『決闘少女リリカルなのは』
――なのはとすずかがデュエルしていた頃、二人の親友であるアリサ=バニングスもまたデュエルに臨んでいた。
対戦相手はご町内でも有名な元気印のヒーロー大好きお子様デュエリスト、神谷優希(てんぷらうどん)十二歳。
動物の毛のようなモコモコした髪を肩に掛かる程度の長さのツインテールにした、丸っこい瞳が愛らしい少女だ。
「わっ、わっ、ばーにんぐありさだっ!」
優希はアリサと面識があるらしく、デュエルリングの反対側に立つ彼女を見つけると、その顔を指差して大声で叫んだ。
「バニングスよっ! てか、人の顔指差すな!」
灼熱呼ばわりされたアリサは、こちらも負けじと叫び返す。露骨に眉を顰めている辺り、苗字を捩ったらしいその愛称はお気に召さないようだ。
「ねぇねぇ、そこにいるってことは、ばーにんぐありさがぼくの相手なんだよね」
「人の話聞きなさいよっ!」
「うわっ、ぼく、前から一回デュエルしてみたかったんだ。今日はよろしくね」
そう言って、ぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねる優希に、毒気を抜かれたアリサははぁ、と溜息を漏らすと左腕に装着したデュエルディスクの電源へと指を伸ばす。もうさっさと終わらせてしまおう。
「まあ良いわ。どうせ、口で言っても聞かないんでしょうし、デュエルで勝って止めさせてあげる」
「ええっ、ばーにんぐありさカッコイイと思うのに」
「良いから、あたしが勝ったらそのふざけた呼び方を止めてもらうわよ」
ごねる優希を無理矢理頷かせるアリサ。ところで、二人の間には五歳ほども年の差があるのだが、傍から見れば同年代の子供同士の言い争いにしか見えなかった。
「ちぇ、それじゃあ、ぼくが勝ったらてんぷらうどん二十杯食べさせてくれる?」
「良いわよ。勝つのはあたしなんだから」
「ぼくだって負けないもん!」
不適な笑みを浮かべて挑発するアリサに、優希も元気一杯の笑顔で応じる。会場アナウンスによる開始宣言が流れたのはその時だった。
アリサ LP:4000
優希 LP:4000
「先行はぼくだね。ドロー!」
先行は優希から。元気よくデッキからカードをドローすると、特に考えることもなく6枚になった手札の中から1枚を抜き取り、それをデュエルディスクにセットする。
「ぼくは《E・HERO エアーマン》を召喚して効果でデッキから《E・HERO アイスエッジ》を手札に加える。そして、《融合》を発動。場のエアーマンと手札のアイスエッチを融合して、《E・HERO アブソルートzero》を融合召喚するよ!」
「出たわね、インチキ効果のエセメンタルヒーロー!」
「むー、インチキでもエセメンタルでもないもん! そんなこと言うばーにんぐありさには、ぼくの優希流最強最強最強最高最強最強最強コンボでぎゃふんって言わせてやるんだから」
「長いのよ。てか、いい加減、バーニング言うの止めなさいよね」
「えへへ、ぼくに勝ったらって約束でしょ。ぼくはカードを2枚伏せて、ターンエンドだよ」
優希 LP:4000
手札:3枚
場:E・HERO アブソルートzero
魔法・罠:伏せ2
「む、いきなり氷結のヒーローとは。アリサお嬢様には少々厳しゅうございますかな」
優希の場に召喚されたアブ素ルートzeroを見て、観客席から二人のデュエルを観戦していた壮年の男性がそう呟いた。
バニングス家の執事、鮫島である。
アリサの保護者として彼女に同伴してきた彼は、その職業柄デュエルモンスターズというカードゲームにも造詣が深いのだろう。そうでなくても、絶対零度の名を冠したE・HEROの効果の凶悪さは有名だ。
他に1体でも水属性モンスターが場にいればそれだけで攻撃力は3000となり、しかも、場から離れればその瞬間に相手の場のモンスターを全滅させてしまうとは何の冗談か。
対処法がないわけではないが、それとてzeroを使うものならば熟知しているであろう。
「まあ、普通に除去しようとしたら、どうやっても全体破壊効果を受けることになりますからね」
