注)これは私が書いている『破滅の中の堕ち鴉』シリーズのオリジナル設定の話です。
DUEL SAVIOR本編のどのシナリオにも属していませんので、ご了承を。
オリジナルな展開がお嫌いな方は、どうぞお引き換えしを。
見てからの批判は極力おやめください。
それでもよろしいかたは、どうぞ……
「ここか……」
目の前の遺跡を見て、恭也は呟く。
この日、破滅軍の堕ち鴉不破 恭也はイムニティからの報告を受け、ホワイトパーカス内のとある遺跡にやってきていた。
この遺跡はかなり昔からあるらしく、それでいて調べられた形式がないことから、恭也が派遣されたのだ。
(黒の魔道要塞の手がかりが見つかればいいが……)
いまだ何処に封印されているかも知れない神の座がある古の兵器。
救世主が、神を降ろす為の座があるその要塞の探索の傍ら、恭也は此処に来たのだ。
(しかし、イムニティの言っていた通りかなり古いな…まぁ、前回の救世主戦争で救世主は誕生していないと言う話だ。
そう考えると、ガルガンチュワは少なくとも二千年は起動していないはずだから、この古さも納得できる)
此処にガルガンチュワがあると仮定しても、二千年は動いていない計算になる。
だからこそ、此処にあるかもしれないと言う考えが浮かんでくる。
慎重に、恭也は遺跡の中を進んでいく。
所々にトラップが仕掛けられているが、恭也は危なげなくそれを解除していく。
(まさか、父さんに散々トラップで嵌められた事がこんな所で役に立つとはな……)
内心苦笑しつつ、恭也は先に進む。
そして、恭也が遺跡に入って一時間がたち…かなり開けた場所に出た。
「ここは……」
辺りを見回しながら、恭也は呟く。
(使用目的は不明だが、此処にはたいしたものはなさそうだな)
総思いつつ、恭也は広場の奥まで歩みを進める。
「ん? これは……」
その途中、何かの台座のようなものが目に入った。
地面から生えるように伸びた台座の上には、埃塗れの玉のような物が置かれている。
(見た感じ、何か危険のあるものには見えんが…まぁ、魔法関係のトラップならきかんしな)
何かの役に立つかもしれない、そう思い恭也はその玉に手を伸ばす。
そして、玉をつかんだ瞬間……
「なっ!!?」
玉が、急激に光を放ちだす。
その現象に、恭也は咄嗟に手を離し距離をとる。
更に、地面を揺らすような地響きが起こり出す。
周囲を最大限に警戒しながら、恭也は辺りを見回す。
その時、地響きと同時に台座の後ろの地面が競り上がる。
そして巨大な音共に、地響きは止み、玉も光を放たなくなる。
「何だ、一体……」
あたりを警戒しながら、恭也は競り上がった地面へと近づく。
恭也が競り上がった地面を見てみると、そこには一人の女性がまるで死んでいるかのように横たわっていた。
(人、なのか…しかし、この遺跡は二千年ほど誰も訪れていないはず……)
そう思いつつ、恭也がその女性の周りを調べようとして……
突如、その女性の目が見開かれる。
「なっ…!」
驚いて恭也が後ろに飛び退くよりも早く、女性の腕が恭也を捕まえる。
そして……
「んむぅっ!!!?」
徐に、その女性は恭也の唇に自分の唇を合わせる。
数秒の口づけの後、その女性は……
「おはよう、私の御主人様」
そう、言った。
目覚めの堕天使人形
「お前は、一体……」
体を離され、少し距離と取って恭也は尋ねる。
「私の名前はエンディアナ、遥か古の時代に作られた堕天使人形だ」
「堕天使…人形……?」
女性…エンディアナの言葉に、恭也は聞き返す。
「そうだ、古よりある物を持つ者にのみ仕える従者…それが私達、堕天使人形だ」
恭也の言葉に、エンディアナは言い返す。
「ある物とは、なんだ?」
「決まっている、召喚器だ」
その言葉に、尋ねた恭也は驚く。
「更に言えば、私は最古参召喚器であるプレアデスを持つ者のみに仕える堕天使人形だ」
