恋姫†無双戯曲 −導きの刀と漆黒の弓−

 

第十話 −反董卓連合軍−

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一弦さん一弦さんっ♪ これから天の御使いって人の仲間の人達に会いに行くんスよね?」

 

「うん。愛紗さん達は……多分軍議には出てないはずだから」

 

「その愛紗さんって人があの噂に名高き関羽さんっスか? あたいも会うの楽しみっス♪」

 

「そう……ところで、さ、瑠那ちゃん?」

 

「? なんスか?」

 

「……なんで軍議に出てないの?」

 

白蓮が反董卓連合軍に参加を決めてから、事は目まぐるしく早く進んだ。

直ちに残留組を調整した白蓮は、結果的に軍全体の六割と志願者、合わせて七割近い軍を率いる事になり、一弦と二人でそれに追われた。

結局医療班として泉も志願し、出発までの間薬などの手配に追われていた所為もあり、誰も北平を離れた瑠那に気付かなかった。

そして……

 

「晋陽の代表として、軍議に参加しないと」

 

出発の日、晋陽に戻っていた瑠那は田豫に完全に晋陽を任せ、かつての義賊仲間を引き連れて北平に戻ってきた。

そして白蓮達と共に連合軍に参加すると言って付いて来たのだった。

にもかかわらず代表者として軍議に出ずに一弦に付いて来てしまった瑠那を窘める一弦だったが、瑠那はそんな事など何処吹く風で、

 

「いいんスよあたいは。飛び入り参加の義賊なんスから、どうせ行っても相手にもしてもらえないっス。公孫軍の仲間扱いしてもらって白蓮ねぇと一弦さんのお手伝い出来ればそれでいいっスから」

 

と言って頭の後ろで手を組んで笑う。

 

「そう……ありがとう、瑠那ちゃん」

 

しかし一弦は、そんな瑠那の言葉の裏に隠された真意を感じ取って小さく微笑んだ。

瑠那は白蓮と一弦が心配だったのだ。

姉と慕う人と、その人が慕っている、自分も大好きな人。そんな二人が戦いに出るというのだ。

しかも瑠那は一度、一弦が池の傍で思いつめた表情でたたずんでいたのを見ている。

その時は泉の手前調子を合わせてみたが、瑠那の頭にはその表情が焼き付いて離れない。

瑠那はその野生的な感のみで理解していた。一弦が決して望んで戦っているわけではない事を。

辛そうに何度も悩みながら、それでも何か譲れないものがあるから悩みや迷いを押し殺して戦っている。

そんな一弦と、一弦が護ろうとしている白蓮。大好きな二人の為に自分に出来る事を、瑠那は馬鹿を自称するその頭で必死に考えたのだ。

そして出した結論が、自分も一緒に戦う事。

白蓮を護れるように。一弦があの表情をしなくてすむように。

 

「いいっスよ。大体あたいだけ置いてかれたら寂しいじゃないっスか」

 

瑠那は照れたように笑う。

それが、もうその事には触れないで欲しいといっているようで、一弦もそれ以上何も言わずに足を進めた。

そして、

 

「えっと、ここのはずだけど……誰かいるかな?」

 

「あたい、適当に声かけてみるっスか?」

 

北郷軍の陣に到着した二人は、その入り口あたりで中を覗き込んできた。

そんな二人の姿を見つけたのは……

 

「ん? あれは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北郷軍の陣で待機していた愛紗は、同じく待機していたはずの鈴々が突然現れた犬を追いかけていってしまった為、それを探して陣の中を歩き回っていた。

 

「まったくアイツは……少し目を離すとすぐに勝手に何処かへいってしまうとは。なんだかんだ言ってもまだまだ子供という事か……」

 

さすがの鈴々もまさか一刀を待っているはずの今陣を出て行くとは思っていなかったのだが、念のためと思って陣の外の様子を見にいこうとした時、

 

「ん? あれは……」

 

入り口付近で辺りを見回している人影を見つけた。

不審者かと思い、青龍刀を握って近寄ってみた愛紗だったが、その人物が誰か分かると、

 

「一弦殿ではありませんかっ」

 

青龍刀を仕舞いこんで駆け寄った。

 

「あ、愛紗さん」

 

艶やかな黒髪をなびかせて駆け寄った愛紗に気付いた一弦。

 

「愛紗さんと鈴々ちゃんは残ってるんじゃないかと思って、挨拶に……一刀は、どうですか?」

 

