涼宮ハルヒの終焉

 

本章第1話

 

魔王の叫び

 

 

20余年ぶりに母校の制服に袖を通し、春休みが明けてもまだ休みボケが抜けずにダルそ

うに歩を進める生徒が多い中、その初めて登っているはずの桜舞い散る坂道に悲しいくら

いの懐かしさを感じていた俺の足取りはまるで墓参りに行くように沈んでいた。

 

ここ十数年、母校へと続く坂道を登ることはなかった。その先の母校を仰ぎ見る度、自分

を愛してくれた、そして自分がこの手で殺めてしまった少女のことが脳裏に浮かび、胸を

抉られるような思いになるからだ。それでもあの盲目の男に少女の名を出された途端、年

端もなく高校生に化けてまで、ノコノコとここを登っていることが、俺は情けなかった。

(――結局、俺はアイツと結婚しても晴日に縛られたままだったな)

我妻の笑顔を脳裏に浮かべながら、俺が晴日のことを忘れられずにいるのを承知で今ま

で共に歩んできてくれた彼女に改めて感謝と懺悔の念を送った。そもそも晴日より先に俺

と恋仲になった彼女にとって、俺が晴日の愛に応えようとしたのは二股をかけられた気持

ちだっただろう。それでも晴日と共に俺を愛するとまで言ってくれ、なおかつこんなわけ

のわからん世界に晴日絡みで行くと言った時も恨み事一つ言わずに、後の事は任せるよう

にと笑顔で答えてくれもした。

(全く俺には過ぎた嫁だったな)

 

そんな自嘲の思考を頭に巡らせているうちに、俺の足は校門前までたどり着いていた。

「デカイ墓石だな。まるで」

母校に対して非礼だが、先ほどからの心持もあって校門をはさんで仰ぎ見た懐かしいはず

の校舎にそんな言葉しか出てこなかった。かつて、それまでのゴタゴタや厄介事から逃げ

るために入った何の変哲のない平凡な高校。だがその期待とは裏腹にそれまでよりも悲惨

な災いと出会いとそして別れに見舞われ、結局俺は未だにここから解き放たれてはいない。

 

そう……この墓石は誰のものでもない他ならぬ俺自身の墓石だ。いくら取り繕うが、いく

ら己の力を増そうがその時から動けないでいる俺自身の人生の墓だ。

不意に足がすくむ。自分の墓と化した母校に自分から飛び込むことに躊躇している。

なにをやっているだろう。

 

ここで足を進めなければ俺は前に進めない。

 

未来を歩めない。

 

アイツとも向き合えない。

 

飛龍の依頼など関係ない。例え違う世界であったとしても、過去をやり直せるならとここに訪れたのではないか。

 

その決意が今、全ての宿縁の地を前に揺らいでいた。

 

苛立った。

 

どこまでも臆病で情けなくて過去に縛られている自分が憎かった。

 

 

それからどのくらい時間がたったのだろう? 大分早い時間にここに来たはずなのに既

に多くの生徒が登校してくる時間になっていた。

俺のすぐ隣を幾人もの生徒が通りすぎ、校門を通り校舎へとはいっていく。

その何でもないことが今の自分にはとてつもなく難しい。

このまま、チャイムがなっても入れずただ立ちすくんでいるのだろうかと自問していた、

その刹那だった。背中から静かに温かい風が通り過ぎていくのと同時に全身に鳥肌がた

った。

 

脊髄反射的に振り返った俺の眼に映し出されたもの。

 

カシューシャにつけた両側のリボンを揺らしながら

 

坂道のど真ん中を歩き、

 

退屈そうに無愛想を決め込んでいるその顔は。

 

まさしく涼宮ハルヒのもの。初めて目にするが、あれはハルヒだ。ハルヒ以外の何物でもない。

 

……そう、晴日では――ない。

 

呆けた表情を浮かべているであろう俺に訝しげな視線を向け、通り過ぎていくその少女は

晴日ではない。

 

今俺が後ろ姿を眺めている少女は俺を愛してくれた少女ではない。

 

髪の毛が肩までくらいしかないあの少女は俺が愛した少女じゃない。

 

