注)これは私が書いている『破滅の中の堕ち鴉』シリーズのオリジナル設定の話です。

DUEL SAVIOR本編のどのシナリオにも属していませんので、ご了承を。

オリジナルな展開がお嫌いな方は、どうぞお引き換えしを。

見てからの批判は極力おやめください。

それでもよろしいかたは、どうぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「駄目だな」

恭也を自室に呼び出して、エンディアナはそう結論を出した。

「私の知る限りの方法を試したが…こいつの封印は解けん」

そう言って、エンディアナは視線を恭也から机の上においてある物に移す。

そこにあるのは、恭也の朋であったリュート・ヴェルスタシオの十字剣から出てきた宝珠。

恭也はその宝珠に何が入っているのか、エンディアナに解析を頼んだのだが……

結果は、解析不能。

何が封印されているのかすら、わからない状態だった。

「しかし、確実にこの宝珠には重要な事が封印されている、そんな気がしてならん」

宝珠を持って、恭也はエンディアナに言う。

「せめて、リュート殿が何かにヒントでも残してくれていればな……」

そう言って、二人は考え込む。

「まてよ……」

そこで、恭也は何かに気付く。

「確かリュートは、ずっと魔法に関して色々研究していたな…その研究書が、王都の図書館に寄贈されたと言う話を聞いたことがある」

「本当か?」

恭也の言葉に、エンディアナは聞き返す。

「あぁ、もしかしたらその研究書の中に何かヒントがあるかも知れん」

「だが、そういった類の物は持ち出しが出来ないんじゃないのか?」

「多分な……だから、言い方は悪いが盗み出すしかない」

なにぶん非常事態だと、恭也は自分に言い聞かせる。

「今夜にでも、王都に忍び込むか……」

恭也がそこまで考えていると、廊下の方が騒がしくなる。

「恭也っ!!!」

そして、叫び声と共にイムニティが部屋に入ってくる。

「どうした、イムニティ?」

その慌てように、恭也は驚きながら尋ねる。

「たった今監視のものから連絡があってっ」

その言葉に、恭也もエンディアナも気を引き締める。

そして、イムニティが告げた言葉は、驚き以外のなんでもなかった。

 

「ミュリエルが、永久封印刑になったそうよ!」

 

 

 

 

 

 

 

王都、潜入

 

 

 

 

 

 

 