厳しい表情で顎に手を当てる老執事に、隣で同じく観戦していた少女が相槌を打つ。独り言のつもりが、案外と大きく声に出してしまっていたのだろうか。
「ごめんなさい。あなたがあまりに熱心に観戦なさっているようなので、つい気になって声を掛けてしまいました」
微かに眉を顰める鮫島に、そう言って微笑む少女は十四、五歳くらいだろうか。穏やかながらも落ち着いた佇まいはもう少し上のようにも見える。
一方で、端整な顔立ちを彩る柔和さの端には、まるで子供のような新鮮な驚きと喜びに満ちた無邪気さが見え隠れしているように思えた。
濡れ羽のような黒髪を背中の中ほどまで伸ばし、白いワンピースに身を包んだその姿は、社交界でも中々お目にかかれないような、絵に描いたようなお嬢様だった。
「いえ、構いませぬよ。わたしのようなものがこの場にいれば悪目立ちするのも無理からぬというものですからな」
「お子さんかお孫さんの応援ですか?」
「まあ、そんなところですな」
参加者の年齢も一桁代からならば、その保護者や応援の家族の年齢層もそれだけ幅広くなるというもの。鮫島の年齢であれば、少女の言うように子や孫がいても何ら不思議ではなかった。
「そういうお嬢さんは参加者ですかな。デュエルにお詳しいようですが」
「いいえ。ただ、学校ではカードゲーム部に所属してますので、それなりには分かるつもりですが」
「ほう。では、この老いぼれに一つご教授願えますかな」
朗らかな笑みを浮かべて少女と言葉を交わす鮫島。その視線の先では、アリサが自分のターンを始めるところだった。
「あたしのターン、ドロー!」
優希の場を見据えつつ、アリサは潔くデッキからカードをドローする。なるほど、爆発力が売りの炎属性がデッキの大半を占める自分は、確かにバーニングの二つ名を冠するに相応しいのだろう。
「手札の《バイス・ドラゴン》を効果で特殊召喚。このカードはあんたの場にモンスターがいて、あたしの場にいない場合、手札から特殊召喚出来るのよ」
「へぇ、でも、ぼくのヒーローには叶わないよ」
「慌てるんじゃないわよ。あたしは更に手札のチューナーモンスター《ラヴァル炎湖畔の淑女》を召喚。そして、手札から魔法カード《炎熱伝導場》を発動するわ」
「ラヴァルに、炎熱伝導場って、やっぱりばーにんぐありさはばーにんぐなんだ!」
「言ってなさい。あたしは炎熱伝導場の効果でデッキから《ラヴァル炎樹海の妖女》と《ラヴァル炎火山の侍女》を墓地に送る。更にラヴァル炎火山の侍女の効果で2枚目のラヴァル炎火山の侍女を墓地に、2枚目のラヴァル炎火山の侍女の効果で3枚目を墓地に送って効果で《ラヴァル・ランスロッド》を墓地に送るわ」
ラヴァル炎火山の侍女は墓地に送られた時、墓地に他のラヴァルと名の付いたモンスターがいればデッキからラヴァルを墓地に送ることが出来る。こうして炎は静かに燃え上がるその瞬間を待つのだ。
「行くわよ、レベル5、バイス・ドラゴンにレベル3、ラヴァル炎湖畔の淑女をチューニング!」
五つの星が列を成し、三つの輪を通り抜けた瞬間、星と輪は炎となって紅蓮の柱を空へと突き立てる。
「王者の決断、今赤く滾る炎を宿す、真紅の刃となる! 熱き波濤を超え、現れよ! シンクロ召喚! 炎の鬼神、《クリムゾン・ブレーダー》!」
「なるほど、あの鬼神の効果ならば、zeroの破壊効果に道連れにされたとしても、相手の次の手を制限出来る。考えましたな、お嬢様」
「ラヴァル炎湖畔の淑女の効果。墓地に3種類以上のラヴァルがある時、このカードと他のラヴァル1体を除外することで相手の場にセットされたカード1枚を選択して破壊する。墓地の淑女と侍女を除外して、あんたから見て右側の伏せカードを破壊よ!」
「なら、その効果にチェーンして発動、通常罠《亜空間物質転送装置》。ぼくの場のアブソルートzeroをエンドフェイズまでゲームから除外する」
「やっぱり、伏せてたのそれだったのね」
「アブソルートzeroが場を離れたことで効果発動、ばーにんぐありさの場のモンスターは全滅だよ!」
「て言っても、破壊されるのはクリムゾン・ブレーダー1体だけだけどね。あたしはカードを2枚伏せて、ターンエンドよ」
