注)これは、私作【破滅の中の堕ち鴉】のIF的なお話であり、本編とはなんら関係はありません。

  多少無理な設定もありますので、ご了承ください。

  DUEL SAVIOR本編とはなんら関連はありませんのであしからず。

  かなりオリジナル色が強いですが、それでもよろしい方は。

  どうぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また、なのか?」

ホワイトパーカスのほぼ中心に位置する破滅の将達の居る屋敷。

その会議室のような場所で、破滅の堕ち鴉と恐れられている不破 恭也は尋ね返す。

「えぇ、また新しい救世主候補が召喚されたらしいわ」

恭也に言い返すのは白の精、イムニティ。

「この間なのはを召喚して痛い目にあったって言うのに、懲りてなかったんだねぇ」

そう言うのは破滅軍副幹のロベリア・リード。

「それだけ向こうも切羽詰っている、と言うことだろう」

そんなロベリアに、恭也は苦笑しながら言う。

「それで、どんな人なんですか?」

イムニティに尋ねるのは恭也の妹にして破滅の魔法使い、不破 なのは。

「えぇ、ジョブは剣士…それも、恭也と同じ二刀流使いって話よ」

イムニティの言葉に、恭也の眉がつりあがる。

「ほぅ、恭也と同じ二刀流使いとは……」

好戦的な眼をして、ロベリアが言う。

「でも、さすがに今回はなのはの事もあったから、救世主としての資格は二の次にしているわ」

「当然だろうな。 召喚器を使える者が敵に回った時の恐ろしさを、ミュリエルは誰よりも理解しているだろうしな」

恭也は当然だろうと言う口ぶりで言う。

「それで、そいつの名前とか特徴は判ってるのかい?」

「えぇ、黒髪のメガネをかけたおさげの女って聞いているわ」

その言葉を聞いて、恭也は小さく笑った。

(そうか、あいつも…召喚されたか)

その特徴と自分と同じ二刀流使い、そのキーワードだけで、恭也は誰が召喚されたかを理解した。

そして、なのはの方を見る。

(俺達は、何かしらこの地に縁があるようだな……)

内心苦笑しつつ、恭也は立ち上がる。

「恭也、どうしたんだい?」

そんな恭也に、ロベリアが声をかける。

「少し出かける。 主幹には暫く席を空けてしまうと言っておいてくれ」

ロベリアにそういい、恭也は部屋を出て行こうとする。

「おにいちゃん、なのはも行くよ」

その恭也に、なのはが声をかける。

「いや、なのははロベリア達と一緒にいろ」

なのはにそう言って、恭也は部屋を出て行った。

(さすがに、こればっかりはなのはを連れてはいけんからな)

内心そう思い、恭也は自室に戻り装備を一式そろえ、装備する。

飛針、零番から参番までの鋼糸、そして愛刀の八景。

(あれから10年たったとなのはに聞いているからな……どこまで、強くなっているか)

湧き上がる高揚感を抑えようとして、恭也は小さく笑った。

「俺の信念とお前の信念、どちらが上か……確かめようじゃないか」

窓から空を見上げながら、恭也は言う。

 

 

「美由希……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白の剣士、赤の剣士

 

 

 

 

 

 

 

 

だだっ広い平原……見渡す限り、何もないような場所に、恭也は立っていた。

目を瞑り、瞑想するかのように立ち尽くしている。

(こちらの存在は知らせてある……それに、あいつなら俺を知覚出来る筈だ)

