「ったくよ……お前も情けないなぁ、セル」

深い森の中、人の声がする。

「そんな事言うなよなぁ、大河」

「でも、良かったですね、セルビウム君」

男二人に、女一人の声がする。

大河とセル、そしてベリオの3人だ。

「ところで、大河と委員長はどうしてこんな所にいるんだ?」

歩きながら、セルが大河たちに尋ねる。

「あぁ、無限召還陣ってのを破壊しに来たんだよ」

その大河の言葉に、セルは驚く。

「おいおい、まさか二人でか!?」

「あぁ、これ以上は人数を裂けないらしいからな」

別段何ともないように、大河が言う。

「軍も結構な任務を言うなぁ……死んでこいって聞こえるぜ」

ため息をついて、セルが言う。

「ふっ、真の救世主になる俺に不可能はないぜ!」

その大河の言葉を聞いて、ベリオはおもいっきりため息をついた。

「大河君、慢心していると本当に死んでしまいますよ?」

「そん時はベリオの胸の中で……」

ベリオの顔が、一気に真っ赤に染まる。

「やだやだ、見せつけてくれてよぉ……」

何処か黄昏ながら、セルが言う。

「随分と……のんきだな」

突然、闇の中から声が響く。

その声が聞こえた瞬間、3人は一気に構える。

「たった3人で、向かってくるとは驚きだ……しかし、こういう任務には少数精鋭の方が効果的なこともまた事実」

音もなく、声が近づいてくるのが感じられる。

「しかし、周りに対する注意力が散漫だな……大河よ?」

闇から出てきたのは、全身を真っ黒な服で覆った青年だった。

「あなたはっ……」

「不破……!!」

大河が、その青年の名を叫ぶ。

「まさかお前が来るとはな…ミュリエルはよっぽどお前を殺したいのか、それともお前の腕を信じているのか……」

苦笑しながら、恭也は言う。

大河は、その恭也に対しかなり焦っていた。

あの日、闘技場で戦って以来、幾度となく剣を交えた。

しかし、他の破滅の将相手に勝った事はあっても、目の前の恭也にだけには勝った事がなかった。

恭也はたいてい、ロベリアかイムニティと共に出てくる。

そして、ロベリア達が撤退すると同時に恭也も退くからだ。

直接対決して、大河は恭也には勝てなかったのだ。

「大河君っ、ここは私達に任せてくださいっ!!」

「あぁ、大河は先に進めッ!!」

そんな大河の前に、セルとベリオが立つ。

「ほぅ……」

少し驚いたように、恭也は二人を見る。

「恋をした女の格好だな……それに、友情の為に戦う男の格好だ」

恭也の言葉に、二人は少し驚く。

「良い仲間を持ったようだな、大河…だが、ここは通せん」

背中の小太刀に手を回し、恭也は言った。

 

 

 

 

 

 

 

深き森に煌く刃

 

 

 

 

 

 

 

「ぬぉぉぉぉぉっ!!!」

セルが、大剣を振りかぶったまま恭也へと向かっていく。

「単調だな……」

恭也も前進してセルをまるですり抜けるように避け、背中に肘を落とす。

「がっ!!」

強烈な一撃に加え、体内に直接来た振動によりセルは血を吐き出しながら地べたに這い蹲るように倒れる。

「信念が真っ直ぐなところは良いが、攻撃まで真っ直ぐだと自滅しかねんぞ?」

這い蹲るように倒れているセルに、恭也が言う。

「ホーリーウォールッ!!!」

それを見たベリオが防御壁を築く。

接近されてはまずいと思い、そう判断したのだが……

「無駄だ……っ!!」

その防御壁を、まるで紙でも斬るように斬り裂く恭也。

「そんなっ!」

その行動に驚き、ベリオは一瞬硬直する。

しかし、恭也にとっては、その一瞬でも十分。

ベリオへとかなりの速さで詰め寄り……

「らぁぁぁぁぁぁっ!!」

ベリオへと向かって振りかざした小太刀が、大河によって受け止められる。

「ほぅ、前より攻撃に対する反射速度が上がったか……」

言って、恭也はバックステップで下がる。

「お前を倒すためにかなり特訓したからなっ!!」

叫び、大河はトレイターを構える。

「ベリオっ! セルを頼むぜっ!!」

大河の言葉に頷き、ベリオはセルを引きずって安全な場所へと移動する。

「ふむ、足止め程度なら大丈夫だったが……そうも言ってられんか」

言って、恭也はゆっくりと左手を背中に回す。

「少々本気を出すぞ」

「二刀流っ!!?」

恭也の左手に握られた小太刀を見て、大河は叫ぶ。

恭也の両手の中には、小太刀がそれぞれ一刀ずつ握られていた。

「赤の主……ここでお前を倒せば、世界は自動的に白の主のものになるわけだが……」

一呼吸置いて、恭也は大河を見る。

「はっ! 俺はそんなに簡単にはやられねぇぜ!!」

「結構だ。 ならば……行くぞ……」

刹那、恭也の体が一瞬ぶれたと思うと、大河達の目の前に瞬時に現れる。

「ちぃっ!!!」

大河のトレイターと、恭也の小太刀がせめぎあう。

「戦いを経験するたびにお前は強くなっていくな……怖い才能だ」

「それ…褒めてんのか? 貶してんのか?」

恭也の言葉に、大河は言い返す。

「むろん……褒めているんだっ!」

気合と共に大河を吹き飛ばす恭也。

そして、瞬時に小太刀を鞘に戻す。

戻したと同時に恭也は大河目掛けて走り出す。

 

 

―――――――御神流 奥義之壱 虎切―――――――

 

 