アリサ LP:4000
手札:1枚
場:モンスターなし
魔法・罠:伏せ2
優希 LP:4000
手札:3枚
場:E・HERO アブソルートzero
魔法・罠:伏せ1
「ああ、アリサお嬢様。あれほどフリーチェーンのトラップには気をつけられるよう申し上げておりましたのに」
片手で顔を覆って天を仰ぐ鮫島。多くのカードを消費した上で発動した効果をかわされた挙句、せっかく召喚したシンクロモンスターまで破壊されてしまったのでは無理もないだろう。
ただでさえ2枚の手札を消費するシンクロ召喚は、何も考えずに行えばそれだけでミスアドヴァンテージを負ってしまうのだ。更に召喚を阻害する機会も素材と合わせれば三度もある。
しかし、共に観戦していた少女はそこまで致命的なミスだとは考えていないようだった。
「そう悲観することもないんじゃありませんか?」
「何ですと」
「アリサちゃんでしたか。彼女、この展開を読んでいたみたいですよ」
そう言われて鮫島が見てみれば、確かにアリサの姿に揺らぎはなかった。その口元にも不敵な笑みが浮かんだままだ。
「確かに普通のデッキなら大きな損失でしょうけど、炎属性を主軸とするならあるはずです。この状況をたった1枚でひっくり返してしまうカードが」
「エンドフェイズにzeroはぼくの場に戻る。ねぇ、やっぱりって、ぼくが亜空間物質転送装置を伏せてるってわかってたの?」
「当然よ。zeroの効果を有効に使うなら、それを入れない手はないからね。さあ、あんたのターンよ」
挑発するように軽く鼻で笑って見せるアリサに、何故か優希は満面の笑顔になってはしゃぎ出す。
「すごいすごーい。やっぱりばーにんぐありさはカッコイイんだ。よーし、ぼくだって負けないんだからね。ぼくのターン、ドローだよ!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら全身で喜びを表す優希は、自分も負けてはいられないと気合を入れてデッキからカードをドローする。その様子からは彼女がアリサとのデュエルを全力で楽しんでいるのがよく分かる。
「まずは手札から2体目のアイスエッジを召喚。zeroの効果、zeroは場のzero以外の水属性モンスター1体につき攻撃力が500ポイントアップするんだ」
「アイスエッジと合わせて攻撃力は3800か。けど、それじゃまだあたしのライフを削りきれない。わざわざzeroの攻撃力を上げるためだけに低攻撃力のアイスエッジを曝したとは思えないし、……って、ああ、そういうことか」
「手札から即効魔法《融合解除》を発動。場のアブソルートzeroをエクストラデッキに戻して、墓地のエアーマンとアイスエッジを攻撃表示で特殊召喚するよ」
エアーマンにはデッキからHEROをサーチする他にもう一つ効果がある。それは、このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、自分の場のこのカード以外のHEROの数まで場の魔法・罠カードを破壊出来るというものだ。
優希はその効果でアリサの場の伏せカードを一掃してしまうために、先にアイスエッジを召喚することで場のHEROの数を増やしたのだろう。だが、そうと気づいたからには、むざむざやらせるアリサではなかった。
「させるか! チェーンして発動、通常罠《破壊輪》」
「えぇぇっ!?」
アリサの宣言によって翻された強力無比の破壊カードに、優希の目が見開かれる。何故なら、その破壊による被害はお互いに及ぶからだ。
「アブソルートzeroを選択、破壊してお互いにその攻撃力分3000のダメージを受ける。けど、ダメージを受けるのはあんただけよ。あたしは手札を1枚捨てて、もう1枚の伏せカードを発動。通常罠《レインボーライフ》」
「うそっ!?」
「さあ、これであたしはこのターン、ダメージは受けないわ」
「おいおい、破壊輪って、あの海馬瀬人がよく使うことで有名な壊れカードかよ!?」
「しかも、合わせてレインボーライフを使うことで、自分はダメージ分丸々ライフアドヴァンテージにしちゃうなんて」
