『壊れかけの剣士たち』




     〜第06話〜






これは『An unexpected excuse 〜沖田総詩編〜』に繋がるお話です。
原作がお好きな方はおススメいたしません。
それでもよろしければどうぞ





前回のお話

四番隊組長となった恭也。
ひとまず食事という事だが、はてさてどうなるやら……。




食堂についた新選組の面々。
その場所は旅館の宴会場というべきだろうか。

「(無数の視線が突き刺さる……やはり俺のような男がいるのは……)」

まあ多少は厄介者を見るような視線を向けているが、ほとんどの生徒は恭也の容姿に
見とれているのであった。
まあ後者については恭也は考えもついていないが……。

「……高町先輩、周りの視線なんて気にする必要ないですよ。皆さん男の人に慣れていないだけですから」

「ありがとうございます……確か藤堂さんでしたね。お気遣い頂きありがとうございます」

そう言い頭を下げる恭也であった。
お礼を言われた芹栖はおろおろと慌て始めた。

「えっ!そそ、そんな事ないですよ!"男の人に慣れていない"のは私の事でもありまして…///」

「あ、あの、……藤堂さん?」

芹栖は顔を赤くして逃げていってしまった。
ぴゅーっと音がするほどのスピードで……。

「それじゃ高町先輩、こちらにどうぞ。この寮の食事は美味しいですからぁ」

「楽しみです」

自分の家に和食と中華の鉄人がいる恭也は、他の場所での料理について興味が沸いているのであった。

「まだだぞ高町!きちんといただきますをしてからだ!」

「当然です。折角用意していただいた食事を礼も無しに食すのは人として最低です」

恭也が土方の意見に賛同する。
だがこの人には礼よりも食欲に身を任せるようだ。

「もぐもぐもぐ、う〜ん、今日のご飯も美味しい〜♪いくらでも入っちゃう〜」

「「……………」」

恭也と土方はその光景に唖然としてしまった。
恭也の言う最低人間が目の前で美味しそうに芋の煮っ転がしを食べていた。

「……いたただきます」

恭也は気を取り直し食事を開始するのであった。
周囲の生徒もそれに習い、食事を開始するのであった。

「……………」

「どう、恭?この食事目当てにこの学園に入学する生徒たちも多いくらいなんだから。
……ま、こいつもそうなんだけどね……。」

やちの隣では一心不乱に食事をしている紗乃の姿があった。
皿の山というものが出来てきている。

「…………ふむ」

「どうですかぁ?」

「醤油を入れるタイミングを砂糖やみりんの後の方が良いでしょうけど、十分に美味しいです」

すごく的確な事を言ってる恭也の指摘に、食事を作っていたおばさんは密かにメモを取っていたらしい。
後に絶対恭也を唸らせる料理を作ると心に決めたとか……。

「……それではついでだ。簡単に自己紹介でも済ませておこう。紗乃、まずお前だ」

「オッケー、副長。あたしは原田紗乃、一学年下の二年だよ。あたしの指揮する十番隊は突撃部隊、
よーするに大暴れする華のある隊さ!」

「よろしく、原田さん」

笑いながら食事を再開する紗乃であった。
皿の山が富士山みたいになってきている。

「次は九番隊でしょうか?」

そう言うとなぜか初音が前に出た。
なぜかメイド服からまた制服になっているが……。

「どうしたのですか、斉藤さん?確か斉藤さんは三番隊ではなかったでしょうか」

「初音じゃない……。このみきぽんが隠密九番隊組長……」

「……そうなのか?」

「……うん、みきぽんは優秀だよ……」

「そうか、よろしくな。みきぽん」

そう言いみきぽんを撫でる恭也であった。
みきぽんはニカッと笑って俺に応えてくれたようだ。
ついでに初音もおとなしく一緒に撫でられているのであった。

「それでは次はわたしですね。藤堂芹栖と申します、一年生です。魁部隊と呼ばれる、
八番隊を指揮しています。至らないところも多々あると思いますが、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします、藤堂さん。それにしても一年生で組長とは凄いですね」