「はい。近頃は朱里に読み書きを本格的に習い始め、またその習得の早さもなかなかのものとの話です。もう朱里なしでもある程度の政務をこなせるまでになったと朱里も喜んでおりました」

 

前に一弦と顔を合わせ、主人である一刀との関係を聞いた愛紗はそれ以来いまだに一弦を目上の人間としてみているらしく、その喋り方はまるで上司に報告をする部下のようだった。

一弦は、その事に多少の違和感を感じつつも一刀が上手くやっていることに安堵していたが、もう一人はそうではなかった。

 

「かっ一弦さんっ!? どっどどどどどういう事っスか!? ななななんであの噂に名高い天下の関羽将軍が一弦さんを上官扱いっス!? そっそれにその一刀って話の流れ的に天の御使い様っスよねっ!?」

 

実はその辺の事情をまったく知らない瑠那は、突然目の前で起きた出来事がただでさえ自分で認めてしまうほどに少ない脳の許容空間からすぐにこぼれ始める。

何も知らない人間から見れば確かにそれは異様な光景だろう。

地方の小太守である公孫賛の側近である一弦が、納める国こそ小さいがその名は天下に轟く関羽将軍と親しげに話しているのである。しかも事もあろうにその関羽の主である一刀を旧知の友人か、出来の悪い兄弟のように心配してみせている。

 

「説明をっ! 説明が欲しいっスよっ!」

 

「……あ、そうか」

 

一弦もやっと、瑠那に自分の事を何一つ話していない事に気がついた。

そしてその事を瑠那に説明しようとした時、

 

「娘っ!貴様少しは慎めっ!」

 

今まで黙って聞いていた愛紗が口を挟んだ。

そしてずいっと一弦と瑠那の間に割って入ると、誇らしげに、高らかに宣言した。

 

「この方こそ我が主、北郷一刀様を天の国に居られし時より護り続けた天の御使い様の守護者! 現在は北の勇者、公孫賛様より受けられた御恩に報いるために彼女に仕える仁義と忠義の士!! 嶋都一弦殿だぞっ!!!!」

 

まるで自分の事のようにそう言って誇らしげに胸を張る愛紗。

当の本人である一弦はそんな愛紗の言葉に困ったように口元を歪めている。

 

「さらに言えばこちらの一弦殿は、我等が主が真の信頼を置いておられる御友人。つまり本来ならば天の御使いである我等が主、北郷一刀様と肩を並べているべき御方なのだ!」

 

「……そんなに大層な人間じゃないよ、僕は」

 

謙遜しているというより本当に困り果ててしまっている一弦。

しかし愛紗はそんな一弦の気持ちも知らずに、次々と瑠那に一弦がいかに大人物であるかという高説を聞かせている。

そして、段々気分が乗ってきた愛紗につられて話にのめり込んでいってしまう瑠那。

 

「あ、あたいはそんな恐れ多い人に今まですっかりお世話になりっぱなしだったんスか!? か、一弦さんっ。今までのご無礼、ひらにご容赦をっス!!」

 

「い、いや、瑠那ちゃんまでそんな……愛紗さんも。そろそろ、やめていただけませんか? 瑠那ちゃんがすっかり信じ込んじゃってるので」

 

「何を仰います、一弦殿! ご主人様も以前仰っておりました。一弦殿は親友であり、兄弟のようでもあったと。つまり貴方は私と鈴々にとってもお義兄様同然という事。そんな方に先ほどからこの娘は……」

 

と、散々御高説を述べていた愛紗はそこでようやく気がついたらしい。

何度か首を捻った後、不思議そうな表情を一弦に向けた愛紗は、少々戸惑った様子の歯切れの悪さで尋ねた。

 

「と、ところで一弦殿……この娘はいったい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう……義賊、ですか」

 

やっとの事で今まで散々熱く語っていた相手が実は初対面であった事に気付いた愛紗。

瑠那が実は元黄巾党の義賊である事を知ると、少し感心したように声を上げた。実際はそれまでの自分の行動を顧みてなんとなく気恥ずかしかったのかもしれないが。

 

「はいっス。あたい、黄巾党の人に拾われたんスけど、どうも人様から物奪って正義だなんだってのに納得いかなくて」

 

「で、今は助けた町の県令になってしまっているのか」

 

「そぉっス。あたい馬鹿だから県令になって助けてくれって言われて嬉しくて、つい考えなしになっちゃったんスけど、すぐに仕事とか何をどうしたらいいのかさっぱり分からなくなっちゃったんス。そんな時、ご近所さんの遼西の太守様なら心優しくて聡明な方だから何とかしてくれるかもって話聞いて、あたいすっ飛んでったんス」

