、間違いがあってはいけないと最初に考えるのだ。

「恭くんなら〜、大丈夫」

局長であるイサミがそんな事を何が大丈夫なのかわからない恭也であった。




「さて、先ほど学園長に挨拶に行った際の話を聞く限り、お前の言っていたことは嘘ではないらしい」

「というか〜、土方さんがちゃんと話を聞けばこんな面倒な事にならなったんじゃないですか〜」

「……うぐっ」

総詩の言う事に、言葉が出ない土方であった。
今の会話の通り、恭也は先ほど愛津女学園の学園長である松平 並盛氏に挨拶をしてきた。

「わかっていましたが、迷惑そうな顔をされましたけどね……」

ティオレの親友と言っても共学化に反対の学園長なのである。
ティオレがいくら信用している男の子でも仕方ないといえば仕方ない反応であった。

「ま、それはそうなんじゃない?ウチの学園長は共学化には大反対だもん」

「その上、この佐学派の筆頭ですからね〜」

「ええと……確か今回の編入も本当なら数十人で行うはずだったんですよね?
それが学園長の意思で高町さん一人にしたって……」

「そうなのか?」

「えっ?知らないんですか?」

「この学園に来るのが昨日でしたので、自分もわからないんです……」

「そ、そうだったんですか……」

遠い目をする恭也を苦笑いしながら見る芹栖であった。

「そ、そういえば共学化を提言したのはこちらの教頭だとお聞きしましたけど?」

「ああ、そうだよ。共学化を成功させて学園の危機を救い、学園長の椅子を狙ってるとか」

そうなのだ。
由緒ある歴史を誇る愛津女学園であるが、少子化などの影響で年々生徒数が減少し、
今や学園経営は大きな問題となっていた。
そこで持ち上がったのが共学化の話らしい。
本来は男子校の佐都間学園の生徒に来てもらうはずだったのだが……。
まあそのせいで学園長と教頭は火花を散らせているらしい。

「その火花は生徒たちにまで飛び火して、今やこの愛津女学園は真っ二つにわかれてしまっている状況ですねぇ」

この恭也の短期留学。
実は教頭が勝手にテスト編入の話を進めていたのだ。
その事に学園長が怒り編入させるのは一人だけと限定したらしい。
それに呼応するように生徒たちからも佐都間学園の男子は嫌だという事で学園長はティオレに話を……。
という流れなのである。