御神流で1、2を争う高速の一撃が、大河目掛けて放たれる。

その時咄嗟に、大河はトレイターを戦斧へと変える。

振り上げはしない。

単純にこの戦斧が大地に落ちたとき、凄まじい一撃が、地面をえぐる。

それが、恭也の進行を阻止する。

「っ…いい判断だ……」

バックステップで大河から距離をとって、恭也は再び構える。

「お前の技は結構喰らってきたからな……それに、リコにも対処法をそれなりに教えてもらってるしな」

「なるほど、確かにオルタラは俺の技を知っているな……その対処法も」

目を閉じて、恭也は言う。

「だが、俺は全ての技を見せたわけではないぞ?」

不敵な笑みに、大河の緊張感は一瞬にして高まる。

「虎切、射抜、雷徹、薙旋……これだけが俺の奥義と思われては困る」

小太刀を2本構え、恭也は言う。

そして、何回か地面をつま先で叩き、一気に大河目掛けて走りだす。

大河は落ち着いて、恭也の動きを見る。

しかし、恭也は大河の間合い3歩手前……そこでもう一度地面を蹴って加速する。

「なぁっ!!」

「遅いっ!!

急激に加速した恭也を見て、後ろに下がろうとする大河だが、その前に恭也の技が繰り出される。

 

 

―――――――御神流(みかみりゅう)(うら) 奥義之伍(おうぎのご) 花菱(はなびし)―――――――

 

 

無数の斬戟が、大河目掛けて放たれる。

「がっ!! ぐぁっ!! ごっ!!」

最初のうちはトレイターで防いでいたが、徐々に速さと数が増していき、大河は吹っ飛ぶ。

「ふっ……まさか、あそこから反撃してくるとはな」

小さく笑いながら、恭也は誰とはなしに呟く。

その左腕からは、血が一筋……流れていた。

「だが、ここで終わりだぞ……大河」

そう言って、恭也が大河の方へと歩き出した瞬間……

「なっ、なんだっ!!?」

急激に、地面が揺れ始めた。

「この振動……まさか無限召喚陣をやられたかっ!?」

叫び、恭也が無限召喚陣のあるほうを見ると……そこには光の柱が立っていた。

「一体誰が……っ、あの僧侶かっ!」

大河と一緒にいたベリオの事を思い出し、恭也は焦る。

「このままでは、ロベリア達が危なくなるか……」

呟いて、恭也は小太刀を鞘にしまう。

「大河君っ!!!」

そこに、ベリオが走ってやってくる。

「ベリオか……へへ、どうやら上手く行ったみたいだな」

ベリオに肩を貸してもらいながら立ち上がり、大河は言う。

「俺の相手をお前がし、その間にその女が無限召喚陣を破壊しに行く……まんまと、嵌められたな」

目を瞑って、苦虫を噛み潰したような顔で恭也は言う。

「こうなると、この局面は俺達の負けになるだろう……数で押していたような戦いだ、増援が無くなれば勝てるものではなくなる」

冷静に、そして客観的に恭也は戦況をそう判断した。

恭也と破滅の将がいくら強大だといっても、数で責められて負けないと言う保証はどこにもない。

「お前はどうするんだよ?」

まだ、戦うかと言った風に、大河はトレイターを握り締めながら恭也に言う。

「ここは一旦退こう…戦況の把握はイムニティがやっているとはいえ、早々に知らせなければならんだろうからな」

言って、恭也は大河達に背を向ける。

「逃げ切れると思ってるのか?」

たとえ今大河が傷ついていようが、ベリオと協力すれば恭也を捕らえられる。

そう大河は考えていたのだが……

「俺が、今のお前達に負けると……本気で思っているのか?」

振り返り、冷徹な表情で恭也は言う。

「今のお前はボロボロだ、そしてその女も無限召喚陣の破壊の為に殆ど力を失っている……この状況でお前達が勝てる見込みは、零だ」

「ぐっ!!」

その恭也の言葉に、大河は言い返せない。

確かに、大河自身も、ベリオもかなりボロボロの状態だ。

「今ここでお前を殺し、世界を白の主の物とするも容易い……が」

そこまで言って、恭也は再び大河たちに背を向ける。

「お前とは万全の状態で戦う……だから、生き延びろ……まだその辺には魔物がいるからな」

そういい残し、恭也は闇へと消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

 

今回の堕ち鴉はベリオルートから〜〜

フィーア「無限召喚陣の破壊の場面ね」

ここのシーンは結構前々から考えてたんだけど、中々進まなくてねぇ。

フィーア「でも、このルートってあんまりロベリアもイムニティも関係ないんじゃ……」

確かに……ベリオとカエデのルートではあんまりでてこないしねぇ……

フィーア「考えが足りてないわね」

ぐぅぅぅ、言い返せません……

フィーア「で、次はどの辺りを書くの?」

イムニティとのカップリングか……意表をついてクレアとの話とか。

フィーア「クレアは無理なんじゃない?」

う〜ん、こう、お忍びで街に来てたクレアとまだ大河達にあう前の恭也がであうとか。

フィーア「まぁ、良いんじゃない?」

でも、デスティニーのクレアルートはやったことないから結構矛盾が出るかも。

フィーア「そんな事、今更じゃない」

まぁね。

フィーア「じゃあさっさと書こうねぇ」

ラジャー

フィーア「ではでは〜〜〜」




今回の恭也は、完全に悪役っぽいな。
美姫 「でも、面白いわね」
うんうん、確かに。
後書きにある、クレアとの話ってのも面白そうだな。
美姫 「アンタもデスティニーはやってないのよね」
おう! だから、どんな風になっているのか知らないんだよな。
美姫 「イムニティとの話も見てみたわね」
うんうん。ともあれ、次回も待ってます。
美姫 「待ってますね〜」



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