つよきす×とらいあんぐるハート3
『キスとハートの協奏曲』









 くーくーパパラッチ









こ、こんにちは。
私は西崎紀子っていいます。
身長は160cmで、え、えっと、体重とスリーサイズは……ひ、秘密って事で。
血液型はO型で、誕生日は2月22日。ちょっとラッキーな気分です。
竜鳴館学園の2年A組で、広報委員会に所属してるので、いつもカメラ持ってます。
あだ名は……皆はわたしの事、くーって呼びます。
え? な、何でかって? それは……

「くーちゃんおはよー♪」

「く、くー(お、おはようございます)」

…………というわけなんです。
わたし極度の口下手で「くー」以外は、その……しゃ、喋れなくて。
初めはクラスの皆さんにも凄く迷惑とかかけてたんですけど、でも神咲さんとか皆優しくて、今は皆なんとなくわたしの言いたい事が分かってくれてるみたいです。

「紀子さん、おはようございます」

この人が神咲那美さんです。
このクラスの人は皆結構団結力が高くて、他のクラスの人達に対抗意識もってる人が多いんだけど、那美さんはちょっと違って、

「今度恭也さんとかC組の対馬君達と皆で何処か遊びに行こうってお話があるんですけど、紀子さんも行きませんか?」

といった感じで、クラスの間のそう言ったわだかまりとか、あんまり関係ない人です。
というよりも、那美さんの場合は“嫌い”とかそういう感情があんまりないみたい。
対馬君達はちょっと苦手って言ってたけど、でも嫌いなわけじゃないみたいだし。

「恭也さんが誘ってくれたんですよ? なんなら紀子さん達もどうだ?って」

そしてこの那美さんが、実はわたしにとって一つの出会いをくれた人。
クラスの人達からは仲良くしてもらえても、他のクラスの人達や先生方からは少し煙たがられていた口下手なわたしを、なんの疑問もなく受け入れてくれたある人との出会い。
それは、わたしが那美さんと仲良くなってすぐの事でした。










「く、く〜(え、なに)?」

「だ、だからね? 紀子さんって広報部じゃないですか。も、もしかして、恭也さんの写真とか撮ってないかなぁ、なんて思ったんですけど……」

なんか朝からわたしの近くに那美さんがいるなー、と思ってたら、お昼休みに話しかけられました。
ちょっと思いつめたような顔してたので、何か深刻な相談かと思ってたんだけど……

「くー(ありませんよ〜)」

3年の高町先輩の写真をわたしがもってたら譲って欲しいって。

「そ、そうですか……」

高町先輩というのは、高町恭也先輩。
この学校で、たぶん一番有名な生徒の一人だと思います。
ファンクラブまで出来てるくらい、お世辞抜きで、その……カッコいい人だと思います。

「く〜……(お役に立てなくてごめんなさい〜)」

実は……何度か写真を撮ろうとしたんですけど、無理だったんです。
高町先輩の他に、妹の美由希さんもなんですけど、シャッターを押そうとするとそっぽ向かれたりフレームから外れちゃったりで……撮ろうとしてるのバレてるのかなぁ?

「い、いえっ!? いいんですいいんですっ! ちょっと欲しいなぁなんて思ったりしただけですからっ!」

「……く〜?(そうなんですか?)」

「はいっそれはもうっ!? ちょっとこの前美由希さんのお家にお邪魔した時に見せてもらった写真が羨まし……あ……」

あ、そうか。
那美さん、高町先輩の事が好きなんだ。だから……
それじゃあここは、お友達になってくれた那美さんの為に……頑張ってみよう、かな?

「くー(少し、時間をください)」

「え? なんでですか?」

「くーくくー!(絶対に、撮ってみせます!)」

それから私は、高町先輩をカメラに収めるために走り回りました。
木の影とか、草むらの中とか、私の入れる場所全部から高町先輩を追っかけてみたんですけど……

「くー(やった! いまなら)」

「……むぅ」

「く!?(なんで!?)」

という具合に、何度やっても全然フレームに収める事ができないんです。
今まではシャッターを押す瞬間に、たまたま動いてる感じだったんですけど……

「……どういうつもりです?」

…………え?
振り返ると……さっきまでカメラの先にいたはずの高町先輩が、なんでかわからないけど私の後ろに……って!? なにっ?

「く、く、く〜(な、な、なんで〜)」

「ん? いえ、何か光ったのが見えたんで。で、何故俺の写真を?」

「く、く〜……くーくー(そ、それは……友達の為です)」

「……なんでまた」

「く、く〜……! くーくーくー(そ、それが……! 実家の家族に学校の人紹介したいんだけど、高町先輩の写真がないから)」

「……そうですか。お友達の為に……」

そう言って考え込んでしまった高町先輩……って、あれ?