そう言われ顔を真っ赤にしてクネクネしている芹栖であった。

「次は七番隊だな。谷さん、ちょっと来てくれー」

土方が指笛を鳴らすと、一羽のハトがやってきた。
そのハトを見て恭也は思い出していた。

「あの時のハトが谷さんでしたか。という事は七番隊の……」

「そうだ。彼こそが伝令部隊を務める谷さんだ」

普通は帽子やハトが組長だったらおかしいと思うだろう。
だが恭也の周りの普通な事は起こらない。

「そうでしたか、あの時は失礼しました。若輩者ですがよろしくお願いします」

「クルックー(よろしくな)」

そう言うと羽ばたいていく谷さんであった。

「次は六番隊でしたね。確かゲンちゃんではなかったでしょうか」

「そうですよぉ。ゲンちゃんが六番隊である"猫まっしぐら部隊"の組長さんです。ゲンちゃん、ご挨拶」

「ニャーン!(よろしく〜)」

「これからよろしくな、ゲンちゃん」

そう言いゲンちゃんの頭を撫でる恭也であった。

「これ食うか?」

恭也は自分のブリ照りをゲンちゃんに差し出すのであった。
それを咥えたゲンちゃんは恭也の頭の上に載るのであった。
どうやら恭也の頭の上が気に入ったようだ。

「さて次は!待ちに待った ワテの番!寄るな触るな 弾けて飛ぶぜ!?」

なんだが短歌調でやってきたのは言わずもしれたカンリュウサイであった。
そんなカンリュウサイをわざと無視する恭也であった。

「それで五番隊組長は一体どなたなんですか?」

「ちょい待って〜な〜!高まっつぁん!」

「……カンリュウサイも組長なのか……。でどんな部隊だ?」

あまり聞かないほうがいいと脳が言っているが仕方なく聞く恭也であった。

「泣く子も黙る、助平部隊や!!」

「(ろくでもない部隊なのはわかった……)」

「ちなみに五番隊はカンリュウサイ一人だ。……理由は」

「土方さん、いいです。分かりましたから」

「ワテは基本的に男は死ねばいいと思っとるけど、高まっつぁんは別や。仲良くしようや!」

「あまり関わりあいたくないが、よろしくな。次は四番隊か」

次は一体どんな人が紹介してくれるのか待っている恭也。
なぜだか四番隊というのに引っかかりを覚えていると

「四番隊の組長は高町先輩じゃないですかぁ。もう忘れちゃったんですか?」

「……そうでしたね。ありがとうございます、沖田さん」

総詩にお礼を言う恭也。
気を取り直し自己紹介を始める恭也であった。

「四番隊組長に任命された高町恭也です。この学園の三年に編入する事になりました。
まだまだ至らない部分もあると思いますが、よろしくお願いいたします」

当り障りのない自己紹介をする恭也であった。

「つぎ初音……。追撃部隊である三番隊組長、斉藤初音……二年。……好きに呼べば良い」

「よろしくお願いします、斉藤さん」

なぜかまたメイド服に着替えている初音であった。
どうやらみきぽんの為に着替えたようだ。
みきぽんの為だけとは言え着替えてまで紹介した初音の頭を撫でる恭也であった。

