『壊れかけの剣士たち』




     〜第08話〜






これは『An unexpected excuse 〜沖田総詩編〜』に繋がるお話です。
原作がお好きな方はおススメいたしません。
それでもよろしければどうぞ





前回のお話

新選組としての仕事を実践してもらう事になった恭也。
無事に乗り切ることが出来るのだろうか……。




生徒会室から出た面々は土方の後に続くのであった。

「こうして校舎内を見廻るわけですか?」

「うん、そうなの。こうして誰かが見廻りしてないと〜すぐに治安が乱れちゃのうの〜……もぐもぐ」

イサミは大福を幸せそうに頬張っていた。

「……もぐもぐ……ん?どうしたの、恭くん」

「……さっき昼食食べませんでしたっけ?」

「甘いものは、別物だよ〜」

そう言うと今度はどら焼きを食べるイサミ。
もう食べ物について聞かないことにしようと決める恭也であった。
そんな話をしていると問題が発生していたのか、それを納めている土方と総詩であった。

「今のような感じで、高町お前もやってみろ」

「(しまった、見てなかった……)……はい」

とりあえず問題がありそうなら諫めればいいのだろうと判断する恭也であった。
すると前方から

"きゃーーー"

と女生徒たちの悲鳴が聞こえてきた。
そちらに急いで全員で駆け寄ってみると

「何やちょっとくらい触らせてくれてもええやろ、減るモンやなし!むしろ増えるやろ、オッパイがさあ!!」

そこには胸の大きな女子生徒たちを追い掛け回すカンリュウサイの姿があった。

「逃げる女の子!それを追いつめるワテ!そして……そしてェッ!!」

それをみた瞬間新選組の面々は刀を抜きカンリュウサイを一刀両断しようとした。
だがしかし

「おぎゃーーーー!?」

その声と共にカンリュウサイは一機減るのであった。
それをやったのは今までで一番考えられない恭也であった。
その抜刀の速さは新選組の誰よりも速かった。
刀を鞘に戻した後、恭也は

「……ついイラッとして抜いてしまった。よかったのだろうか……」

「基本的にカンリュウサイは斬り捨てていいぞー、高町。コイツのせいであたしらの評判が悪くなっても
モンダイだからな」

とフォローしたのは紗乃であった。
ほっとしている恭也。
だが恭也の抜刀に一番喰いついたのはやはりこの人。

「恭、すごいじゃないの!あんな速い抜刀、わたしにも無理だよー」

抜刀術使いのやちであった。
そんなすごい事をしたのかわからない恭也であった。
何せいつもする抜刀速度と同じなのだから。

「もうやっぱりわたしの相手は恭じゃないとダメだねー」

とやちは新選組としてはあるまじき(?)発言をするのであった。
まあ元々やちは恋愛については肯定派なのだから。
そんなやちの言葉を聞き流すように土方は仕事の再開を宣言するのであった。




ある程度教室を見廻り、屋上に出た面々。
その場所を確認した恭也はゲンちゃんに

「(近いうちに昼寝の場所として確保しておくべきか、なあゲンちゃん?)」

「(ニャーン!)」

と小声で相談していたとか……。
するとそこには先客がいた。

「新選組の人たちは仕事熱心やね?」

そこには討学派の涼華が食事後の休憩をしていた。
その姿をみた土方はすぐさま睨みつけて言うのであった。

「お前は要注意人物だ、坂本。最近討学派の動きを指揮をしているのはお前だな?」

「どうかのう?それにしてもこの学校の校風は今や化石のようじゃのう、おまんらは由緒正しき
歴史やらと共に、心中するつもりかのう、イサミくん?」

「心中するつもりはないよ〜、リョウちゃん。それにこの愛津女学園は、リョウちゃんが思ってるほど
折れやすい背骨ではないもの〜」

佐学・討学のトップ同士の笑い合いは数分続く。
恭也はというと、絶好の昼寝ポイントを探していたとか……。

「いずれ決着はつけてやる、覚悟しておけ」

「楽しみにしとるき」

そう言って町を眺め始めた涼華を置いて、恭也たちは屋上を後にするのであった。





それから見廻りをしばらく続けてから恭也たちは生徒会室に戻ってくるのであった。

「どうですか、高町先輩?見廻りについては分かりましたかぁ?」

「ええ、大丈夫です。しかしこれは昼休みだけなのですか?」

「基本的に見廻りは出来るならいつでもやっておくものなんだけど、メインは放課後だね」

「では本日から開始したほうがよろしいですか?」

「でも局長、新人の高町を一人でやらせるのはどうかと思いますよ?」

「いえ出来れば俺は一人で行動させていただけませんか?もちろん男子禁制のところなどは確認しません」

「そうね〜、出来れば恭くんには誰かと一緒のほうがいいと思ってたんだけど〜」

しばし考えるイサミ。
だが恭也の今までの行動を考えその案を認めるのであった。
それに反発するのはもちろん

「なっ!近藤さん、こんな男を一人にするのは!?」

「でも〜、もし誰かと一緒に行動したいときは言ってね〜。ちなみにわたしと一緒だったら、恭くんに
い〜っぱい和菓子を食べさせてあげる〜。お団子に大福、最中にあんころ餅〜♪」

