恋姫†無双戯曲 −導きの刀と漆黒の弓−

 

第十七話 −虎牢関、決着−

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虎牢関の決戦。

袁尚によって無理やり先鋒にされてしまった一刀達北郷軍だったが、水関での意趣返しを発案した朱里の策によって上手く曹操軍と孫権軍に敵本隊を押し付けることに成功。

一気に戦線に復帰して見事、虎牢関に一番乗りをしてみせたのだが……

 

「っ!? くぅっ!?……」

 

「うにゃあっ!?」

 

「……弱い」

 

よりにもよってこの戦い最強の敵が最後の最後に待ち構えていた。

 

「くっ……さすがに三国無双と呼ばれるだけはあるな、呂布奉先」

 

「めちゃくちゃ強いのだっ」

 

その最強、呂布と相対している愛紗と鈴々は二人がかりにもかかわらず、互角どころか押されてしまっている。

そしてそんな二人の懇親の一撃もきちんと押し返す呂布のその様はそれこそ、彼女本人が虎牢関を破壊してしまいそうな程の気迫と威圧感に満ち溢れていた。

 

「……ふんっ」

 

そしてその表現しがたい威圧感を常に放ちつつ、愛紗と鈴々の二人の攻撃の合い間に死神の鎌のごとき必殺の攻撃を繰り出し、二人の命を脅かし続ける。

 

「くっ!?」

 

「にゃにゃっ!? ……はぁ、はぁ……くっそー! どうしてそんなに元気なままなのだっ!?」

 

関雲長と張益徳という二人の豪傑をもってしてなお余裕の見える呂布に、苦虫を噛み潰したような表情の愛紗と苛立ちを隠そうともしない鈴々。

そんな様子を見た一刀と朱里は、とある決断をする。

それは少し前、朱里が愛紗達を助けるために献策していたある一手。

一刀はそれを今まで、二人の将としての誇りを傷つけまいと実行に移す決断を保留していた。

しかし今その一刀の眼前では、赤髪の少女一人相手に劣勢に追い込まれてしまっている愛紗と鈴々の苦悶が表情を浮かべている。

そんな二人を見て一刀は、もしかしたら二人を失ってしまうかもしれないという耐え難い恐怖に襲われた。

 

(そんな事……させない。そんな事になるくらいなら、二人に恨まれたほうがまだマシだっ!)

 

「……朱里……頼む。後は全部俺が引き受けるから」

 

「御意です! 兵隊さん達、お願いします!」

 

そうしてついに決断した一刀に、朱里は迅速に動き出す。

 

(せっかく……せっかくご主人様がご決断されたんだもの。何が何でも成功させなくちゃ!)

 

予め準備は済ませていた。

一刀の決断がどんなにギリギリであろうとそれに応えられるように。

一刀が、自分の決断が遅れた所為で、などと後悔する結果になる事だけは絶対にないように。

 

「……もう、終わらせる」

 

一刀の決断から程なくして、呂布がそう呟いた。

さすがの彼女の表情にも疲労が見て取れる事から見て、そろそろ決めにかかろうという所なのだろう。

しかし対する愛紗と鈴々はというと……

 

「はぁ……はぁ……はぁ……そ、それはこちらの……台詞だ」

 

「はぁ……はぁ……そうなのだっ! もう終わらせてやるのだっ!」

 

疲労困憊。

なんとか立ってはいるものの、正直なんの支えも無しに二本足で立っているのが不思議なほど消耗している。

呂布を打ち崩そうとあれだけ怒涛の攻撃を続けながら尚且つ、その合い間に繰り出される凶悪な攻撃に気を配らないといけないのだ。いくら愛紗と鈴々と言えど、そんな事を休みなくいつまでも続けていられるはずがない。

三人が三人、最後の一撃を繰り出そうと身構える中一刀の耳に、彼にとっては聞くに堪えない言葉が滑り込む。

 

