An unexpected excuse

 

〜篠崎こより編〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が好きなのは……」

 

そこまで言って恭也は押し黙る。と言うのも、

 

(いないのにどうしろというんだ?そう言った所で納得してもらえる保障はない気がするし、なにより納得されたらされたで何かとてつもなく危険な予感が……)

 

自分が何故にこうまで詰め寄られているのか全く分からず、しかし恭也の危機察知能力のみが何か言わないといけないと告げる。しかし目の前の少女達の真剣な目を見てしまってはいくら真顔で嘘をつく恭也といえどつけるはずもなく、仕方なく真実を告げる決心をしたその時、

 

「高町兄妹とその他確保!高町兄妹とその他確保〜!」

 

可愛らしい声が恭也達の耳に届いた。誰かと辺りを見回す美由希達は、すぐに恭也の後ろの小さな人影に気付く。

 

「もしかしなくても……こよりちゃんだろ?」

 

恭也も気付いているらしくそう言いながら振り返ると、なのはと同じくらいの小さな女の子が恭也の腰に抱きついた。

 

「へっへ〜、恭にぃおひさ〜」

 

長く綺麗な黒髪を軽く揺らしながらぎゅっと抱きついてきたこよりを、恭也は避けるわけにもいかずに抱きとめる。小さな悲鳴にも似た声があちらこちらで上がる中、恭也は自分の腰に纏わり付く少女を優しく引き剥がしながら、

 

「何やってるんだ?こんな所で」

 

と屈んで目線を合わせて尋ねる。

 

「あ、もしかして政則君に会いに来たのかな?」

 

閃いたとばかりに人差し指をピンと立ててこよりに「正解でしょ?」と言いたげな視線を送った美由希だったが、

 

「あにぃはどうでもいい。むしろ一生ここに埋もれててくれれば……」

 

と可愛い顔をして本当に嫌そうにその表情を歪めるこよりを見て「やっぱりね」と苦笑をこぼす。忍たちも大体こよりの事を知っているので反応は大体一緒。なんとも表現しがたい空気がその場を包んだその時、

 

「こぉ〜よぉ〜りぃ〜!!!!」

 

「げっ!あにぃ」

 

その諸悪の根源と言って言えなくもない男が怒涛のスピードで突っ込んできた。後からその友人達も追ってくる。

 

「なぁぁんでこんなところにいるんだこよりぃ?ま、まさか俺に会いにきて……」

 

「きえうせろ」

 

「ぐはぁ?!」

 

感極まった表情で抱きつこうとした兄・篠崎政則を膝の裏への強烈なミドルキック一撃で沈めたこより。

 

「うわっ、相変わらず容赦ないわねぇ」

 

「自業自得だろ?」

 

「ちょ、ちょっと可哀想だよ」

 

「あ、あはははは。高町先輩、どうも」

 

後から来た上条朝陽、緒方光一郎・未央の兄妹、中西薫の四人が崩れ落ちた政則を見下ろしながら容赦のない言葉を浴びせていると、

 

「おっす皆の衆。早速で悪いけどそのゴミ連れて帰ってほしいわさ」

 

とこよりが恭也の隣で心底嫌そうな顔で政則を爪先で指差した。先ほどまでその場にいたファンクラブの連中が政則のダッシュのせいで逃げていてそんな光景をみていないのはもはや不幸中の幸いとしかいいようがないほどに容赦のない蹴りであり、対応だ。

 

「こよりちゃん、もう慣れたとはいえその扱いは酷いんじゃないか?」

 

見かねた恭也が口を挟むが、光一郎達四人は自業自得だといって苦笑を浮かべるのみである。

 

「恭にぃは美由希ねぇやなのはっちのお風呂覗いたりする?部屋に二人のポスター貼ったり観察日記っぽいものつけたり……ひょっとして恭にぃも変態さん?」

 

「……俺が悪かった。いくらなんでもそこまでは出来ん」

 

「だよね〜。でもこのゴミ虫は毎日のように……ねぇ美由希ねぇ、兄兄交換しようよ」

 

「え?!だ、駄目だよ!恭ちゃんは私の……」

 

「俺は美由希とこよりちゃんなら交換してもいいぞ?」

 

突然飛び出す恭也の爆弾発言。忍たちは信じられないものでもみたような目で恭也を凝視する。

 

「きょ、恭也……まさかとは思ってたけど……」

 

「そ、そんな……でも私……」

 

「よ、よし!それなら俺にも脈がある!」

 

「うちかてこの中じゃ最年少やし、お師匠のお相手には最適です〜」

 