甘いものは苦手な恭也だが、和菓子なら一緒に見廻ってもいいかと考えるのであった。
何気に土方の言葉は流されてしまったようだ……。

「それじゃボクもアピールしとうかなぁ。先輩、ボクと一緒だったら日がな一日中、日向ぼっこして
過ごせますよ。土方さんに見つかったらアウトですけどぉ」

恭也はそれはいいと内心思っていたとか。

「恭、あたしと一緒すればアンタをもっといい男に育ててやるよ?何よりあたしと一緒という幸せな
コトは他にないでしょー」

と言うやち。
恭也は疑問を浮かべるがその疑問について読者はわかるであろう。

「え、えとえと、それじゃわたしもっ。そ、その、大したおもてなしは出来ないと思いますが、それでも
精一杯頑張らせていただきますっ!」

とオロオロしながらアピールする芹栖。

「高町ぃ、あたしと一緒にいた方がゼッタイ面白いって」

とは紗乃。
確かに彼女と一緒なら退屈はしないだろう。
窓ガラスを割るなんて日常茶飯事だし……。

「……一緒したいなら来てもいい…… (///¬x¬///)」

口をバツ印にしてそう言う初音。
口をバツってどうやるんだ……。

「……………」← (睨み付けている)

もう一人は言わずもがなである。

「もしご一緒させていただく時は、一声掛けさせていただきます」

その時、ちょうど昼休みが終了した。
新選組の面々が生徒会室からぞろぞろと出て行くのを見ながら、頭に載っているゲンちゃんに言うのであった。

「とりあえず、放課後は一緒にいてくれるか、ゲンちゃん?」

「ニャーン!(うん)」

「ありがとな、ゲンちゃん」

そう言ってゲンちゃんの頭を撫でる恭也であった。

「恭く〜ん、早くしないと授業始まっちゃうよ〜?」

と廊下からイサミの声が聞こえ、急いで教室に戻る恭也であった。




なんとか恭也は無事に初日の授業を終えることが出来た。
すると恭也に声を掛けてくる生徒たちがいた。

「恭也さん、初授業は大丈夫でしたか?」

「何かわからないことがありましたら、私に聞いて下さいませ」

「「「「私に」」」」

と恭也に声を掛けるのは討学派の生徒たちであった。
最初こそ恭也と目を合わせることも出来なかったが、ゲンちゃんに向ける優しい目を見て声を掛けたのだ。
人付き合いは苦手な恭也だが、話をするのは嫌いではないので普通に会話できるようになっている。

「ありがとうございます、皆さんお優しいんですね」

と恭也が軽く微笑むと

"バタン!"