「愛紗……どっちが死んでも恨みっこなしなのだ」

 

「ああ……残ったほうがご主人様を護っていく。それでいいな?」

 

ザワッと、全身の毛穴が開くような悪寒に襲われる一刀。

二人がここで、命を賭して勝ちを掴もうとしている姿を見て迷いなく、最後の決断をした。

しかし一刀にとってはそんな勝利、何の意味もなかったから。

 

「朱里! 今だっ!」

 

勢いをつけようと後退し、距離を広げたその時に、一刀はその絶妙なタイミングで朱里に合図を送った。

 

「はいっ!」

 

その合図を今か今かと待っていた朱里が、声とほぼ同時に兵達に指示を送る。

そして……

 

「……っ!?」

 

「な……にっ!? ご主人様っ!?」

 

「にゃっ!? お兄ちゃん、邪魔するなー!」

 

兵達が投げた大きな網が、呂布を絡めとった。

さすがに豪傑二人と長時間にわたって戦っていただけあって疲労もあり、一刀と朱里の側近全員を総動員させたその網をどうすることも出来ない呂布。

 

「……ごめん。……さっきの二人の話聞いて、万が一にでも二人を失うかもって……そう思ったらもう、我慢できなかった」

 

そんな中一刀は、真っ先に愛紗と鈴々の前に歩み出て頭を深く下げた。

 

「二人が武人としてこんな結末を望んでない事は分かってたんだけど……でも、それでも二人を死なせたくなかったんだ」

 

「そ、それは……しかし……」

 

そう言ってくれるのは嬉しい。

愛紗の中に武人としての行き場のない怒りと、女としての抑えきれない喜びが入り混じる。

 

「……卑怯者!」

 

しかし呂布にはそんな事など関係ない。

自分が勝てていたはずの勝負をこんな形で強制的に終了させられ、しかも捕らえられてしまった憤りの言葉を容赦なく戦っていた相手、愛紗と鈴々に吐き出す。

犬歯をむき出しにして怒りをかみ殺す鈴々と、決して向けられたくはなかった言葉を吐きかけられて俯く愛紗。

そんな中一刀は呂布に対して、傍まで近づいてまっすぐに瞳を覗き込んだ。

 

「関羽も張飛も卑怯者じゃない。これは俺が大切な二人に死んでほしくなくて勝手にやった事だから、怨むなら俺を恨んでくれ。俺は弱いから、この方法でしか助けられなかったんだ」

 

そしてなんとその場で手をついて、

 

「ごめん」

 

と、額を床にこすり付けるようにして頭を下げて謝罪した。

 

「愛紗と鈴々も、ごめん。これで愛想をつかされても、俺は何にも文句は言えない。誇りを傷つけた俺を許せないなら……ここで俺を捨ててくれ」

 

「そっ、そんなっ!? ご、ご主人さまこれは――っ!?」

 

その策を出した張本人である朱里が慌てて駆け寄って助け起こそうとするが、一刀はそれでもなお頭を下げ続ける。

 

「朱里……俺は二人に助けられてこうして生きてるんだ。なのに二人の誇りを傷つけた。だから……」

 

すべて覚悟の上。

それでも一刀はどちらかが死んでもう一人とこの先を進むより、ここで離別してでも二人とも生き残れる方を選んだ。

二人とも、大切だから。

優劣などつけられないし、それをすることすら許されないくらい大切な二人だったから。

だから自分のために命を失ってしまうくらいなら、ここで怨まれても二人とも助ける方法をとったのだ。

そしてそんな二人を大切に思う一刀の気持ちが、彼を主人として信頼する彼女達に届かないはずがなかった。

 

「ご主人様……もういいです。お気持ちは、その……嬉しかったですから」

 

「鈴々達の事大切に思ってくれたからなんて言われたら、怒れないのだ」

 

