注)これは私が書いている『破滅の中の堕ち鴉』シリーズのオリジナル設定の話です。

加えて浩さんが書いてくださった【黒に堕ちる偉大なる魔術師】と話が多少似ております。

DUEL SAVIOR本編のどのシナリオにも属していませんので、ご了承を。

オリジナルな展開がお嫌いな方は、どうぞお引き換えしを。

見てからの批判は極力おやめください。

それでもよろしいかたは、どうぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「恭也、どうして…あなたが、ここに……」

ミュリエルは、目の前に立っている男がここにいることが信じられないといった風に尋ねる。

「お前が永久封印されると聞いてな、それを確かめに来たんだが…どうやら、本当だったみたいだな」

ミュリエルの状態を見て、男、恭也はそう答える。

「それで、何をしに来たのですか?」

突き刺さるような視線で、ミュリエルは恭也に尋ねる。

「お前を、助けに来た」

その言葉に、ミュリエルは一瞬言葉を失う。

「恭也、あなたは自分が何を言っているのか判っているのですか?」

「生憎、まだ呆けるには早いと思うがな」

真剣なミュリエルに、恭也は苦笑しながらも小太刀を抜く。

「色々話はあるが、とにかくお前を此処から連れ出すのが先だ」

「結構です…私は、もうここで一生を過ごすと決めたんです」

連れ出そうとする恭也を、ミュリエルは拒絶する。

「相変わらず、お前は頑固だな」

そう言って、恭也はミュリエルを縛り付けていた鎖を全て切り裂く。

体を支えていた鎖がなくなり、ミュリエルは前のめりに倒れるが、恭也がそれを受け止める。

「ミュリエル、俺は昔の仲間が永久封印にされると聞いて、黙っていられるほど人でなしではない」

「だからって、今更…今更、優しくしないでください……」

恭也の言葉に、ミュリエルは涙を流しながら言い返す。

「貴方が敵に回って、どれだけ辛いと思ったか…そればかりじゃなく、千年後の今尚、貴方と敵対してしまった事に、どれだけ胸が痛んだか……」

思いの内を吐き出すように、ミュリエルは恭也に言う。

「その事については、すまないと思っている。 だが、俺には俺の信念があった」

子供をあやす様に、恭也はミュリエルの頭を撫でながら言う。

「そのために、お前には随分と苦しい想いをさせたな……すまない」

「うっ、うぅぅ……」

恭也の言葉に、ミュリエルは流れ出る涙を止められそうもなかった。

もう二度とこんな気持ちになることはないと思っていたのに、いざその瞬間になるとこの想いが止まらない。

千年後のアヴァターに来てから、ミュリエルは始めて人前で泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

気高き魔術師の決意

 

 

 

 

 

 

 

「ミュリエル、とにかく此処から出るぞ」

ミュリエルが泣き止むのを待って、恭也は言う。

「恭也、私は……」

恭也の胸の中で泣いたからだろうが、ミュリエルは先程と同じ事が言えなかった。

「言っただろう、俺はお前を助けに来たと。 だから、いくぞ」

そう言って、恭也はミュリエルを抱きかかえる。

通称、お姫様抱っこである。

「きょっ、恭也!?」

「静かにしろ、気付かれる」

驚いて声を大きくしてしまうミュリエルに、恭也は静かにするように言う。

ミュリエルもそれに気付いたのか、慌てて口を押さえて、なすがままになる。

そしてそのまま、恭也はミュリエルを抱えたまま慎重に城を出て行く。

(にわかに騒がしくなってきたな…しかし、もう遅い)

少しばかり騒がしくなってきた場内の気配に気付きつつ、恭也は既に城の裏手に来ていた。

そして徐に雑木林の中に入る。

「イムニティ、ミュリエルを連れてきた」

「……恭也、あなたは何をしているのかしら」

恭也の言葉に、イムニティは目元を押さえながら言う。

「説明は後だ、どうやらミュリエルがいないことに気付いたらしい」

そこまで言われ、イムニティは場内が少し騒がしくなってきたことを理解する。

「とりあえず、屋敷に帰る前に説明するからどこか安全な場所に跳んでくれ」

「納得のいく説明をお願いするわ」

そう答え、イムニティは呪文を唱えだす。

数瞬の後、3人の姿はそこにはなかった。

 

 

 