続けて発せられた言葉に、恭也は再度驚く。
「御主人様はプレアデスの所有者であろう? でなければ、私の封印は解けん」
エンディアナの問いに、恭也は頷く。
「エンディアナ、私達と言ったな。 お前のほかに、まだ堕天使人形は存在するのか?」
「いや、存在はしていたがその大半はもう潰れているだろう。 私達堕天使人形は召喚器を持つ者との契約で目覚め、契約者が死ねば自動的にその機能の全てを停止する。
一度契約を交わした堕天使人形は、以前の契約者の魔力でなければ再起動はしない。 それに、今の技術では私達堕天使人形を修復する事も、契約を解除する事も不可能だ」
恭也の問いに、エンディアナは答える。
「仮に、今だ目覚めていない堕天使人形があるとしても、片手で数えるほどだろう。 そもそも、私達堕天使人形は数がないからな」
「そうか……」
エンディアナの答えに、恭也は考える。
(エンディアナの話が真実なら、救世主候補がこの堕天使人形を手に入れる事はほぼない、か)
そう結論を出し、恭也はエンディアナの方を見る。
「エンディアナ、悪いが俺達の街まで来てもらえないか?」
「愚問だな、私は御主人様の堕天使人形だぞ? 離れることなどありはしない」
恭也の言葉に、エンディアナは至極当然といった風に答える。
「そうか…あぁ、後お前に一つだけ頼みがある」
「なんだ?」
「俺が召喚器を持っている事は、これから行く先では絶対に言わないで欲しい。 俺の召喚器は特別なものだからな、あまり他人に知られたくはない」
真剣な表情で、恭也はエンディアナに言う。
「判った。 プレアデスは確かに特殊な召喚器だからな」
素直に、エンディアナは頷く。
「エンディアナは、プレアデスがどんな召喚器は知っているのか?」
そんなエンディアナに、恭也は疑問を感じ、それを問う。
「言った筈だ、私はプレアデスを持つ者のみに仕える堕天使人形だと。 プレアデスの過去も、それなりには知っている」
当然と言う風に、エンディアナは答える。
「そうか」
恭也も、それ以上は聞かなかった。
「では、いくか」
そう言って、恭也はエンディアナと共に遺跡を出た。
「イムニティ、いるか?」
帰還魔法で帰ってきた恭也は、屋敷の中でイムニティを呼ぶ。
「あら恭也、お帰り」
居間で休んでいたイムニティは、居間に入ってきた恭也に向かって挨拶をする。
「イムニティ、少し聞きたいことがあるんだが……」
「なにかしら?」
そこまで言って、イムニティは恭也の後ろから入ってくるエンディアナを視界に入れる。
一瞬、イムニティは驚いた顔をする。
「恭也…その後ろの女は……」
「あぁ、彼女はエンディアナと言ってな……堕天使人形というものらしい」
「堕天使人形ですって!!? まさか、まだ動く奴がいたなんてね……」
恭也の言葉に、イムニティは先程とは違う意味で驚く。
「知っているのか、イムニティ?」
「12回前の救世主戦争で、赤の主は堕天使人形を連れていたわ」
その時の事を思い出してか、イムニティはどこか憎げに言う。
「堕天使人形はガルガンチュワなんかの魔道兵器の一つで、その時の救世主戦争時はその一体のお陰で白の主は蒸発死したわ」
生存を許さぬ高魔力密度の一撃により、白の主は一切の存在も残さず死んだ。
「25回前の救世主戦争時は、もっと悲惨だったわ…その時、起動していた堕天使人形は9体、その戦いの余波で一つの州が焼け野原になったもの」
イムニティの説明に、恭也は驚いてエンディアナの方を見る。
「それほどまでに、堕天使人形は恐ろしいのよ……でもまさか、その堕天使人形を恭也が見つけてくるなんてね」
「あぁ、イムニティに頼まれて調査に行った遺跡で偶然な……」
イムニティの言葉に、恭也は少々言葉を濁す。
「お初にお目にかかる、白の精」