無邪気に嬉しそうに笑う鈴々。

仕方がないといった苦笑を表向きは浮かべる愛紗も、内心は早鐘のようになる鼓動を抑えるのに精一杯なほどその表情を作るのに必死。どうしても隠せない朱に染まった頬がそれを表していた。

そんな、つい先ほどまで戦場だったとは思えないほどの暖かい空気の中で、一刀は改めて自分を信じてくれる三人に深く頭を下げた。

 

「愛紗、鈴々、朱里………………ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ヘン」

 

そして、絆を深め合う四人を少し遠目から見て、そうポツリと洩らした呂布。

彼女からしてみれば一刀は、自分の勝利に水を差した恥ずべき男のはずだった。

それなのに今その一刀は、助け起こそうとする仲間達を拒否して自分に頭を下げている。

網の中にいる彼女に向かって額を床につけて謝罪している一刀の姿は、普通ならば酷く滑稽に見えるはずだった。

なのに……

 

「………………情けなく、ない」

 

自分に頭を下げているこの男がただの情けない男には、彼女にはどうしても見えなかった。

関羽と張飛を助ける為に卑怯な手段を使った一刀を彼女は、これ以上糾弾する気にはなれなかったのだ。

 

「…………もういい」

 

一刀に一言そういった呂布は、ゆっくりと彼が頭を上げるのを見て静かに立ち上がった。

すると一刀はそんな彼女に対して笑顔で、

 

「ありがとう、呂布さん」

 

と、感謝の言葉を口にする。

そして呂布の網を持つ兵達に真剣な表情で、

 

「一応網は解けないけど、だからと言って彼女に危害を加える事は許さない。丁重に、お連れしてくれ」

 

と念を押すと、呂布に向き直って再度頭を下げた。

 

「立場上敵同士だから、捕虜扱いになっちゃうのは勘弁してほしい。なるべく不自由のないように手配するから、暫く大人しくしてて貰えないかな」

 

そして呂布は、本能で悟る。

ここで一番偉いはずのこの男は、決して偉ぶらないし驕らない男なのだと。

そう。まるで自分の主君である彼女と同じように。

 

「…………わかった」

 

だから彼女は従った。

いつでも逃げ出せるこの状況でこの男、北郷一刀に従う事を選んだ。

まるで彼女にとってそうする事こそが一番正しい道なのだと、本能で悟ったかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ほ、頬が緩むのが止められなぃ〜!)

 

大切だから、どんな卑怯な手を使ってでも護りたかった。

そんな一刀の言葉にもう、女としての自分が止まらなくなり始める愛紗。

誇り高き武神、関雲長も一刀にかかってしまえば、どんな事をしても護りたい女の子となってしまう。

本来ならば自分が一刀を護る立場にあるという事は重々承知していても、そんな一刀の気持ちが気が狂いそうなほど嬉しいと感じている自分がいる事を愛紗は最初、戸惑った。

自分の武が信頼されていないからだと感じて気が立ってしまったこともあった。

でも……

 

(しかし結局……私も女、という事なのだろうな)

 

今はもうはっきりと、そう割り切れる。

戦場に出る前一刀がくれる優しい言葉と、心から心配していると分かる視線が嬉しい、と。

武神・関羽として北郷一刀を主とした彼女は今、女・愛紗として彼を求めている事を認めた。

 

 

 

 

 

鈴々の心は今、完全に舞い上がっていた。

呂布との戦いに水を差された事などもう、頭の中から完全に消え去ってしまっていた。

 

(お兄ちゃん、鈴々の事大事って言ってくれたのだ! 勝つよりも鈴々が生きてるほうがいいって言ってくれたのだ!)

