注)これは私が書いている『破滅の中の堕ち鴉』シリーズのオリジナル設定の話です。

DUEL SAVIOR本編のどのシナリオにも属していませんので、ご了承を。

オリジナルな展開がお嫌いな方は、どうぞお引き換えしを。

見てからの批判は極力おやめください。

それでもよろしいかたは、どうぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、破滅の将が一人、不破 恭也は一人で荒野を歩いていた。

破滅と王国の戦いが激化している最中、恭也は態々こんな何もないような場所にやってきていた。

否、何もないわけではない。

荒野には無数の……十字架。

夥しい数の十字架が、荒野には立っていた。

全て、人の墓。

恭也が殺してきた、見殺しにしてしまった、助けられなかった者達の……墓。

それら全てが、恭也に対する戒めのような物だった。

その一つの前で、恭也は立ち止まる。

十字架の前には、地面に突き刺さった、十字剣。

長い間ここに突き刺さっていたのだろう、所々風化が始まっていた。

「随分と、時間がたってきたな……おまえと、最後に戦ってから」

剣に軽く触れ、恭也は小さく言う。

「王国への進攻はもう目前だ……戦が、始まる」

静かに、自分に言い聞かせるかのように、恭也は言葉を紡いでいく。

「また、意味のない犠牲が出てくる……ここもまた十字架が増える」

憂いを帯びたその瞳に、いつもの力強さはない。

それどころか、彼にしては珍しい…憎しみの感情が、少しばかり見て取れた。

「戦いは避けられん……そう願おうとも、意味なき事」

腰に挿してある小太刀を一刀抜きさり、恭也は言葉を続ける。

「だからこそ、あの時のお前との戦いが無意味であるような気がして、ならんのだ」

言いながら、恭也は過去に想いを馳せる。

「あの時、王国は確かに言った…お前に勝てば、ホワイトパーカスの民に対する虐殺を止めると…しかし、そんなことはなかった」

約束は破られ、今なおホワイトパーカスの民は破滅の民と罵られている。

「お前の死が、生き様が、誇りが、何もかもが穢されている……だが、だからと言って俺には何も出来ん」

死んだ者の誇りを貶める事が出来ても、取り戻す事は出来ない。

「だから、今日はお前に別れを言いに来た……お前と共に在った俺はもういない。 もう、俺は堕ち鴉となって……」

立ち上がり、恭也は小太刀を二本とも抜き取る。

「王国を、斬る!」

高らかに、そう宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

魔人と鴉

 

 

 

 

 

 

 