と音がするのであった。
それは討学派の生徒が一人倒れた音であった。
鼻血を出しながら……。

「しっかり!!」

「恭也さんの……笑顔……たまり……ませんわ」

鼻血をダラダラ出しながら、この世に心残りがないような顔でそんな事を言う一生徒。

「これからも恭也さまの笑顔を見るためにがんばって立ち上がって!!」

「そうよ、私たちはまだこれからですわ!!」

「今の笑顔をもう一度私たちの心のフィルムに納めるのですわ!!」

「そうですね……負けません!!」

なんだか騒がしくなり始めたので

「すいません、これから仕事がありますので今日はこれで失礼します。行こうかゲンちゃん」

「ニャーン!」

そう言ってゲンちゃんと共に教室を出て行くのであった。
教室を出た恭也は

「鼻血を出すということは、のぼせたのだろう。体調管理には気をつけねばな」

と一人口に出していたとか……。
それを頭の上で聞いていたゲンちゃんはため息をついたとか……。

「ともかく見廻りを始めよう」

そう言い見廻りを開始する恭也であった。




が廊下を少々歩いていただけで、すぐに飽きてきたのか屋上に行くことにした恭也。
どんだけやる気がないのやら……。

「やはりのんびりするならここだな、ゲンちゃん」

「ニャー!」

「あれ、高町先輩じゃないですかぁ。この絶好の日向ぼっこポイントを既に見つけているなんて、
中々先輩もやりますねぇ〜」

「沖田さん?」

「はい〜」

総詩はどうやらここで陽の光を浴びていたようであった。

「……もしかしてサボりですか?」

自分のことを棚に上げてそんな質問をする恭也。

「サボッてませんよ。ボサッとしてるだけですよぉ〜」

総詩の回答もどうかと思うが……。
どうやら総詩のサボりは日常茶飯事のようだ。

「もしかして先輩、ボクと一緒に見廻りしようと思って来たんですかぁ?」

「いえ、一人で廻っていてここに来ただけですよ」

実はサボりに来たとは言えない恭也であった。

「嬉しいなぁ。それじゃ、一緒にやりましょうか、日向ぼっこ」

「……そうしましょうか」

考えるフリをしながらその案に乗る恭也。
いいのだろうか……。

「ニャーン!」

ゲンちゃんもそれに同意したようだ。

「見廻りなんて、あの土方さんっていうおっかない人が目を血走らせながらやってくれますからぁ」

その光景が目に浮かぶ恭也であった。

「だからのんびりしましょう」

「はい」

総詩の隣に座る恭也。
しばらくお互いにボーッとしていると恭也は総詩に話しかけた。

「新選組の方々を見て思ったのですが、沖田さんは近藤さんと土方さんと仲がいいですよね」

「そうかもしれないですねぇ。ボクと近藤さんと土方さんは、他のみんなよりも付き合いが長いですから」

「そうなんですか?」

「はい〜。初めはボクたち三人で、いつの間にかメンバーが増えて、今では新選組なんていう時代遅れの
剣客集団が出来上がっちゃいましたからねぇ」

「……時代遅れですか?」

「そうですよ、今のご時世でこんなモノ振り回してる人なんてドコにいるんですかぁ?」

総詩は自分の愛刀の柄をコンコンと叩くのであった。
その言葉にちょっと悲しそうになる恭也であった。
だがその顔は総詩には見られなかったようだが……。

「確かにそうですね。でもこんな事言ってるのがバレたら大変ですね」

「あははは、確かに土方さんに知られたら大変なコトになっちゃいそうですけどねぇ。あの人生まれる時代を
間違えちゃったんですよ、きっと」

それについて笑う三人(二人と一匹)であった。

「ほお〜、随分楽しそうだな。私も仲間に入れてくれるか」

すると三人の笑いが消えた。

「高町先輩……、いけませんよぉ。土方さんのコトを鬼だなんて……」

自然に恭也に罪を擦り付けようとする総詩。
ある意味カンリュウサイなみに汚い……。

「お前ら…他の隊士たちが見廻り中に日向ぼっことはいいご身分だな」

「けほっ、けほっ、ボク病弱なんであまり運動できないんですよね……」

「ええい、お前の仮病はもう見飽きたわっ!今日こそお前の曲がった根性叩きなおしてやる!
ついでに高町、お前もだ!!」

「俺は一応見廻りの途中でここに寄ったのですけど?」

サボりたいと言ってもちゃんと見廻りをしたのは事実だ。
まあどの程度を見廻りと言うのかはわからないが……。
するとゲンちゃんは恭也の頭から飛び降りまっしぐらに校舎内に駆けていくのであった。