 

それは鈴々が愛紗以外から受ける、初めての愛情だった。

孤児として育ち、愛紗と共に旅するだけだった鈴々。

愛紗がいればもう何もいらないと思っていた彼女は、もういない。

一刀の気持ちはまさしく、無償の愛情だったから。

親のない鈴々にはそんな、何よりも彼女自身が大切だという気持ちが嬉しくてたまらない。

負けてもいい。

自分は怨まれても、殺されてしまってもいい。

ただ、生きていてほしかったという一刀の気持ちに触れた鈴々は心に誓う。

強くなろう、と。

自分一人でなくてもいい。

鈴々には愛紗もいる。

二人で戦えば無敵。それでいい。

 

(お兄ちゃんはもう、絶対に悲しませないのだっ!)

 

この日、一刀は鈴々にとって絶対に失ってはならないものとなった。

 

 

 

 

 

呂布との一件で一層一刀への信頼を深めたのは、朱里。

立場上一刀と同じく最前線には立つことの出来ない彼女は、一刀のあり方に改めて尊敬の念を抱いていた。

結果的にどちらか、もしくは最悪両方を失いかねなかった状況で、仲間が死ぬくらいならと躊躇なく二人の誇りよりも命を護り、自分がその責を負う事を選んだ彼に。

 

(この方なら……この方の為なら、私……)

 

網を投げるように指示したその時朱里は、もしその事で愛紗と鈴々が一刀と袂を分かつ流れになりそうになったら自分が名乗り出ようと心に決めていた。

しかしそれはあくまでも、献策したのが自分であるというのが事実だから。

だが今朱里は、そんな理屈をすべて捨てた。

自分が責を負う覚悟で二人の誇りよりも命を優先させ、策を出したのは朱里なのにも関わらずそれに関しては一切口を割ろうと、言い訳をしようとはしなかった一刀。

そんな一刀の姿に朱里は、自分達三人が一刀にどれだけ想われているのかを感じて喜びに打ち震えた。

 

(ご主人様はご自分の名より、どんな実益よりも私達を大切に想ってくれてるんだ)

 

改めて決意する。

傍から見ればただの小さな子供でしかなかったはずの自分に軍師としての位を与え、どんな言葉にも真剣に耳を傾け、必要とあらば全権を任せる事すら厭わないこの北郷一刀に自分は最後までついていこうと。

今回二人の誇りを傷つけるような策を出した朱里の名前を一度も出さずにすべての責任を背負い込んだ、どこまでも優しいこの人ならば、自分の理想を絶対に叶えてくれるはずだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀達が呂布を捕らえ、虎牢関の戦いにも終止符が打たれる。

戦い続けていた残りの兵達も最後の砦であった呂布の敗戦を聞いて次々と投降を始めていた。

そしてそんな中、最後のほうでこそかなり脱線していたものの、蘭華の話によってこの戦の裏事情をきちんと把握した白蓮達。

そして導き出した結論はまさしく、詠こと賈駆文和が予想し、蘭華が期待したとおりのものだった。

 

「白蓮ねぇ! 一弦さん! 降参した兵隊さん達がどんどんあたい等を頼ってきてるっスよ〜」

 

敗戦を悟った兵達が続々と白蓮達を頼って降ってくる。

そう。白蓮はそのお人好しな性格を遺憾なく発揮し、降ってくる兵達を受け入れるという結論に至ったのだ。

それの受け入れと管理に回っていた瑠那の声に一弦と白蓮は慌てて、

 

「る、瑠那ちゃん!?」

 

「わっ!? こらっ瑠那っ!? もっと小さな声で話せよ! 私たちが蘭華を受け入れて董卓軍の動きと合わせてるの、バレたらただじゃすまないんだからなっ!?」

 

と瑠那の頭を抱え込み、声を低くして叱咤する。

そう。虎牢関の戦そのものはもうすでに事実上終わっていたとしても、敵方の主要人物と呼んでも過言ではない蘭華と事実上協力体制にある、というか彼女を仲間に入れて影から事態の収拾にあたっている事を他の諸侯に知られてしまうのはあまり都合が良くないのだ。

一つ下手を打てば、彼女達公孫賛軍そのものが董卓と初めから内通していたと見られ、討伐の対象にもなってしまいかねない。

生来のお人好しゆえに快く蘭華の申し出を受けた白蓮だったが、自分が危ない橋を渡っているという自覚はきちんと持っていた。

 

