トライアングルハート〜天使の羽根の物語〜

  プロローグ



  * * * * *



 ――○月○日14:07。

 リーセントコロニー・ドミニオンホテル1Fロビー。

 リゾート地にあるそこは休日ということもあって、大勢の人で賑わっていた。

 家族、友人、恋人たち……。

 皆一様に活き活きとして、その表情は笑顔にあふれていた。

「あはは。ねえ、海だよ海。早く泳ぎにいこうよ!」

 はしゃいだ声を上げながら、一人の少女が駆けていく。

「そんなにはしゃいで、転んでも知らないわよ」

 そう言って後を追うのは姉のようにも見える少女の母親。

 娘の姿を微笑ましく思っているのか、その顔には自然な笑みが浮かんでいる。

「やれやれ、そんなに急がなくても海は逃げたりしないってのにな」

「きっと無駄にしたくないのよ。一緒にいられる時間、そんなに多くないから」

 苦笑する父親に、もう一人の娘が静かにそう言った。

「済まないな。いつも寂しい思いをさせてしまって」

「わたしはいいの。けど、あの子は……」

 浜辺で戯れる母と妹を見つめつつ、少女はぽつりと言葉を漏らす。

「忙しいのは分かってる。今だって、本当は研究をしていなければならないんでしょ?」

「それは……」

 隠していたはずのことをあっさり見破られ、父は思わず言葉を失った。

「研究室の人から聞いたわ。軍が圧力を掛けてきてるって噂、本当だったのね」

「…………」

「大丈夫。わたしは何も知らないし、知っていたとしても誰かに教えるつもりはないから」

 少女の顔から表情が消える。それを見て背筋に冷たいものを覚えた父は厳しい顔で娘を見た。

「その話はもうよしなさい。せっかく家族で来ているんだ。楽しもうじゃないか」

「そうね。でも、……ううん。何でもないわ。さ、わたしたちも行きましょう」

 軽く頭を振ってそう言うと、少女は父の手を取って歩き出した。

  * * * * *

 ――○月○日16:23。

 眠りの丘、巨木の前。

 爽やかな風が吹き抜ける中、真紅と銀の髪の少女が遊んでいた。

 年の頃は10歳くらいだろうか。

 あどけない笑顔を浮かべて銀の少女が真紅の少女を追い掛けている。

 じゃれあうようにゆったりと、そしてすぐに重なって草の上に倒れる。

「……捕まえた」

 そう言って笑う銀の少女に、つられて真紅の少女も笑みを零す。

「ねえ、わたしと一緒にいて楽しい?」

 不意に銀の少女がそう尋ねる。

 それに真紅の少女が頷いたのを見て、彼女はそっと目を閉じる。

 ……ずっと、一緒にいようね。

 祈るように、願うように。

 囁かれた言葉は約束となって、二人の少女の心に染み渡っていった。

  * * * * *

 ――5月13日18:31。

 海鳴市桜台・さざなみ寮1F廊下。

「はい、さざなみ寮です」

 夕方になって掛かってきたその電話を受けたのは寮のオーナーである槙原愛だった。

   * * * * *

 ――それは突然のことだった。

 閃光が視界を奪い、鼓膜を食い破らんばかりの轟音が大気を殴りつける。

 少女たちを襲う理不尽な暴力。

 あるものは抗い、またあるものは成す術もなく大切なものを奪われた。

 ――そして。

  * * * * *

「準備は出来たか?」

 寮の玄関にて先に待っていた耕介は背後から抱きついてくる恋人に向かってそう尋ねる。

「えへへ、ばっちりだよ」

 問われた知佳は耕介から離れると、彼の前でくるりと一回転してみせた。

「それじゃ、行くとしますか」

「むっ、その前に何か言うことがあるでしょ。彼氏としては」

 さらりと流されて少しむくれる知佳に耕介が軽く謝りつつ、二人は連れ立って歩いていく。

 彼らはまだ知らない。

 この穏やかな日常を脅かすものがすぐそこにまで迫っていたことを。

 ……闇が、動き出そうとしている。




  * * * * *

  あとがき

龍一「予告通りに始まりました新シリーズ!」

知佳「今回はわたしと耕介お兄ちゃんとのラブラブで甘い日常をたっぷりと見せ付けちゃいま〜す」

龍一「こらこら。しょっぱなから嘘をつくんじゃない」

知佳「ええっ、違うの?」

龍一「いや、まったくそういうのがないわけじゃないんだけどね」

知佳「うんうん。そうだよね。やっぱりそうじゃないと」

龍一「とりあえずメインは日常ってことで」

知佳「キーワードはサブタイトルにもあるように羽根です」

龍一「トラハらしさというか、優しい物語になるようにがんばりますのでどうぞよろしくお願いします」

ではでは。

 




遂にスタートしました新連載。
美姫 <パフパフドンドンドン>
果たして、どんな物語が紡がれていくのか。
美姫 <パ〜フ〜>
今からとっても楽しみです。
美姫 <ドンドン>
って、いつまでも遊んでるな!
美姫 <プ〜>
だから、やめい!
美姫 「え〜、良いじゃない。何かやっているうちに楽しくなっちゃったんだもん」
はいはい。これはこっちに置いておこうな。
美姫 「ぶ〜。と、それはそれとして、本当に楽しみよね」
うんうん。
美姫 「一体、どんな物語が始まるのか」
次回も楽しみにしてます。
美姫 「待ってま〜す」



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