北海道は旭川・・・。

ここに・・・蔡雅御剣流という・・・忍びの本家がある。

これは・・・そこに住む・・・少女の出会いと、別れの物語である。

 

 

 

 

忍びの饗宴

 

 

 

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

森が深い山の中で・・・二人の少女が対峙していた。

片方は濃い青の髪をし、手にはクナイをもっていた。

大しても、もう一人の少女は薄い翠の髪に手には日本刀より少し短い剣が握られていた。

「中々の気迫でござるな、いずみ」

剣を持つ少女が話し掛ける。

「そっちこそ、嘗めてると、痛い目見るよ・・・沙理恵」

クナイを持った、いずみと呼ばれた少女も言い返す。

「じゃあ・・・せっ!!」

地面を思いっきり蹴りつけ、沙里恵はいずみに向かって跳躍する。

着地すると同時に斬りつける。

「くっ!!」

いずみは逆手に持ったクナイでそれを受け止める。

「しゃっ!!」

沙里恵は空いている片方の手でいずみの空いている手を握る。

いずみの手には、もう一つ、クナイが握られていたからである。

「づっぁ!!」

いずみは一旦身体を縮め、跳ねるようにして沙里恵を弾く。

「ちっ!!」

弾かれたと同時に沙里恵は木の枝まで跳躍し、着地する。

「はっぁぁ!!」

そこに向かっていずみは懐から小さ目のクナイを数本取り出し、投げつける。

「せいっ!!」

左手で鞘を持ち、一閃。

その衝撃でクナイをすべて弾き返す。

「だぁぁっ!!」

その弾き飛ばしたクナイの後から、沙里恵はいずみに向かっていく。

弾き飛んでくるクナイをバックステップで避け、いずみは向かって来る沙里恵の剣を受け止める。

「はっ!!」

受け止めたと同時に、いずみの腹に鈍い痛みが走る。

沙里恵の拳が、いずみの腹に入っていた。

「せぇぇぇぇっい!!」

そして、その勢いで沙里恵はいずみを投げる。

「ぐっ!!」

地面にたたき付けられたと同時にいずみは転がりながら立ち上がる。

「しっ!!」

立ち上がったいずみに沙里恵は容赦なく剣戟を浴びせる。

「くっ・・・」

それを何とか受け流していくいずみだが・・・。

「はぁぁぁっ!!」

沙里恵の剣が、いずみのクナイを弾き飛ばす。

「・・・終わりでござるよ」

そして、いずみの首元に剣をつける。

「はぁ・・・今日は負けたか・・・」

そう言っていずみは手を上げる。

「今のところ、実力は五分五分でござるからな」

剣を鞘に戻し、沙里恵も言う。

「さすが・・・うちと実力を二分している戸隠の忍者だ」

弾き飛ばされたクナイを広い、いずみは苦笑する。

蔡雅には敵わんでござるよ・・・火影殿は忍者の中でも五指に入る腕前・・・そう考えると戸隠はまだまだでござるよ」

つられるように笑い、沙里恵は言う。

沙里恵・・・本名戸隠(とがくし) 沙里(さり)()・・・忍びで名高い蔡雅御剣流に次ぐ力を持つとされる戸隠の本家の娘である。

今は修行のため、蔡雅御剣流の宗家がある旭川にきているのである。

「いずみ〜、沙里恵〜」

そこに、二人を呼ぶ声がする。

「ああ、弓華こっちだ」

それを聞き、いずみが返事をする。

「お二人とも、お疲れ様です」

そう言って弓華はタオルを差し出す。

彼女は菟・弓華・・・。

元は非合法の暗殺組織の一人だったのだが、いずみ達のおかげで今は香港警防の六番隊隊長をしている。

いずみの兄、火影とは親しい仲なのだが・・・。

「すまんでござる、弓華」

沙里恵もそう言ってタオルを受け取り、汗を拭く。

「沙里恵が来てもう一ヶ月ですね」

「そうでござるな・・・月日とは早いものでござるよ」

身体を伸ばし、沙里恵は答える。

 

「その月日ヲ・・・あなた達はモウ感じる事はありまセン」

 

