An unexpected excuse

   〜鳥羽莉続編〜





 

 

『鳥羽莉が生きる事を望まない者が鳥羽莉に剣を向けるなら、俺はその切っ先を全て打ち払ってみせる

鳥羽莉が生きる事を許さない者が鳥羽莉に呪いの言葉を投げ掛けるなら、俺はその万倍もの祝福の言葉を送ろう

例え何人が命じようと、俺は鳥羽莉を死なせはしない』

 

 

 

恭也が高校を卒業して、早一週間がすぎた。

卒業後、恭也はイギリスに世間には留学、知り合いには修行と言っておいた。

ただ、家族には、真実を話した。

勿論、反対もされたし、なのはにいたっては泣きついてきた。

だけど、恭也は自分の思いを曲げようとはしなかった。

これだけは、恭也にも譲れなかったのである。

あの時、哀しそうな眼をする鳥羽莉に会ってから……恭也は誓ったのだ。

月の輝く夜、己が剣に想いを込めて。

そして、とりあえずお正月などには帰ってくるという事で手を打ち、恭也は単身イギリスに渡った。

もちろん、自分の全てをかけて護りたい相手と、ずっと一緒にいるために……

 

 

 

長い飛行機の中を経て、恭也はロンドンの空港にいた。

そしてゲートをくぐり、空港のターミナルへと出てくる。

(確か……鳥羽莉達が迎えに来てくれるといっていたな……)

愛用のグリップオン時計を見ながら、恭也はそんな事を思う。

勿論、時間はすでにこちらに合わせてある。

(これから、鳥羽莉達との共同生活か……)

先の事を考えると、何故か表情が少し緩んだ。

それだけ楽しみなんだろうと、自分に言ってみた。

当面、恭也はボディガードの仕事をするつもりだ。

父、士郎と同じフリーランスのボディガードだ。

鳥羽莉達の白銀家がいくら超がつくほどの金持ちでも、さすがに4人とも何も仕事をしないというわけにもいかないと恭也は考えた。

だからこそ、恭也は今から少しずつ働こうと考えていた。

もちろん、それは鳥羽莉にも説明済みである。

最初はそんな事をしなくても大丈夫といわれたが……

恭也も、流石に養い続けてもらうことに抵抗があることを伝え、イギリスにいる間は仕事をする事を許された。

それを決めた直後、鳥羽莉はすぐにイギリスから移ろうと考えていたとか、いなかったとか。

そんな事を考えていた恭也の近くに、車が一台止まる。

普通の黒い車だった。

その車のドアが開き、中から……

「久しぶりね、恭也」

「あぁ、待たせた」

恭也の愛しい女性……白銀 鳥羽莉が現れた。

そして二人は笑顔で挨拶を交わす。

「きょーや、やっほ」

そして、助手席から一人の少女が恭也に抱きつく。

「朱音も、元気そうだな」

「もっちろん」

お互い、笑いながら言い合う。

この少女は白銀 朱音、鳥羽莉の双子の姉で同じく吸血鬼。

「恭也さん、お久しぶりです」

そして、運転席から一人の青年が現れる。

「あぁ、胡太郎も久しぶりだな」

抱きついてきた朱音を降ろし、恭也は挨拶を返す。

この青年は白銀 胡太郎。 朱音と鳥羽莉の弟で、朱音の恋人、そして同じく吸血鬼。

「さぁ、立ち話もなんですから……」

「そうだな」

胡太郎の言葉に頷き、恭也は荷物を後ろのトランクに入れ、後部座席に座る。

勿論、その隣には鳥羽莉が恭也に引っ付いて座る。

「鳥羽莉ちゃんいいなー、私もこたろーが運転手じゃなきゃずっと引っ付いてるのに」

「あははは、流石に運転中に抱きつかれちゃうと……なぁ」

朱音の言葉に苦笑して、胡太郎は車を発車させる。

「心配ない、後で車の免許の申請を行うからな。 それで、朱音も胡太郎に車内でも抱きつけるだろう」

苦笑しながら、恭也は言う。

「おっ、いいねぇ」

「だっ、駄目よっ!」

見事に、意見が分かれた白銀姉妹。

もちろん、上が朱音で下が鳥羽莉である。

「何で、鳥羽莉ちゃん? きょーやが免許持つくらいフトゥーだよ?」

不思議そうに、朱音は後部座席の鳥羽莉を見ながらたずねる。

「だっ、だって……恭也が運転すると…私が抱きつけなくなるし……」

顔を真っ赤にして、鳥羽莉は言う。

「でもでも、私だってこたろーに抱きつきたいし」

しかし、朱音は怯まずに言う。

「朱音、暫くは僕が運転するよ」

そんな二人に、胡太郎が苦笑しながら言う。

「今まで鳥羽莉は恭也さんとあんまり会えなかったんだしさ、ここにいる時ぐらいは、僕が運転するよ」

「まぁ、こたろーが言うんだったら……」

胡太郎の言葉に、しぶしぶ納得する朱音。

「じゃこたろー、今日もね」

「はいはい、判ってるよ」

ちなみに、何をとは言わない。

「だ、そうよ……恭也」

腕を組んで、自分の体を恭也に摺り寄せながら、鳥羽莉は恭也に言う。

「まぁ、ここはお言葉に甘えておこうか……」

恭也も小さく微笑みながら、鳥羽莉に言った。

 