 

嬉しそうに話している瑠那だが、内容は笑い事ではない。

成り行きで一つの町を、しかもそれなりに大きな町を収める事になってしまったのだ。

しかし瑠那はそんな苦労よりも白蓮や一弦達に出会えたことのほうが嬉しいらしく、

 

「そしたらやっぱり白蓮ねぇ、じゃなくて公孫賛様は良い人で、一弦さんに頼んで策を授けてくれたっス。だからあたい、今度は少しでも二人の役に立ちたくて義賊の時の仲間連れてついてきたっス」

 

と、本当に嬉しそうに八重歯を覗かせて笑う。

そして、そんな瑠那に優しげに微笑んでいる一弦。

 

「いや、これは失礼をした。改めて、私は関雲長と申すもの。以後よろしく頼む」

 

そんな二人を見て愛紗は、今までの自分の行いを詫びた。

 

「いやいやいやっ!? 失礼だなんてとんでもないっスよっ!? あたいこそさっきから馴れ馴れしくてすいませんっス!」

 

しかし、そんな愛紗に逆に恐縮してしまう瑠那。

今まで賊という扱いを受け、底辺での暮らしの長い瑠那にとって、愛紗のような名高い人間に謝罪される経験など皆無なのだ。

そんな瑠那の慌てっぷりに、愛紗も次第に親しみを感じ出して苦笑が混じりだす。

 

「ところで、まだ名を聞いていないのだが?」

 

「あっ!? す、すいませんス! あたい、姓は張で、名は燕っス! 字はないっス!」

 

「ほう!? 御主あの“飛燕”か! いや、噂には聞いていたぞ? 黄巾党の中に燕のような速さで盗みを働く、しかし殺しはしない変わった盗賊がいると」

 

「え、そ、そんな……さっき言ったとおりっスよ。関係ない人から物奪って、そんで人殺しまでして正義なんて納得いかなかっただけっス。生きる為に盗みは仕方なかったっスけど……」

 

少しだけ表情が暗くなる瑠那。どうやら昔の話題はあまり触れて欲しくないらしい。

 

「それより愛紗さん。鈴々ちゃんはどうしたんです?」

 

「……え?」

 

そんな空気をよんで、さりげなく話題を変えた一弦。

しかし愛紗のほうはまったく予期していなかった為、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

「あ、鈴々さんって張飛さんスよね? なんか名前似てるんで会ってみたかったっス!」

 

ついで一弦の話題すり替えに乗っかった瑠那のそんな言葉に愛紗はようやっと自分に聞かれている事を理解し、そして……

 

「…………………………あ゛」

 

そして思い出した。自分がそもそも何をする為に陣の中を歩き回っていたのかを。

どちらかと言えば真面目でしっかりした感じの愛紗のそんな様子に一弦と瑠那が顔を見合わせて首を捻っていると、

 

「申し訳ありません。実は今、鈴々を探している最中でして……」

 

と愛紗がすまなそうに少し言いよどみながら軽く頭を下げた。

 

「実は、少し目を放した隙に何処かにいなくなってしまいまして。おそらく犬でも見かけて追いかけていったのだとは思うのですが……」

 

「……それでは一緒に探しましょう。僕も、鈴々ちゃんに挨拶しておきたいし」

 

「申し訳ない。しかしそろそろご主人様達も戻る頃でしょうし、手分けするよりも三人で視野を広くもって探すほうがよいでしょう……ん? どうかされたか、張燕」

 

探すならば散らばって二次災害を引き起こすよりも全員で固まって。そう思って提案した愛紗だったが、ふと瑠那があらぬ方向をじっと見ているのに気がついた。

 

「どうしたの、瑠那ちゃん?」

 

一弦もそんな瑠那の様子に気付いて声をかける。

よくみると瑠那は、なにやら遠くを見つめているようだった。愛紗も同じ方向を見てみるが、特に何も見当たらない。

 

「えっと……関羽さん?」

 

ようやく口を開いた瑠那は、視線を見ている何かから外さずに愛紗に問いかける。

 

「張飛さんって……髪の短い元気そうな女の子っスか?」

 

「? そうだが……まさか見えるのか?」

 

「たぶん……あっちのほうにそんな女の子がいるっス。後……なんかちっさい動くもの追いかけてるっスよ?」

 

そんな瑠那の言葉に一弦も、愛紗と同じように瑠那の視線を追ってみる。

元々が遠くの的でもかなり正確に射ることの出来る弓兵な一弦。その視力は、集中力と共に並大抵のものではない。

 

