『壊れかけの剣士たち』




     〜第10話〜






これは『An unexpected excuse 〜沖田総詩編〜』に繋がるお話です。
原作がお好きな方はおススメいたしません。
それでもよろしければどうぞ





前回のお話

なんとか佐討の争いから撤退できた恭也とゲンちゃん。
そして二人は彼の地に足を踏み入れようとしているのであった。
果てさてどうなる事やら……。




恭也とゲンちゃんは目の前の建物を睨みつけていた。
ここで恭也とゲンちゃんは本日最強の敵と戦う事になる。

「……遂に来たぞ、ゲンちゃん」

「……ニャー(……うん)」

その建物の名前は

"ピー○ック"

俗に言うスーパーマーケットと言うものだ。




スーパー内に入るとそこは異様な空気に包まれていた。
おばさん同士で牽制し合っている。
狙いはどうやら恭也と同じモノのようだ。
その戦場と化すであろう地に恭也も近づく。
空気は段々と重くなり。恭也とゲンちゃんに掛かる重圧も大きくなる。
おばさんたちは恭也の登場に殺気(?)を飛ばす。

「(いい男だね。でもこの勝負においては引いてはあげないよ!)」

「(子供はこんな所に来ないでさっさとお帰りなさい)」

「(勝つのは私よ!)」

という色々な思いを目に込めているおばさん方々。
恭也はその視線に怯みそうになるも睨み返す。

「(なんという恐ろしい殺気……だが俺は勝つ!!)」

既に戦いは始まっているのである。
今日は何の記念日かは分からないが、本日限りタイムサービスで卵一パック10円なのだ。
一人一パックだが、十分すぎる品だろう。
スーパー内でタイムサービスが始まるのを待つ恭也とゲンちゃん。
そしてタイムサービスまであと一分と迫ると小声で作戦を二人は確認し合うのであった。。

「いいかゲンちゃん。このスーパーはあと一分すると激戦地となる。その中で生き残るには戦術と勇気だ!」

「ニャーン!(わかったよ)」

「ゲンちゃんはこの卵のタイムサービスが始まってからすぐに鮮魚コーナーで魚を取って来てくれ。
この時間は新鮮な魚がまた並べられるはずだ。皆も新鮮な方が良いという事でそちらにも行くだろう。
そちらも大変になると思うが、取ることが出来ればゲンちゃんの食事に追加だ!」

「ニャーン!(頑張る!)」

このスーパーの魚は鮮度がいい。
だから魚好きには溜まらない店なのだという事を恭也はクラスメイトから聞いていた。
スーパーに向かっている時、その話をしたところゲンちゃんはどうしても食べたくなったのだ。
そうとくれば恭也の指示に従うのみである。

「魚についてはゲンちゃんの判断に任せるぞ!」

「ニャーン!(うん!)」

そして遂にスーパー激戦が始まるのであった。




「ゲンちゃん頼むぞ!!」

「ニャーン!」

そう言いゲンちゃんと別れた恭也はその激戦区の中を駆け出した。
タイムサービス……それは戦争。
客は皆、己の予算と根性を賭けて戦うのだ。
そしてその為には他の者を蹴落とすのも厭わない。
無意識に決まる肘鉄……。
故意的に決める嘗打……。
移動すると見せ掛けての足踏み。
心では謝っても絶対に口には出さない……。
謝罪等を口に出したらこのようなバトルロイヤルには勝ち残れないからだ。
それは学校などの昼休みにも似た光景を見たことあるかもしれない。

「御神流に負けはない!」

と卵を渡している店員に手を伸ばす。
だが恭也を踏み台にして卵を受け取る者。

「(俺を踏み台にしただとっ!?)」

「(この程度で驚いていてはダメだね ( ̄ー ̄)ニヤ)」

卵を掴んだと思っても、隣のおばさんに横取りされたりもする。
そちらを睨みつけると、勝ち誇ったような顔で恭也を見るおばさん。

「(ふっ、まだまだ甘いわね坊や)」

「(くっ、おのれ!)」

だが恭也はあきらめない。
ここで諦めたら自分の食事が減ってしまうから。
卵は着々と数が減っていく。
残りもあとわずか!

「俺は……負けるわけには行かないんだっ!!」

そう負けられないのだ。
少ない予算で最高の食事を作る為に!!
恭也は更に手を伸ばす。
己の限界を超える為に!!
あと三パック……二パックとそこで遂に恭也は卵を手にした。
そして恭也はすぐにその場を離れた。
理由は自分のカゴに入れたとしてもそれを盗んでいく者もいるからだ。

「はぁ、はぁ、はぁ……なんとか勝てたか……」

そう恭也は勝ったのである。
最高の品を手に入れた瞬間であった。
その姿を見ていたのは卵を取り合ったおばさんたち。
取れた人も取れなかった人も恭也を見ていた。

「(やるじゃないかい。でもまだまだ詰めが甘いようだね)」

「(この程度で息が上がっているようではこの世界では生き残れないわよ?)」

「(次は負けなくってよ!)」

と色々な視線を受ける恭也。
そうなのだ。
恭也が息を切らしているのにも関わらずおばさんたちは息一つ乱してはいなかった。
あれだけの激戦を繰り広げたと言うのに……。
それはつまり相当な実力差があると言う事だ。
だが恭也はその視線に対し、しっかりと自分の意思を込めて視線を返すのであった。。