そこで、初めてエンディアナがイムニティに挨拶をする。
「っ!? 驚いた…あの堕天使人形が喋るなんてね……」
「そうなのか?」
驚くイムニティに、恭也は尋ねる。
「えぇ、堕天使人形は戦闘目的の為に作られたものだから感情もないし、喋る、何てことも今まで聞いた事もなかったわ」
「私は特別な堕天使人形だからな、他の堕天使人形とはつくりが全く違う」
イムニティの説明に、エンディアナが答える。
「何処が違うのかしら?」
「基本構造は同じだ。 御主人様より魔力を供給してもらい、それをエネルギーとして動く。 違うといえば私に自我意識がある事と、召喚器サポートがある、この二つだな」
従来の堕天使人形は、契約者より魔力を供給してもらい、その魔力をエネルギーや攻撃として使用している。
「召喚器サポートは、召喚器から持つ者が受ける恩恵のランクアップや、魔法の補助などが主なものだな」
「あなた自身は戦えないのかしら?」
「無論私自身単体でも戦うことは出来る。 むしろ、そのほうが私としては気楽で良い」
イムニティの問いに、エンディアは答える。
「ふふふふ、恭也…あなたはかなり良いものを見つけてきてくれたみたいね」
笑いながら、イムニティは恭也に言う。
「堕天使人形がいるだけでオルタラには最高の牽制になる…その間に、ガルガンチュワの捜索もはかどるわ」
リコも、堕天使人形の性能は知っている。
それゆえに、早々簡単に手を出しては来ないだろうと、イムニティは考える。
もっとも、王国軍が単独で攻めてきてもエンディアナがいれば今までよりも早く敵を倒せる。
「ガルガンチュワのことか? それなら何処に眠っているかは記憶しているぞ」
「なんですって!?」
エンディアナの言葉に、イムニティは驚いて大きな声を出す。
恭也も、驚きながらエンディアナを見る。
「今のアヴァターの地図はないか?」
エンディアナに言われ、イムニティはアヴァターの地図を渡す。
「……ここだ、この地形に間違いないはずだ」
そう言ってエンディアナが指差した場所は……
「ゼロの遺跡か……」
エンディアナが指す一点を見つめながら、恭也は呟く。
「あくまでも、私が生まれた時にあった場所だ。 今尚此処に眠っているとは断言できんがな」
「それでも、探すだけの価値はあるわね。 あそこは元々前回の救世主戦争時は王都の在った場所だもの、何かあってもおかしくはないわ」
エンディアナの言葉に、イムニティは頷く。
「直ぐにでもロベリアを向かわせるわ。 恭也、あなたはエンディアナに色々と教えてあげて」
「判った、ロベリアに気をつけて行くよう言っておいてくれ」
恭也の言葉に頷き、イムニティは居間を出て行った。
「さて、エンディアナ…お前たち堕天使人形とはどのような目的で作られたんだ?」
イムニティが行った事を確認して、恭也はエンディアナに尋ねる。
「私以外の堕天使人形の目的は、救世主のサポートだ。 御主人様も救世主については知っているだろう?」
尋ね返してくるエンディアナに、恭也は頷く。
世界を作りかえる救世主、そして今だ誰一人としてその使命をまっとう出来た者はいないと言うことも。
「救世主といっても所詮は人だ。 心折れるとき、その代わりに世界を壊すのが堕天使人形本来の役割だ」
堕天使人形では救世主足り得ないから、救世主の変わりに、世界を壊す。
「では、お前の目的は何だ?」
「プレアデスの願いを叶える事だ」
恭也の問いに、エンディアナは直ぐに答える。
「プレアデスと言う召喚器の誕生について、御主人様も知っていると思うが…彼女は、神が嫌いだ。 だからこそ、神を倒す為に私を創った」
その言葉に、恭也は驚く。
「無論、プレアデスが人間の頃だ…もっとも、それももう既に何万年も昔の事だがな」
「だから、お前はプレアデスを持つ者にのみ仕えると」
