Night of FAKE

 

 

 

 

 

 

「終焉を迎えし愚かなる死神よ・・・お前は私の前に立ったその時にその結末を終えている」

仮面を付けた蒼い髪の少女が・・・目の前に立つ学生服を着た青年に言う。

「ふん・・・人形風情が・・・俺を倒すとでも言うのか?」

青年は臆する事無く言い放つ。

少女の服装は白い羽織を着、かなり長い紅いマフラーのようなものを首に巻きつけている。

そして、脚や体には濃い緑色の甲冑・・・そして・・・腰に吊るされた刀が印象的である。

対して、青年はそこらへんにいるような学生で・・・しかし、その手には“七ッ夜”と彫られたナイフを握っていた。

そして・・・青年の眼は・・・蒼かった・・・。

「蒼い死神よ・・・リリス様の命により・・・ここで死んで頂きます」

少女は青年に言い放つ。

「貴様のその命・・・余りに無謀っ!!」

対して、青年も言い返す。

「臨・兵・闘・捨・開・陣・烈・在・前」

少女は物凄いスピードで印を結び、氣を高める。

「来るか・・・」

青年は対して構える風でもなく、少女を見据える。

「・・・・・・・はっ!!!!」

先に動いたのは青年・・・少女に向かって走り出したかと思えば・・・一瞬にしてその姿を消した。

それを見ていた少女は刀の柄に手を置く。

「草薙・・・行く・・・」

少女が刀の名を呟いた瞬間・・・少女もかき消されるかのように消えた。

「はっ!!」

「くっ!!」

少女と青年は見えない階段でも上るかのごとく上空へと武器を交差させながら上がっていく。

「「斬っ!!」」

そして、二人同時に叫び、二人はお互いの衝撃で離れる。

「やるな・・・貴様」

青年は少女を見据えて言う。

「貴方もね・・・」

そう言って少女は刀の鯉口を閉じ、青年はナイフを振るう。

次の瞬間・・・青年の左腕の袖が肘辺りから切れ、その腕から血が流れる。

対する少女も、左腕の羽織の袖が切られ、腕から血が流れる。

「さすが・・・“終焉の番人”の僕・・・そこらへんに転がっている吸血鬼どもとは桁違いだな・・・」

青年は腕の血をなめ取る。

「それほどの強さだから・・・リリスは貴様を従えているのか?」

青年は聞く。

「リリス様が私を従えているのではない・・・私がリリス様に従っているだけ・・・」

そう言って少女は柄に手を置く。

「貴様・・・何ゆえやつに従う・・・」

青年は訝しげに聞く。

「リリス様は・・・私にこの世界での存在の意味を教えてくれた・・・」

そう言って少女は走る。

「ふん・・・くだらん・・・」

青年は少女を一瞥すると、急に青年の首筋に伸びてくるようにして振るわれた刀を防ぐ。

「いかなリリスの僕といえど・・・この俺に勝つ事は不可能に等しいのだがな」

そう言って青年は受け止めた刀ごと、少女を吹き飛ばす。

「くっ!」

そして、吹き飛ばされた少女は簡単に地面に着地する。

「創造主が創りし刀・・・草薙を使ってもその程度・・・」

青年はその蒼い目で少女を見据える。

「斬刑に処すっ!!」

そう言って青年は走る。

「臨・兵・闘・捨・開・陣・烈・在・前」

少女はまたしても物凄い速さで印を結んでいく。

「閃鞘・八点衝!!!!」

青年が物凄い速さで斬激を何発も放つ。

「ぐぅ!!」

しかし、少女は避け様ともせず、その攻撃を受けていく。

「ちぃっ!!!」

青年はそれを見て後ろへ後退する。

次の瞬間・・・青年がいたところが大きく裂ける。

「氣を高め結界を張っていたと思えば・・・瞬時に攻撃へと転化したか・・・」

そう言って青年は右肩を押さえる。

そこから・・・腕を伝って指先から血の雫が流れ落ちていく。

「・・・腕を・・・上げたな・・・刹那・・・」

「貴方も・・・・志貴・・・」

青年と少女は同時にお互いの名を言い合った。

「七夜 志貴・・・リリス様のお力にならないというならここで死ぬ事になります」

刹那と呼ばれた少女は機械的な・・・そう、感情の篭っていない声で言う。

「何度も言わせるな・・・リリスも滅すべき対象に変わりはない・・・創造主もな」

志貴と呼ばれた青年はすぐさま言い返す。

「なら・・・一時的に力を貸してほしいといっているのです・・・リリス様は」

刹那も言い返す。

「ふん・・・終焉の刻は近いのだ・・・俺が手を貸さずとも創造主は滅びる・・・そして、リリスもな」

そう言って志貴は重心を低くし、構える。

「さぁ・・・お喋りは終わりだ・・・」

志貴は無表情に言う。

「消えろっ!!!」

そう叫び・・・志貴が刹那に向かっていこうとした瞬間・・・。

「刹那っ!!!!」

二人の耳に・・・かなり大きな声が響く。

「ヴァル・・・」

「もう一人の僕・・・夜美か・・・」

刹那と志貴はその声の主の名を呼ぶ。

そして、二人の前に出てきたのは黒い服に紅いコートを着て、二丁の銃を持った女性だった。

手に持つ銃の名は“ノワール”と“ルージュ”・・・創造主より授かった銃である。

「探したぞ・・・この死にぞこないの化け物が・・・」

夜美ともヴァルとも呼ばれたその女性は刹那を睨みつける。

「今・・・貴方の相手をしている暇はない・・・この殺人貴の相手が先・・・」

刹那は夜美を一瞥し、志貴に向かう。

「このぉっ!!!」

それを見て、夜美は両手に持っていた銃を放つ。

「邪魔・・・」

それを、刹那は弾を見ずに、全て刀で防ぐ。

「ちぃ・・・」

夜美は舌打ちをし、マガジンを入れ替える。

「手を出すな・・・夜美」

マガジンを入れ替える夜美に、志貴が言った。

「黙れ殺人貴・・・貴様こそ・・・私の邪魔をするな」

そう言って夜美は弾をリロードする。

「刹那・・・答えろ・・・あのお方はどこにいるっ!!!?」

夜美は銃口を刹那に向けて、叫ぶ。

「リリス様は貴方に言ったはず・・・最後の刻にこいと」

夜美の方を向かずに答える刹那。

刹那の視界には志貴しか映ってはいなかった。

「臨・兵・闘・捨・開・陣・烈・在・前」

刹那は高速で印を結ぶ。

「九字の結界・・・潰すには些か時間がかかるな・・・」

そう言って志貴は刹那を見る。

「はぁぁぁ!!!!!」

そして、走り出した。

「邪魔をするなといっただろう!!!殺人貴っ!!!!!」

そう叫んで、夜美は志貴に向かって銃弾を放つ。

「五月蝿い・・・」

志貴はその銃弾をいとも簡単に避け、そのまま刹那へと向かう。

「ヴァル・・・これ以上の手出しは無用です」

刹那もそう言って志貴へと駆け出す。

「づぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「はぁぁぁぁぁ!!!!!!」

刹那は下から上に斬り上げるように・・・志貴は上から叩き斬るように武器を振るう。

ギンッ!!