俺が……殺した晴日じゃない。

 

涼宮ハルヒなのだ。

 

(くそっ――わかってたことだろうが)

 

不意に拳に力が入る。セーフティを掛けていなければ、血が出ていただろう。

 

わかっていた。

 

たとえハルヒを守ったとしても、晴日は帰ってこない。

たとえ守りきって飛龍の報酬でハルヒを連れて帰っても、それは晴日ではない。

たとえハルヒが愛してくれたとしても、俺が彼女を愛せない。

 

一瞬でも彼女を守ることで過去を取り戻せると思った自分の愚かさと醜さがどうしようもなく許せなくなった。

こんな作り物の世界で、作り物のハルヒを守ったところで、俺は前に進めない。

 

俺はここから立ち去ろうと決めた。いくら過去に縛られようとも自己満足でそれから逃

れた気でいるよりはよっぽどマシだ。

 

そう決意すると、大きく深呼吸をした後、立ち去るため足を動かそうとした……

 

 

 

その刹那、

 

 

バッッシイィン!!

 

「グワッ!!?」

 

馬鹿デカイ音とともに俺の背中に衝撃が走り、不本意にも俺の体はよろめいてしまった。

 

「ようっ!! 正悟。朝っぱらから何校門の前でつったってんだ?」

俺にこれほどのダメージを与え、なおかつこんなバカ陽気な声を掛けてくるやつを俺は一人しか知らない。

 

俺はすぐさま、体勢を立ちなおして振り向いた。

 

「タカッ! 何しやがる!! 俺じゃなかったら下手すりゃ脊髄損傷してたぞ!!」

「アホ、お前だからやったんだよ」

俺の怒りにニヤケながら返した男の顔を確認すると、やっぱりと脱力するしかない。

(こっちの世界にもいたのな。コイツ)

「俺じゃなかったら、どうする気だ!?」

「いや、そんな金髪で前方ボサボサのファイヤーカットな髪形をしてるやつなんて世界中

探してもお前だけだろ」

「だ、伊達や酔狂でこんな頭してるんじゃねえんだ! それに髪の毛の話だったらお前だって人のこと言えねえだろうが!!」

「なっ――俺のこのオレンジ掛った金髪は地毛だっつうに!」

「俺だって地毛だよ!」

「ってそっちかよ!?」

 

 

「……なにやってんだ。お前ら?」

 

たかが髪の毛のことでいがみ合っていた俺たちに不意に声が届いた。

「アキラ……」

「校門の前でドツキ漫才かよ? 新学期早々相変わらずだな」

振り向いた先にいた男は皮肉めいた笑みと視線を俺たちに向けていた。

「ちげえよタカが――」

「ハア? 何言ってんだよお前が――」

なおも続ける俺達の間に見かねたアキラが割って入り、

「はいはい。んなとこで喚くなカッコ悪い さっさと教室入るぞ」

と俺の腕を掴んで校門の内に引きずり込んだ。

「えっ?ちょっ、ちょっと放せよ!」

「どうしても続きがやりたきゃ教室でやれ」

「いや、そうじゃなくてだなっ」

俺は帰りたいんだよっ!! ……てもう、校門入っちまってるし!!

どうにか振りほどこうと抗ったが、セーフティを掛けている今の俺にはこいつの馬鹿力から逃げられずはずもなく、

「タ、タカっ」

藁をも掴む思いでさっきまでいがみ合っていた相手に助けを求めた。が、タカは何やら苦笑いを浮かべると、俺達に歩みより……

 

ガシッ!

 

「へっ?」

「悪いな正悟。これ以上俺もアキラには逆らえねえんだ」

「何だとぅっ!? ええい放せ! 裏切り者めっ、ユダめっ! 明智光秀めっ!! ブルータスっ お前もかあぁっ!!!」

「なに支離滅裂なことほざいてやがる。ほれ、行くぞ」

かくして2人に両脇を抱えられてズルズルと引きずられる形となった俺はそのまま、校舎

の中へと連行される羽目になってしまった。

 

 

「はあぁなあぁせえぇ!! トシィっ! トモォッ! いたら助けてくれぇええ!!!