「く、く〜く〜?(わ、私が言ってる事分かるんですか?)」

さっきからずっと、高町先輩と会話が成立してる!
驚いてそう聞いてみると、高町先輩は不思議そうに首を傾げて、

「え? ええ、わかりますよ?」

って、まるでそれが当然みたいに。
私、それだけで嬉しくてちょっと涙が出そうでした。
今まで、初めて私と話す人は大体皆私が「くー」しか言わないって分かると変な顔して……鬱陶しそうな顔するんですけど、高町先輩はなんでか分かってくれる。
初めて話したのに、ちゃんと私を理解してくれるのが嬉しくて……

「むぅ、まぁいいか。えっと……」

……え? あ、ああっ、名前ですね?

「くー(西崎紀子です)」

「西崎さん。隠し撮りではなく、きちんと撮るのならいいですよ」

「……くー?(……え?)」

「ただし、校内新聞とかそういったものに載せる目的があるならお断りします。貴方のお友達の為のものとして、です。いいですか?」

そう言った高町先輩は、ちょっと疲れたみたいな、諦めたみたいな表情してたけど、でもしょうがないなぁってみたいに笑ってました。

「何故俺の写真なんか欲しがるんだか分かりませんが、しかし貴方がその友達の為になんとかしようと俺を追い掛け回していたその気持ちは、とても素晴らしいものだとおもいますから」

あ、バレてます? バレてますよね?

「く、く〜(あ、あのその〜)」

「とりあえず、元があまりよくないのでなるべく見苦しくないようにお願いします」

でも結局、高町先輩は何も聞かずに写真を撮らせてくれました。
なんか聞き間違いみたいな言葉も聞いた気がするけど、那美さんにあげる為に私、精一杯いい写真になるように頑張って撮らせてもらいました。
そして……

「くー♪(那美さ〜ん♪)」

「? 紀子さん。どうしたんですか?」

「くー!(撮らせてくれました、高町先輩)」

「えっ!? ほっホントですかっ!?」

「くーくー!(はいっ! どうぞっ!)」

「…………」

「……? くー?(? 那美さん?)」

「……きゅうぅぅぅぅぅぅぅ……」

「くー!? くー! くー!(那美さん!? どうしたんですか、って鼻血! 那美さん鼻血がっ!)」

……とっても喜んで貰えたみたいです。












「ん? 西崎さんか。おはよう」

「くー(おはようございます、高町先輩)」

「神咲さんには言ったんだが、今度レオ達と出かける事になってな。よかったら一緒にどうだ?」

「く、くー(あ、聞いてます)」

「そうか。なら、考えておいてくれ。人数は多いほうが皆楽しいだろう。では、またな」

「くー(はい、またです)」

それから、高町先輩はなにかと私を気にかけてくれるようになりました。
口下手なわたしとでも、高町先輩はなんの躊躇もなくお話してくれます。
私“くー”しか言ってないんですけど、やっぱり高町先輩には言いたい事が分かってるみたいで。
そんな私と鬱陶しがらずに話をしてくれる高町先輩は、私の中で少しずつ大きな存在になりつつある気がします。
ただ、一つ困ったことが……

「あ、くーちゃんくーちゃん」

「く、く〜(つ、月村先輩)」

「どう? 考えてくれたかしら?」

「く〜(霧夜会長まで)」

「くーちゃんが撮った恭也の写真、今までみた事もないくらい凄い出来なの! 私思わず抱いて寝……じゃなくて、それを限られた人しかもてないのは不公平だと思うのよ?」

「私と忍センパイが組んで売れば、貴方も絶対に損はしないわ」

って具合に、月村先輩と2−Cの霧夜会長があの高町先輩の写真で商売しようとするんです〜。
那美さんに渡したらなんでか広まっちゃって、お願いされた(というより半ば脅された)何人かに分けてあげたんですけど、その中に月村先輩がいて……

「「さぁ! どうなのっ!?」

「く、くーーーーー!!!!(ゆ、許してくださーーーーい!!!!)」

た、高町先輩に言いつけてちゃいますよぉ!?







く、くー、くーくー。
美姫 「ええ、そうね。今回は西崎さんのお話だったわね」
くーくーくー。
美姫 「写真一枚で下手すれば大騒動。本当に忍とエリカの手にまで渡ったのが失敗よね」
くーくー。……って、いい加減に突っ込んでくれよ。
美姫 「いや、とうとう人間を止めて言葉を話せなくなったのかと」
ひ、酷い……。
美姫 「(無視)投稿ありがとうございました〜。今回はも楽しかったです」
次は誰の話になるのか首を長くして待ってます。



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