「どうやらゲンちゃんレーダーに何か反応があったみたいですね。ボクもちょっと仕事に行ってきますからぁ」

「俺も行きます」

そう言って二人ともその場を離れるのであった。

「あっ、こら待て!」

土方の言葉をすべて聞く前に逃げ出したのであった。




とりあえず総詩と共にグランドに到着すると、佐学派と討学派のチャンバラが繰り広げられていた。

「この騒ぎの察知はゲンちゃんの能力ですか?」

「ニャーン!」

「ゲンちゃんは遠くで起きてる揉め事を真っ先に察知して教えてくれる、猫まっしぐら部隊の
組長さんですから〜」

「すごいなゲンちゃんは」

そう言うと総詩の頭に載っているゲンちゃんの頭を撫でる恭也であった。
恭也と総詩は状況を確認してみると

「この状況から見ると佐学派が押しているようですね?」

「そうみたいですねぇ。ボクたち急ぐ必要もなかっ……あれ?」

総詩の視線を追ってみるとそこには

「あの方は確か……岡田さん……でしたっけ?」

そうあの一年の岡田伊織がその戦いに登場した。
伊織の登場でさっきまで押していた佐学派の勢いが完全に止められたようだ。

「彼女強いですから、ボクらが行かないとダメかもしれないですねぇ」

「いえ、俺では相手にならないと思いますよ」

「そんな事はないとおもいますけどねぇ」

恭也の言葉を信じられないといった感じの総詩。
昨日の殺気の放出量からして只者ではないと思っているのだが……。

「とりあえず俺は沖田さんが戦いやすいようにしますよ」

「う〜ん、あんまりやりたくないんですけどねぇ」

そう言うと伊織の前に総詩は立ちふさがった。

「はいはい、そこまでですよぉ。これ以上はボクが相手しますからぁ」

総詩の登場に伊織は今までにないほど強く反応するのであった。

「岡田さんの気が変わった……」

「無理もない。あいつは入学してからずっと総詩ばかり狙ってきたのだからな」

「なるほど」

土方の登場にも動じない恭也であった。
気配を察知していたからなのだが。

「沖田さんの力なら岡田さんには負けないでしょうね」

「ほお、わかるのか。今まで総詩の剣を見たことないのに」

「ええ、なんとなくですが」

総詩と伊織は剣を構え対峙していたが、伊織は低い姿勢から踏み込んだ!
次の瞬間伊織の斬馬刀は宙を舞い、地面に突き刺さるのであった。

「お見事……三段突きですか……」

「……!見えたのか!?」

「ええ、あれだけ綺麗な技。久々に見ました」

「(こいつ……何者だ……)」

一般人には何をしたのかさえ見えないだろう。
それを恭也はしっかり見切ったのだ。
土方は恭也の実力がどれほどなのかわからなかった為、今ので強さの片鱗を見たのかもしれない……。

「ふーー」

「お見事です、沖田さん。天才剣士の片鱗を見せていただきました」

「あはは、大げさですよ。でもそう言われて悪い気はしませんねぇ」

ちょっと照れている総詩に恭也は微笑みかけるのであった。

「時代遅れと言われても、ボクにはこれしかありませんから」

そう言って刀を鞘に納める総詩の顔はいつもの笑顔であった。
だが伊織は剣を拾い、総詩へ振り返るのであった。

「伊織は総詩を倒す。剣に懸けてきたのは、お前だけじゃない」

その姿をみた土方は総詩に言う。

「総詩分かっているな?」

「敵前逃亡は士道不覚悟。忘れやしませよ。……やるしかなさそうですねぇ」

総詩は再度刀を抜き構えを取る。
お互いが対峙し、すぐにまた伊織が踏み込む。
剣と剣がぶつかりそうになったとき

「そこまで!!」

そのぶつかり合いを止める者がいた。
それは小太刀二本で総詩の菊文くんと伊織の忠吉を受け止める恭也であった。
二人は突然の介入に剣を引く。
土方は隣にいたはずの恭也が二人の間に割り込むのを追うことができなかった。

「岡田さん、今日の勝負はここまでです」

そんな恭也の言葉に首を横に振る伊織。

「岡田さんが剣に懸けて来たのはわかります。ですが先ほどのぶつかりで今のままでは勝てないのもわかって
いるでしょう?」

そう言われると俯いてしまう伊織。
強者だからこそ相手との実力差も分かってしまうのだ。

「ですから今日はここまでに。引いていただけるのでしたら焼きそばパンを奢らせていただきますよ?」

その言葉に伊織は反応する。

「いかがですか?」

「……何個?」

「いくつくらいがお望みですか?」

「……たくさん」

「ううん、今あまり手持ちがないので五個でどうでしょうか?」

そう言うと、伊織は剣を潔く引くのであった。
それを見ると恭也と総詩も剣を納めるのであった。

「高町め、余計なことを……。敵は叩けるうちに叩いておくべきだろうが」

「まあまあ、この場はこれでいいじゃないですか。高町先輩は優しいですから、どこぞのオニのよーな
副長さんとは違うんですよぉ」

それを聞きプルプル震えている土方。
総詩はそれを面白そうに見ているのであった。

「さあ約束だ恭、購買部に今すぐ行くぞ。間を置かず、風のように。さあさあさあ」

期待に胸を膨らます伊織。

「わかりました行きましょう。お二人も如何ですか?奢りますけど?」

「いいんですかぁ?お言葉に甘えてご馳走になっちゃいますぅ」

「ふん、そこまで言うなら馳走されてやる」

土方の言葉に苦笑いする恭也。

「ゲンちゃんもいるか?」

「ニャーン!」

この時戦いがあったことが嘘のような状態となるのであった。
食べ物の前では女の子たちは仲良くなるのだという事を恭也は学ぶ。
そんな事を学びながら校舎に戻る面々であった。





結局平和に過ごせなかった恭也。
だが総詩との運命の糸が初めて繋がった瞬間かもしれない。
はてさて次はどうなるの!?





<終わり>



中々抜かなかった恭也が、この学園でとうとう抜いたな。
美姫 「まあ、自業自得でもあるけれど、実は結構ストレスが溜まっていたのかもね」
まあ、幾ら斬っても自機アップして復活するし、紗乃も問題ないと言ってるしな。
美姫 「放課後は放課後で見回りのはずだったんだけれどね」
でも、そのお蔭で総詩と会った訳だしな。
放課後の騒動では中立らしい行動を取ってたし、これからどうなっていくのか。
美姫 「次回も楽しみにしてます」
待ってます。



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