六の夜を駆ける者

 

 

 

 

 

 

「ふん・・・この俺に挑むとはな・・・その命・・・あまりに無謀!!」

ナイフを持った青年が叫ぶ。

「さぁ・・・それはどうかしら・・・私に挑まれたあなたの命のほうが無謀なのではないかな?」

対して・・・こちらもナイフを持った女性が言い返す。

「正気か?」

青年はあきれた風に・・・しかし、構えはとかずに聞く。

「正気じゃなかったらこんな事言わないわよ」

たして、女性も恍けた風に・・・だが、こちらも構えはとかずに言う。

「七の夜を駆けるこの俺に挑んだ貴様の度胸は認めよう。貴様、名は?」

青年が聞く。

「私はね・・・完全数になれなかった退魔・・・六夜 夜恵(ろくや やえ)・・・」

女性・・・夜恵と名乗り、青年を見る。

「六・・・それは神が創りし人間を表す数字・・・不完全なものの証・・か」

青年はつまらなさそうに言う。

「所詮完全数を持つ貴方には判らないでしょうね・・・七夜 志貴?」

夜恵は青年に対して言う。

「関係がないな・・・七夜とは夜を駆ける者の事・・・我ら暗殺者が活動する時間帯を表したにすぎん」

つまらないと言う感じで言い捨てる志貴。

「それでも・・・貴方には判らない・・・七を持つ者に六を持つ者がうけた苦しみは・・・」

そう言って夜恵は一歩足を前に進みだし・・・跳躍した。

「七夜の三次元戦闘能力・・・それを上回る為に私が編み出した跳躍戦闘能力!!」

そう叫ぶ夜恵は既に志貴の上空手前にいた。

「はぁぁぁぁ!!!!」

降下する夜恵の持つナイフが志貴の制服の右腕を掠る。

「ふん・・・中々楽しめそうだな・・・“混血”以外で此処まで血が騒ぐのは初めてだ」

志貴はそう言ってナイフを構える。

 

 

何故こうなったか・・・。

それは朝の出来事・・・。

偶然から出た戦いの幕開け・・・。

 

 

「ふぅ・・・そろそろ学校か」

志貴は呟きながら道を歩く。

何時もと変わらない日常。

そんな朝の風景の一コマである。

「志貴〜〜」

そこへ、無邪気な声が志貴を呼ぶ。

「あっ・・・アルクェイド・・・」

志貴は溜息をつきながら呼んだ声の主の名を呟く。

志貴を呼んだのはアルクェイド・ブリュンスタッドと言う女性。

12世紀に堕ちて魔王となった吸血鬼達の王“真祖”と区別される吸血鬼を狩る為に創られた“真祖”の姫である。

「あのなぁ、アルクェイド。学校の近くには来るなって、あれほど言ってただろ?」

志貴はアルクェイドの前に立って言う。

「そうだけど・・・」

アルクェイドは会いたかったと言わんばかりの表情をする。

「また、学校が終わったらお前のマンションに行ってやるから、な?」

志貴はアルクェイドに言う。

「うん・・・」

アルクェイドも判ったと言う顔をする。

「よし、なら・・・」

その時、志貴は道行く女性と肩がぶつかった。

「あっ、すいません」

志貴は咄嗟に謝る。

「こちらこそ」

女性もそう言ってまた歩き出した。

「・・・・ぐぅ!!」

女性が歩きだし、数歩離れた瞬間・・・志貴は突然頭を抑える。

「志貴っ!!?」

隣にいたアルクェイドは志貴に近寄る。

「ぐぅ・・・」

志貴を襲うもの・・・。

それは志貴の深層意識の奥深くに眠るもう一人の自分・・・。

“殺人鬼”・・・七夜 志貴の持つ・・・殺人衝動。

しかし・・・この殺人衝動は人ならざる者にのみ働くもの・・・。

「ぐぅ・・はぁ・・・はぁ・・・」

志貴は息を落ち着かせ・・・さっきの女性が歩いていった方向を見る。

「アルクェイド・・・」

志貴は隣で心配そうにしていたアルクェイドに言う。

「この街に・・・新しい吸血鬼が入ったとかって、あるか?」

志貴は真剣な顔で聞く。

「ううん・・・そんな感じは全然しないけど・・・」

アルクェイドは心配そうな顔で言う。

「そんな顔するな・・・もう・・・何でもないさ」

そう言って志貴は立ち上がる。

「じゃ、俺は学校に行ってくるから、お前も早く家に帰っておけよ」

そう言って志貴は学校に向かって歩き出した。

 