「あ……いますね」

 

「見えるのですかっ!?」

 

「ええ……あれは……犬、ですね」

 

この中で唯一殆ど何も見えていない愛紗は、一弦の思わぬ能力に驚きの声をあげる。

瑠那も、鈴々が追いかけているものが犬とまでは見えなかったらしく、

 

「一弦さん凄いっス! あたいより目が良い人初めて会ったっスよ!? ってゆーか一弦さん目が髪で隠れてるのにどうやって見てるっスか!?」

 

と同じく驚いている。

驚き方が多少失礼ではあったが、一弦にとって目が隠れて見えないのはわざとやっている事なので対して気にも留めない。

 

「では行って連れて参りますので、少々お待ちください」

 

そう言って走り去っていく愛紗の後姿を見送りながら、一弦と瑠那はやる事がなくなってその場に立ち尽くした。

 

「……ねぇ一弦さん……」

 

「ん?」

 

「……張飛さんって……ちっさいんスね?」

 

「……たぶん、本人の前では……言わないほうがいいよ?」

 

「……はいっス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛紗が鈴々を叱りつけながら、なんとか一弦達のところまで連れてきてから暫くして。

 

「ただいま〜……って、お? 一弦」

 

「あ、一弦さん。お久しぶりです」

 

一刀と朱里が軍議から戻ってきた。

 

「やっぱりまだここにいたか」

 

「もうっ! 二人とも帰ってこないから心配してたのよんっ! 一刀君も一緒にこっちに挨拶に来てくれたのにまだ帰ってないから。内緒でイイコトしてるんじゃないかしらって気が気じゃなかったんだから…………主に白蓮ちゃんが」

 

「うっ!? うぅぅぅうるさいっ! わっ私はただ一弦達の帰りが遅いから心配して……」

 

「一弦“達”じゃなくてか・い・と・のっ、でしょん?」

 

白蓮と泉を連れて。

 

「それで、ご主人様、朱里。軍議のほうは?」

 

そんな勇んだ愛紗の言葉に、何故か言葉を濁す一刀、朱里、そして白蓮の三人。

互いに顔を見合わせて、苦笑いのような表情を浮かべる。

 

「……あまり……上手くいかなかったようですね?」

 

そんな三人に、一弦のそんな気遣わしげな声。なんとなく三人の表情で分かったのだろう。

また、その三人も一弦のそんな声がきっかけとなり、軍議の様子を一とおり話し始めた。

とは言っても……

 

「と、いう事はなんですか? ほとんど袁紹の自己主張を聞かされただけと?」

 

「あと袁紹と曹操のくだらない口喧嘩な」

 

呆れたといった調子の愛紗に白蓮が苦笑を零しながら付け足す。

 

「鈴々はお留守番でよかったのだ」

 

まだ小さい鈴々まで、そのあまりのくだらなさに殆ど言葉もないらしい。

 

「って訳で、とりあえず配置なんかは後で知らせてくるって話になって、皆解散」

 

「袁紹さんの様子ですと、そんなに早く決まるとも思えませんでしたね」

 

「で、それじゃあってんで北郷は一弦に挨拶にウチの陣に来たんだけど、いなかったんで多分こっちだろうって泉を連れてきたって訳だ」

 

あまり長い話にもならなかったが、とりあえずこれまでの経緯は終了。

結果として、その場の全員に果てしない脱力感を与えるだけの物となった。

 

「ま、そんな訳だ。一弦、随分久しぶりに感じるけど、元気だったか? なんか仲間増えたみたいだけど」

 

「うん。皆良くしてくれるから……あと、この娘は……」

 

「あっあたいは張燕っス! よろしくお願いしますっス! 天の御使い様っ!」

 

一弦が紹介しようとすると、瑠那は自ら進んで前に出た。

心なしか緊張した面持ちでペコリとお辞儀をしてみせる瑠那に、一刀は人懐っこい笑顔で、

 

「おうっ! 俺は北郷一刀。一応天の御使いって事になってるけど、実際はそんなにたいした人間じゃないんだ。まぁそんなに畏まらないで、よろしくな」

 

と少しおどけて見せた。

 

「……おい瑠那。お前なんで私の時より緊張してんだ? 立場的には私のほうが上だろ?」

 

そんな瑠那の態度に納得がいかないのは白蓮。

それもそのはず。一刀は立場上は瑠那と同じ県令で、白蓮は領土は小さいとはいえ太守。

立場でいうならば白蓮こそ敬われるべき人間なのだ。

しかし瑠那は、

 