王都からかなり離れた場所にある岩だらけの渓谷。

そこに、3人は跳んできていた。

「さて恭也、説明をしてもらえるかしら?」

恭也がミュリエルを降ろしてから、イムニティは尋ねる。

「ミュリエルの姿を見れば判ると思うが、あのまま城にいてはいずれ死ぬかもしれないと思ってな」

「そうじゃないわ! 判っているの? ミュリエルを今つれてきてみんなそれで納得するとでも思っているの?」

恭也の言葉に、イムニティは少し怒りながら言い返す。

「だが、ミュリエルをあのままにしておくことなど俺には出来ん。 今は敵だったとしても、嘗ては共に過ごした仲間だ。 助け出したいと思うのは、当然だろう」

そんなイムニティに、恭也は真剣に言い返す。

「はぁ……だから、貴方を王都に行かせるのには反対だったのよ。 貴方の性格からして、ミュリエルをほっておける訳がないと判っていたから」

ため息をつきつつ、イムニティは言う。

「そう言うな。 結果的にこうなってしまっただけだ」

そんなイムニティに、恭也は苦笑しながら言い返し、ミュリエルを見る。

「ミュリエル、何故赤の主である当真 大河を殺そうとしたんだ?」

真剣な表情で、恭也はミュリエルに尋ねる。

「以前にも恭也には言いましたが、私は救世主候補の監視の為に、あの学園を設立しただけです」

その言葉に、イムニティは驚く。

「本気で、救世主を誕生させないつもりだったんだな」

恭也の言葉に、ミュリエルは頷く。

「だから、赤の主である大河を殺そうとした。 しかし、失敗して国家反逆罪の罪に問われ永久封印刑に処せられた」

「恭也も、前回の救世主戦争を見て知っているはずです…救世主が、本当はどんな存在なのかを」

「赤と白の書を統合し、世界を作りかえるのだろう……馬鹿げた存在だ」

同意するように、恭也は言う。

「俺も色々と詳しい事はイムニティやエンディアナから聞いているからな…お前の考えは、判らなくはない」

恭也の考えからすれば、ミュリエルの考えには賛同できる。

救世主を誕生させない為に、可能性のあるものを一箇所に集め、監視する。

そしてもし救世主になりそうならば、自分の手で倒す。

だが、それではこの戦争しか終らせられない。

「ミュリエル…俺達に、手を貸してくれないか?」

「恭也っ!!?」

恭也の言葉がよほど予想外だったのだろう、イムニティはかなり声を大きくして叫ぶ。

「貴方は今何を言っているのか判っているの!!?」

「勿論だ。 イムニティ、俺達の目的を果たす為には救世主がどんな存在かを知っていて尚且つ強いものが必要だ。

それを考えると、ミュリエルほどの適任はいない」

「だからって!!」

かなり怒りながら、イムニティは反論する。

「恭也、お言葉ですが…私は、破滅につくつもりはありません」

そんな二人に、ミュリエルは言う。

「私は、確かに救世主を誕生させないとは言いましたが…破滅が世界を蹂躙するのを黙って見てもいられません」

静かに、ミュリエルは言う。

「随分と好き勝手に言ってくれるじゃない、ミュリエル」

「何が…ですか、イムニティ」

ミュリエルの言葉に、イムニティは憎憎しげに言い、ミュリエルはそんなイムニティに尋ね返す。

「破滅が世界を蹂躙? だったら貴女達王国の騎士団は無関係な人達を蹂躙しているじゃない!!」

その言葉に、ミュリエルは驚く。

「貴女は知らないかもしれないけどね、王国の騎士達はホワイトカーパスの民達を破滅の民と勝手に呼んで蹂躙しているのよ!?