 

 

俺の悲惨な断末魔そのものの叫びを残しながら……

 

 

 

 


あとがき

 

 

いやあぁ、ようやく本編が書き始められたぞ!

よかった♪ よかった♪

よし! この調子で続けよう!!

 

バキッ!!

 

グエっ!

 

タカ「おい、そこのクサレ作者」

 

痛っ! タカ、作者に向かって何て言い草だ。しかも後ろからカカト落としとは!

タカ「うっせ!! 大体なお前、序章書いてる時は俺しか出さない予定じゃなかったか!?

   それがなんでアキラが出てきてんだよっ しかもトシやトモまで出てきやがるみて

えだし……」

あらま、もしかして出番が少なくなって、拗ねてるのかい?

タカ「ちがわい! お前のことだ。急きょアキラを出したからには何か企んでるだろ?

   オラっ! さっさとゲロしちまえ!!」

だってアキラ出さないと『彼女』の話書けないではないか。

タカ「かっ、彼女ってまさかあの“白百合”(リス・ギガンティア)のことか!? あの

人のこと本気で書く気かっ!?」

あたりまえじゃないか(真顔)

タカ「こっ、こいつ……狂ってやがる」

あん?

タカ「お前は狂ってる。そうだ! まともじゃない!! 次回の話を読んだ読者全員がそ

う思うはずだっ!」

なるほど。私の狂気は読者諸君が保証してくれるわけだ。

タカ「……おい、この流れは」

ならば問おう。君たちの正気は一体どこのだれが保証してくれるのかね?

タカ「やっぱりヘル○ングネタ!?」

私は根っからのコラボSS書きだぞ? 一体いくつ既存の作品を混ぜたと思っているのかね?

狂っている? 何をいまさら。四半世紀ほど言うのが遅いぞ。

タカ「だめだコイツ、早く何とかしないと……」

ならば私を止めてみたまえ! 私は逃げも隠れもしない。延々と本作を書き続けよう!

だが、残念ながら私の相手は君などではないのだよ。タカ

 

タカ「なにっ!?」

 

PAINWEST。管理人……いや! 彼をいつも楽しそうに辱めている女性だ!!

タカ「コ、コイツ……っ!」

??「どいてろ……タカ」(ジャコンッ)

タカ「!? あ、あんたはっ」

では美しいフロイライン。またの機会に相まみえることを楽しみにしているよ。

 

……パシュンッ!(突然の銃弾でアークの頭は吹っ飛んだ)




美姫 「もしかして、私ってば宣戦布告された?」
いや、何でそんなに顔が輝いているんですか!?
美姫 「そんな気のせいよ。命の危険を感じて怯えている小動物って感じでしょう」
いや、どちらかというと、獲物を甚振りまくり、もう虫の息という状態まで追い込んでおいて、
まだどう甚振ろうかと舌なめずりしている猛獣のような……ぶべらっ!
美姫 「そんな酷い!」
ひ、酷いのはどっちでしょうか?
そ、それにアークさんはお仕置きされたみたいだし。
美姫 「あれをお仕置きと言い切れる辺り、アンタの常識もどうなのかと思うけれど、まあそれは良いわ」
うっ、言われてみれば。うぅぅ、俺だけは持ち続けていると思っていた、常識。
美姫 「いや、アンタが一番ないからね。と、まあそれはさておき、あの程度で私が許すと思ってるの?」
って、やっぱり怯える所かやる気満々だ! にげて〜、悪い事は言わないから逃げて!
美姫 「ふっふっふ、私から逃げれると思わないことね」
お、落ち着け、いや、本当に落ち着いて!
美姫 「そうね。これ以上、ここで話すのはまずいものね」
いやいや、そういう意味じゃないから。
美姫 「色々とキャラも増えたけれど、これは元の世界の人物じゃないのね。
     だとするなら、この世界にも自分が居る事になるのかしら。どっちにしても、今後の展開が楽しみよね。
     どうやってハルヒを守るのかしら。やっぱり近付く為にも友達になるのかしらね。
     それじゃあ、また次回を待ってますね〜」
って、一気に感想言いましたよ、この人!
しかも、俺の出番は!?



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