軽く揺さぶりも仕掛けてあるしな、と恭也は内心考える。

その、刹那……

場の空気が、一瞬重くなった。

それを恭也は、肌で感じ取る。

「来たか……」

そう言いつつ、恭也は閉じていた目を開ける。

視界に映る人影…それは……

「久しぶりだな、美由希」

「恭…ちゃん……」

10年ぶりの、義理の兄と妹、嘗ての師と弟子の再会の瞬間だった。

「報告で聞いたとき、すぐにお前が浮かんだ……黒髪でメガネをかけて、さらに二刀流使い…ここまで聞いて、すぐにお前だと判った」

小さく笑いながら、恭也は言う。

「恭ちゃん…どうして?」

そんな恭也に、美由希は尋ねる。

主語はない……元より、必要もない。

恭也もそれを理解しているのであろう…だから、聞かない。

「私達の剣は、護る為にあるって、恭ちゃんは言ってたじゃない……なのに、どうして」

恭也が消えて10年たって、なのはも消えた。

失意のどん底にあった高町家に、その報は届けられた。

恭也となのはの存在、そして……その二人が、世界を破滅させるために戦っていると言うこと。

美由希は、それを確認するために、このアヴァターにやってきた。

最悪、兄と妹と戦う覚悟をして……

「俺は、護りたいものの為に今でも剣を振るっているつもりだ……それがたとえ、愚かだと言われ様とも」

抜き身の刀身のような鋭さで、恭也は言う。

「美由希、お前の怒りは多少は判るつもりだ……破滅と言う理不尽によって死んでいく人達を、黙って見ていられないんだろう」

その恭也の言葉に、美由希は小さく頷く。

「だが、大局を見ろ……破滅の民と言われ蔑まれている者達の実態を」

言い聞かせるかのように、恭也は言う。

「女子供、戦う力の無い者達が王国の騎士達の理不尽な暴力によって日々殺されている姿を見て、俺は誓った」

鞘から一刀の小太刀を抜き、恭也は美由希を見る。

「この者達を護る事が、俺の剣を振るう理由だ、とな」

その思いに、後悔など無い。

千年前に誓った、その思いは……偽りなどではない。

「だからこそ、俺とお前はぶつかり合うしかない……お前は破滅の理不尽が許せない、俺は王国の理不尽が許せない……ならば」

そこまで言って、構える。

「この剣で、語り合うしかあるまい」

「恭ちゃんっ!!!」

叫び、美由希も小太刀を抜きさる。

「この10年で、どれだけ成長したか見せてみろ」

言葉の後、恭也はすぐにトップスピードに入り美由希に近づく。

しかし美由希はすぐさま対応して、恭也の放った一撃を防ぐ。

「ほぅ、また一段と腕を上げたな」

その動きを見て、恭也はすぐさま距離をとる。

距離をとった瞬間、美由希は恭也に向かって飛針を数本投げつける。

そしてそのまま、その後ろを疾走する。

自身に向かってくる飛針を恭也はバックステップを取りつつ鋼糸でその飛針を絡め落とす。

その後、もう片方の小太刀で美由希を迎えうつ。

剣と剣がぶつかり合った鈍い音が、響き渡る。

すぐさま、もう一刀を抜刀しお互いがぶつけ合う。

ぶつかり合った衝撃で、少しの隙も出来ないほど、二人の力は均衡していた。

(ちっ、観察などと思っていた自分が愚かに思えるな)

内心自分に対して舌打ちをして、恭也は距離を取る。

(この10年で、よっぽど経験を積んだか……今の美由希は、ロベリアクラス!)

そう判断し、恭也は軽く息を整える。

その間も、恭也は美由希から眼を外さないし、美由希も恭也はから眼を外さない。

(身体能力は救世主候補達より低いが、戦術面、経験面では遥かに美由希のほうが上か)

冷静に、恭也はそう分析する。

今目の前に立つ美由希は、自分が知っていた頃とは比べられないほど強くなっている。

それが、何だか無性に嬉しい。

「随分と、腕を上げたな……美由希」

「恭ちゃんだって、ずっと、ずっと……強いよ」

お互い構えは解かずに、言う。

「ねぇ恭ちゃん……どうして、どうして破滅なんかに手を貸すの?」

訴えるように、美由希は言う。

「言ったはずだ、俺の誓いのためだと」

しかし、そんな美由希の声を拒絶するかのように、恭也は言い放つ。

「美由希、何かを伝えたいのなら……俺止めたいのなら」

右腕を突き出し、左腕を取りは羽をたたむ様に折り曲げながら、恭也は美由希を見る。

「この剣で、語ってみせろ」

刹那、爆発的な推進力を以って恭也は美由希へと疾走する。

 

御神流(みかみりゅう)(うら) 奥義之参(おうぎのさん) 射抜(いぬき)

 

