「だからぁ!! フィーアの世話をするのはボクだって言ってるだろ!!?」

机をバン!と叩いてリスティが叫ぶ。

「いいえ!! いくらリスティさんだからってこればっかりは譲れないわ!!」

対して、桃子も同じように机を叩いて講義する。

「私はお父さんに預けようとさっきから言ってるんだけど……」

そんな中で、フィリスは声をあげるが、小さすぎて二人の耳には入っていない。

「だいたい、フィーアの名づけ親はボクだ!! だからボクにはフィーアの面倒を見る義務がある!!」

「あら、義務なんていうのでしたら私が引き受けるわ!!」

ぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあと、先ほどから3時間は論議をしている。

フィリスも少しは意見を出すが、全然聞いてもらえない。

そして、当人であるフィーアはというと……

「なのはお姉ちゃん♪ 美由希お姉ちゃん♪」

美由希となのは、二人と一緒に遊んでいる。

傍から見れば、少し年の離れた姉妹に見えないこともない。

出会ったころ、美由希は一時フィーアの【おばさん】という言葉にショックを受けていたが……

何とか説得して、お姉ちゃんと呼んでもらえるようになったのだ。

リスティも関係的には伯母なのだが出会ったときからお姉ちゃんといっていたので、呼び方は変わっていない。

ちなみに、桃子はおばあちゃんなのだが、美由希より早く桃子は自分のことをお姉ちゃんと呼ぶように言い聞かせたのだ。

どうしてこうなったのか、それはさる数時間前のことである。

 

 

 

 

 

 

戦う大人達

 

 

 

 

 

これは、私が書いた【幼い翼の少女】の一ヵ月後のお話です。

フィーアは皆に可愛がられています。

フィリスと恭也は、高町家の近くに一軒家を買っていて、そこに3人で暮らしています。

しつこいようですが、これはオリキャラがメインです。

ではでは〜〜

 

 

 

「母さん、そろそろ俺とフィリスで旅行に行こうかと思うんだが……」

夕食時はフィーアを連れて高町家で食事をすることが半分習慣化してきたとある日。

恭也がそんな事を言い出す。

「そろそろフィリスも纏まった休暇が取れるそうだし、俺も貯金が結構溜まってきたからな」

「そういえば、貴方達まだ新婚旅行に行ってなかったものね」

それに桃子が答える。

「お父さんとお母さんどこかに行くの?」

両隣に座っている恭也とフィリスを交互に見てフィーアが言う。

「まぁ、そんなところだ」

フィーアの頭を撫でながら、恭也が言う。

「もしかして、私のことがいらなくなったの?」

ちょっと泣きそうな顔をしてフィーアが恭也に言う。

「そんな事はないぞ、むしろ手放してしまうのが惜しいくらいだよ」

心配ない、といって恭也はさっきよりも優しく撫でてやる。

「それにすぐに帰ってくるさ、早々長い間フィーアをおいておく訳ないだろ?」

苦笑して、恭也は答えた。

「じゃあその間フィーアちゃんどうするの?」

「父さんの家に預けようかと思ってます」

桃子の問いに、フィリスが答える。

「私達で預かってもいいんだけど」

それを聞いた桃子が言う。

「それも考えたんですけど、父さん達もたまには一緒にゆっくりしたいって言ってたんですよ」

「そっか、矢沢さんのところにも行ってあげなきゃね」

フィリスの答えを聞いて、桃子は頷いた。

「じゃあ、今日ぐらい皆でうちに泊まっていきなさい」

そして、笑顔で言った。

「俺は別に構わないが……」

箸をおいて、恭也が言う。

「あっ、私も構いませんよ」

フィリスも賛成する。

「じゃあじゃあ、私なのはお姉ちゃんと美由希お姉ちゃんと一緒に寝る〜」

ニコニコと笑顔を振りまきながら、フィーアが言う。

「うん、フィーアちゃん一緒に寝よ」

それになのはも笑顔で答える。

「私もいいよ」

美由希も笑顔で答えて、フィーアの頭を撫でてあげる。

「恭也とフィリスさんは恭也の部屋がそのままだからそっちで寝てね。 フィーアちゃんは、美由希の部屋で3人寝れる?」

「うん、大丈夫だよ」

桃子の問いに、美由希は答える。

「ごちそうさま〜〜」

箸をおき、フィーアが言う。

「レンお姉ちゃん、今日も美味しかったよ」

「そうか〜、それなら作った甲斐があったわ〜」

フィーアの笑顔を見て、レンは笑う。

 

