『An unexpected excuse』

    〜琴絵編〜









「俺が、好きなのは…………」

その場にいた全員が息を止め、恭也の言葉の続きを待っている。

「……どうしても言わなきゃだめか?」

無言の圧力感じさせながら頷くFC+α。

「………琴絵さんだ」

暫く呆然としていたが天をも裂かんばかりの悲鳴が響いたが、その中に一種類だけ違う悲鳴を上げた者がいた。

一つは居ることに対しての驚き、もう一つはその人物を知ってるが故の驚きだった。

「きょ、恭ちゃん!?」

「なんだ……?」

その人物を知っている美由希が慌てて問い詰めた。

「こ、琴絵さんってもしかして御神琴絵さんのこと?」

「あぁ、おまえも知っている琴絵さんだ」

美由希はその答えに呆然としていた。

「で、でも、琴絵さんは、もう……」

「あぁ………」

それっきり二人は黙ったが、恭也が切り出した。

「………すまないが美由希、早退とか後の用意とか頼めるか?」

「あ、う、うん」

「すまんな」

そう言うと恭也は学校から出て行ってしまった。

恭也に好きな人が居ると知ってショック等を受けたFC達は帰って行ったが、恭也に近しい者達はまだ残っていた。

その中の一人の忍が代表として美由紀に聞いた。

「ねぇ、美由希ちゃん、琴絵さんって、誰?」

「―――あぁ忍さん、えっと琴絵さんは………」

忍たちになんて説明するか数秒考えて。






「琴絵さんは………私や恭ちゃんにとって叔母に当たった人です。」







―――御神宗家の墓前―――


「………………」

墓参りに来た恭也は墓前の前で静かに黙祷を捧げていた。

「………お久しぶりです、静馬さん、一臣さん、美影さん、琴絵さん」

恭也は静かに自ら尊敬する人に呼びかけた。

「静馬さん、あなたの娘とても強くなりました。閃も使えてましたし、技の錬度は足らないとこもありますけど、後は継承の儀をすればもう御神の剣士になります。」

妹の父に娘の成長過程を報告した。

「一臣さんお久しぶりです、そっちで琴絵さんと幸せにしてますか?父さんもそっちに逝きましたけどうるさくしてませんか?」

亡き叔父に祝いの言葉と父の頼みをした。

「美影さんお久しぶりです、あなたの好きだった桜は今も綺麗に咲いています、お見せ出来ないのが残念ですが」

自分の世話を何気にやさしかった祖母に挨拶をした。

そして―――

「お久しぶりです………琴絵さん」

自分の愛しい人の名を………静かに呼んだ。

「琴絵さん………唐突ですが、俺あなたのことが好きです。」

静かに………告白した。

「最初は優しくて世話をしてくれたから、お礼に守れるようにと強く為ろうと思いました。」

「でも、本当は違うんです。」

「あなたが好きだから、あなたに認めてもらいたくて、あなたを守りたくて強く為ろうしてたんです。」

「でもあなたが結婚すると聞いた時ちょっと、いえ、かなりショックを受けました。」

「だけど気づいたんです。」

「あなたを好きなことには変わりないなら琴絵さんではなく琴絵さんの幸せを守れればと思いました。」

「、でも………」

恭也は声のトーンを落として話した。

「あなたが死んでしまって、俺は全て無くなってしまいました。」

「あなたに………この思いを伝えたかった。」

「でも、言わなかった、いえ、言えなかったんです。」

「怖かったから、気持ちを言って何を言われるか判らなかったから。」

「そして、断られたら俺はどうすればいいか判らない………」

「その守るために積み上げた力を………………奪ってしまう力に変えたりでもしたら………」

「だから今言います………けどすいませんこんな一方的に言う俺は許してください。」

静かに涙を流しながら、込み上げる激情を抑えながら。





「俺はあなたの事が………琴絵さんのことが好きでした………………。」






積年の思いを告げた。













――――――後日――――――



「おにちゃ〜ん、お母さんが、ご飯だからそろそろ降りてきなさいって言ってるよ〜」

自室で八景を研いでいた恭也はなのはに呼ばれ刀に向けていた意識を戻した。

「あぁ、わざわざすまないな………なの、は………?」

「うにゃ?どうしたのおにいちゃん」

「な、なのは、その髪は………?」

恭也は力を振り絞って聞いた。

何故ならなのはの姿は―――

「あっこれ?お母さんが偶には髪型を変えてみたら?ってそれで………………」

恭也の耳にはなのはの声は届かない。

何故ならそのなのはの姿は、

何時もツインテールの髪を下ろしたなのはの姿は、


   
―――自分の”愛しい人”とまったく同じ姿だからなのだ。


「――――――ちゃん、おにいちゃん!」

「ッ!すまないなのは、どうしたんだ?」

「んもうっ!だからこれ、似合う?」

なのはは照れながら兄に尋ねた。

「あぁ、とても、とても似合っているぞ、なのは」

「あはははは、ありがとうおにいちゃん」

なのはは頬を火照らして兄に礼を言った。

「さ、行こうお兄ちゃん、お母さん達が下で待ってるよ」






―――――――ねぇ、恭也くん、私は何時も恭也くんの傍にいるよ?――――――――






幼き頃病弱で床に伏せていた愛しき人の言葉を思い出して――――――


(――――――琴絵さん、あなたを、愛しいあなたを俺は守れなかった、でも、今度は大事な家族を


――――――あなたを守るために積み上げた力で守って見せます)












<おわり>











あとがきと懺悔

どうも今回初投稿の堕神刹那と言う者です。
なんだこれは、と思って最後まで読んでくださってありがとうございます。
因みに文中で出てきた美影が桜が好きだったと言うのほぼオリです、どこかで美影は花鳥風月な人だ記憶したもので。
後、なのはの髪を解いた姿が琴絵に似ていると言うのもオリです、どこかで髪を解いた姿が似ていると読んだので。
では、今回はこの辺で、次回また読んで下されば幸いです。
またお会いしましょう、さようなら。






これはこのシリーズ初のパターンかも。
既に亡き人を想い続ける恭也。
美姫 「しんみり」
亡き人を思い、墓前にてその気持ちを語る恭也。
美姫 「うんうん」
今回はこのまま静かに。
美姫 「そうね、終わりましょか」
堕神刹那さん、投稿ありがとうございました。
美姫 「ありがとうございました」



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