「あっ!? ご、ごめんなさいっス……」

 

「ったく……気をつけてくれよ? んで? 人数はどのくらいだ?」

 

「あ、それなんすスけど……実はちょっと大変なことになってるっス」

 

「……大変なこと?」

 

そうは言いながらもあまり慌てた様子のない瑠那のその様子に少し違和感を覚える一弦。

瑠那の様子は一弦の目からみるとむしろ、“困っている”“戸惑っている”といった感じに映っていた。

どうやらその一弦の印象は正解だったらしく瑠那は、

 

「そ、その〜……まぁとにかく来てほしいっスよ。あ、あと蘭華さんも一緒に来てほしいっス」

 

といって自分が走ってきた方向を指差した。

三人が首を傾げながら瑠那の後について向かってみると、そこには……

 

「負傷兵達の介抱は感謝するです。で、いつになったら公孫賛殿とお会いできるのですか?」

 

「だからぁ、今瑠那ちゃんが呼びに行ってくれてるからぁ、もうちょっと待ってって言ってるでしょん?」

 

一応は感謝の言葉を述べながらも焦れた様子を隠しきれていない、長い袖をパタパタとさせる少女と、そんな彼女をあしらう泉の姿があった。

治療の片手間にあしらっているところを見ると、重症者はいない様子。

 

「むぅ……い、今お忙しいのは分かっているのですが、お前に言われると何かはぐらかされている感じが否めないのです」

 

「でも瑠那ちゃんじゃ話にならない。白蓮ちゃ、じゃなくて公孫賛様を呼べって言ったのは貴女でしょん? おチビちゃん♪」

 

「だっ!? 誰がおチビちゃんなのですっ!? ねねは立派な――っ!」

 

そこまで言ってその少女はようやくその場に現れた白蓮達、もといその中にいた蘭華の姿に気が付いた。

 

「蘭華殿っ!?」

 

「ねねさんっ! ご無事で何よりですわ」

 

「蘭華殿こそですっ! 公孫賛殿の軍に無事投降したと伝え聞いてはおりましたが、その様子ですと酷い目に合わされてはおらぬようですな?」

 

再会を喜び合う蘭華と少女。

しかし少女の発言にはさすがに聞き捨てならないと、白蓮が一歩進み出た。

 

「酷い目になんか合わすわけないだろ? その様子だとその娘も事情は知ってるみたいだな、蘭華」

 

「なっ!? ら、蘭華殿っ!? まさか真名を……」

 

「ええ。お預けしましたわ。力を貸していただくというのも理由の一つですけど、それ以上に私、今後は正式に白蓮様にお仕えしようと決めましたので」

 

「な、なんですとーっ!?」

 

またしても白蓮を無視して話を拗れさせる少女。

さすがの白蓮も呼びつけられてコレでは我慢がならない。

しかし、そんな白蓮よりも先に二人の間に割って入ったのは……

 

「お二人とも、再会を喜び合うのは結構ですが……場を、わきまえて下さい」

 

一弦だった。

少し声を落とし、静かに語りかけている上に前髪によっていつものように表情が隠れていると、そこには妙な威圧感が生まれる。

ましてそれを受けているのがそんな一弦に慣れ親しんだ白蓮や泉、瑠那ではなく、仲間になったばかりの蘭華と初対面の少女ともなると……

 

「し、失礼致しました一弦様。白蓮様にお越しいただいたのにその御前で……」

 

「ご、ごめんなさいです」

 

最早誤解は免れない。

一弦とすれば、ただ単に怒鳴る事なく二人の耳にしっかり届くようにしただけだったので当然、二人の恐縮した態度の意味が理解出来ない。

しかし逆に事情が理解出来た白蓮にとってそれはありがたい事となった。

 