ピンポーン

 

そこに、インターホンの音が鳴る。

「ん、こんな時間に誰だ?」

恭也は立ち上がりながら言う。

「恭也、お願いね」

「判った」

桃子に言われ、恭也は玄関へと歩いていく。

「おっす、恭也!!」

しかし、突然玄関が開いて、リスティがいきなり入ってくる。

「りっ、リスティさん!!?」

いきなり玄関をあけて入ってくるリスティに驚きの声を上げる恭也。

「フィーアいるかい?」

「いますが……どうかしたんですか?」

余りの剣幕に、恭也は引き気味になりながら聞く。

「ちょっとね」

それだけ言ってリスティは台所へと入っていく。

「あっ、リスティお姉ちゃん」

まず、フィーアがリスティに気づく。

「フィーア、元気だったかい?」

フィーアに名前を呼ばれたリスティはご機嫌になってフィーアの頭を撫でる。

「リスティ、こんな時間にどうしたの?」

フィリスが溜息をつきながらリスティにたずねる。

「おっと、そうだった。 フィリス、今度恭也と旅行に行くんだって?」

「そうだけど、誰から聞いたの?」

フィリスは思った疑問を口にする。

この話はまだ知人友人には、ここでしか言っていない。

「そんなの矢沢に聞いたに決まってるじゃないか、ボクも月一の検診があるのは知ってるだろ?」

当然といわんばかりに言うリスティ。

「そういうわけでフィーア、フィリス達が旅行中の間はボクと一緒に暮らそうな」

ポン、とリスティはフィーアの頭に手を置いてサラッとそんな事を言う。

「ちょ、リスティ!!? 父さん達に聞かなかったの!?」

「ああ、勿論聞いたよ。 でも矢沢学会が入ったとかでいないって言うからさ、ボクが代わりに預かってやるって言ったのさ」

ポケットから煙草を取り出しながら言うリスティ。

「リスティさん……」

「おっと、ここは禁煙だったか」

恭也に言われ、リスティは煙草をしまう。

「父さんそんな事一言も言ってなかったと思うんだけど……」

リスティの言葉に、フィリスは頭を傾げる。

「まぁいいじゃないか、ボクだったらフィーアも懐いてるし、安心だろ?」

「そうなんだけど……真雪さんが……」

そのフィリスの言葉に、皆が一同に固まる。

「そっか……真雪の奴、フィーアのこと知佳の代わりみたいに見てるからね」

「そうなの?」

「ああ、この前会いに行ったときなんか仕事ほっぽり出して遊んでたぐらいだぞ」

フィリスの問いに、リスティは苦笑して答える。

「じゃあ、そういうこと「ちょっと待って!!」……どうしたんだい?」

リスティの言葉をさえぎる様に叫ぶ桃子に、リスティは尋ねる。

「そういう話でしたら、私がフィーアちゃんを預かります」

先ほどはフィリスの話で納得したが、可能性が出てきたとなれば話は別なのだ。

「聞いてなかったのかい、桃子……フィーアはボクが世話をするって言っただろ?」

呆れたように、フィリスは言う。

「いいえ、フィーアちゃんの世話をするって最初に言ったのは私よ。 だったら、当然私に権利があるはずよ」

しかし、桃子は断固として譲らない。

「桃子が言ったときは無理だったんだろ? ならボクの方が良いに決まってる」

「その時は、でしょ。 今はまだ振り出しに戻った状態よ、リスティさんだけがフィーアちゃんの世話をするのはよくないわ」

バチバチバチと、二人の間で火花が飛び散る。

「はぁ……全く家の母は何をやっているんだ……」

深くため息をつく恭也。

「私達で連れて行ければいいんですけどね……」

その恭也の隣で、フィリスも考える。

すでに予約は全て完了しているので、今になってもう一人、と言うわけにはいかない。

かといってキャンセルすると今度はいついけるか判らない。

そんなわけで、恭也とフィリスは夫婦揃って大きなため息をついた。

 

 