「……………」

「二番隊ですね、次は」

「待ちくたびれたー、やっとこのやちさんの出番だね。防衛任務を主とする二番隊組長、永倉やち。
恭と同じ三年で風流を愛でるこの学園一の通人よ。よろしくね、恭」

「よろしくお願いします。永倉さん」

「そんな野暮ったい呼び方しなくてもいいよー。やちさんでいいよ。あたしも恭のこと呼び捨てだしね」

「いや、初対面の人を名前でというのは……ちょっと……」

「うーん、まいっか。それは追々ね」

「それじゃあ次はボクかな。遊撃部隊の任を持つ一番隊組長、一年の沖田総詩です。
よろしくお願いしますねぇ」

「よろしくお願いします、沖田さん。それと学園ではありがとうございます」

「気にしないでいいですよ〜。ちなみに趣味はゲンちゃんと遊ぶことと、土方さんで遊ぶ事です」

「なんだとーーーーっ!」

叫びながら土方は総詩の頬を抓るのであった。

「ああう〜、やめてくらはいひょ〜。ボクこう見えても病弱なんれふから〜」

総詩のお仕置きが終わったらしい土方が口を開いた。

「次は私だな。新選組副長、土方歳緒、二年生だ。実質新選組の指揮命令は私が行っている。
……高町も、私の指示に従ってもらうからな」

「わかりました」

ようやくあと一人となった。
全員が残りの一人を見てみると

「……ぐう、ぐう、ぐう……」

「近藤さん、……近藤さん。起きてください。食べてすぐ寝ると牛になりますよ」

「うにゃ……、あれ、もう朝?な〜んだ、朝食の時間だったんだね〜」

どれだけ食べる気だ、この人……。

「いえ、まだ夕食の時間ですよ。出来れば自己紹介をして頂けますでしょうか」

「それでは改めましていただきま〜す」

「あ、いえ自己紹介を……」

「冗談だよ〜。新選組組長、近藤イサミです。恭くんと同じ三年生だよ〜。これからよろしくね〜」

「はい、よろしくお願いします」

これでようやく全員の自己紹介が終わり食事を再開しようとする恭也たちであったが、そこに
新たな女子生徒が近づいてきた。

「ちくっと待っとうせ。ついでじゃから、あち達にもさせてくれんかのう」

「あの時の?」

「坂本!!」

土方は立ち上がり、相手の女子生徒と対峙する。
それを皮切りに佐学派と討学派の生徒たちは一斉に立ち上がった。

「(食事くらいは平和に食べたいんだがな)」

恭也はもう気にしない事にして食事を続けていた。
その光景に黙ってないのがこれ。

「ヤメテよ!ボクのことで争わないで!!」

絶対にありえない事を言ってる変な機械。

「カンリュウサイ、邪魔しちゃダメですよ〜」

そう言うと

「おぎゃーーっ!!」

また真っ二つにされるカンリュウサイであった。
今日のうちに何機切られたのやら……。

「歳緒さん、規律にうるさい貴女がお忘れかしら?寮内では一切の争いは禁止のはずですよ?」

そう言ってきたのは学園で恭也を逃がしてくれた心であった。

「…………っく」

「相変わらず血の気の多いやっちゃのう。今はただアイサツに来ただけがやき」

土方は渋々ながら腰を下ろした。
それを見て、佐学派と討学派の生徒達も腰を下ろし食事を再開した。
その間も我関せずといった感じで食事を続けている恭也であった。
相手の土方と対峙していた女子生徒が恭也に話をしようとしたので恭也もそちらを向くのであった。

「聞いたで、恭くん。おんし、新選組に入ったそうじゃのう。てっきりあち達討学派に来てくれると
思うちょったんじゃがのー」

「俺は元々どちらも入る気は無かったんですけど、まあ色々ありまして」

「おおかた強引な副長さんに人質として取られたのですね?ああ、お可哀想な恭也様……」

「そこまでひどくありませんよ、心さん」

「(さすがに近藤さんが言ったとは言いにくいな)」

「さて、ほいじゃ自己紹介するぜよ。あちは三年の坂本涼華。討学派の徒沙班を率いちょる。よろしくぜよ」

「よろしくお願いします、坂本さん」

「それでは次はわたくしが。二年の桂心です。討学派の超秀班の指揮を執らせて頂いております。
よろしくお願い致しますね……恭也様///」

「よろしくお願いしますね、心さん」

その発言に恭也を睨みつける人が二人。
一人は鬼の副長・土方。
まあ敵と馴れ馴れしくしてるのが気に入らないらしい。
もう一人はやちである。
先ほど初対面の人に名前では見たいな事を言っていて、心は名前で呼んでるのが気に食わないようだ。

