『乃木坂春香と高町恭也の秘密』





第四話 その2













 移動の間見えた、色々な家庭内施設は気にしないで居ようと思う
 金持ちって凄いな〜という感想しか抱けないのだ……忍の家も大きいそうだが
 それよりも更に1つ2つ大きいのではと考える
 なんせ、小さな映画館、ダンスホールにと何でもござれ
 本当に此処は1つの家か?
 維持するだけで大変そうだが、それはそれ、これはこれって感じだ

「ちょっと待っててくださいね」

 そう言って、なにやらクローゼットだろう場所をごそごそしている
 うん、俺にはサッパリ分からないが、広い……落ち着かない
 というわけでもないつもりだが、これだけ広いと驚きより先に感動する
 さすが、あれだけの塀があるはずだ……というか、無かったら
 どこまでが家かサッパリ分からないような気がする

「あ、その辺に適当に座っていてください。テーブルを出しますので」

 言い終えて、またもやごそごそとしている
 重たいのなら手伝うのだが、クローゼットという他人に見られると恥かしい部分でもあるだろう
 俺も押入れの中を他人に見られるのは少し恥かしさもあるからな
 座って、周りを見ると、前持って帰った道具の数々は見当たらない
 どこかに隠してるのかもしれないな……しかし、改めてお嬢様っぷりを見た気がするな

「そういえば、ポスターとか無いんだな」
「あ、ええ……」
「この前の時は、色々と持って帰っていた気がするが」

 そう、アキハバラ行った時に、色々と持ち帰っていた
 ポスターやら、フィギュアなるものやら……

「それは……」

 考え事か、一瞬口ごもる

「それは、私も飾りたいと思います。かわいいですし、できればいつも目につくところに置いておきたいです。
 でも……しょうがないんです。だって、私がこういう趣味を持っていることは、家族にも秘密なんですから。」
「え?」

 すでにばればれな気がするのは、俺だけか?
 というか、春香の性格を考えたら、隠し事はとても下手な気がするし、掃除してる人が気づきそうなものだ

「私の家は両親、特にお父様がとても厳しくて……そういったアニメのポスターやフィギュアなんかは、
 それこそ見つかったら即座に捨てられてしまうと思います。教育上よくないって。
 だから、部屋の目立つところには置けないんです」

 うつむく春香
 大変なんだな。ご令嬢というのも。
 春香のちょっと抜けてる点や一般常識に欠けてる点があるというのは
 ちょっとした娯楽なんかが無いからかもしれない……春香自身がちょっとドジなのは、すでに分かってる事だ

「そういえば、家族の方は居ないのか?」

 少し気になる点だから……できるなら挨拶もキチンとしておきたい
 会っておいて損はない
 リスティさんあたりが知ったら羨むかもしれないかなぁくらいだが
 乃木坂のステータスは意外と良いのだ……それよりも普通に挨拶したいというのもある

「今日は私しかいないです。お父様はアメリカの『ぺんたごん』という所に出張していますし、
 お母様も経営しているお料理教室のの講義で夜中まで帰ってきません。
 お爺様も北海道にクマ狩りに出かけてしまっていて朝からいませんし……」

 アメリカの『ペンタゴン』だな……ああ、何となく納得

「というわけですので、気を遣わないでご自分の家のようにリラックスしてください。
 さ、それではそろそろ勉強始めましょうね」

 笑顔で言われ、頷いて勉強を開始
 といっても、ノートを写して暗記していくだけに近いが
 春香の方は応用問題を解いてるし……

「失礼します」

 そう言って、入ってきたのは葉月さんだ

「葉月さん」
「恭也さまの勉強を教えてくれる先生という事で私が来させてもらいました」
「葉月さん、お願いしますね
 恭也さん、大丈夫ですよ……葉月さん、これでも凄い良い先生ですし
 私も色々と教えてもらいましたから」

 ……それって、俺は春香より頭が悪いってことか?
 いやいや、多分そうなんだろうな
 と言う事にしておくべきなんだろう

「よろしくお願いします」
「任せて下さいとはいえませんが、できる限りしますね
 紅茶とか飲みたいなら言って下さいね」

 頷いて返しながらもノートを写す
 もともと家で、大分写したので、この分が終れば、後は基礎問題集をしていくだけだ

「少し時間が早かったようですね」
「いえ……もう終りますから」

 言われて直ぐに応えて、ノートを片付ける
 これで、写す分は終った……ふぅ

「では、どれから?」
「一日目が数学と日本史なので」
「分かりました……」

 数学を出して、それを解いていく
 元からあまり解けてないが……基礎問題だけで俺には凄く難しい問題になってしまっている
 春香は応用問題を解きながらこちらをちらちら見ているし……