金属がぶつかり合う音が響く。

「ごほっ!!」

「かはっ!!」

志貴は血を吐きながら上空を舞い、刹那も血を吐きながら地面に叩き付けられた。

「くぅっ・・・」

志貴は膝をつきながら立ち、刹那を見る。

「せぇ・・・せぇ・・・」

息を荒げながら・・・刹那は横たわっていた。

仮面は右眼の部分だけが砕かれていた・・・。

「終わりだな・・・刹那」

そして・・・夜美は横たわっている刹那の頭に銃口を向ける。

「夜美・・・手を出すなといったはずだぞ・・・」

志貴は口元の端から血を流しながら、夜美に言う。

「貴様の指図は受けないよ・・・殺人貴」

刹那に銃口を向けたまま夜美は言う。

「言いなさい・・・刹那・・・あのお方はどこ?」

夜美は感情も篭ってない声で言う。

「せぇ・・・ごほっ・・・」

しかし・・・刹那は血を吐き出すだけで、答えない。

「夜美よ・・・リリスを追いかけているのならそろそろ諦めろ・・・」

夜美の後ろで・・・志貴が言った。

「貴様に何がわかる・・・」

夜美は振り向きざま、銃口を志貴に向ける。

「既に終焉の刻は近い・・・その時・・・創造主もリリスも滅される・・・それが運命だ」

志貴は夜美に向かって言い放つ。

「何だと・・・?」

夜美が訝しげな顔をする。

「ぐっ!!!!」

その瞬間・・・刹那が急に立ちあがり、夜美の持っていた銃の片方を弾く。

「このっ!!!死にぞこないがっ!!!」

そう叫んで、もう一丁の銃を刹那に向ける夜美。

「貴様もな」

その言葉の後・・・夜美の持っていたもう一丁の銃も弾けとび・・・刹那の刀が夜美の首筋に当てられる。

「さぁ・・・形勢逆転だ」

志貴もナイフの切っ先を夜美に向ける。

「くっ・・・」

夜美は舌打ちをし、両手を上げる。

「降参する・・・」

夜美がそう言ったと同時に、二人に一瞬の隙ができた。

「なんて言うと思って!!!!?」

そう叫んで、夜美は二人の腹に拳打を叩きこむ。

「ごはぁっ!!!」

「ぐぅぅぅ!!!」

その衝撃でお互いは武器を放し、吹き飛ぶ。

「まだまだ甘いわね」

そう言って夜美は銃を拾い上げる。

「ちぃ・・・油断した・・・」

志貴は腹を押さえながら夜美を見る。

「さぁ・・・二人して死ね!!!」

そう叫び夜美が銃弾を放とうとした瞬間・・・。

「おやめなさい・・・ヴァル」

3人に響くかの如く、澄んだような声がした。

「リリス様・・・」

「リリ・・ス・・・様・・・」

「リリス・・・だと・・・」

夜美は驚いたように・・・刹那は少しばかりの安堵の声で・・・志貴は驚愕の声で言った。

今3人の目の前にいるのはリリスと呼ばれる少女ぐらいの外見の女である。

その正体は創造主によって生み出された世界の監視者の一人・・・“終焉の番人”である。

「そこまでにしなさいな・・・今刹那を失うわけにはいかないのよ・・・」

リリスは諭すように夜美に言う。

「殺人貴・・・潔く私に手を貸してはくれないかしら・・・」

志貴に向かって少し笑った表情で言う。

「お断りだ・・・既に貴様もあの創造主も滅されるんだ・・・手を貸したところで何になる・・・」

志貴は腹を押さえながら立ちあがる。

「そう・・・残念ね」

どこか遠い眼をして言うリリス。

「刹那・・・大丈夫かしら?」

刹那のほうを向き、言うリリス。

「体に若干の不備がありますが・・・差し当たり問題はありません」

機械的にリリスに言う刹那。

「リリス様っ!!!!!」

突然、夜美がリリスに向かって叫ぶ。

「教えてください!!!一体終焉の刻とは何時なのですかっ!!!?私はそれまで何をすればいいのですかっ!!!?」