「!!!?」

「誰だっ!!!」

いずみと沙里恵は咄嗟に構え、叫ぶ。

弓華も構えとる。

弓華は暗器使いである。

故に、武器がない様に見えて、武器は持っている。

「死に逝く者ニ・・・名乗ってモ仕方ありまセン」

木と木の暗い闇の向こうから・・・一人の少女が歩いてくる。

ダークブルーのショートカットの髪に、目は漆黒・・・。

そして、袖が異様に長い服を着ていた。

「鵬・・・」

その少女を見た瞬間、弓華が呟く。

「泊龍・・・ここデ何をしてイル」

鵬、と呼ばれた少女は無表情で聞く。

「弓華・・・奴を知っているのでござるか?」

沙里恵は弓華に尋ねる。

「鵬は・・・昔私がいた所で・・・私に戦い方を教えてくれた人です」

弓華は息を飲み、鵬と対峙する。

「そうダ・・・なのニお前ハ何を遊んでイル」

「私は・・・もうあなたの知っている泊龍じゃありません」

弓華は尋ねてくる鵬に言い返す。

「そうカ・・・ならバ、何も言うマイ・・・」

一旦目を閉じ、鵬は話す。

蔡雅の娘・・・あなたヲ殺すのガ私の役目・・・泊龍・・・あなたモ私が殺しマス」

次の瞬間、鵬の袖の中から剣がいずみ達目掛けて飛んでくる。

「くっ!!」

飛んで来る3本の剣を沙里恵が弾く。

「拙者の前で・・・人は殺させないでござるよ!!」

叫び、沙里恵は鵬に向かっていく。

「邪魔デスよ」

袖の中から鎖鎌を取り出し、鵬は応戦する。

「ちっ、奴も暗器使いか・・・」

いずみは舌打ちし、鵬に向かっていこうとする。

「ダメです!!いずみ!!」

それを弓華が止める。

「弓華!!沙里恵を助けに行かないと!!」

「今は一旦引いてください!!ここでは絶対にやられます!!」

いずみの叫びに対し、弓華も言い返す。

「沙里恵!!一度引いてください!!」

「くっ・・・判ったでござる!!」

襲い掛かる鎌を鞘で弾き、沙里恵は一旦下がる。

「逃がしまセン」

そう言って鵬は走りよってくるが・・・。

「はっ!!」

弓華が煙球を炸裂させ、辺りは煙に包まれる。

「今のうちに!!」

弓華が言い、それに沙里恵といずみは頷く。

「・・・・逃げられマシタカ・・・」

煙が晴れ、辺りを見回すと、そこに3人はいなかった。

「デモ・・・すぐニ見つけマス」

そう言って鵬は木の枝を伝いながら、何処かへ行った。

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

見渡しのいい平原に・・・3人はいた。

草原に聳え立つ一本の木に、もたれていた。

「これで・・・少しは時間を稼げます」

弓華は座り込んで、言う。

「弓華・・・あいつは何者だ?」

いずみが弓華の隣に座り、尋ねる。

「拙者も聞きたいでござるな・・・弓華とどういう関係でござる?」

沙里恵も座り、尋ねる。

「判りました・・・」

弓華は一旦区切り、話し出す。

「鵬は・・・(ほう)飛鳥(あすか)といって昔私がいた組織で私に戦闘訓練をしてくれた人です・・・私の戦い方は、あの人と同じなんです」

「なら・・・奴は弓華と同じ暗器使いというのも頷ける」

いずみは先ほどの鵬の戦いを思い出し、言う。

「鵬は私と同じ中国出身で・・・私より三年前に組織に入って・・・すぐさま最高幹部まで抜擢されたと聞いています」

弓華の言葉に、二人は息を飲む。

「鵬の家系は・・・代々暗殺が生業の家系で・・・暗器を使った暗殺を、幼少から教わったと話していました」

「いわば・・・暗殺専門の家系だった・・・というわけでござるか」

弓華の言葉を聞き、沙里恵は顔をしかめる。

 

「そしテ・・・今ここニ私がイル」

 