「恭也さま」
「ん?」
「最初から間違ってます……この問題の場合、こちらからです」
「……」

 うっ

「こうか?」
「はい……こちらの括弧からです
 それで次にこちらからこちらへと回っていきます」

 指で指していき教えてくれる
 なるほど……少しずつだが問いていき、一問目終了
 掛かった時間が3分……計算問題でこれでは、文章題だとどうしたら良いのやら
 とりあえず、似たような問題をしつつ解いていく
 解き方の時点で何度も注意を受けて、教科書からこう言う公式があると教えられてるが
 ノートなんかにそれを書いていく……俺の字ではなかったりするが
 春香もたまに悪戯書き程度に書いていくし……これも覚えてると良いって
 葉月さんもそれを否定しないから、そのままだ

「これで合ってるのか?」

 1つ問題を解くたびに聞くと、大体応えてくれて、尚且つ解説なんかもつけて教えてくれる
 葉月さんの教え方がいいのだろう……結構解けている
 というか、俺からしたら、数学の問題を此処まで解けたのは
 算数の頃以来はじめてな気がしないでもない

「そういえば、恭也さまは小説などはお読みになるのですか?」
「小説か……あまり読んでないな
 たまに読みはするが、たまにだ……盆栽の雑誌くらいかな」
「そうですか……あ、それでしたら、何か読まれてはいかがでしょうか?」
「何か?」
「はい……読書は良いことですし、出来たらですけど
 直ぐに結果も出ませんし、お勧めしてもいけない気はしますけど」
「面白そうな話なら読んでみたいんだがな」
「ミステリーやSFでしょうか?」
「出来れば、過去の話で剣豪物が……」
「それでは、面白いと思える物を貸します……図書館ではおいてないものもこちらにはありますし」

 そういって立ち上がる

「問題の答えはこちらに置いておきますので、解答など解説なんかも見てくださいね」
「分かりました」

 そっか、解答があったのか……って、もしかして、俺が一度も開けてないの分かっていたのかも知れないな
 葉月さんは頭を一度下げて、そのまま歩いていく
 ドアを開けて出て行くと、春香はこちらを見ていた

「葉月さんがあんな風に世話を焼くのって気に入られてるんですね」
「そういうのじゃ無いだろう……手の焼ける相手って所だと思うぞ」
「そういうのじゃないと思います……葉月さんは恭也さんの事を気に入られてますから」
「そうなのか?」

 あまりそんな風には見えないからな
 問題を解きながらも、こちらの話を聞いてる春香も凄いものだ
 と、消しゴムが落ちたのが見えたので、拾う
 柔らかな感触……?? 柔らか?

「あ」
「ああ」

 ドキドキする心臓を押さえつけて顔には出さず

「すまん」

 多分出てないだろう事を考え、手を上げる
 こちらが近いと思って手を出したが、春香が先にしゃがんで追いかけていたようだ

「いえ」

 春香の方は少し頬が赤い……熱か?
 いや、でも先ほどまで普通だったし、そんな急に熱が上がるとは考えにくい
 ただ、考えが嫌でも健全な方から不健全な方へと流されていく
 いやいや、春香と2人きりだが、周りには視線だって感じないわけじゃないが
 心頭滅却だ……頑張れ俺、御神や不破の先祖の前に立ったときに恥じないように立ちたいわけだし
 流されてはいけない……俺はこれでも年上なんだから
 暫くして、直ぐに考えを直し、そうだ、葉月さんが来るまでの間に少しでも問題を解いておこう
 だが、直ぐに視線を感じて、問題から顔を上げたら春香の視線と真っ向から当たった
 ぽんっと音が立ちそうなほど真っ赤になると視線を右往左往させている
 彷徨っていた視線が俺と何度目かに合うとそのまま目を閉じた
 ……いや、何でそこで目を閉じますか?
 俺にどうしろというのだろうか? 顔が赤くて熱があるのかもしれない
 手を額に当てる

「ひゃっ」

 驚いた声を出して目を開く

「熱では無いのか?」
「ち、違います」
「少しあるような気がするのだが」
「え?」

 そのまま顔を近づけて、額に自らの額を当てる
 ふむ、やはりちょっと熱いような気がする
 何より顔も真っ赤だし……なのはにはたまにしてやっていたことだけど

「お嬢様は熱では無いと思いますが、恭也さま」

 気配がして振り返ると、そこには葉月さんが本を三冊ほど持っていた
 そうなのかって思って離れる……しかし、ドアのところから暫く逡巡があったような

「お待たせして申し訳ありません……お嬢様も大丈夫ですか?」
「え、あ、はい」

 どこかわたわたしながらも、問題を開けてる
 というか、さっきまで問題解いていたところの上に置くのはどうかと思ったり
 それに気づいて閉じたりと慌しい

「は、葉月さん」
「先ほど美夏様がお戻りになられたところ、春香様にお話があると仰っておられるのですが
 いかがなさいましょうか?」
「え、美夏が?」
「はい」

 葉月さんが頷いて返す

「あの子、今日お友達のお家へ遊びに行くって言ってませんでしたか?
 どうしたんでしょう」
「詳しくは分かりませんが……『面白そうだから、早めに切り上げて帰ってきちゃった♪』と仰ってました」
「面白そう……ですか?」