州境では、いつも一方的な虐殺が行なわれていたわ!」

女子供、見境なく殺していく王国の騎士達。

逃げ惑う者も、命乞いをする者も関係なく、蹂躙されていった。

「それを見て、あなたはまだ破滅が世界を蹂躙しているなんて言えるかしら!」

「落ち着け、イムニティ」

熱くなって叫ぶイムニティに、恭也は落ち着くように言う。

「ミュリエル、俺達は何も世界を滅ぼす為に戦っているわけじゃない。 皆、何かしら守る為に戦っているんだ」

破滅に属するもの達は、その一部を除いて殆どが守る為にその力を振るっている。

「そして、最終的に俺達は本当の敵を倒すために動いている」

「本当の…敵?」

恭也の言葉に、ミュリエルは聞き返す。

「救世主を操り、世界を滅ぼそうとするもの……神だ」

その答えに、ミュリエルは言葉をなくした。

「その神を倒す為に、俺達は動いてきた。 無論、この事を知っているのはごく一部の者だけだがな」

迂闊にこの事を話せば、この先どうなるか予想も出来ない。

だからこそ、恭也達は慎重に事を進めてきた。

「だから、ミュリエル…お前の力を、俺達に貸してはくれないか?」

ミュリエルの目を見ながら、恭也は再び尋ねる。

そんな真剣な目で見られたら、決意が揺らいでしまう。

ミュリエルは、今ほど自分が女であることを痛感した事はない。

ミュリエル・シアフィールドとしての自分は、協力できないと言う。

だけど、ミュリエル・アイスバーグとしての、女の自分は、恭也について行きたいと言う。

ミュリエルの中で、二つの思いが葛藤する。

「……本当に、本当に世界を滅ぼすためではないの?」

縋る様に、ミュリエルは尋ねる。

此処で否定してくれれば、自分はキッパリと恭也を拒絶できる。

でも……

「あぁ、俺達は護る為に戦っている」

恭也は、ハッキリと肯定する。

その言葉で、ミュリエルは折れた。

「お願いです、恭也……貴方の言う未来に、私の居場所を作って……」

そのまま、ミュリエルは恭也に抱きつく。

「歓迎するぞ、ミュリエル」

そんなミュリエルの頭を、恭也は優しく撫でてやる。

「……二人とも、私の事忘れてないかしら?」

そこで、恭也とミュリエルの隣から凄まじい怒気を孕んだ声が響く。

その声を聞いて、ミュリエルはハッとして恭也から離れる。

「恭也、ミュリエルを仲間にするとはいっても、どうやってみんなを納得させるの?」

「正直に話せば、皆納得するだろう。 流石に単独での行動には制限が掛かるとは思うが、誰か監視に付けておけば誰も文句は言うまい」

「まぁ、ミュリエルの実力は私もロベリアも認めているしね」

千年前に幾度も戦ったからこそ、ミュリエルの実力はロベリアもイムニティも知っているし、認めてもいる。

「それに、なのはの家庭教師に、ミュリエルほど最適な者もいまい」

その言葉に、イムニティは納得した。

イムニティは魔法を使えると言っても、やはり後方からの援護魔法に重点が偏ってしまう。

その点、ミュリエルはオールマイティに魔法を使える魔術師だ。

新しく魔法を覚えようとしているなのはには、うってつけの家庭教師になる。

「なのはとは、あの不破 なのはさんのことですか?」

「あぁ、俺の妹のなのはだ」

ミュリエルの問いに、恭也は答える。

「彼女も、貴方達が神を倒そうとしている事を知っているのですか?」

「えぇ、なのはの他には私と恭也、ロベリアと堕天使人形(ルシファー・ドール)のエンディアが知っているわ」

「今の所、ミュリエルをいれて6人だけしか知らないと言うことになる」

イムニティの説明に、恭也が付け足す。

「ミュリエル、これから先神を倒すまでに必ず王国との戦いはある……それでも、いいな?」

最後の確認のように、恭也は手を差し出しながら尋ねる。

「……えぇ。 恭也、私は貴方の思い描く未来の為に、貴方達と共に戦うわ」

その手をとって、ミュリエルは答えた。

今此処に、稀代の魔術師と歌われたミュリエル・シアフィールドが堕ち鴉の元へと集った。

一方、王国ではこの事態に関して救世主候補達には内密にと言うことになった。

歯車は止まらない。

訪れるであろう未来へと向かって、歯車はその動きを早める……

 

 

 

 


あとがき

堕ち鴉第34弾をおおくりしました〜〜

フィーア「今回は、ミュリエルが仲間になるところね」

うん。 まぁ、多少浩さんの書いてくれたお話と似ているけどね……

フィーア「あんたの力不足ね」

言い返せない…

フィーア「この後どうなるの?」

とりあえず、次回はミュリエルが召喚器を手に入れる辺りかな。

フィーア「って事は、ガルガンチュワも次回に回すの?」

結果的にそうなったね。

フィーア「本当に無計画男ね、あんた」

あは、あはははは……はぁ。

フィーア「まったく……ではでは〜〜〜」





益々強くなっていく破滅軍。
美姫 「でも、恭也たちの本当の目的はただ一つ」
しかも、そういう意味での仲間はまだ六人なんだな。
美姫 「次はミュリエルの召還器のお話になるのかしら」
楽しみにしてます。
美姫 「待っていますね〜」



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