3人の目線の向こうに・・・鵬が佇んでいた。

「随分ト・・・お喋りニなったネ・・・泊龍」

鵬は袖に手を入れた姿で、立っていた。

「くっ!!」

いずみは立ち上がり、構える。

「いずみ!あいつの狙いはいずみでござる・・・だから、ここは拙者に任せるでござるよ」

沙里恵は構えるいずみにそう言い、鵬といずみの間に立つ。

「マタ・・・邪魔しマスか?」

鵬はいたって無表情で、尋ねる。

「いずみは拙者の友でござるからな・・・危害を加えようとする者を、黙って見ていられんだけでござる」

そういって、沙里恵は抜刀の構えを取る。

「あなた・・・名前ハ?」

鵬が袖から手を抜き、尋ねる。

「拙者の名前は・・・戸隠 沙里恵でござるよ!!」

叫び、沙里恵は鵬に向かっていく。

「あなたヲ障害とみなしマス」

そう言って、沙里恵が手を下にすると、剣が出てくる。

「づぁぁぁぁぁぁ!!!」

鵬の前で剣を抜刀・・・。

それを鵬は苦もなく受け流す。

「はっ!!」

そして、大ぶりの一撃が、鵬の剣を弾く。

「もらった!!」

叫び、沙里恵が剣を振るおうとした瞬間・・・。

「駄目デスね」

鵬の弾き飛ばされた剣が飛んできて・・・沙里恵の剣を弾き飛ばした。

「なっ!!?」

一瞬の事で沙里恵は驚き、隙が出来る。

「少し・・・退いておいテ」

刹那・・・鵬の手からクナイが2本飛んでき、それが沙里恵の手に突き刺さる。

「がぁぁぁぁっ!!!」

そのまま、鵬に押され、クナイは木に突き刺さり、沙里恵は動けなくなる。

「さぁ、次ハあなた達デス」

そう言って、鵬はいずみ達に向かう。

「待つでござる!!」

その鵬に向かって、沙里恵が叫ぶ。

「・・・・何カ?」

鵬は振り向かず、答える。

「何故・・・そなたはそんな・・・哀しい眼をするのでござる・・・」

その言葉に、鵬がぴくりと反応する。

「どうして・・・そんな哀しい眼をしてまで・・・戦うのでござるか!!」

沙里恵の叫びに、鵬は振り向く。

「何モ知らないクセに・・・判ったヨウナ事・・・言わないデ」

そう言って鵬は沙里恵の腹に拳を入れる。

「ごふっ!!」

殴られ、沙里恵は血を吐く。

「沙里恵っ!!」

それを見、いずみが鵬に向かって駆け出す。

「はぁぁぁぁっ!!!」

いずみがクナイを振るうと、鵬はそれを取り出した鎖鎌で受け止めていた。

「判るわけないさ!!他人のことなんてな・・・!!」

いずみはそう言って、鵬に弾かれる。

どんな苦痛の人生送ってきたかなんて知らないよ・・・だけどな、『世の中なんてこんなもん』なんてあきらめつけて、戦おうとしないのはカッコわるいぜ・・・っ!!」

「っ!!?」

そのいずみの言葉に、弓華は息を飲む。

それは・・・昔いずみに言われた言葉・・・。

世の中を再び信じてみようと思った・・・あの言葉。

「そうでござるよ・・・あきらめるのは・・・まだ早いでござる」

そう言って、沙里恵は手に突き刺さったクナイを抜く。

「くっ!!」

抜いた時に手が噴出し、少しうめくが、沙里恵は剣を握り、鵬を見る。

「私ハ・・・もう逃げられまセン・・・この道カラ・・・」

言って、鵬は鎖鎌の鎌の部分をいずみに投げる。

「くっ!!」

しかし・・・それはいずみの前に飛び込んできた沙里恵の腕に突き刺さる。

「はぁぁぁっ!!」

そして、そのまま沙里恵は腕を引っ張った。

「ぐっ!」

それで体勢を崩し、少しふらつく鵬。

「いずみぃっ!!」

それを見て、沙里恵が叫ぶ。

「あぁぁぁぁ!!」

いずみがそれに呼応するかのように叫び、いずみは鵬の首に手刀を落としていた。

「がっ・・・」

少しふらついたあと・・・鵬は倒れた。

「やった・・・か」

そう言っていずみは鵬を見る。

「中々・・・疲れたでござるよ」

沙里恵はそう言って倒れる。

「沙里恵っ!!」

それを、弓華が受け止める。

「二人とも、私の家に連れて行こう・・こいつの事は、兄様たちが何とかしてくれるはずだ」

「はい、判りました」

そう言って二人は御剣家へと向かった。

 