 

「そろそろアルクェイドのマンションだな・・・」

志貴はそう言って夕方の繁華街を歩く。

「あいつの部屋で何する・・・ん?」

志貴は歩いている人込みの中で・・・ある一人の人物を見つけた。

「あれは・・・今朝の・・・」

そう・・・志貴が見つけたのは今朝肩がぶつかった女性であった。

「ぐぅ!!」

その女性を見た瞬間・・・またもや七夜の殺人衝動が志貴を襲う。

その女性は苦しんでいる志貴の隣をすれ違う瞬間・・・。

「午後10時に公園にて待つ」

そう言って・・・女性は人込みに消えていった。

「!!?」

それを聞いた瞬間、振り返る志貴だが・・・女性の姿はもう見えなかった。

「やつは・・・」

志貴はそう呟き・・・急ぎ足でアルクェイドのマンションに向かった。

 

 

「おい、アルクェイド」

志貴はアルクェイドの部屋の前に立ち、チャイムを鳴らす。

「・・・・・でてこないな・・・寝てるのか」

そう言って志貴はあらかじめ作った部屋の合鍵で鍵を開け、中に入る。

「お〜い、アルクェイ・・・ド・・・って」

志貴は部屋には言った瞬間・・・目を疑った。

「うぅ・・・」

そこには・・・血を流し・・・蹲っている・・・アルクェイドと・・・両手に黒鍵を討ち付けられた・・・シエルがいた。

「アルクェイド!!先輩っ!!!?」

志貴は大声で叫び、二人に近づく。

「おい、アルクェイド!!大丈夫かっ!!?」

志貴はアルクェイドを抱きかかえ、叫ぶ。

「うぅ・・・志・・・貴・・・?」

アルクェイドは呟く。

「そうだ!!どうした、これは・・・先輩とまたやらかしたのか!!?」

志貴は現状を見た限りで、ありうる答えを聞く。

「ううん・・・今朝・・・の・・・女が・・・」

「今朝の女・・・さっきのやつか・・・」

志貴は思い出して言う。

「くそっ!!」

志貴は叫び、壁に貼り付けにされたシエルから黒鍵を抜き取る。

「先輩っ!!大丈夫かっ!!?」

志貴は叫ぶ。

「遠野くん・・・彼女は・・・危険です・・・貴方ですら・・・倒せるかどうか・・・」

そう言ってシエルは意識を失った。

「くそっ・・・」

志貴は呟き、部屋を見回す。

「そうだ・・・琥珀さんなら・・・!!」

志貴はそう言って、電話をとる。

「はやく・・・はやく・・・」

志貴は焦るように呟く。

「はい、遠野ですが・・・」

そう言って電話から聞こえてきた声は琥珀だった。

「琥珀さん!!至急車と医療道具を持ってアルクェイドのマンションまで来てくれ!!」

志貴は受話器越しに叫ぶ。

「・・・判りました。秋葉さまには私から言っておきます」

「ありがとう」

そう言って志貴は受話器をおき、台所へ行く。

「・・・くそぉ・・・あの女・・・」

志貴は呟きながらタオルに水を染み込ませる。

「傷口ぐらい拭いておかないとな」

志貴は濡れたタオルを絞り、シエルの傷口を丁寧に拭いていく。

「アルクェイド、大丈夫か?」

シエルの傷を吹きながら聞く志貴。

「何とか・・・もう少ししたら動けるぐらいにはなれるわ」

そう言ってベッドで眠るアルクェイド。

「一体何があったんだ?」

志貴はタオルをまた水にぬらしながら聞く。

「今朝の女がね・・・急に私の部屋を訪ねてきたの・・・そして・・・いきなりお腹にナイフを突き刺されたの」

そう言ってお腹の傷を志貴に見せるアルクェイド。

「信じられなかったわ・・・まさか・・・ただの人間に此処までやられるなんて・・・」

「本当に人間なのか・・・そいつは?」

志貴はアルクェイドの傷を拭きながら聞く。

「えぇ・・・人間よ・・・少なくとも死徒ではないわ・・・でも・・・強烈な血の臭いはあった・・・」

「なら・・・」

志貴は吸血鬼だと言いそうになる。

「それでも・・・あれは人間です」

志貴の後ろから声がした。

「先輩!大丈夫なのか!?」

志貴は叫ぶ。

「ええ・・・私も血の臭いがしたので・・・此処に駆けつけてみればあのざま・・・全く・・・情けないですね」

シエルは突き刺された跡を見て言う。

「最強の真祖の姫とZの代行者である私達を此処まで追い詰められる人間は・・・遠野くん以外はありえないんですけどね・・・」

「お待たせしました!!」

そう言って琥珀が部屋へと入ってくる。

「琥珀さん!!急いで先輩の傷の手当てを頼みます!!」

志貴は琥珀を見ていった。

「はい!!」

琥珀もそれに返事をし、シエルの傷の手当てをする。

「琥珀さん・・・二人を頼みます!!」

そう言って志貴は部屋を出て行った。

 

