注)これは、私作【破滅の中の堕ち鴉】のオリジナル的お話です。
かといって、本編とは全く関係がありません。
一部、キャラの性格がかなり激変しています。
作者の思い付きによって出来上がった作品ですので、極力批判はおやめください。
見た後で後悔されても、作者は保証できません。
それでもよろしい方は、どうぞ。
いつからだろう、この気持ちを抱いたのは。
いつからだろう、この気持ちを自覚したのは。
いつからだろう、この気持ちが愛しくなったのは。
いつからだろう、この気持ちが抑えられなくなったのは。
いつからだろう、この気持ちが狂おしくも愛しいと自覚したのは。
堕ちよう、落ちよう
あたり一面、血の臭いしかしない。
獣の焼ける臭いや、人の焼ける臭いですら、この血の臭いに負けてしまっている。
そんな地獄絵図のような場所で、なのはは一人で立っていた。
目の前には、緑色の服を着た褐色の肌の女性。
その手には赤い大剣、その顔には魔術刻印が織り込まれた目隠し。
そして胸に空いた、巨大な穴。
体の端と端で辛うじて繋がっている、そんな……死体。
「御免ね、ロベリアさん…突然襲い掛かちゃって」
無表情に、なのはは喋りだす。
「でも、ロベリアさんがいけないんだよ……おにいちゃんと、あんなに親しいから」
もう何も返さないと解っていても、なのはは言い続ける。
「私の方がもう何年もおにいちゃんの事を好きだった……愛なんて安っぽい言葉じゃ表せないくらい好きだった」
だから、となのはは区切る。
「ロベリアさんには悪いけど、此処で死んでもらうね……ロベリアさんは死霊魔術を使えるから、生き返ってこられても困るし」
そう言って、なのははアストライアを構える。
嘗ては純白の名を冠する神の名を持った召喚器も、今では深淵のような黒に様変わりしている。
この戦いが始まって少ししてから。
なのははロベリアを殺した。
ロベリアほどの剣士がなのはに殺されたのは、偏に仲間だと言う意識と、愛する男の妹と言う意識が大きかったと言えよう。
突然の砲撃魔法。
凄まじい魔力密度で組まれたその砲撃を直接体に喰らい、ロベリアは一瞬で息絶えた。
さしものロベリアも、体に大穴を空けられて意識を保つ事はおろか、生き残る事は無理である。
「燃え上がれ、ファルブレイズン」
なのはの言葉と共に、召喚器の先から凄まじい深炎が迸る。
そしてそれが、ロベリアの体に纏わりつくかのように、燃え盛る。
凄まじい炎を発しながら、ロベリアの体を焼き尽くしていく。
数瞬の後、ロベリアの体は何処にもなかった。
「後は、イムちゃんとルビナスさん、リコさん……」
そこまで考えて、なのははふと思う。
「そっか、未亜さんを殺しちゃえば良いんだ。 そうしたら、イムちゃんとリコさんは自動的に書に還元されるし」
まるで名案だと言わんばかりに、なのはは笑う。
今のなのはにとって、救世主が誕生しようがしようまいが関係ないのだ。
なのはは理解してしまったから。
このアストライアの力を。
このアストライアの力を使えば、救世主など敵ではない。
救世主どころか、神ですら敵ではなくなるだろう。
でも……
「おにいちゃんを殺しちゃった方がいいかな……そうしたら、完璧に私のものになる」
狂った笑みを浮かべ、なのはは思う。
兄を手に入れる。
何と甘美な響だろう。
その響を更に増すためには、なんだってできる。
なのはの中は、そんな想いで一杯だった。
「未亜さんはガルガンチュワの中か……でも、今殺しちゃったら後で面倒だから、もう少し待とうかな」
そう呟いて、なのはは帰還呪文を唱える。
さぁ、帰ってダイスキな兄に甘えよう。
ロベリアの死など、後で伝えれば良い。
ロベリアの死が伝えられてすぐ、破滅軍はロベリアの弔い合戦のように戦いを始めた。
恭也も、2度も護れなかった自責から半分自棄の様に前線へと出て、血に染まって帰って来る。
そんな恭也を、なのははいつも笑顔で迎え入れる。
「お帰り、お兄ちゃん」
ほぼ眼の虚ろな恭也に、なのはは声をかける。
「……あぁ、ただいま、なのは」
そう返事をして、恭也は部屋へと戻っていく。
(おにいちゃん、もう少ししたら…その苦しみから解放してあげる……ロベリアさんの事なんて、気にならないようにしてあげるね)
誰にも見られないように、狂った笑みを浮かべるなのは。
(ロベリアさんだけじゃない、イムちゃんも、リコさんも、ルビナスさんも……おにいちゃんが、私以外が気にならないようにしてあげる)