「ガキのレベルじゃねぇぞ。どうなってやがんだ」
「アリサたんハァハァ……」
「金髪幼女サイコー!」
バトルシティでの海馬瀬人を髣髴とさせるアリサのコンボに、観客席からどよめきが巻き起こる。zeroが場を離れたことで、再びフィールドを絶対零度の白い冷気が覆うが、アリサの場にモンスターがいない現状では意味はなかった。
「う、うう、ぼくは手札から融合を発動。場のアイスエッジと手札の水属性モンスター《スパイラル・ドラゴン》を融合して、2体目のアブソルートzeroを融合召喚。ターンエンドだよ」
アリサ LP:4000 → 7000
手札:0枚
場:モンスターなし
魔法・罠:なし
優希 LP:4000 → 1000
手札:0枚
場:E・HERO アブソルートzero
魔法・罠:伏せ1
何とか持ち応えた。レインボーライフを妨害されていたら痛み分けどころでは済まなかったが、その不安も杞憂だったようだ。
先のコンボでどちらにも反応しなかったところを見ると、優希の伏せカードはカウンターの類ではないのだろう。となれば、フリーチェーンか攻撃反応型。
相手が融合主体であることを考えれば即効魔法である可能性もあるが、いずれにしろ場にも手札にも何もないアリサには次のドローにすべてを賭けるしかなかった。
「あたしのターン、ドロー!」
何かを振り切るように、アリサはデッキへと手を伸ばすと、潔くカードをドローする。敗北に怯えて縮こまる等、自分らしくないではないか。
「手札から《強欲な壺》を発動。デッキからカードを2枚ドローする。……よし、引いたわ」
燃え上がる炎は爆発。目の前のお子様が自分をバーニング呼ばわりするならそれでも良い。バーニングらしく燃え上がるコンボで引導を渡してやるだけだ。
「手札から魔法カード《真炎の爆発》を発動。自分の墓地に存在する守備力200の炎属性モンスターを可能な限り特殊召喚する。あたしは、ラヴァル・ランスロッドとラヴァル炎樹海の妖女、ラヴァル炎火山の侍女2体を攻撃表示で特殊召喚!」
「い、一気にモンスターを4体も並べるなんて」
「驚くのはまだ早いわよ。手札から即効魔法《サイクロン》を発動。あんたの伏せカードを破壊するわ」
「わっ、《正当なる血統》が!?」
「そして、見せてあげるわ、あたしのエースモンスター。レベル6、ラヴァル・ランスロッドにレベル2、ラヴァル炎樹海の妖女をチューニング!」
6 + 2 = 8
「王者の鼓動、今ここに列をなす。天地鳴動の力を見るがいいわ! シンクロ召喚! 我が魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン》!」
悪魔を思わせる赤き魔竜が咆哮を轟かせ、アリサの前へと降り立つ。その姿は雄雄しく、従える少女に王者の風格を演出していた。
「ラヴァル炎樹海の妖女が墓地に送られた時、自分の場のラヴァルの攻撃力はエンドフェイズまで自分の墓地のラヴァルの数×200ポイントアップする。けど、最早そんなのはどうでも良いわ。あたしは墓地の《スキル・サクセサー》を除外して、レッド・デーモンズの攻撃力を800ポイントアップさせる」
「スキル・サクセサーって、そんなのいつ……はっ、レインボーライフの発動コスト!?」
「正解。さあ、これでフィニッシュよ!」
「ええっ、やだやだやだ」
「問答無用! レッド・デーモンズ・ドラゴンでアブソルートzeroに攻撃。灼熱のクリムゾン・ヘルフレア!」
灼熱のブレスが氷のHEROを溶かす。zeroも絶対零度の冷気で対抗しようとするが力及ばず、その体躯は後ろに立つ優希諸共紅蓮の爆発の中に消えた。
優希 LP:1000 → 0
win:アリサ
――負けた。しかし、優希は不思議とそんなに悔しいとは思わなかった。
威風堂々と佇むアリサはやっぱりばーにんぐで、優希の憧れだったから。
キラキラとした瞳を向けてくるお子様に、アリサは思わずうっ、と小さく呻いて後退る。
「と、とりあえず、あたしが勝ったんだから、もうばーにんぐなんて間抜けな呼び方するのは止めなさいよね」