夜美は叫びつづける。

「私は・・・何故貴方の側にいてはいけないのですか・・・」

最後はほぼ悲しみを含んだ声で夜美は言った。

「ヴァル・・・何度も言うけど終焉の刻その時が来ればおのずと貴方にもわかる・・・判るかしら・・・」

リリスは少しだけ、困ったような声で言う。

「リリスよ・・・俺からも尋ねたい」

夜美の後ろ・・・志貴がリリスに言う。

「創造主は絶対の存在だ・・・殺す事など不可能だろう・・・いくらかの例外以外ではな」

「そうね・・・マスターを滅ぼすのはほぼ不可能に近いわね・・・」

志貴の言い分にすぐに返答するリリス。

「でも・・・あの完璧であるスターですら見落とした唯一の存在・・・刹那がこちらにはいる・・・」

そう言ってリリスは刹那を見る。

「そして・・・例外といえば貴方もそう・・・マスターの運命を塗り替え・・・さらには“直死の魔眼”まで手に入れた・・・」

志貴に向き直り言うリリス。

「貴方という例外を揃えれば完全にマスターを滅ぼせるのに・・・」

少しだけ、リリスは憎しみの篭った目で志貴を見る。

「俺は貴様のために言っているだけだ・・・長かった宿命の輪を立ち切る為にな」

そう言って志貴は踵を返す。

「覚えておけ・・・終焉の刻は近いんだ・・・それまで・・・刹那も夜美も死なせるなよ」

それだけ言って・・・志貴はこの場から消えるようにしていった。

「リリス様・・・」

志貴の言葉を聞いて、夜美はリリスを見る。

「ヴァル・・・殺人貴の言う通り終焉の刻は近いわ・・・その時にまた・・・会いましょう」

そう言ってリリスはその姿を消した。

「リリス様ーーーーーっ!!!!!!!」

夜美はリリスがいたところに走りより・・・空へと叫ぶ。

「ヴァル・・・最後の刻に会えるのを楽しみにしています・・・」

それだけ言って・・・刹那も姿を消した。

 

 

この世の全てが『真実』とは限らない・・・。

もし・・・。

この世が誰かに創られた『FAKE』だとしたら・・・。

 

 

この夜の出会いも『真実』とは限らない・・・。

これは在るかもしれないし、無いかもしれない『FAKE』の物語・・・。

 

 

 

 

 

 

end

 

 


あとがき

 

 

はははははは、もう言う事もあるまい・・・俺は一足先にあの世で待っているよ、浩さん。

フィーア「あんたは・・・性懲りもなく昔のネタを引っ張ってくるんじゃないわよぉっ!!!」

ぐぼぉぉっ!!げはっ!!

フィーア「斬魔衝っ!!」

ごほっ!!ぐはぁ・・・。

フィーア「ふぅ・・・お姉さま、お見苦しいところを見せて申し訳ありません」

ひゅぅ・・・ひゅぅ・・・。

フィーア「次の作品はちゃんと書かせますので、お願いしますね」

ひゅぅ・・・・パタ・・・。

フィーア「ではでは〜〜〜」




月姫とFAKEのクロス作品です。
美姫 「浩はFAKEやったの?」
…やってません。でも、知ってます。
詳しくではないけどね。
美姫 「ふ〜ん」
しかし、FAKEとのクロスとは驚きです。
美姫 「じゃあ、続きは可愛い店員に可愛いコスチュームを着せた喫茶店が舞台になるかも?」
いや、勝手に続きを作られても。
さて、今の会話、何人ぐらいが分かっただろうか?
美姫 「そんなに少なくはないと思うけど?」
まあ、それは置いておいて。
美姫 「置いておくの!」
まあまあ。アハトさん、ありがと〜〜。
美姫 「フィーア、ご苦労様〜」



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