「……ったく。んじゃ話をさせてもらおうか。私に用があるのはお前か?」

 

一弦のおかげで周囲が静かになり、そして尚且つもうそう簡単には再度自分を忘れられるような事態にはならなくなった状況で改めて少女の前に歩み出た白蓮。

 

「私が公孫賛だ……で、お前は?」

 

先ほど到着したばかりの時の泉との馬鹿騒ぎを見ていた白蓮は、彼女を少女ではなく将として認識して接する。

 

「……お初にお目にかかるです。ねねは……姓は陳、名は宮、字は公台と申しますです」

 

「陳宮か。で、お前がわざわざウチの軍を選んで投降してきたって事は……」

 

「はいです。元々客将とも呼んではいけない、しかし感謝してもしたりない協力者であった蘭華殿…皇甫嵩殿に逃げていただく手として公孫賛殿の軍に降るという策は聞いていたです。公孫賛殿はお人好し…もとい、義に厚いと評判でしたので、現状をお伝えした場合一番協力してくださる確率が高いだろうというのは我々の総意だったです」

 

「……はぁ……やっぱ私、そんな扱いか……ようするにいざという時に駆け込める避難場所として一番都合が良かったんだろ?」

 

直接自分の評判を聞かされて少々落ち込んだ様子の白蓮。

しかし今はそんな話をしている場合ではないと気を取り直し、陳宮に向き直った。

 

「で、だ。事情が事情なんだし、ただ降るだけなら瑠那だけで用件は済んだはずなのに態々私を呼び出した理由、聞かせて貰えるか?」

 

「……はいです」

 

居住まいを正した陳宮。

長い袖をきゅっと握り締め、一度白蓮を見上げた彼女は必死に、請うように勢い良く頭を下げた。

そして……

 

「北郷軍と親交の深い公孫賛殿と、北郷一刀殿と同じく天の国から参られたとの噂のそちらの男性にお願い申し上げますです! ねねを……私を北郷一刀殿と……呂布殿、先の戦いで北郷軍に捕らえられてしまった呂奉先殿に合わせていただきたいのです!」

 

 

 

 


あとがき

 

……久々、としかいいようがございません。

申し訳ございません、アインです。

さて、まずは謝罪したところで……一刀カッコイイ!www

すいません。私のところの一刀君は、基本カッコよさ五割増くらいですw

真になってより一層「ただの絶倫男」みたいな扱いになりつつある一刀ですが、私はカッコよく書いてあげたいと思ってます。

…………まぁ、潔く土下座しただけですけどねw

で、白蓮達のほうですが、何故か英語を使ってる蟷螂少女、陳宮が合流しましたw

なぜ蟷螂かは……ねねちゃんと立ち絵にヒントがありますwww

だんだんと話がズレ始めましたが、宣言どおり無印と真を融合させつつ、あくまでも私が最初に書いたプロットからは大筋で外れないようにオリジナリティーもだしながら進めていきますので、よろしければこれからもどうぞお付き合いくださいませ。

真のほうのアニメでも一刀の出番はなさそうですが、私はあくまでも主人公・一刀支持者であり、また恋姫†無双の主人公は男であるべきだ!という主張の元頑張っていきます!

それではまた〜




一刀がなんか男らしいというか、ちょっとかっこいい。
美姫 「アインさんの言うように土下座しただけだけれどね」
ともあれ、呂布は一刀たちの捕虜となったけれど、陳宮は公孫賛の所と。
まあ、公孫賛と一刀は顔見知りだし、陳宮の望みもあっさりと叶うかな。
美姫 「どうかしらね。幾ら顔見知りでも捕虜に合わせろって」
まあ、そこはほら二人ともお人好し、もとい義に厚いから。
美姫 「うーん、既に公孫賛たちはこの戦の裏を知っているのよね」
その辺りを伝える為にも、一度合流したりするかも。
ああー、この次はどうなるのか気になる。
美姫 「次回も待っていますね」
待ってます。



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