「(俺なんかがこんな由緒あるところに来て、何をするんだ……)」

そんな事を考えていると

「……………(じー)」

と見つめる初音の姿があった

「……何ですか、斉藤さん?」

「……別に」

「そうですか?」

「……うん」

また頭を撫でてもらいたいと思ってる初音であったが、中々言い出せずにいた。

「それにしても、どの程度の者かと思えば……やはり男など」

先ほどの事を忘れているのかそんな事を言う土方。
まあ恭也も襲い掛からなければ攻撃したりはしないのである。

「トシちゃんったら失礼でしょ〜。……ねえ恭くん、貴方は共学化の使者としてこの学園に来たのよね?」

「いいえ」

「ふぇっ?」

「あくまでテストという事でこちらに来ただけです。もし共学化が必要ないと分かればそれでいいと思います」

ティオレにお願いされたとき、特に何かしてくれとは言われてないのだ。
共学化を進めろとも、女学園のままにしろとも。
つまりこの学園を見て決めろという事である。

「そうなんだ〜。……それじゃ、やっぱりこれでいこう〜」

「近藤さん、どういう事ですか?」

何か考えているイサミに土方は疑問を浮かべるのであった。
イサミは恭也を見つめると、にっこり微笑みながら言い放った。

「高町 恭也くん。貴方を本日付けで新選組・四番隊組長に任命します」

「……えっ?もう一度お願いできますか」

突然のお達しに再度確認を取る恭也であった。
間違いであってほしい事を願って。
だが

「高町 恭也くん。貴方を本日付けで新選組・四番隊組長に任命します」

「本気ですか……」

「何だってーーーーーーーーーーっ!?」

恭也の替わりに土方が叫んだ。

「なっ、何を言ってるのよイサミ!いくら四番隊組長が空席だからって。
それによりによってこんな奴を入れるなんて……正気なの!?」

「こらこら、今は"イサミ"じゃないでしょ〜。それにトシちゃん、女の子がそんな大声出しちゃダメよ〜」

「し、失礼。それにしたって近藤さん、こいつは男なんですよ!それを新選組に入れるなんて!」

「土方さん、もしもボク達が高町先輩を迎え入れなかった場合、どうなります?」

「……当然、討学派の生徒たちが受け入れる……」

「なぁるほど、討学派に男子生徒なんかを渡したら一気に向こうの士気が上がっちゃうね。
手に負えなくなるよ」

「高町先輩を新選組の中に組み入れる事で、討学派の皆さんに手出しされにくくするわけですね」

「高町を常にあたし達の視界において、自由にさせないわけだ。よーするに人質でもあるって事だね」

「あら、さのちゃんったらそんなひどいこと言わないの〜。わたしはただ恭くんと仲良くしたいだけよ〜?」

そう言ってニコニコと笑っているイサミであった。

「……近藤さんがそう言うならば。だが勘違いするな高町。私は貴様など一切認めていないからな!」

怒り狂っている土方。
みんなは何とか宥めようとしている。
そんな中恭也が口を開いた。

「自分は入る気はありません」

「「「「「「「な、なんだって〜〜〜〜!?」」」」」」」

恭也のその言葉に余りにも信じられないといった感じの新選組組長たちであった。

「き、貴様!近藤さんが折角お前のような奴を入れてくるといっているのに」

「先ほども言いましたが、自分は別に共学化させるのが目的ではありませんし」

「だったら、新選組にいてもいいんじゃないですか〜?」

「女学園のままにしようというわけでもありませんから」

「恭はどうするつもりなのさ?」

「どちらがいいのか。それはこれからの皆さんをみて決めたいと考えているのです」

「それじゃ〜、お試し期間ってことで、入ってみてくれないかな〜?」

「お試し期間ですか?」

「そう!もし恭くんが抜けたくなったらいつでも抜けて良いから〜」

「……うーん」

恭也は色々と考える。
そんな時ある人の声が鳴り響く。

「ええい!まどろっこしい!近藤さんが言っているんだからとにかく入れば良いだろう!!」

土方である。
イサミが自分ではなく男をひいきしてるのが面白くないらしい。
そんな土方を恭也は睨みつける。

「先ほどから俺に対する態度はひどいと思っていましたが、同じような立場に立ったときあなたはほいほいと決められますか?」

「近藤さんに言われたのならば、私は迷わん」

「それは近藤さんという人を知っているあなたの意見だ。全く知らない人に言われて近藤さんと同じように選べますか?」

「……くっ!」

苦虫をつぶしたような顔をする土方。
恭也の言ってる事が間違っていないためである。

「ですが先ほどのイザコザを納めてもらった恩もありますし、沖田さんとゲンちゃんにもお礼をしたいと考えていましたから」

「じゃあ?」

「よろしくお願いします」

人頓着あったがここに新選組四番隊組長・高町 恭也が誕生した。

「気をつけたほうがええで、高まっつぁん。この歳緒はんはな、"鬼の副長"って呼ばれるくらいオッカナイねーさんやで」

「わかった、気をつけよう」

「不本意だが、貴様も新選組の一員になったのなら叩き込んでおかねばならぬことがある。それは……」

なんだか長くなりそうだと恭也が思っていたとき

「待ってください土方さん、そろそろ夕食の時間ですよ?お話は食事が終わってからにしましょう」

「……む、そのようだな。では話は後だ、着替えて食堂に向かう事にしよう」

そう言うと恭也は立ち上がり部屋から出て行こうとする。

「こら、貴様!どこへ行こうとしてる!?まさか覗きでもしに行くつもりではないだろうな」

「いえ、着替えをしようとしているでしたら男がいては……。外で待たせてもらおうと」

「あはははっ、高町先輩は律儀ですね〜」

「でも恭の言う事は間違っていないよ?それともこのまま着替えをみてもらいますか、副長?w」

「早く出て行け!!」

そう言われると恭也は屯所を出て行った。

「まったく油断も隙もない!これだから男というのはイヤなんだ!」

恭也がいるのを忘れて着替えようとしていた人のセリフでない気がするが……。

「まったくや!最低やな!……さささ歳緒はん、がバーッと着替えまひょ。ガバーッとね」

「貴様も出て行け!カンリュウサイーーっ!!」

「あぎゃーーーーッ!!」

またもや真っ二つにされ一機減るカンリュウサイであった。
がまたすぐスペアがやって来る。

「いや〜、かなわんでホンマ。また残機数が一機減ってもうた。そろそろミルク飲んで1UPせな。
じゃ、ワテ先に食堂行ってミルク飲んでくるさかい、また後でなー」

そう言うとカンリュウサイは飛んで行ってしまった。

「……1UPってなんだ?」

またもや意味不明な言葉を残していくカンリュウサイを見ているしかない恭也であった。

「……先ほどから考えているがあれは本当にアイツの作品ではないよな?」




「ほら恭くん、こっちこっち〜。食堂はこの先だよ〜」

「あの近藤さん近づきすぎなんですけど……」

「おのれ〜!高町め!!」

「あはは、気をつけてくださいね高町先輩。後ろから刺されないようにしてくださいよぉ〜?」

「はあ?」

「大変だね、恭。それよりどう?あたしのこの姿は?」

やちは一際目立つ着物姿で、艶のあるポーズをとって見せていた。

「え、えっと……綺麗です。ただその……///」

「あっははぁ、あんた正直だねー!あたしの事見て照れてるしさ。ちょっと聞いた紗乃、恭があたしのこと
この世に降りた最後の天使みたいだってさ!」

恭也が照れたのはやちの服装にだ。
スタイルのいいやちが随分きわどい着物を着てるのだ。
そこに目が行ってしまい照れてしまったのだ。

「ダレもそこまで言ってないだろ…。ていうかやち、よくそんな服でいられるよなぁ」

「(二人は親友なのか。意外と言えば意外だな……ん?)」

そんな事を思っていると、ふと目に入ってしまった。

「……………」

「……………」

「……なにかモンダイでも……?」

「いや知り合いにもいるんですけど、なぜメイド服なのかと……」

「……そこにメイド服があるから……」

「……そうですか」

初音の説得力のある一言で撃沈する恭也であった。




話をしながら食堂へ向かう一同。
今までの事を察するに恭也はしっかり食事にありつけるのか。
一日目はまだまだ続く……。




<終わり>



メイっ――ぶべらっ!
美姫 「学園長に確認ももらい、何とか転入生だとは認めてもらえたみたいね」
たたた……。みたいだな。
とは言え、色々な理由からというか、近藤と仲良いのが一番の原因みたいだけれど、土方からは目の仇に。
美姫 「新撰組の中でも恭也に対するスタンスや思うところはやっぱり色々あるみたいね」
だな。それらがこれからどうなっていくのか。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
待ってます。



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