「えーっ、それじゃあ、君のことは何て呼べばいいの?」
「普通に名前で呼び捨てにでもすれば良いじゃないの。一応、あんたのほうが年上なんだしさ」
うんうんと唸り出した優希を見て、アリサが呆れたようにそう声を掛ける。しかし、このお子様は一度没頭すると周囲が見えなくなるのか、人の話なんて聞いちゃいなかった。
「よし、決めた。ばーにんぐありさのことはこれからあーちゃんって呼ぶね」
「何でよ!?」
「ありさだからあーちゃん。うん、これからよろしくね、あーちゃん!」
うがぁぁっと吼えるアリサの手を握って満面の笑顔でそう言うと、優希は次の瞬間には逃げるようにその場から走り去ってしまった。呼び方を訂正させるどころか、呼び止める暇すらなかった。
「ったく、あのお子様は……」
嵐のような騒がしさに悪態を吐きながらアリサが逃げ去った背中を見送っていると、応援にきていた一同がやってきた。先にデュエルを終えていたなのはとすずかの姿もある。
「アリサちゃん、おめでとう」
「相変わらず豪快な火力だったね」
「まあね。あんたたちのほうは、その様子だと勝ったのはなのはのほうかしら」
親友三人で先のデュエルについて言葉を交わすアリサたち。その様子を優希は姉である観月舞に手を引かれながら遠巻きに眺めていた。
天真爛漫なお子様そのものの振る舞いをする優希だが、そんな明るい外見に反して、彼女には友人と呼べる存在はほとんどいなかった。
もっと小さな頃に両親を事故で亡くし、観月家に引き取られた優希は当事の体験から他人に対して酷く臆病になってしまっていたのだ。
明るく振舞うのは、そんな自分の心を護るため。まるですべてを拒絶するような氷のHEROをエースにしているのがその証拠だった。
仲良さそうに話す三人の少女たちに羨望の眼差しを向ける優希。
そんな妹に、舞はいつかあんたも混ぜてもらえると良いわねと優しく声を掛ける。
優希は一瞬驚いたように目を瞬いて姉を見上げると、小さくうん、と頷くのだった。
「にしてもよ、まさか、優希が1ポイントもライフ削れねぇまま負けちまうなんて思わなかったぜ」
場の空気を変えるように明るい調子でそう言ったのは、二人の幼馴染である少年、神崎刹那だ。元プロデュエリストを父に持ち、本人も中学全国大会・個人優勝経験者だったりする。
「zeroに拘りすぎたわね。いつもの優希流以下略コンボはどうしたのよ?」
「優希流最強最強最強最高最強最強最強コンボだよ。えっと、手札が悪くて、上手く決められなかったんだ」
らしくないと指摘する姉に、優希は、えへへと笑ってバツが悪そうに視線を逸らす。勝負は時の運とも言う。そういうこともあるだろう。
「ま、そう落ち込むなって。優希の分もオレが勝ち進んでやっからよ」
「あら、そう簡単にはいかないかもね。今回はAランク以上の人もそれなりの数出照るって聞いたし、油断してると優希以上にあっさりやられちゃうかも」
「へっ、例え相手がAAランクでも打ち破ってみせるさ」
自信満々にそう言って妹分を励ます刹那に、舞がからかうように言葉を掛ける。だが、彼女が冗談半分で言ったその言葉がよもや現実のものになろうとは、この時の彼らには知る由もなかった。
作者注:今回登場した神谷優希は遊戯帝国様にて執筆されているMr.K様より投稿していただいたキャラです。
Mr.K様の小説、CADに登場している優希とは大分異なる設定での登場、特に使用デッキはこちら独自のものとなっていますが、ご本人様の了解を得てのものであることをここに明記いたします。
また、同じく遊戯帝国で執筆されているyun様の小説、遊戯王デュエルモンスターズAEに登場する神崎刹那、観月舞の二名も同様です。
キャラ投稿してくださったお二方にはこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
アリサも無事に勝ち上がったな。
美姫 「みたいね。鮫島と話していた少女もこれから絡んでくるのかしら」
それとも解説役だけなのか。
美姫 「次の対決も楽しみよね」
だな。次回も待ってます。
美姫 「待ってますね〜」