ミュリエル編

 

 

 

 

 

 

 

 

(……選べん)

誰かを選ぼうとして、恭也は迷う。

ここで誰かを選んでも、結局また後日選ばれなかった者に付き合わなければならないのは目に見えている。

むしろ、経験則といってもいい。

だからこそ、恭也は誰も選べない。

(しかし、悩んでいるだけでは事態は動かんしな……)

いくら恭也が選べないからといって時間が止まるわけではない。

早くしなければ、また4人が言い争うだろう。

「恭也、ここにいましたか」

そんな恭也に、恭也の後ろから声がかけられる。

その声に反応し、恭也が後ろを向くと……

「ミュリエル、どうかしたのか?」

そこには、朝から対魔法戦の特訓に付き合ってもらっていたミュリエルがいた。

「いえ、昼の訓練の時間になっても恭也は来ませんし、オルタラとイムニティの二人がどこかに行くものですから…」

「それで、態々探しに来てくれたのか……すまんな、ミュリエル」

ここに来た経緯を説明するミュリエルに、恭也は頭を下げる。

「…ミュリエル、今から少し良いか?」

「別に、これといって予定はないので構いませんが……」

恭也の問いに、ミュリエルは首を傾げながら答える。

4人とも、今回はミュリエルに付き合うことにする」

突然の恭也のその言葉に、5人は驚く。

「恭也、なんでいきなりミュリエルなの?」

バックに黒い炎をたぎらせながら、ルビナスが尋ねる。

「以前からミュリエルには色々と世話になっているからな……その恩返しをかねて、な」

恭也は以前から、ミュリエルには結構世話になっているのだ。

対魔法戦の特訓や、魔法知識に関して恭也はミュリエルに付き合ってもらっていた。

「……まぁ、そう言うことだったら良いわ」

「そうですね、そう言うことでしたら」

ここで変に反対すると恭也の心象を悪くしかねない。

そう考えたルビナスとオルタラは内心羨ましい気持ちを抑えて言う。

「すまんな」

そんな二人の態度に、恭也は申し訳なさそうに謝る。

「恭也、それじゃ今度は付き合ってもらうからね」

「勿論、私にもね」

ロベリアとイムニティもそう言って、四人は宿の方へと戻って行った。

「恭也、私は別にお礼などはいいのですが……」

「遠慮するな、ミュリエル。 ミュリエルにはかなり世話になっているから、何かお礼がしたいんだ」

遠慮するミュリエルに、恭也はそう言う。

「それに、たまにはミュリエルとゆっくり過ごすのも、悪くはないだろう?」

小さく笑って、恭也は言う。

その笑顔を見て、ミュリエルは顔を赤くする。

「そこまで言うのでしたら」

「では、行くか?」

ミュリエルの前に手を差し出し、恭也は尋ねる。

「はい、恭也」

その手をとって、二人は歩き出した。

(恭也……貴方とでしたら、何処までも)

 

 

 

「ここは活気がある街だな」

ミュリエルの手を引きながら、恭也は言う。

「そうですね、まだそれほど破滅も活性化していませんから」

街の感想、よりも恭也と手を繋いでいる、と言う思いが思考の大半を占めているミュリエル。

恭也の言葉に返事をしながらも、全然違う事を考えていた。

(私達は、周りから見ればどう見えるのでしょうか……こっ、恋人…に、見えるのかしら)

普段はきりっとしているが、恭也が絡むと結構乙女になるミュリエル。

まぁ、ルビナスなどは妄想癖も装備しているが……

多少顔を赤くしながら、ミュリエルは恭也に手を引かれながら歩く。

ちなみに、街の若い女性たちに結構羨ましがられている。

「…リエル、ミュリエル」

「っ、恭也…どうかしましたか?」

呼ばれているのに気付かなかったミュリエルは、少し驚きながら聞き返す。

「いや、ミュリエルに何かプレゼントをしようと思って小物を売っている露店を見つけたんだが」

言われてミュリエルが前を見ると、そこには色々な小物を取り扱っている露店商の前だった。

「俺はこう言うのには疎くてな、何か気に入ったものはあるか?」

苦笑しながら言う恭也に、ミュリエルは小さく笑って小物を見る。

「…恭也が、選んでくれませんか?」

一通り見て、ミュリエルは恭也に提案する。

「しかし、俺はこう言うのには疎いぞ?」

「恭也から、と言うのが一番のポイントだと思いますが?」

恭也の言葉に、ミュリエルは子供のような笑みで言い返す。

「そうか、ならば頑張ってみよう」

そう言って、恭也は並んでいる小物と睨めっこを始める。

「……これはどうだろうか」

一つのブローチを持って、恭也はミュリエルに尋ねる。

「俺は、ミュリエルに似合っていると思う」

不安げに、恭也は言う。

「恭也、先ほどもいいましたが、恭也からのプレゼント、と言うのが重要なんですよ?」

そんな恭也に、ミュリエルは苦笑しながら言い返す。

「…そうだったな。 すまない、これをもらえるか?」

恭也も苦笑しながらそういい、そのブローチを店主に渡す。

そして、お金を渡してブローチの入った袋を貰う。

「ミュリエル、日頃の感謝の礼として、受け取ってもらえるか?」

「恭也、ありがとう」

笑いながら、ミュリエルはそれを受け取る。

中身はもう判っていても、恭也からと言うことがミュリエルの嬉しさに拍車をかける。

「では、行こうか」

そう言って、恭也は再びミュリエルの手を引いて人ごみの中へと歩き出した。

 

 

後日、そのブローチを肌身離さずつけているミュリエルがよく見られた。

そして、そのブローチは…千年後のミュリエルの服にも、つけられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

 

短いですけど、赤白デートのミュリエル編をおおくりしました。

フィーア「短いのは後でおしおきとして、何でミュリエルなの?」

いやぁ、アンケートでもミュリエルは? って意見が結構あったし。

フィーア「確かにあったわね」

それで、何となく最近ミュリエルとの話しを書きたくなって。

フィーア「これを書いたと」

まぁ、短いのは黙認、と言うことで……

フィーア「このヘタレは……」

うぐぅ。

フィーア「で、次回は?」

未定!

フィーア「威張って言うなっ!!」

がぶらぁっ!!

フィーア「全く、このすかぽんたんは」

ひーん。

フィーア「ではでは〜〜〜」





乙女らしいミュリエルが新鮮で良い!
美姫 「千年後にも着けているというのも良いわよね」
うんうん、一途だね〜。
美姫 「正に乙女のなせるわざって所よね」
要望の多さに当初存在していなかった選択肢が増えたというのも嬉しいね〜。
美姫 「フィーア、ご苦労様」
アハトさん、お疲れさまっす!
美姫 「それじゃあ、次も期待しながら今回は…」
ではでは。



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