その日、恭也は朝からバーンフリート王家の城の中を歩いていた。

なんて事はない、少し暇になったゆえの散歩だ。

恭也達は今、資金が底をついたと言う恥ずかしくて公言できない理由のため、アルストロメリアの生家でもある、此処に来ているのだ。

アルストロメリアは家族との団欒を愉しんでいるし、ロベリアやルビナス、ミュリエルは城下街へと出かけている。

オルタラとイムニティは、城にある大図書館の中で本を読んでいる。

恭也も、最初は城の図書館で戦術関係や、武器関係の本を読んでいたのだが……

既に滞在しだしてもう一週間も経っているので、暇を持て余しているのだ。

「やぁ、白鴉」

そんな恭也に、恭也の前から誰かが声をかける。

「よぅ、魔人」

対して恭也も、声をかけた人物に声をかけ返す。

「なにやら暇を持て余しているようだね、恭也」

「何もすることがないからな、リュート」

言い合い、二人は苦笑しあう。

恭也の前にいるのは、この国の国王直属の近衛隊長でもあるリュート・ヴェルスタシオ。

バーンフリートの魔人とさえ呼ばれるほどのつわものである。

巨大な十字剣をかり、治癒魔法、攻撃魔法を使役する。

中でも結界魔法に関してはアヴァターでも群を抜いており、リュートに並ぶ者はいないとまで言われている。

「平和なのはいいんだが、行動が制限されているとどうもな」

廊下の壁に背を凭れさせながら、恭也は言う。

「暇なら中庭で一戦やろうか? 僕ならいつでも相手になるけど」

「お前との模擬戦も悪くはないが、その後が…な」

リュートの提案に、恭也は苦虫を噛み潰したような顔で答える。

リュートと恭也が戦えば、おのずと戦いの場は凄まじい戦場と化す。

純粋な剣技ですらほぼ互角の二人だ、そこに魔法まで加わればその被害は大きい。

しかし、魔法が効かない筈の恭也ですら、リュートの魔法を無効化し続けられはしない。

リュートの得意な結界魔法に、身体に作用する魔法を無力化する結界がある。

それをリュートが全力で行使すれば、恭也は魔法無力化も、魔法解除も使えなくなるのだ。

後は、そこからリュートが魔法と剣を組み合わせて戦っていくのだ。

だからこそ、被害は大きい。

「だったら、お茶でもどうだい? ちょうど宮廷神官の方々から、お裾分けを貰ったんだけど」

「ふむ、悪くないな」

リュートの提案に、恭也は頷く。

「他の皆はどうする?」

リュートの私室へと向かいながら、リュートは恭也に尋ねる。

「たまには男二人だけと言うのも悪くはあるまい」

大体お茶をすると、恭也に好意を抱いているメンバーや、リュートに憧れている女性神官などが集まってくる。

別に、多人数が悪いわけではないが、たまには二人で静かにいたいこともある。

恭也にとって、リュートは二人目の男友達であり、相棒と呼べるほどの存在だった。

この一週間で何度か共に実戦をこなし、二人の息はまるで十数年連れ添ったパートナーのようにピッタリだった。

だからこそ、恭也はリュートの実力を認め、その人柄を尊敬し、そんな者と共にある事を誇りに思っていた。

リュートも、恭也の人柄に惚れ、その実力の高さに感嘆し、そんな者と共にある事を歓びと感じていた。

そして、各州で噂になりつつある、バーンフリートには魔人と白鴉がいる、と言う言葉ができたのだ。

少しばかり世間話をしつつ、二人はリュートの部屋にたどり着く。

「どうぞ」

「あぁ」

リュートが紳士のように扉を開け、恭也は部屋に入る。

リュートの私室はかなり簡素な物で、机とベッド、本棚しかないのだが……

「相変わらず、お前は勉強熱心だな」

「そうかな? あっ、適当に座ってくれていいよ。 今お茶を入れるから」

部屋の中を見て漏らした恭也の言葉に、リュートは苦笑しながら答える。

リュートの部屋はあたり一面本の山で、地震でも来たら絶対に崩れそうなほど莫大な量の本が積まれているのだ。

しかも、その殆どが魔術関係、戦術関係、武器関係の専門書で、恭也も少しは貸してもらっているものもある。

部屋の隅で、リュートは鍋に魔法で作り出した水を入れ、そして更に魔法で火を灯し、それを温める。

「お前のその姿を、知らない神官が見たらどう思うだろうな」

苦笑しながら、恭也は言う。

「便利だからね、魔法は。 何も戦争にだけ使うことはないと思うんだ」

リュートも苦笑しながら答え、温まったお湯をポットに移しかえる。

そして、ポットに茶葉をいれ、少し蒸らしてからカップに注ぐ。

「はい、どうぞ」

「すまんな」

リュートからカップを受け取り、恭也は一口飲む。

「後、これが神官のみんなが焼いてくれたクッキー」

そう言って、リュートはポケットから袋に入ったクッキーを取り出し、机の上に置く。

しばし、会話もないまま二人は紅茶を飲む。

「ねぇ、恭也……」

「なんだ?」

少しうつむきながら名前を呼ぶリュートに、恭也は少し疑問に思いながら答える。

「魔法って、何で戦争目的にしか使えないんだろうね」

少し、自傷する様にリュートは言う。