「一体どういう事だ!?」

屋敷の大広間に、破滅の幹部が集まる。

そんな中、恭也が尋ねる。

「なんでも、救世主候補の一人、当真 大河を殺そうとしたらしいですね」

そんな恭也に、シェザルが答える。

「ケッ、おおかた仲間割れかなんかだろ」

つまらなさそうに、ムドウが吐き捨てるように言う。

「あのミュリエルが何の考えもなしにそんな事をするとは思えんが……」

昔からミュリエルを知っているからこそ、恭也はそう考える。

「どちらにせよ、私達にとっては僥倖でしょう。 確実に相手は動揺しているはずです」

「この事について、主幹から何か連絡はあったのかい?」

シェザルの言葉に続けるように、ロベリアが尋ねる。

「いいえ、今のところは何も連絡は無いわ」

それに、イムニティが答える。

「……ならば、現状は全員待機だな」

静かに、恭也はそう決断する。

「おいおい、今攻め込んじまえばあいつらを簡単に殺せるだろうがよ」

恭也の言葉に、ムドウが反抗する。

「主幹からの命がない以上、迂闊に動けるわけもあるまい」

そんなムドウに、恭也は強く言い返す。

それを聞いたムドウは舌打ちをして、部屋を出て行く。

それに続くように、シェザルも部屋を出る。

「さて、ロベリア、イムニティ…お前たちは、どう思う?」

二人の気配が遠くへ行った事を確認して、恭也は二人に尋ねる。

「私としても、あのミュリエルがこんな事をするとは思ってもいなかったけどね」

「私も同感よ。 ミュリエルは何故赤の主である当真 大河を殺そうとしたのかしら……」

ロベリアとイムニティも、考えられないと言う風に答える。

「俺達を騙すための嘘、ではないのか?」

「既に救世主候補全員に通達がいっている事よ? さらに、その結果は王女と救世主候補がミュリエルを庇ってそこまで減刑されたって話しだし」

恭也の質問に、イムニティはそれはないと答える。

「……ならば、ミュリエルは本気で救世主を誕生させないつもりだったのか」

その言葉に、ロベリアとイムニティは驚く。

「どういう、ことだい?」

「始めて俺がお前たちと一緒に救世主候補と戦った後、少し所用でミュリエルと会ってな、その時に聞いた」

ロベリアの問いに、恭也は答える。

「だが、イムニティは本契約している訳ではないからな…大河を殺した所で、救世主が誕生する事はない」

「それは、そうだけど……」

どこか納得がいかないと言った風に、イムニティは呟く。

「確かめる必要がある、か」

「どうするつもりだい?」

「もとより所用があったんでな、ついでにミュリエルの件も確かめてくる」

ロベリアの問いに、恭也は答える。

「まさか…恭也、あなた王都に行くつもり?」

イムニティのその言葉に、ロベリアは驚きながら恭也を見る。

「あぁ、リュートの研究していた書物が必要になってな。 それを取りに行く為に、王都に行こうと思っていた所だ」

そんなロベリアとイムニティに、恭也は答える。

「危険すぎるわ、今の王都の警戒は半端じゃないのよ?」

心配そうに、イムニティは尋ねる。

「それは百も承知だ。 だが、今行かなければこの先どうなるかわからん…やれるときに、やっておきたいんだ」

強い想いを込めて、恭也は言う。

「……判ったよ」

「ロベリア!?」

ロベリアの言葉に、イムニティは驚きながらロベリアを見る。

「ただし、一人では行かせないよ」

そう言って、ロベリアはイムニティを見る。

「私は今此処を動くわけには行かないからね、イムニティを一緒に連れて行くこと。 これが条件だ」

さすがに、恭也一人で行かせるわけにはいかない。

そう思い、ロベリアはイムニティを連れて行くように言う。

「判った。 イムニティも、それで良いか?」

「はぁ、どうせ私が嫌っていっても一人で行く気でしょ?」

恭也の問いに、イムニティはため息をつき、苦笑しながら言い返す。

「だけど、無理はしないことを約束して。 今王国といざこざを起こすのは得策ではないわ」

イムニティの言葉に、恭也は頷く。

「じゃぁ、さっそく行きましょう」

言葉と共に、恭也とイムニティの足元に魔方陣が浮かび上がる。

そして、次の瞬間に二人は大広間から姿を消していた。

 

 

 

数瞬の後、二人は王都の中にいた。

辺り一帯が夜の静寂に包まれている中、恭也とイムニティは王立図書館を目指す。

「ふむ、警戒が強いと言った割には随分と下手な見回りだな」

苦笑しながら、恭也は先を急ぐ。

「貴方の空間把握能力と、隠密行動力が異常すぎるんじゃないかしら?」

そんな恭也に、イムニティは呆れながら言い返す。

ちなみに、今の二人の状況を言い表すなら……

お姫様抱っこ、この一言である。

さすがに、二人揃って行くよりも、恭也がイムニティを負ぶって行った方が早いと判断したのだ。

イムニティは、先程から少し顔が赤い。

そして、王都に潜入してから数分の後、恭也達は王立図書館の前につく。

「さすがに、鍵が閉まっているな」

入口のドアに手を当ててみるが、びくともしない。

「恭也、逆召喚で中に入るわ」

イムニティの言葉に恭也は頷き、イムニティは呪文を唱えだす。

次の瞬間、二人は静寂が支配する図書館の中にいた。

「魔法研究書関係の担架は、向こうね」

案内板を見ながら、イムニティはその方向を指す。

「流石に、千年前とは様変わりしているわね」

「それはな」

昔の図書館を思い出しながら、二人は進む。

「このあたりか……」

魔法研究書関係の本が所狭しと並べられている棚の前に来て、恭也とイムニティは目的の本を探しだす。

「著者はリュートだからな、多分直ぐ見つかると思うんだが……」

持ち出し禁止の本にも指定されているから、一般人が持ち出すことはない。

それから、十数分が経過し……

「あったわ、恭也」

イムニティが、一冊の本を持って恭也の所に来る。

「…間違いないな、あいつの字だ」

本の中身を見ながら、恭也はどこか懐かしげに呟く。

「よし、ならもう此処には用はない」

その言葉に頷き、イムニティは呪文を唱える。

そして、二人は城の裏手の雑木林の中に跳んで来る。

「イムニティはここで待っていてくれ、俺はミュリエルを探してくる」

「何があるか判らないから、十分気をつけてね、恭也」

イムニティの言葉に頷き、恭也は闇と同化するかのように城の中へと潜入する。

(イムニティ、ミュリエルが捕らえられているのはどの辺りかわかるか?)