 

「あの女は・・・何処にいる・・・」

志貴は手当たり次第にあたりを探しまわる。

繁華街からオフィス街、学校の近くまで探し回った。

「はぁはぁ・・・もう・・・950分・・・そうだ!!」

時間を見て・・・志貴は叫ぶ。

「公園だ!!」

そう叫んで志貴は走り出した。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

志貴は息をきらせながら・・・公園へと辿り着いた。

「何処だ・・・あの女・・・」

志貴は辺りを見回す。

「随分と息が荒いわね」

そこへ・・・声をかけるものがいた。

「・・・貴様!!」

志貴は振り向いたと同時に叫ぶ。

「随分と雰囲気が違うわね・・・貴方・・・本当に七夜 志貴?」

女は尋ねる。

「俺は・・・俺は・・・遠野・・・ぐぅ!!!」

志貴は名乗ろうとした瞬間・・・またもや殺人衝動に襲われる。

「あら・・・」

女はそれを黙って静観している。

 

 

志貴・・・お前は眠っておけ・・・あいつは俺の獲物だ!!

 

 

志貴の意識の中・・・その声と共に・・・“遠野 志貴”の意思は眠った。

「・・・・・・待たせたな」

志貴は眼鏡を外し・・・言った。

「あら・・・感じが変わったわね・・・貴方が本当の七夜 志貴かしら?」

女は聞く。

「そうだ・・・」

志貴はそう言ってポケットからナイフを出す。

「ふふ・・・血が騒ぐわね・・・」

そう言って女もポケットからナイフを出した。

そして・・・二人は対峙した。

 

 