そのまま、なのはは神の座がある広間まで進む。
「あっ、なのはちゃん……」
虚ろな眼をした未亜が、そこにはいた。
既に幾百もの人を殺してきた未亜の心は、崩壊寸前だった。
「ねぇ未亜さん、大河さんに会いたいですか?」
内心の笑みを悟られないように、なのはは尋ねる。
もっとも、今の未亜に他人の胸の内など読めはしないが……
「お兄ちゃんに? それはもちろんだよぉ」
子供のような笑みを浮かべ、未亜は答える。
「じゃぁ、連れて行ってあげる……」
刹那、未亜を囲うように巨大な魔方陣が浮かび上がる。
「アストライア、未亜さんを大河さんの所へ連れて行ってあげて……そして」
二度と、還って来れないようにして。
なのはの言葉と共に、未亜は一瞬にしてその場から消え去った。
(後は、未亜さんが大河さんを殺して、ルビナスさんも殺してくれる事を待とうかな)
そうなのはは考え、神の座の間から出て行こうとして……
「なのは、今大きな魔法の発動を感知したんだけど……?」
イムニティが、現れる。
「イムちゃん…未亜さんが、大河さんの所に行きたいって言うから……」
なのはの言葉の後、イムニティに凄まじい強制力が働く。
「こっ、これはっ!?」
突然の事に、イムニティは驚く。
この強制力は、赤と白、どちらかの主が死んだ時にかかる強制力である事を、イムニティは理解する。
「未亜さんが死んだのかな、大河さんが死んだのかな……」
内心から湧き上がってくる笑みを隠そうともせず、なのはは言う。
「なの…は……?」
そのなのはに、イムニティは驚きながら名前を呼ぶ。
「ごめんね、イムちゃん…私がおにいちゃんを手に入れる為には、どうしてもイムちゃんやリコさんが邪魔だったの」
「まさかっ……」
段々と薄れいく意識の中、イムニティはなのはを見る。
「そろそろ救世主が誕生するね……その前に、私はおにいちゃんを手に入れてくるから」
「なの…っ」
最後まで言い切ることなく、イムニティは書へと還元されていった。
「バイバイ、イムちゃん」
高らかに笑い声を上げながら、なのはは外を見る。
まるで空が割れるような渦が出来上がって、世界中を黒く染めているみたいだった。
「後は……」
この後の行動を思い描きながら、なのははある場所を目指す。
そして、目的の場所に着く。
なのはの目指す場所…それは、恭也の部屋。
ノックもせず、なのはは部屋に入る。
簡易ベッドの上に、恭也は寝転んでいた。
ときおり苦悶の表情を浮かべているのを見て、なのはは少し頬を膨らませる。
「まだ、引き摺ってる…駄目だよ、おにいちゃん。 おにいちゃんは、なのはだけを見てくれなきゃ」
狂った笑みを浮かべつつ、なのはは恭也の上に覆いかぶさる。
ここまでして恭也が起きないのは、よほど疲れているのか…それとも、ロベリアの死がそれほどまで大きいのか。
どちらにせよ、なのはには好都合だった。
なのはは恭也に覆い被さり、徐にキスをする。
舌を絡め、恭也の唾液を飲み込む。
「んっ……」
さすがに、その行為に恭也は目を覚ます。
「なのは……? なにを、している……」
自分の上に覆い被さっているなのはに、恭也は尋ねる。
「ねぇ、おにいちゃん……」
そんな恭也の質問に答えずに……
死んで?
なのはは、徐に隠し持っていたナイフを恭也の心臓に突き刺した……
あとがき
テンさんリクエスト、堕ち鴉第30弾と言う節目になのはの狂愛もの…なんだが。
フィーア「微妙すぎるわね、何処が狂愛なのかって突っ込まれるわよ」
うぅぅ、狂愛は難しすぎる。 テンさんやクレさんが凄いと再び実感したよ……
フィーア「って言うか、最後恭也死んだじゃない」
うむ、昨今流行(?)のヤンデレを少しばかり再現してみようと……
フィーア「狂愛ですら無理なのに、さらにヤンデレを加えるとは……」
かなり無謀だったね。
フィーア「無謀すぎるわっ!!」
あべしっ!!
フィーア「しかもっ、短い!!」
これ以上は僕には無理だよぅ(泣)
フィーア「なんって言うヘタレ……まったくもぅ」
テンさん、こんな感じになってしまいましたが、平にお許しを。
フィーア「テンさん、こいつに本当の狂愛を見せてあげてね」
ではでは〜〜
何故かあちこちで狂愛ものが。
美姫 「なのはの一途な思いが少しずれたら…ってところね」
充分に狂愛だと思いますよ、アハトさん。
美姫 「なのはがちょっと怖いかも」
だが、これはこれで。
美姫 「それじゃあ、まったね〜」
ではでは。