恭也の言葉に、エンディアナは頷く。
「もっとも、私以外の堕天使人形は神が創ったものだ。 私を真似て、戯れに創ったらしい」
苦笑しながら、エンディアナは言う。
「そして、私と言う存在を知ったからこそ…神は私のコピーに堕天使人形と言う名をつけ、プレアデスを次元断層の狭間に隠した」
神に反逆する者が創った人形のコピーだからこそ、堕天使人形。
「御主人様は、救世主を誕生させるつもりか?」
恭也の前に立ち上がり、エンディアナは尋ねる。
「イムニティを助ける為に、必要ならば」
恭也は、イムニティを縛り続けるこの救世主と言うものが嫌いだった。
だから、イムニティを解放するために救世主の誕生が必要ならば、そうするだけである。
「そうか…ならば、御主人様は神に敵対する、と言うことか?」
再び、エンディアナは尋ねる。
「エンディアナ、お前には言っていなかったが……俺は反逆の鴉、堕ち鴉と言われた身だ。 必要とあらば、神にだろうと反逆してみせる」
揺ぎ無い信念を込めて、恭也は言い切った。
「……ふっ、流石あのプレアデスがマスターと認めただけの事はある」
そう言って、エンディアナは恭也の前に片膝をつく。
「改めて、私の御主人様…いや、私の君主よ、私はこれより貴方の剣となり盾となり、貴方の前に立ち塞がる全ての壁を破壊する」
昔の騎士が、ただ一人の君主に使えるように。
エンディアナも、恭也に絶対の忠誠を誓う。
「こちらこそ、よろしく頼むぞ、エンディアナ」
そう言って、恭也はエンディアナに微笑みかけた。
後に【鴉の人形】と呼ばれる、堕天使人形エンディアナの始まりの日……
あとがき
堕ち鴉第31弾はまたしても新キャラ登場の展開でした。
フィーア「あんた、オリキャラ増やしすぎじゃない?」
まぁ、リュートに関しては千年後にはいないし、そろそろプレアデスとかアストライア、ヘスペリデス関係も書いていこうかと。
フィーア「まぁ、その三つは完璧にオリジナル設定入ってるからね」
うむ。 ちなみに、このエンディアナについては以前浩さん、テンさんとネタ出しをしていた時に考えたキャラが元になっていてね。
フィーア「あぁ、あんたが考えたって言うオリキャラ二人のこと?」
そう、それを改造して堕ち鴉で出してみました。 それと、後本編では書いてないけど補足がありまして。
イムニティは、堕天使人形が召喚器を持つものしか仕えないと言うことを知りません。
フィーア「なんで?」
今までの堕天使人形が意思疎通が出来なかったからわからなかった、と言うことです。
フィーア「あと、何でエンディアナは遺跡に封印されていたのかってのもあるわね。 だって、エンディアナってプレアデスを持ってないと動かないんでしょ?」
エンディアナのほかにも、色々封印されていたんだけど、その殆どが今までの救世主戦争で使われてきた。
そして、エンディアナの封印だけは誰にも解けなかった、ってことで。
フィーア「じゃぁ、いまだに誰も調べられていなかったって言うのは?」
ホワイトパーカスでもかなりの辺境にある遺跡で、前回は調べられていなかったからそういう表現に。
フィーア「聞けば聞くほど曖昧ねぇ」
まぁ、そういわないで。
フィーア「で、次回からエンディアナもでるの?」
そう言う予定です。
フィーア「ならさっさと続きを書くように」
Sir.
フィーア「ではでは〜〜〜」
おお、あの時のネタですか。
美姫 「確か、アヴァターの堕天使人形が他世界の自動人形の元とか何とか?」
そうそう。根の国は全ての世界を統べるからな。
この技術が枝の先端の方、魔法などが衰退して科学が発達した世界では僅かに形を変えて存在していた、とか何とか。
美姫 「懐かしい設定ね」
だな〜。次回からはそのエンディアナも加わるみたいだし。
益々楽しみです。
美姫 「次回も待っていますね〜」
ではでは。