そして・・・二人は相手の出方を伺いつづけている。

「七夜は滅ぼす・・・それがたとえ・・・この国の害になろうとも!!」

そう言って夜恵は一歩進んで跳躍する。

「ふん・・・未熟!!」

そう言って志貴は軽くその一撃をかわす。

「無駄だらけだっ!!」

そう言って志貴は夜恵の胸座を掴んで地面に叩きつけた。

「ごほっ!!」

叩き付けられた衝撃で口から少量の血を吐き出す夜恵。

「まだまだっ!!!」

しかし、すぐさま立ち上がり志貴の右足に斬撃を入れる。

「チッ!!!」

それを何とかかわそうとするが、志貴は少しばかりの斬り傷を負った。

「仕留めるわよっ!!!」

そう言って一気に志貴との間を跳躍し、夜恵は斬撃を入れる。

「シュヴァイゼンッ!」

まずは一撃目で夜恵は志貴を吹き飛ばす。

「ぐぅ!!!」

多少体が浮いている状態で態勢を整えようと志貴は試すが・・・。

「デュルスティヒッ!!」

夜恵はその志貴の動作より早く跳躍し、志貴を上空へと弾き飛ばす。

「ぐぉぉ!!!」

流石にそれには耐えられないのか・・・志貴はあっさりと上空へと上げられる。

「シュネルエーゲルッ!!!」

夜恵は志貴と同じ高さまで跳躍し、志貴に蹴りを一発入れる。

「ごほっ!!」

打ち所が悪かったのか・・・志貴は蹴りを受け血を吐き出す。

「グリュンデッヒッ!!!!」

夜恵はその状態から腕を組み、志貴を上空から地上へと思い切り叩き付ける。

「ぐぉぁぁぁ!!!」

志貴は高速で上空から落とされるが・・・。

「志貴っ!!!」

それを・・・アルクェイドが受け止めた。

「真祖・・・アルクェイド・ブリュンスタッドか・・・」

夜恵は面白くないと言う風に呟く。

「大丈夫!!志・・・貴・・・?」

アルクェイドは受け止めた志貴を見て言う。

「邪魔だ・・・どいてろ」

そう言って志貴はアルクェイドから離れる。

「中々だな・・・」

そう言って志貴は重心を低くして、構える。

「今度は・・・俺の番だ!!」

そう叫んで、志貴は消える。

「っ!!?何処へ行った!!?」

夜恵は辺りを見回すが・・・。

「隙だらけだっ!!!」

そう叫び、志貴は夜恵の上空から姿を現し、夜恵の肩を斬りつける。

「ぐぅ!!!」

斬りつけられた肩を抑え、数歩後退する夜恵。

「ふん・・・今のを避けられないとはな・・・眠っているのか?」

志貴はナイフを振って、刃についた血を払う。

「そうね・・・確かに避けられなかった私は眠ってたのかもね・・・」

そう言って傷口から手を放し、構える夜恵。

「なら・・・これはどうかな!!」

そう言って志貴は再度消える。

「・・・・・・・」

夜恵はそれを見た瞬間・・・眼を閉じた。

「・・・斬ッ!!!」

志貴が今度は夜恵の真正面から斬撃を繰り出してくるが・・・。

「ふん・・・そこじゃないわよ!!!」

そう言って夜恵は一瞬にして志貴の後ろに移動する。

「何ッ!!?」

志貴は驚きの声をあげるが・・・。

「アインハイスッ!!」

夜恵は志貴の背中を斬りつけ、上空へと上げる。

「ぐぅっ!!!」

斬り付けられながらも志貴は上空で態勢を整えた。

「そらっ!!」

そして、大振りの蹴りを夜恵の右肩に叩き付ける。

「ぐぅっ!!」

それを受け、夜恵は態勢を崩す。

「ふん・・・そろそろ逝くか!?」

志貴は一瞬にして夜恵の真下に入り・・・放った。

「閃走 六兎!!!」

高速の4段蹴りが・・・夜恵を吹き飛ばす。

「がぁぁぁぁっ!!!」

夜恵は血を吐きながら吹き飛ぶ。

「いずれ地獄で会おう・・・」

そう言って夜恵に背を向ける志貴。

「くっ・・・やってくれますね・・・」

そう言って夜恵は立ち上がった。

「ほぅ・・・まだ立ち上がるか・・・」

そう言って振り向きなおす志貴。

「終われない・・・私は・・・こんな所で・・・終われない!!」

そう言って夜恵は構える。

その瞬間・・・夜恵の眼の色が黒から朱へと変わる・・・。

「魔眼だと・・・?」

志貴は少し驚いた口調で言い構える。

「・・・しゅっ!!!」

夜恵は構えた瞬間・・・志貴の頬をナイフで掠めていた。

「・・・・・・くくくく・・・ははははははっ!!!!!!」

自分の傷を制服の袖で拭いて、志貴は笑い声を上げた。

「いいぞ・・・さぁ、殺しあおう・・・」

そう言う志貴の表情は・・・嬉々とした顔だった・・・。

「はぁぁぁ!!!!」

志貴は先程より速いスピードで走っていく。

「はぁっ!!!」

向かって来る志貴に対して水平にナイフを振るう夜恵。

「無為!!!」

しかし、志貴は目の前で咄嗟にしゃがみ、足蹴りを夜恵に喰らわせる。

「くっ!!!」

夜恵が一瞬怯んだ瞬間・・・。

「はぁぁ!!」

志貴のナイフが夜恵を空中へと吹き飛ばした。

「ぐっ!!!」

しかし、夜恵は空中で態勢を戻した。

「アルトネーゲル!!!」

夜恵の振るうナイフの刃の先から血色をした衝撃波が志貴を襲う。

「ぐぉっ!!」

それをナイフで防ぐが・・・志貴は上空へと弾き飛ばされる。

「ツヴァイカルトッ!!!」