それが、つい3時間ほど前の話。

いまや二人はこう着状態になっている。

どちらかが自分に有利になるように、それでいて相手の反論を許さない言葉を捜しているのだ。

「しかし、このままでは埒が明かんな……」

「そうだね、そろそろ鍛錬の時間だし……」

恭也と美由希は鍛錬の道具一式を準備して、再びリビングへとやってくる。

「…………美由希」

少し考えていた恭也が意を決したかのように、美由希に話しかける。

「今フィアッセが確か俺達の旅行先でツアー中だったな?」

「そういえば……それが終わったら帰ってくるっていってたよね」

恭也の質問に、美由希は何をいまさらと言った風に答える。

「なら……これでいくか」

恭也は一人納得して、玄関の電話へと歩いていく。

「恭ちゃんどうしたんだろ……」

その行為に疑問を感じた美由希だが、今は目の前の桃子とリスティの言い合いの解決の方が先だ。

「なのはお姉ちゃん……そろそろ寝ようよぅ」

そんな中、眼を擦りながらフィーアがなのはに言う。

「そうだね、お姉ちゃんは?」

なのははフィーアに頷いて、美由希に尋ねる。

「私は夜の鍛錬があるから、先に二人で部屋で寝ててね」

美由希がそう言い、二人は頷いて美由希の部屋へと歩き出す。

それと一緒に晶とレンもリビングを出て行く。

それと入れ違いになるように、恭也がリビングへと戻ってくる。

「フィリス、いいか?」

「どうしたの、恭也?」

そして恭也は何とか二人をなだめようとするフィリスに声をかける。

「俺達の旅行先にフィアッセがツアーで言っていることは知っているだろう?」

「ええ、それがどうかしたの?」

「先ほどフィアッセに連絡してみたところ、フィーアを預かってくれるそうだ」

それを聞いて、フィリスは驚いた顔になる。

「前々から会ってみたかったそうでな、是非来てほしいと言われたよ」

苦笑しながら、恭也は言う。

「海鳴のほうが安全だが、どちらかに任せるとまた色々と揉めるだろう?」

「そうね……だったら、いっその事どちらもしなかったらいいわけだしね」

恭也の問いに、フィリスは満足げに答える。

「というわけで母さん、リスティさん……フィーアは向こうでフィアッセに預けるので」

ピタッと、言い争いが止まる。

「どちらも譲らないのなら第3者に預けた方が良いだろうと言うのが俺とフィリスの答えだ、幸い、フィアッセなら安心だ。 向こうにはエリスもいるようだしな」

恭也はそう言って、鍛錬の道具一式をもち、美由希と一緒に出て行く。

「えっと、そう言う訳だから……義母さんもリスティももう寝ましょうね。 夜も遅いですし」

フィリスは苦笑しながらそう言って、恭也の部屋へと歩いていった。

「ボク達って……」

「一体……」

 

 

「「なんだったのかしら(んだ)?」」

 

 

二人は口を揃えてそう言って、一気に脱力した。

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

 

う〜ん、随分久しぶりに書いたなぁ……

フィーア「最後に投稿してから、一体どれだけ時間を空けたのかしらねぇ?」

ひぃぃぃぃっ!!! これには、海よりも山よりもふかーいふかーい訳が、あるのでござるよ!!

フィーア「……なんで、カエデ?」

やっ、浩さんのSSでもカエデが出てきたから……

フィーア「紅蓮衝ぉぉぉぉっ!!!!」

アビビビビビビッ!!!!!

フィーア「雷神衝ぉぉぉぉっ!!!!」

アベベベベベベッ!!!!!

フィーア「ふぅ……お姉さま直伝のカエデの技……貴方にはもったいないくらいね」

プスプス……(立ち上がる炎の音)

フィーア「えっと、次回は旅行先でのフィアッセ達とのお話ね。 ではまた次回に〜〜〜」




……えっ!? フィーアのお仕置き技が増えたりレベルアップしてるのは、美姫の所為なの!?
美姫 「ふっふっふ♪ いや〜ね〜、お仕置きだなんて。
     護身用といってよ」
明らかに過剰防衛になる気が激しくするッス!
美姫 「大体、お仕置きされるような事をする方が悪いのよ」
う、うぅぅ。耳に痛いお言葉ッス。
美姫 「まあ、私はお仕置きという名目が無くてもするけど」
って、はっきりと断言するな!
美姫 「冗談よ、冗談」
全く信用できなんですけど……。
美姫 「なに?」
イ、イイエナンデモナイデスヨモチロン。
え、えっと、フィ、フィーアが可愛いな。
桃子さんやリスティが取り合う気持ちも良く分かるというもんだよ。
美姫 「そうよね〜」
さ、さて、今回のこの辺で…。
美姫 「何処に行く気?」
へっ!? あ、あははは……。
い、いやだなー、別に何処にも行こうとなんてしてないよ。
ましてや、逃げようだなんて思っても……。
美姫 「ふ〜ん。じゃあ、私と一緒にあっちの部屋に行きましょうね〜♪」
た、助け………………。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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