「先ほどから一心不乱に焼きそばパンを食しているのは?」

「一年、岡田伊織。徒沙班の徒沙勤能党を率いている。焼きそばパンくれるならよろしくしてやる」

「わかりました、何かありましたらお持ちしますね」

「さてほいじゃあち達はこれで退散するき。ま、これから仲良くしようぜよ、恭くん」

そう言い残し、涼華たちは去って行くのであった。

「(それにしても……海鳴にいる知り合い達に劣らない人たちが多いな、この学園は)」

見た目というのもあるが、ハチャメチャさも劣らないと思う恭也であった。
まあつまり、平和な生活は送れないのが決まったようなものだが……。




夕食を終え屯所に戻ってきた恭也たち。
そしてさっそく土方が説明を始めてくれた。

「さてお前も新選組の一員になったからには叩き込んでおくことがある」

「はい」

「いいか高町、この新選組を真に束ねているのは私でも、近藤さんでもない」

「……………」

「誠の……士道だ」

「誠の士道ですか……」

恭也は部屋に飾られている、「誠」の文字が描かれたダンダラを見据え
他の面々もまた「誠」の文字を見据えていた。

「新選組の一員になった以上、お前もこの士道に縛られる。そして規律維持のためにあるのが局中法度だ」

「簡単に言うとね、ここにある五箇条を破っちゃメッていう約束ごとなの〜」

「(なるほどな)」

恭也はその規律を頭に叩き込んだ。

「そしてもう一つ本日より追加する事にした」

その言葉に反応したのが、イサミと紗乃であった。

「やめてくださいよ副長。食事量を減らすべしとは」

「わたしも間食を禁ずとかヤメテね、お願いだから〜」

この二人食べられない事意外に怖い事無いのか……。
土方は二人に呆れながら声を上げた。

「男女恋愛を禁ずる……これが新しい条約だ」

「……その条約いるんですか?」

「当たり前だ!!」

恭也は何のためにその条約が作られたのかわからなかった。
まあそれも恭也らしいが……。

「(男子生徒なんていないだろうに)」

自分が対象になっているなど露とも思わない恭也なのであった。

「よし。それでは本日はこれまで。各自部屋に戻れ」

その言葉に皆の緊張が解けたようだ。
各自これからの事について話をしていると、恭也は思い立ったように立ち上がった。
すると恭也は土方に声を掛けた。

「土方さん、一つお聞きしたい事があるのですが」

「ん?なんだ」

「この辺りに川の流れてる山は無いですか?」

「……はあ!?」

新選組の面々も何事かと恭也と土方の話を見ていた。

「どういう事だ?」

「俺のこれから住むところを決めようと思いまして」

そうなのだ。
ティオレから言われたのは留学してくれという事だけ。
住む場所などは一切何も言っていないのであった。

「ふぇっ?恭くんここに住むんじゃないの?」

「近藤さん、男がここに住むなんて!」

「そうです、年頃の皆さんがいる場所に俺のような奴がいてはいけません」

「じゃあ高町先輩、どうするつもりだったんですかぁ?」

「一応長期休暇などは鍛錬の為に山篭りしてますから、テント道具を一式持ってきてるんですよ。
だから川が流れてる山があればそこでテントを張って暮らそうかと」

「でもさー、近くにある山ってここから二時間くらい歩いたトコだよ?」

「そこで結構です。教えていただけますか、永倉さん」

「ええ!!こんな時間から行くんですか!?」

「はい、それに山なら今日みたいに食事を用意して頂く事もありませんし」

「本気かよ、高町?」

「……熊が出るって聞いた……」

「問題ないですよ、ここにいる方が問題でしょうし」

「……恭くんがいたいなら、ここにいてもいいんだよ?」

そのイサミの優しい言葉に微笑みながらも首を横に振る恭也であった。
もうこれは恭也の中で決定している事のようだ。
恭也の強い意志が伝わったのかイサミは指示を出すのであった。

「……わかったわ、トシちゃん恭くんに地図書いてあげて」

「わかりました」

「ありがとうございます、近藤さん」

「ううん、でも何か困った事があったら相談してね?新選組の仕事も大変だと思うから」

「はい」

そんな恭也の態度を見直す新選組の面々であった。
元々土方意外は悪い評価をしていないメンバー達は恭也の評価を更に上げるのであった。

「高町先輩は本当に女性を大事にしてるんですねぇ。ちょっと惚れちゃいます」

「ニャーン!」

「今時いないよー、そんな事言う男。このやちさんの相手に相応しいかもねw」

「……何かあったら初音とみきぽんが手伝っても良い……」

「高町先輩、気を付けてくださいね?」

「美味そうなものあったら取ってきてくれ!」

一人違う事を言ってる気がするが気にしない事にした恭也であった。

「高まっつぁんがいない間はワテに任しとき。ここの女の子たちはみんなワテの……」

「カンリュウサイ、うるさいですよぉ」

「うぐわーーーっ!!」

カンリュウサイはまた一機減るのであった。
カンリュウサイが減るのと同時に土方が声を上げた。

「出来たぞ」

「ありがとうございます、土方さん」

「ふん、……早く行け」

「それでは、皆さんまた明日」

「うん、恭くんもまた明日ね〜」

新選組の面々に見送られ寮を後にする恭也であった。




女子寮を後にし山篭りをする事にした恭也。
平穏無事にこれからを過ごせるのかは彼女ら次第?
これからの恭也を待ち受ける悲劇とは!?




<終わり>



静かに食事も出来ない初日も何とか終わったか。
美姫 「まあ、初日ゆえに色々と騒動も起こったんだろうし、次からは少しは落ち着くんじゃ……」
……うーん、騒動に巻き込まれるんだろうな。
美姫 「と言うか、恭也(男性)が原因だろうしね」
果たして、どんな学園生活になるのやら。
美姫 「気になる次回は……」
この後すぐ!



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