「(次はもっと強くなってますから)」

その意思の入った目を見たおばさんたちは、新たなライバルの登場に胸を躍らせその場を去るのであった。




「ゲンちゃんは?」

鮮魚コーナーに来てみると争いは既に終わっていたようだ。
ゲンちゃんを探す恭也。

「ゲンちゃん、どこだー?」

「…ニャーン!」

声のした方を向くとゲンちゃんの口にはしっかり獲物が咥えられていた。
それは夏の魚でもあるスズキであった。

「ゲンちゃん大丈夫か!?」

ちょっとダンダラ羽織が汚れていた。
こちらも相当な激戦だったようだ。

「大変だっただろう……。だが俺たちは勝ったんだぞ!」

「ニャーン!」

ついでにゲンちゃんは魚のパックと共に紙も一緒に咥えていた。

「それは?」

「ニャーン!」

「……これは!?」

その紙にはシールがたくさんついていた。
しかも"100円引"と書いたシールが!
つまり値引きシールである。

「ゲンちゃん、これは一体どうしたんだ!?」

「ニャーニャー(店員さんがくれた)」

そうなのだ。
どうやら猫好きの店員さんがゲンちゃんのけなげな姿に萌えた為このシールをくれた様だ。
実際それは店員ではなく、店長だったそうだが。
そんな事をしていいのだろうか……。

「ゲンちゃんのおかげで安く済みそうだぞ」

「ニャーン!」

ちゃっかり利用するあたり、恭也も抜け目ない。

「あとは野菜や肉、米を買って、後は調味料をいくらか買っていかないとな」

そう言って必要なものを買い揃え会計を済ます恭也。
そして袋に買った物を積めると、二人はそのスーパーを後にした。
ゲンちゃんは戦いに疲れ果てたのか恭也の頭の上でぐったりしているのであった。




スーパーで買ったものをテントまで運びこんだ恭也。
二時間も掛けて持ってくるのだから結構しんどいだろう。

「ゲンちゃん待ってろ、すぐに飯作ってやるからな」

「ニャ〜ン(は〜い)」

そう言うと、恭也は手際よく料理を作るのであった。
山での生活に慣れている(?)恭也はテキパキと作っていく。
それから二時間後料理は完成するのであった。

「今日のメニューはサラダと親子丼(特大)だ。ゲンちゃんにはスズキの刺身とオムライスだ」

「ニャーン!(わーい)」

ゲンちゃんの食事の組み合わせについては突っ込んではダメだろう。
ゲンちゃんも喜んでいるのだから……。
食事を始めようとした時、一人(?)の来客が現れた。

「クルックー(よう、坊主)」

それは七番隊組長である谷さんであった。
突然の来客にお持て成しをしなければと恭也は立ち上がる。
ゲンちゃんは気にせず食事しているが……。

「クルックー(あー、気にしないでくれ)」

「ですが……」

「クルックー(突然来たのは俺だからよ)」

「すいません」

「クルックー(飯食ってたのか、わりー時に来ちまったな)」

「いえ、谷さんは食事は取られましたか?」

「クルックー(いや、実はまだなんだ)」

「でしたら一緒にどうですか?大したものはありませんが」

「クルックー(いいのか?)」

「どうぞ。一緒の方が美味しいでしょうし」

「クルックー(すまねえな、ありがたく頂くぜ)」

と恭也の作ったサラダを食す谷さんであった。
その姿を見ながら恭也も食事を開始するのであった。




食事を終えた三人(一人と一匹と一羽)は一緒に鍛錬を始めた。
と言っても恭也の鍛錬をゲンちゃんと谷さんが見ていただけだが……。
その後一日の疲れを癒す為、ドラム缶で沸かした風呂に入り三人は寛いでいた。
ちなみにドラム缶は恭也が昨夜の内に拾ってきた物である。
風呂に浸かりながら夜空を見上げる三人。
すると谷さんが恭也に話しかけるのであった。

「クルックー(坊主のやってるのは御神流か?)」

「えっ!?」

「ニャーン?」

その言葉に恭也は驚き、ゲンちゃんは何それといった感じの表情を浮かべた。

「……なぜそう思うのですか?」

谷さんに質問をする恭也。

「クルックー(あの男の剣に似ていたからな)」

「……あの男?」

「クルックー(不破士郎と言ったかな)」

「!?」

恭也は言葉を無くしてしまった。
まさか自分の父を知ってるものがこんな近くにいた事に……。

「……父さんを知っているんですか」

「クルックー(やはりそうか、似てるとは思っていたが)」

「谷さんとはどういう経緯で知り合ったんですか?」

「クルックー(ちょっとした仕事の時にな)」

「仕事ですか……」

「クルックー(ああ、いい男だったんだがな……)」

どうやら谷さんは知っているようだ。
恭也の父がもうこの世にいないという事を……
話についていけないゲンちゃんに自分の生い立ちなどを簡単に説明する恭也。

「ゲンちゃん、今の話は皆には内緒にしてくれるか?」

「ニャーン!(うん)」

「ありがとな」

「クルックー(これから大変だろうけど、俺も手伝える事は手伝うからよ)」

「ニャーン!(ぼくもぼくも)」

「ありがとうございます」

そう言って三人はこの話はおしまいといった感じで風呂から上がるのであった。
そして床につくと三人ともすぐに深い眠りにつき、夜が更けていくのであった。





スーパーでの激戦も無事に勝ち抜いた恭也とゲンちゃん。
谷さんも加わってこの生活はにぎやかになっていく。
明日はどんな事が待っているのか?
恭也の明日はどっちだ!?





<おわり>



いやいや、何気に驚きの言葉が。
美姫 「まさか、御神流を、士郎を知っている人、もとい鳥がいるなんてね」
しかし、スーパーでの魚売り場にゲンちゃんがいったから、お魚咥えた猫を追いかけて〜、になるかと思いきや。
美姫 「まさかの値引きシールだったわね」
しかし、ゲンちゃんや谷さんとは相当仲良くなったな。
美姫 「これから、どうなっていくのかしらね」
次回も待っています。



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