そして、さらに夜恵のナイフから放たれた2撃目の衝撃波で志貴は態勢を崩す。

「ドライライゼッ!!!」

そして、最後の一撃が志貴に直撃し、志貴を公園の真中あたりまで吹き飛ばす。

「ごぁぁぁぁぁっ!!!!」

志貴は多量の血を吐き出しながら吹き飛んでいった。

「はぁ・・・はぁ・・・」

膝をつき、息を荒げる夜恵の眼は・・・既にもとの黒に戻っていた。

「あなた・・・よくも志貴を!!」

先程から公園にいたアルクェイドが疲れた夜恵に襲い掛かろうとする。

「手を・・・出すなといったはずだ・・・」

そこへ・・・。

「志貴・・・」

アルクェイドが呟く。

目の前を歩いてくる志貴の左腕はぶら下がるようになっていた。

吹き飛ばされた衝撃で折れた事は見れば明らかだった。

「そんな折れた腕を引きずって・・・私に勝てるとでも?」

夜恵は立ち上がり聞く。

「右腕一本あれば十分だ・・・」

そう言って志貴は空を仰ぐ。

「嗚呼・・・今夜は・・・コンナニモ・・・月ガ・・・綺麗ダ・・・」

そう言って再び夜恵を見た時・・・志貴の眼は・・・蒼かった。

「その眼・・・噂に聞く伝説の“直死の魔眼”ね・・・」

夜恵はそう言って構える。

「・・・・お前にも教えてやる・・・」

そう言って志貴はナイフを逆手に持つ。

「これが・・・“モノ”を殺すって事だ!!」

そう言って志貴は地面にナイフを突き刺す。

「一体何を・・・!!!?」

夜恵が言葉を発した瞬間、公園の大地が揺れ始める。

「そうかっ!!公園を殺したか!!!」

そう言って上空へと跳躍する夜恵。

しかし・・・。

「極細と散れ・・・」

志貴の一撃が・・・夜恵を捕らえた・・・。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

志貴は眼鏡をかけ・・・息を整えようとする。

「志貴・・・大丈夫?」

アルクェイドが恐る恐るといった感じで聞く。

「ああ・・・なんとか・・・」

そう言って志貴は立ち上がる。

「あの女・・・死んだのかな?」

アルクェイドが横たわっている夜恵を見ていう。

「いや・・・しんじゃいないさ・・・」

そう言ってナイフの刃を元に戻す志貴。

「何故だか知らないけど・・・やつの死は突けなかった・・・だから死んでないさ」

そう言ってフラフラしながらも歩き出す志貴。

「ま・・・て・・・」

それを・・・呼び止める夜恵。

「目がさめたかい?」

志貴は聞く。

「何故・・・殺さない・・・」

夜恵は横たわったまま聞く。

「殺す必要がないからかな・・・」

志貴は夜恵を見ながら答えた。

「殺す理由はある・・・私はお前に対して殺意を持って襲い掛かった・・・そこにいる真祖の姫をも殺そうとしたのだぞ?」

夜恵は信じられないといった風に聞く。

「生きてるんだから・・・そんな事言うなよ。死ななかっただけありがたいと思え」

そう言って志貴はアルクェイドに目配せする。

「帰ろう・・・アルクェイド・・・」

そう言って志貴はアルクェイドと共に公園から出て行った。

「はは・・・はは・・・負けてしまいましたよ・・・フォーデーモン」

夜恵は暗い夜の空に向かって言う。

「その名は止めろって言ってるだろ?」

そこへ・・・神父のような姿をした12,13くらいの金髪の少年が現れた。

「そうね・・・メレム・ソロモン」

そう言いなおす夜恵。

今、夜恵の目の前にいるのは埋葬機関第5位である・・・『王冠』と言う通り名を持つ・・・死徒27祖が一人。

その体を4体の魔獣で武装した死徒・・・メレム・ソロモンである。

「珍しいわね・・・貴方が・・・それも本体で来るなんて・・・」

夜恵は珍しいと言わんばかりの声で言う。

「どうだった、彼は?」

メレムが横たわる夜恵に聞く。

「強いわ・・・まだまだ強くなる・・・でも・・・それまでに彼生き残れるかしら・・・」

夜恵はそう言って立ち上がる。

「そうかい・・・なら、彼も望みは薄いかな」

メレムは少年のような笑い声を出す。

「でも・・・可能性に賭けてみてもいいとは思うわね・・・」

そう言って夜恵は砕け散ったナイフを見る。

「埋葬機関が誇る代身聖典(だいしんせいてん)をも殺す・・か・・・“直死の魔眼”・・・あれに殺せないものなんてあるのかしら・・・」

夜恵がメレムに聞く。

夜恵の命を救ったのは今先程、夜恵が言った代身聖典である。

夜恵の死を貫こうとした志貴の一撃を代わりに受けたのである。

故に、夜恵は死なず・・・代わりにこの聖典が死んだのだ。

「さぁね・・・だが、彼の限界によるだろう・・・もう一人の“直死の魔眼”の保持者のほうがまだ可能性は高いよ」

そう言ってメレムは歩き出す。

「メレム・・・私はこれからどうすればいい?」

夜恵が歩き出すメレムに聞く。

「君の意志で決めればいいさ・・・君は人形じゃないだろう?」

そう言ってメレムは消えていった。

「自分の意志で・・・か」

そう言って砕けたナイフの柄を持つ夜恵。

「なら・・・私がやる事は一つ・・・次こそは・・・七夜を超えてみせる・・・」

そう言って夜恵は跳躍し、姿を消した。

 