(詳しい事は判らないけれど、たぶん地下牢のどこかだと思うわ)

念話でイムニティに確認をとり、恭也は城の地下へと進んでいく。

もとより潜入や奇襲を得意とする恭也だから、誰一人も遭遇せずに地下牢の前へとたどり着く。

(……見張りが二人、か)

御神流の心によって、恭也は見えていないながらも兵士の数を確認する。

見えない死角のものを、音や気配などで知覚する御神流の心。

この技によって、御神流は遮蔽物や見通しの悪い場所での戦闘を有利に進めてきた。

(……どうやら此処で当たりだな…中から、凄まじい魔力の気配を感じる)

牢屋の中から感じ取った懐かしい魔力の気配に、恭也は此処にミュリエルが捕らえられている事を確認する。

そして静かに、恭也は見張りへと近づき……

音も立てずに、見張りの二人は崩れ落ちる。

(平和ボケしすぎか……この状況下でこの程度の実力とはな)

そう思いつつも、今はこの程度で助かると思い、恭也は鋼糸で倒した兵士二人を縛る。

そして、兵士のポケットから牢屋の鍵を取り出す。

(……辺りに、人の気配はないな)

近くに人の気配がないことを確認して、恭也は牢屋の鍵を開ける。

扉を開けた恭也の目に飛び込んできたのは、痛々しいミュリエルの姿。

体全体に掛けられた、魔力封じの呪文。

目隠しに猿轡をされ、つま先で辛うじて立てる姿勢で、部屋のいたる所から伸びた鎖に繋がれていた。

その姿を覆う服ですら、何処がぞんざいに着せられたような印象を受ける。

(クレアではないな…あの子は、こんな惨い事を出来るような性格ではない)

そのミュリエルの姿に、恭也は怒りを覚える。

(賢人会議の連中の仕業か……千年経とうが、腐りきった所までは変わっていなかったようだな)

そこまで考え、恭也はミュリエルに付けられた目隠しと猿轡を外す。

突然自分の目隠しと猿轡が外され、ミュリエルは訝しげながらも目を開けようとする。

ゆっくりと目を開けたその先には……

 

「久しぶりだな、ミュリエル」

「恭…也……?」

 

それは、二度目の邂逅。

必然的に起こりえた、二人の邂逅。

この二人の邂逅が、物語を更に加速させる事を、今は誰も知らなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

堕ち鴉第33弾をおおくりしました〜〜〜

フィーア「今回は、王都への潜入とミュリエルとの二度目の邂逅ね」

ミュリエルとの邂逅は、浩さんが書いてくださった【黒に堕ちる偉大なる魔術師】を参考にさせてもらいました。

フィーア「お姉様、こいつが勝手にこんなことしてごめんなさいね」

浩さんも、すいません、そしてありがとうございます。

フィーア「で、これからどうなるわけ?」

まぁ、ミュリエルを救出して話を進めるけど。

フィーア「この後の展開って、あんたが端折ったミュリエルがヘスペリデスを手に入れるまでのこと?」

うむ、そこは確実に書かないとなぁとは思っていたのだよ。

フィーア「今物語的にはどの辺り?」

まぁ、リリィルートのミュリエルが大河を殺そうとした辺りかなぁ。

フィーア「ガルガンチュワのほうは?」

それはまた次にお話します。

フィーア「未亜については?」

それもまた次に…できれば。

フィーア「この無計画男がぁぁぁっ!!!」

もるすぁぁぁぁぁ!!!

フィーア「ふぅ、ではでは〜〜〜」





こうして話が繋がっていくというのも面白いな。
美姫 「そうよね。ミュリエルが召喚を手に入れる過程も書かれるみたいだし」
破滅側は益々強くなっていくな。
美姫 「今回のお話も楽しませてもらいました〜」
次回も楽しみにしてます。
美姫 「お待ちしてま〜す」



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