「恭にぃやっぱり変態さんだったんだ」

 

「ちょ、ちょっとまて!冗談に決まってるだろう!美由希も本気にするんじゃない!何のためにここまで俺がお前に御神を教えてきたと思っている?!」

 

ロリコン容疑をかけられて慌ててショックでへたり込んでいる美由希を立たせる恭也。

 

「まったく、普段俺がどういう目で見られてるか今はっきり理解した」

 

そして恭也本人も少々ショックだったのか、立ち直った美由希の代わりに少々気落ちしたような表情を浮かべている。

そんな恭也を見て忍達もさすがに気の毒に思ったのか、

 

「じょ、冗談だよ恭也」

 

「私は恭也さんの事信じてますよ?」

 

「俺だって!」

 

「ウチもです〜」

 

とすぐさまフォローに入る。しかし今だこよりが恭也の傍にぴったりと寄り添っている姿を見るとどうしても目を逸らしてしまうのだが。

 

「……はぁ……まぁいい。で、こよりちゃん。今更だが本当は何しに来たんだ?」

 

それ以上追及する気にはならなかったのか恭也は話の矛先をそもそもの原因であるこよりへと向けた。忍や美由希達もそれは気になっていたのか、特に追求する事もなくこよりをみる。

 

「う〜ん……女の感さね」

 

「は?女の……感?」

 

「うん。なんか恭にぃが面白い事に巻き込まれてそうな気がしてきてみたんよ」

 

そう言って楽しそうに笑うこよりを恭也達は呆れたような目で見る。

 

「でもはずれてなかったっしょ?なんかいっぱい女の人に囲まれてたし……」

 

そこでこよりははっと何かに気付いたように目を見開くと、歳に似合わない妖艶な笑みを浮かべながら、

 

「そっか。恭にぃは変態さんじゃなくて鬼畜さんだったんだ」

 

「なっ?!」

 

「忍さんに美由希ねぇ、那美さんに晶ねぇとレンねぇ、それにさっきの人達。皆恭にぃの奴隷さん達なんでしょ?」

 

「……何を馬鹿な事を……」

 

もうこれ以上ないほどの虚脱感にみまわれた恭也は肩をがっくりと落とす。

しかし忍達は、

 

(恭也の奴隷……なんか良いかも……)

 

(恭ちゃんになら私……)

 

(そ、そんないけません……あ、あぁでも……)

 

(お、俺男みたいですけど……いいんですか、師匠……)

 

(ウチこんなぺったんこやけど……でもお師匠になら……)

 

いい感じにトリップしていた。

恭也からの訝しげな視線を受けながら気持ちよくトリップする忍達だったが、こよりはそんな束の間の夢の時間をぶち壊す。

 

「でも恭にぃはあたしとの約束があるんよ。覚えてる?」

 

「ん?ああ。約束した事だからな」

 

「「「「「や、約束ってなに(なんですかっ)?!」」」」」

 

「実はあたし、恭にぃに告白したんよ」

 

驚愕の事実発覚。

幼女に出し抜かれた忍達はぐぅの音もなくただ呆然と話に耳を傾け、恭也は少々顔が赤い。

その場の全員が正気を多少なりとも失っているそんな状態でこよりは嬉しそうに話を進めた。

 

「その時はあたしがまだ小さいからって優しく断られたんだけどね。あたしどうしても諦められなくて条件だしたんよ」

 

「じょ、条件?」

 

「そうさね。今の気持ちは今のあたしにとって真剣なものだから、せめて恭にぃがあたしが大人になったと認めてくれるまで告白は受けないで、って」

 

本当に嬉しそうに語るこより。しかし忍達はそんな幼女に畏怖の眼差しを向けていた。そういった筋の通った話を恭也が無下に断るとも思えなかったから。

 

「別に恭にぃが誰かを好きになってその人に告白するならあたしは諦めるさね。ただ告白されて考えられるのはあたしだってたまらないわさ」

 

まだ子供だから。断られた理由がそれだけなのに他の人の告白を恭也が受けたらそれはこよりにとって辛い。生まれたのが早いか遅いかだけで断られるというのは、つまり早ければもしかしたらという遣る瀬無い可能性がいつまでも付き纏うことになってしまう。それを恭也も理解したからこそ、快くその条件を呑んだのだ。

 

「断るときは歳以外の理由で断って欲しいなんて真摯な気持ち、無下にする事など俺には出来ない」

 

そんな恭也の言葉に忍達も、分かってるといった苦笑を浮かべていた。だがふと美由希が気付いてしまう。

 

「ってことは後少なくとも……六年くらい?!」

 