叔母と、目の前の美由希がもっとも得意とした奥義を、恭也は繰り出す。

美由希も、一瞬にして同じ構えを取り、射抜を放つ。

剣先がそれ、お互いの突き出した小太刀のつばに、剣先がぶつかる。

その凄まじい衝撃に、お互い弾かれるように距離をとる。

しかし、恭也は弾かれ地面に着地した瞬間にすぐさま美由希目掛けて疾走する。

そして、一瞬にして小太刀を鞘に戻す。

だが、美由希も恭也と同じようにすぐさま恭也目掛けて走り出す。

合わせ鏡のように、美由希も小太刀を鞘に戻す。

 

御神流(みかみりゅう) 奥義之壱(おうぎのいち) 虎切(こせつ)

 

再び、お互いは奥義を繰り出し空中で小太刀がぶつかり合う。

お互い奥義の虎切に徹を込め放ったため、凄まじい衝撃がそのぶつかった瞬間弾ける。

恭也も美由希も、凄まじい衝撃が体中を襲い弾け飛ぶ。

地面を転げながらも、数回転したところで二人とも体勢を立ち直し立ち上がる。

二人とも、外傷は無いがかなり疲弊しきっていた。

合わせ鏡のような攻防は、一見地味に見えるがかなりの力量が必要とされる。

更に、二人は神経を研ぎ覚ませながらの戦闘ゆえに、かなりの疲労が蓄積される。

「はぁぁ……」

小さく息を吐き出し、恭也は構える。

先ほどと同じ、虎切の構え。

その恭也の構えに、美由希は焦りを隠せない。

御神流の特徴に、次の一手を悟らせない戦いがある。

美由希は勿論、恭也はとっくにそれを理解し習得してる。

なのに何故、次の一手を明かすような構えを取るのかが美由希には判らなかった。

だが、攻めあぐねている場合ではないと美由希は考え、小太刀をニ刀とも手に持つ。

それを見た恭也は一呼吸して、駆け出す。

そして、駆け出した瞬間神速の領域に突入する。

あたりの景色からすべての色が抜け落ち、モノクロの空間へと変貌する。

そんな色の抜け落ちた空間の中を、ゼリーを掻き分けるかのように走る。

美由希も、恭也が神速の領域に突入した瞬間、己も神速の領域に突入する。

色の抜け落ちた空間の中、互いの存在だけが鮮明に、カラーに映る。

そして、その空間の中で恭也は美由希の眼前に迫る。

それを知覚した美由希は、一瞬にして射抜の構えを取る。

恭也も、その美由希の動きを知覚して柄を握る手に力を込める。

その瞬間、二人は同時に神速の領域から抜け出す。

一瞬にして全ての景色が鮮明になる。

そんな中、美由希は恭也目掛けて御神流最速の刺突を放つ。

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

しかし、それを予測していたかのように恭也はその刺突を放つ小太刀目掛けて抜刀する。

突き出していた小太刀に、横側から凄まじい衝撃が走り、切っ先が大きくずれる。

ずれた瞬間、恭也は持っていた小太刀をすぐさま離し、もう一刀の小太刀を抜刀する。

咄嗟に、美由希はもう片方の小太刀を、恭也の小太刀と自分の間に差し込む。

だが、凄まじい衝撃が美由希の体を駆け巡り、美由希は大きく吹き飛ばされる。

虎切の、二連撃である。

「はぁ、はぁ…」

かなり息を荒げながら、恭也は吹き飛んだ美由希の方を見る。

「ぐっ、ぐぅぅ…」

咄嗟に小太刀の直撃は避けたとはいえ、体中に走った徹の衝撃で美由希はかなりふらつく。

「これで、勝負ありだな……美由希」

恭也は美由希に向かってそう言うが、恭也自身も体中にかなりダメージがある。

一瞬の交差の中で、高速を越えた速度で抜刀したのだ。

腕は勿論、神経系にもかなりのダメージを追っていた。

「まだ、まだ…だよ」

そう言って、美由希はふらつきながらも立ち上がる。

「ごほっ、ごほっ」

しかし立ち上がった瞬間、血を吐き出す。

「強がるな、美由希……立っているのも辛いだろう」

それを見た恭也は、美由希に向かってそう言う。

そして、落ちた小太刀を拾い、鞘に戻す。

「私は、恭ちゃんを止めるまで…負けるわけにはいかない……っ!」

しかし、美由希は気迫の篭った眼で恭也を見ながら、叫ぶ

「そうか……ならば、俺がお前を止めよう」