 

 

「もう荷物は部屋に運んであるわ」

これから自分も住む家、白銀家にやってきて、恭也はまず部屋に荷物を置きに行った。

無論、鳥羽莉も一緒にである。

「いい部屋だな……」

自分の部屋を見渡し、恭也はそういう。

そして、壁4面のうち、2面に扉がついていた。

「この扉は?」

廊下側ではないほうの扉を見ながら、恭也は鳥羽莉に尋ねる。

「それは、私の部屋との出入り口よ」

しれっと、鳥羽莉は言う。

「となると、となりは鳥羽莉の部屋か」

小さく苦笑して、恭也は言った。

「ねぇ、恭也……」

ベッドに座った鳥羽莉は、恭也に呼びかける。

「どうした、鳥羽莉?」

どこか少し違う鳥羽莉の声に、恭也は疑問を感じて鳥羽莉のほうを向く。

「あの時の言葉……覚えてる?」

真剣な眼差しで、鳥羽莉は恭也に尋ねる。

「あぁ、勿論だ……あれは、俺に対する誓いでもあるからな」

恭也も、真剣な眼差しで鳥羽莉に答える。

「あの言葉を、もう一度、聞かせて、欲しいの」

鳥羽莉のワインレッドの眼が、恭也を捉える。

これは、再確認でもなんでもない。

ただ、恭也と暮らし始めるにあたって……どうしても、もう一度あの言葉を恭也自身から聞きたかった。

「いいぞ、俺は何度だって、鳥羽莉が望む限り言い続ける」

そう言って、恭也は一息をおいた。

「鳥羽莉が生きる事を望まない者が鳥羽莉に剣を向けるなら、俺はその切っ先を全て打ち払ってみせる。

鳥羽莉が生きる事を許さない者が鳥羽莉に呪いの言葉を投げ掛けるなら、俺はその万倍もの祝福の言葉を送ろう。

例え何人が命じようと、俺は鳥羽莉を死なせはしない」

一字一句、あの時と同じ言葉を、紡ぐ。

「保障なんて必要ない、俺が証明する」

聞いている鳥羽莉の瞳から、一粒、二粒、涙が零れ落ちる。

「鳥羽莉の心が、人となんら変わらないことを」

恭也は、鳥羽莉に近づきながら言う。

「そして、鳥羽莉と共に生き続ける事を―――――――」

言い終わった恭也に、鳥羽莉は勢いよく抱きついた。

多少よろけたが、恭也はちゃんと鳥羽莉を受けとめる。

「私を、一人にしないで……お願い―――――」

この言葉も、鳥羽莉があの時恭也に呟いた言葉。

「あぁ、約束する。 これからずっと、鳥羽莉が死ぬまで一緒だ」

「私も、約束するわ……恭也が死ぬまで、ずっと一緒よ……」

口付けと共に、あの日の誓いをもう一度……

そして、恭也はあの時……自分の血を鳥羽莉が飲み、鳥羽莉の血を飲むことで……吸血鬼となった。

数秒が、本当に永遠に感じ取れた。

余韻を残しつつ、二人は離れる。

「ねぇ、恭也……これからは、ずっと一緒よね」

そんな事を尋ねてくる鳥羽莉に、恭也は苦笑した。

そして、鳥羽莉を優しく抱きしめる。

「あぁ、言っただろう……お前が死ぬまでずっと一緒だと」

抱きしめて、鳥羽莉の頭を撫でながら言う恭也。

「鳥羽莉が聞きたくなったら、何度でも聞かせてやる……血が欲しくなったら、いつだってくれてやる」

もう、絶対に離れないと。

「俺の全ては、もう鳥羽莉だけのものだ」

「私も、私の全ては、恭也だけのものよ」

恭也の言葉に、鳥羽莉もおんなじことを言う。

そして、もう一度キス。

鳥羽莉は思った。

今、自分は世界中の誰よりも幸せだと。

自分の全てを愛してくれる人に会えて、本当に良かったと。

そしてこれからも、ずっと一緒に生きていく事を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

 

その場のノリと言いましょうか、勢いといいましょうか……An unexpected excuse 〜鳥羽莉続編〜でした。

フィーア「本当に、勢いよねぇ……」

今回は、ちょっと甘めにしてみた、つもり。

フィーア「最後はちょっとシリアスだけどね」

やっぱり、ボクに甘いのは向いてないね。

フィーア「まぁ、甘さは足りてないわよね」

う〜ん、甘さを出すにはどうすればいいのか……

フィーア「くさいセリフを書き綴るとか」

いや、それはなんか違うくないか?

フィーア「まっ、経験ね」

まぁとにかく、こうやって連続でお届けしました。

フィーア「また次回もよろしくお願いします」

ではでは〜〜〜〜




勢いでも良いじゃないか!
美姫 「いきなり何を…」
いや、俺も同じような感じでおとボクが続いたから。
美姫 「つまり、この機会に自分の弁護をしたのね」
うっ。そうはっきり言われると.…。
美姫 「アハトさん、ちゃんと甘いですよ」
うんうん。充分、ちょい甘です。
美姫 「あー、面白かったわ」
アハトさんありがとうございました〜。
美姫 「フィーアもおつかれさま〜」



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