 

その後・・・。

鵬は弓華と同じく観察処分を受けたが・・・それ以外は何も無く・・・ただ、平穏に暮らしていた。

そして・・・今は香港警防隊で仕事をしている。

曰く、『まさカ・・・泊龍ニ教えられるトハ・・・』らしい・・・。

 

沙里恵はその後傷の完治を目指したが・・・。

思ったより傷が深く、もう剣は握れないそうだ。

だが、本人はいたって気にしておらず『剣が握れなくても、牙なき人の牙にはなれるでござるよ』といっていた。

 

 

 

そして・・・忍び達は・・・今日も・・・饗宴する・・・。

 

 

 


あとがき

 

なんだこりゃ・・・。

フィーア「あたしに聞かれても・・・」

なんか全く最初のイメージと違うんだが・・・まぁ、良いか。

フィーア「よくないわぁぁぁ!!」

あべし!!

ぐぅ・・・とりあえず、短編の忍びの饗宴をおくりしました。

フィーア「あんた、期限すぎてるのわかってるわけ?」

浩さま・・・申し訳ありませんでした・・・。

フィーア「あ〜あ、いっそ、美姫さんと一緒にあんた細切れにしてあげたいくらい」

そっ・・・それは恐ろしいから・・・止めて欲しいんだが・・・。

フィーア「あんたに拒否権はなぁぁぁい」

ごべらっ!!

フィーア「じゃあ、またね〜〜」

では・・では・・・。

 

 

 

 

 

戸隠(とがくし) 沙里(さり)()

age:21歳

Height:160cm

Weight:41kg

蔡雅御剣流と同等の力を持つと言われる蓬臥(ほうが)戸隠流(とがくしりゅう)と呼ばれる忍者の家系の宗家の娘。

実力はいずみと同等で国家認定一級忍者でもあり、いずみにとっては良き友であり、ライバルであり、目標でもある。

使う武器は日本刀を少し小さくしたような剣で、小太刀よりも少し長いくらい。

薄い翠の髪と濃い青をした目を持つ。

性格は友達思いで、自分の友をなにが何でも守ろうとする。

 

 

鵬 飛鳥

age:29歳

Height:165cm

Weight:43kg

弓華の泊龍時代の時に戦闘訓練を施し、日本語をかなり教えたのも鵬。

代々暗殺を生業としてきた家系に生まれ、幼少の頃から凄まじい訓練をつんできた。

中国人と日本人のハーフで、弓華と同じく日本語は片言である。

弓華の師匠らしく、弓華を超える暗器使いである。

ダークブルーの髪と漆黒の眼をしている。

幼少の頃の特訓で正確は何事にもほぼ無関心。

 

 

 

 

最後の戦い別verは<こちら>から・・・どうぞ。





アハトさん、投稿……。

美姫 「ありがとう。そして、細切れにするなら、任せて!」

こらこらこら。
何を恐ろしい事をさらりと。

美姫 「やーねー、冗談よ冗談。最も、代わりに誰かさんを細切れに…」

誰かさんって、俺か?!俺なのか?!って言うか、ここには俺しかいないやんけ!

美姫 「ふふっふふ♪」

ぶ、不気味な笑みを浮かべるな!
と、それにしても、戦闘シーンが上手いな。

美姫 「本当よね。誰かさんも見習って欲しいわ」

ぐっ。一々、胸に突き刺さる言葉だ。

美姫 「くすくす。自覚はあるみたいね」

それは物凄く……。

美姫 「だったら、精進をしなさい」

ははー。って、何様?

美姫 「美姫様よ!」

うぅぅ、申し訳ございません…。
ですから、このおみ足をお除けくださいませ〜。

美姫 「分かれば良いのよ、分かれば。ホホホホホ。では、またね」

ははっーーー。また、でございます。



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