互いに、小太刀を構える。

美由希には恭也の、恭也には美由希のくり出す技が予測できていた。

恭也はきっと、自分が一番信頼できる奥義…薙旋を放つであろうと美由希は予測する。

対して恭也は、美由希は奥義之極である閃をくり出すだろうと予測した。

だが、お互いの体はもはや限界。

それでも、二人は駆け出す。

この勝負の決着をつけるために……

そして、二人がお互いの間合いに歩を進めようとした瞬間……

 

「駄目ェェェェェェェェッ!!!!!」

 

叫び声が、響き渡る。

その叫び声に、恭也も美由希も止まる。

そして同時にその声のした方を見ると……

「駄目だよっ、おにいちゃん! おねえちゃん!」

召喚器を持ったなのはが、立っていた。

「なの…は……」

そんななのはを見て、美由希はなのはの名前を呟く。

「なのは、来るなと言わなかったか?」

対して、恭也はたしなめるようになのはに向かって言う。

「言われたけど、でも!」

走りながら、なのはは叫ぶ。

「二人が戦うのは見てられないよぉ……」

そのまま二人を抱きしめるようにして、なのはは泣き出す。

「なのは……」

なのはの言葉に、美由希は持っていた小太刀を手から落としてしまう。

恭也も、小太刀を鞘に戻す。

「例え敵同士になっても、二人が戦うのは見たくないよぉ……」

それは、なのはの心からの願いだった。

例え敵同士になろうとも、大好きな家族が戦う姿は見たくなかった。

それが絶対に無理な事であろうとも、なのははそう思わずに入られなかった。

「美由希……」

恭也に名前を呼ばれ、美由希はビクッとして恭也を見る。

「この場はなのはの言葉を酌みとって……退こう」

「おにいちゃん!」

その言葉を聞いて、なのはは安堵しながら恭也に抱きつく。

「だが、何れ必ずまた……戦場で合間見えよう」

「!!」

恭也の言葉を聞き、美由希は息を呑む。

「今回の決着は、その時につけよう……」

そう言い残し、恭也はなのはと共に送還呪文によって消えて行った。

「恭ちゃん……」

そして、美由希は二人が消えて行ったほうをずっと見つめていた。

 

 

この後、再び恭也と美由希は戦場で合間見える。

互いの信念をぶつけ合う為に……

その先に、何が待っていようとも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

 

堕ち鴉第26弾は違う番外編でした。

フィーア「堕ち鴉で恭也と美由希が戦ったら、って言うコンセプトよね」

うん、結構前々から考えていたんだけど、やっと形に出来たよ。

フィーア「でも、結局どっちが強いの?」

僅差で恭也かなぁ…でも、美由希は10年修行してるのに対して恭也は3年ほどだからねぇ。

フィーア「実力は五分五分?」

まぁそんなところ。

フィーア「で、これって堕ち鴉本編には全然関係なのよね?」

うん、さすがに美由希まで出すと話が上手く纏まらなくなるからね。

フィーア「それにしても、あんたアンケートの方はどうなのよ?」

そっちもちゃんと書いてるよ、皆様もう少しお待ちを。

フィーア「さっさと書きなさいよ、じゃないと……」

うっ、判ってるからその拳をお納めくださいませ(平謝り)

フィーア「よろしい」

何でこんなに言われないといけないんだろう……

フィーア「私達の下僕だから」

うぅ、目からしょっぱい水が出てくるよ……

フィーア「よかったじゃない」

シクシク……

フィーア「ではでは〜〜〜」





美由希が赤の陣営に、という番外編IF。
美姫 「うーん、こういう展開も面白いわね」
戦力的に、恭也に匹敵するかもしれない人物の登場か〜。
美姫 「これで美由希まで白になったら、それこそ恐ろしいわね」
はははは。美由希は赤にいそうだけどな。
ともあれ、番外編ありがと〜。
美姫 「ありがとうね〜。次回も楽しみにしてるわね」
ではでは。



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