「僕が率先して覚えた魔法の殆どは、戦争にしか、人殺しにしか使えないものだ…だから、時々自分が嫌になる」

自分の手を見つめながら、リュートは言い続ける。

「僕の手は、血みどろなんだ…洗っても洗っても、血の匂いが落ちなくてね。 だからこそ、時々思うんだ」

部屋の窓から外を見つめながら…リュートはどこか遠い目をする。

「僕のやっている事は、結局は無駄になってしまうんじゃないかって…国民を護っているのは、大体が前線の騎士達だ、僕達みたいな城詰めの者じゃない」

周りから幾ら賞賛されようとも……賞賛される度に、リュートはそう感じ続けていた。

「だから、恭也が羨ましくもあるよ……僕も、君たちみたいに自由に世界を回れたら…って」

この身が自由であれば、幾らでも駆け出せるのに……

「リュート、お前は自分の事を過小評価しすぎだと思うぞ」

そんなリュートに、恭也も真剣な表情で言い返す。

「お前と言う存在がいるからこそ、前線の騎士達は戦える。 自分達が敗れてもお前なら必ず勝てる、そう信じてな」

まるで、自分もそう思っていると言わんばかりに、恭也は言う。

「喩え俺達が敗れても、お前が後ろにいると思えば、目の前の敵に全力を尽くせる」

喩え側にいなくても、背中を任せられる相棒と言う存在が、どれほどありがたいか。

「お前は、胸を張っていろ。 上に立つお前がそんな調子だと、皆が不安になる」

だから、お前はお前らしくいてほしい、恭也はそんな願いを込めて、リュートにそう言った。

「……恭也にそこまで言われたら、何も言い返せないね」

少しの間をおいて、リュートは苦笑しながら言う。

「判ったよ、恭也。 僕は、今まで通りにこの力を振るうよ…魔法は使い手次第で、生かす事も殺す事もできるから」

「そうだ、お前が今のまま護る為にその力を使えば、魔法も決して悪いようにはならないさ」

リュートの言葉に、恭也は頷きながら言う。

そして、二人は再び紅茶を飲み始める。

「ところで恭也」

話しかけてくるリュートに、恭也は目線で先を促す。

「君はパーティーの中の誰が好きなんだい?」

「ぶっ!」

突然の質問に、恭也は口に運んでいたカップに、口の中の紅茶を噴出す。

「ごほっ、ごほっ! いっ、いきなりなんだ!?」

咽ながら、恭也はリュートに叫ぶ。

「いやね、今日宮廷神官の皆が、そんな話をしていたのを聞いて気になってね」

そんな恭也に、リュートは笑いながら言う。

「君って、結構城内でも人気が高いんだよ。 未婚、既婚に関わらずにね」

苦笑しながらリュートは紅茶を飲む。

「俺は、皆を仲間と思ってはいるが…そういった感情は、よくわからん」

「恭也らしい答えだね」

恭也の答えに、リュートは納得したように言う。

「恭也だけだよ、僕がこんなに気を許して話していられるのは」

「むっ、そうか?」

その言葉に、恭也は疑問に思いながら聞き返す。

「うん、賢人会議の方々には嫌われているし、言っては何だけど、僕は若すぎるからね」

幾ら実力が高くても、実力が高いからこそ、リュートは様々な陰口も言われている。

そして近衛隊長と言うことで、賢人会議からも色々といわれているのだ。

「君と会ってからまだ一週間しか経っていないけど、もう何年も一緒にいる気がするよ」

その言葉に、恭也は頷く。

恭也自身も、もう何年もリュートと一緒にいるような錯覚を感じることがある。

「君とは、これからずっとこんな関係が続けばいいと思うよ」

「俺もさ、お前とはずっと友と呼べる関係でありたい」

そう言いあい、二人はお互い拳の裏と裏を軽くたたいた。

 

 

 

 

しかし、この二人は知らない。

後に、世界の命運をかけた救世主戦争で敵対する事を。

 

 

 

更に言えば、城で恭也×リュートのカップリングが流行っていた事も知らない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

 

久しぶりの堕ち鴉です。

フィーア「本当に、久しぶりね」

今回の堕ち鴉第29弾もオリジナルです。

フィーア「で、これは続きどうするの?」

書こうか迷ってる。

フィーア「まぁ、それは後で書かせるとして」

書かせるのか……

フィーア「あんたが今書いてるあれは、どうするのよ?」

恭也×なのはの狂愛ものかい?

フィーア「そうそれ、テンさんのリクエストの」

勿論だしたいんだけど、狂愛は難しいね。 テンさんが凄いよ。

フィーア「あんたのは粗だらけだもんねぇ、それに短いし」

シクシク……

フィーア「では、また次回で〜〜〜」





今回は千年前のお話か。
美姫 「戦いのない恭也たちのふとした日常ね」
だが、これもまた後の悲劇を生む一役に。
美姫 「そう考えると切ないわよね」
アハトさん、投稿ありがと〜。
美姫 「ありがとうございました」
次の話も楽しみにしてますね。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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