「ん?どうした美由希」

 

いきなり悲鳴のような叫び声を上げた美由希を不思議そうにみる恭也をなんとか誤魔化した美由希。忍達を見ると皆美由希が叫んだ理由に気付いたようだ。

愕然としている五人をまだ不思議そうに見ている恭也にこよりは、

 

「それまでに絶対恭にぃをメロメロにするから、覚悟しててね」

 

と、先ほどよりもさらに妖艶さを増した笑みを浮かべて恭也を見上げ、そして何も言わずに走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数年後の216日。駅前に一人立つ恭也の元に一人の少女が駆け寄る。今も昔も変わらずに白いワンピースに身を包んだその少女は、その美貌に周囲の人達が思わず立ち止まって息を呑んでいるのを全く意に介した様子もなく、その長い黒髪をなびかせてただ一直線に走る。その姿を見つけた恭也がそちらに向かって歩き出すと、動き出した恭也をみてその少女もペースを落としてゆっくりと歩き出した。

そしてまもなく二人は向かい合わせで立ち止まる。

 

「こういう時は最後の心の準備をする時間くらいほしいさね」

 

「……すまんな」

 

「いいよ〜。そういうところも恭にぃぽいし」

 

そう言って少女は深く息を一つついた。走ってきて乱れた呼吸を整えるためか、それとも今から聞かなければいけないことに気を静めるためか。

そして大きく息を吐いた少女は、恭也の肩ほどまで来た視線をゆっくりと、真っ直ぐ恭也のそれと合わせ、そしてあの時とは違う穏やかで優しい微笑を浮かべた。数年前に先延ばしにしたその答えを聞くために。

 

「私は、今も恭にぃの事が大好きだよ」

 

 

 

 


あとがき

 

ブリジット「ついに幼女にまで手をだしたです」

そうはいうが正確には違うぞ?最後は幼女ではない……はずだ。

ブリジット「どれだけたったのかをぼかしたんだからそれもやむなしです」

だって……いくら探してもこよりの実年齢わからなかったんだもん。

ブリジット「とまぁそれはともかく、今回はPCゲーム『HoneyComing』より子悪魔少女、こよりたんでしたです」

もういわなくても分かってると思いますが当然サブキャラです。ってか彼女が攻略対象になるのはなにかとやばいのでは?

ブリジット「そんな漢と書いてオトコと読むような人達はちょっとヤです」

でもいいキャラしてるし……なんつーか前作の千輪たんみたいな感じ?ともかくちょっとした事情もあってこよりちゃんになりました。

ブリジット「候補は後二人いたです。一人は千輪さんのお母さんだったですが、グラフィックすら用意されてなくてアインの想像力が限界を迎えたために断念。もう一人は紅林司先生(♂)です」

一番初めに同じような展開になりそうなのやっちゃってたから司ちゃんも断念しました。

ブリジット「苺先生はアインが別に短編書いたです。だから×」

そして結果的に一番いいキャラしてるのではなかろうかという幼女な彼女に決定したしだいです。

ブリジット「少しでも楽しんでもらえれば幸いです」

お?今日はなにもツッコミがない?

ブリジット「そろそろ実力行使を覚えるために最近美姫さんに色々教えてもらいに通ってるです。充実した疲れをかんじてるです♪」

……マスター出来ない事を心から祈ってます。ってか美姫さん頼むから教えないで下さいっ!師匠もとめて〜!

ブリジット「ふふっ♪アインがなにやら錯乱し始めたところで、今回はこの辺で〜。SEEYA!………………さて、じゃあボクそろそろ美姫さんのところに行って来るです〜」

や、やめろ〜!





……俺に誰を止めろと?
美姫 「良いわよ、止めたければ止めても」
臨戦態勢で何故そんな事を言い放つかな。
美姫 「どうしたの?」
…………うわぁぁぁっ! ぶべらっ!
お、俺には無理だったよ……。
美姫 「よわっ! はやっ!」
まあ、予想通りの結果だった訳だな。
美姫 「で、すぐに復活するのも予想通りだけれどね」
あははは〜。と、今回はこよりちゃん。
美姫 「ハニカミはやったの?」
いや。でも、立ち絵は見たぞ。可愛らしい娘さんでした。
美姫 「今回は未来へと約束を持ち越して……という展開ね」
うんうん。途中でドタバタした感じもあってかなり面白かった!
美姫 「アインさん、ありがとうございます」
ありがとうございました〜。
美姫 「と、そろそろブリジットが来る頃ね」
えっと、とりあえずはお菓子でも用意して、少しでも練習時間を減らす努力をするか……。



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