「だって白蓮ねぇはなんか“お姉ちゃん”って感じっスもん。北郷様はなんかあたい達とは“違う人”って感じがするっス」

 

とまったく動じない。

 

「じゃあ一弦殿はどうなんだ?」

 

そんな瑠那の言葉が逆に気になったのは愛紗。

瑠那の感性で言えば、一弦は一刀と同列にされていてもおかしくないはず。現に愛紗は一弦の事を、自分の主人の次に高い位置に置いている。

 

「一弦さんは……なんか優しい匂いがするからあんまりそういうの考えないっスね。白蓮ねぇと同じような感じっス」

 

「あらん♪ 瑠那ちゃんてば“匂い”だなんて結構大胆ねん♪」

 

「かっ一弦!? おおお前っ、こっこの娘と一体何をっ!?」

 

瑠那の取り様によってはかなりの問題発言になってしまう言葉に、泉に煽られる形で見事に乗ってしまった一刀。

案の定というかなんというか、そこは一刀も男の子。しかも自分の親友である一弦が、見ようによっては女性にも見えなくはない一弦が瑠那と……

そんな妄想に思わず前屈み、もとい身を乗り出してしまう一刀を、しかし一弦は窘める事も誤解を解く事もその場では出来なかった。

なぜなら……

 

「ご主人様ぁ?」

 

そこには黒く艶やかな髪を靡かせた美しい鬼が立っていたから。

 

「事もあろうにご自分の御友人とそのお仲間で“な・に・を”ご想像なさっていらっしゃったので?」

 

「はわわわわわわっ!?」

 

「一刀…………見損なったよ」

 

「ばっ!? ほっ北郷おまっ!? そんな目で一弦の事見てたのかっ!? ってか普通に男と女じゃねぇかっ!」

 

「あららぁ♪ ……両刀さんだったのねん、天の御使い様ってば♪」

 

そして愛紗に同調するように一刀を囲む朱里、一弦、白蓮、そして泉。

朱里は愛紗の鬼の形相に怯え、一弦は自分の肩を抱きながら、白蓮は剣でも抜きそうな勢いで、泉は両頬を押さえて嬉しそうに、それぞれ一刀を取り囲む。

 

「え? ちょ…愛紗さん? 一弦も……それに皆もなにを勘違いして……えぇ!? そ、そんなっ!? ちょっ! 待てって!」

 

五人の疑りの視線に耐えられなくなった一刀が次第にパニックになり始める中、一刀の想像にまで理解が及ばなかった瑠那と鈴々は……

 

「なんスかねぇ?」

 

「わかんないけど、多分お兄ちゃんがなんかいやらしい事を想像したって事くらいは分かるのだ」

 

「……あたい、想像されたっスか?」

 

「……多分なのだ」

 

「……一弦さんと?」

 

「……多分」

 

「ならいいっス! 御使い様とならちょっと嫌っスけど、一弦さんとなら問題ないっス!」

 

「……お気楽なのだ」

 

とりあえず仲良くはなっているらしい。

そんなこんなで北郷の陣営が少々違った意味で殺気立ち始めたそんな時、

 

「失礼するっ! 我が主、曹孟徳が関将軍に用があって参った! 関将軍はどこかっ!」

 

新たな問題の種が北郷陣にやってきた。

 

 

 

 


あとがき

 

というわけで反董卓連合軍で再び顔を合わせた一弦と一刀。

新たな仲間である瑠那がいろんな意味で目立ってますが、とりあえず彼女も県令としてではなく、公孫軍に協力する義賊として参戦いたしました。まぁ名目は協力者で、実際は白蓮の部下みたいなもんですが。

そして再開して早々に愛紗達から疑りの視線を前進にビシバシ受ける一刀。

前の世界でも一度ありましたが、一刀は基本的に一弦の外見については色々と好からぬ考えがあったりなかったりするようです。ってか白蓮も言ってるけど、普通に男と女なんだからそういう風に想像してやれよ、一刀。

ってなわけで次回は超ドSな彼女が北郷陣営にやってきますw

偶然にも居合わせてしまった公孫ファミリーの皆さんはどうするのか!? ってかどうなるのかっ!?

では、次回でまた〜♪




新メンバーと一刀たちの初顔合わせって感じかな。
美姫 「そうね。それにしても、一刀の想像はどうなのよ」
まあまあ。今回はちょっとのんびりした感じだけれど、次回はどうなる事やら。
美姫 「何せ、彼女の登場だものね」
うんうん。一体どうなるのかな。
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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