 

「ふぁ〜〜〜・・・気乗りしないなぁ・・・」

志貴は歩きながら言う。

左腕には勿論の事包帯が巻いてある。

昨日、遠野家へと帰った志貴を待っていたのは・・・。

案の定・・・秋葉のお小言の山だった。

今回は何時もよりきつく・・・。

怪我をしている時は控えがちな秋葉も今回ばかりは怪我をしていようがずけずけと志貴に言い放った。

「はぁ・・・」

何度かの溜息をついて、志貴は学校へとついた。

「いよぉう、遠野」

教室に入ってすぐに志貴の親友、乾 有彦が声をかけてきた。

「珍しいな、お前がこんな朝からいるなんて」

志貴は本気で珍しいという顔で言う。

「ああ、でも今日は昼には帰るわ」

そう言って笑う有彦。

「そう言えば、今日転校生が来るらしいぜ」

「へぇ、めずらしいな」

そんな事を話しながら志貴と有彦は席についた。

「席につけよ〜〜〜」

そこへ、教師が入ってくる。

「起立、礼」

委員長が挨拶をし、皆も挨拶をする。

「えー、知っているものもいると思うが転校生を紹介する」

その言葉を聞いて教室がざわめく。

「では、入ってきなさい」

その言葉を聞いて、教室の扉が開く。

「・・・・・・・」

入ってきた人物を見て・・・志貴は固まった。

入ってきた人物は黒板に綺麗に自分の名を書いていく。

六夜 夜恵・・・と。

「今日からこのクラスに転校してきた六夜 夜恵です。よろしくお願いします」

そう言って夜恵は頭を下げた。

「何で・・・何で・・・お前が・・・」

志貴は夜恵を指さしながら言う。

「次こそは貴様を倒すためだ・・・」

そう言って夜恵は教師に言われた席につく。

「その命・・・覚悟しておけよ」

夜恵は笑ってそう言った。

「はは・・・・はははは・・・はぁ・・・」

志貴はこれから起こるであろう騒動に対し・・諦めの溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

                                               <Fin

 

 


あとがき

 

 

昔のネタの使いまわし、否、改竄とも言うべきか・・・。

フィーア「要するに、昔書いたやつそのまんまじゃない」

・・・・・・ふっ、月明かりが目に

フィーア「そのネタは古い」

グスン・・・。

まぁ、とりあえずは、月姫SSを書いたわけですが。

フィーア「あいっかわらずへたれよねぇ・・・」

うっさいやい・・・。

フィーア「じゃあ、また次回に」

あとがきもなんか書くことないなぁ・・・。

 

 

 

六夜(ろくや) ()()

age:17歳

Height:156cm

Weight:41kg

Weapon:(だい)(しん)聖典(せいてん)

古くより続く退魔の一族、六夜の最後の一人である女性。

六夜とは不完全なる退魔という皮肉によりつけられたあだ名がそのままなになったもので、本名は不明。

常に七夜という完全数を持つ退魔と比べられてきて、過酷な過去を送ってきている。

どうやってかは知らないが教会、もとい、メレム・ソロモンとは認識があり、彼に武器である代身聖典を譲り受けた。

七夜の三次元戦闘能力とは違った、跳躍を基本とした跳躍戦闘能力を有している。

一様魔眼を所持しており、名は『眺飛の魔眼』と自分で名付けた魔眼で、能力は跳躍距離をかなり伸ばせるようになる。

性格はいたって普通であり、髪形は腰まで髪の毛を伸ばしている。

 



アハトさん、ありがとうございます!

美姫 「フィーアちゃんもありがとうね♪」

月姫のSS投稿は、これが初めて!

美姫 「パフパフドンドンドン!」

志貴と夜恵の戦闘シーンは、上手いです。それは、もう!

美姫 「浩も見習え!」

反省はしてますよ。ええ、反省は…。
しかし、実現できるかどうかは別であって…。

美姫 「威張るな!」

ぐぬぬ。と、そんなこんなで…。

美姫 「この辺で…」

ではでは。





頂きものの部屋へ戻る

SSのトップへ