 首をかしげる春香

「すみません、そういうことですので私、ちょっと美夏のところへ……」
「ああ、分かった……俺は此処で待ってる
 勉強でもしてるし……」

 葉月さんに視線を送ると頷く
 此処に残るのではなく、案内の名目でついていくって事だろう

「ほんとにすみませんです……すぐに戻ってきますので、適当にくつろいでいてくださいね」

 そう言って部屋を出て行った
 しかし、改めて見ると本当に広い部屋だな……大きな部屋の真中にはピアノがあり
 そこから先に進めば、本棚がある……あれは、楽譜などの類だろう
 一冊明らかに違うものもあるが

「ピアノか」

 一度習った事がある……ティオレさん曰く『やれば良いのに』だそうだが
 俺には才能が無いだろうという事で諦めた
 というか、譜面が読めん、分からん
 ピアノの前に座り、椅子に腰掛けて鍵盤に触れる
 指に力を込めるのではなく、自らの思いを指先に託し、音を奏でていく
 それは、イリヤさんが俺に言った
 私は音楽が好きでピアノも好きですが、思いが紡げませんからって
 でも、事務仕事なんかも好きだから、今は充実してるなんて事も漏らしていたっけ
 シーラさんが似たようなことを言っていたか
 歌は歌えないけど、ピアノでなら伝えられる気持ちもあるって
 奏でられる音色は、誰が作ったかも分からないような音の連なり
 勝手に弾いてるだけのもの……目を閉じ、周りの平穏と安らぎを願い弾く
 家族には見せられない姿だな、絶対笑われるし

「お待たせしました」

 ドアのところから顔を出して、入ってくる
 葉月さんも一緒みたいだ……そして、もう1人の気配
 だがピアノを弾くのを止めない……

「!!」

 驚いてる顔が浮ぶ……気配しか感じない俺には分からない
 音を連ね曲とし、曲を弾いて音楽とする……それが、演奏者
 俺もティオレさんから聞いてないと分からないよな

「ふぅ」

 一曲だろう音を終えて、一息つく
 春香はどう思うか分からないけど……

「おに〜さんうま〜い!」

 驚いた表情で拍手しながら来る少女
 ああ、そういえば、家の玄関の場所を聞いた女の子だ

「あ、美夏」
「でも、拍手するのは礼儀だよ」
「そうでしたね」

 そう言いつつ3人に拍手される
 いや、俺はそんな上手くないのだが……

「高町恭也だ、そちらは?」
「乃木坂美夏で〜す。十四歳で趣味はヴァイオリンとイノシシの餌付けとスカッシュ。
 よろしくね、おに〜さん」

 手を差し出され、手を握る
 握手の挨拶だろう

「よろしくな」
「??」

 不思議そうに見上げる
 どうかしたのだろうか? というか、この姉妹2人は覚えてないのだろうな
 俺たちが会っていたことなども……知らない方がいいこともあるが

「しかし、恭也さまがピアノを演奏できるとは知りませんでした」
「そうですね」

 葉月さんと春香がそんな風に漏らす
 知らないのは当たり前だと思うのだが……特技欄にもそんな事は絶対書かないし

「あまり上手くないというか、俺は音を紡ぐことは出来ても、思いまで込めては出来ないから」
「……でも、上手でしたよ? なんて曲なんですか?」
「あ、私も気になる」

 春香と美夏さんの2人がそう言う
 しかしなぁ……

「過去、俺が一度弾いた時の曲で曲名も何も無い……思うままに弾いた曲だから」
「え?」
「ってことは、これ自分で考えたの!?」
「そうだが」

 何か驚くようなことをしただろうか?

「……作曲家の才能がおありとは」
「いや、無いだろう」
「でも、私も弾いてみたいですね……確か」

 ぱらぱらと音楽の譜面を取り出して、すぐさま書き込んでいく
 というか、凄いな……全部覚えてるのか?

「ちょっと複雑ですけど」
「え、ここ、こうじゃない?」

 二人目参戦……戦いか?
 まぁ、なんか二人して色々と書き込んでるし

「もう一度弾いてくれませんか?」

 ちょっと潤んだ瞳で頼まれても

「いや、あまり人前で弾きたくないんだが」
「ダメですか?」

 春香がこちらをじぃっと見つめる
 その視線が2人分増えた
 葉月さんと美夏さんだ

「お願いします」
「もう一度だけな……第一、俺はあまり上手くないんだが」
「そんなこと無いよ、私は良かったと思うもん」
「私もです」
「僭越ながら、私も思います」
「褒めても何も出ないぞ」

 ピアノに座り、息を1つ2つと吐く
 目を閉じて、思いを紡ぐ……先ほどと同じ様に
 こんな風に人に聞かせるなんて事はあまり無いんだがな……
 それに勉強は? また教えてもらうか?
 ピアノを弾いてる間は、そんな考えも抜けていく……ただ、平和と笑顔を思い浮かべてしまう
 ただ、ピアノを演奏すると、笑顔を浮かべてもらえないのが残念だからしないのだが
 シーラさんやイリヤさんが弾くと、笑顔になる人が居たからなぁ……
 そして、演奏を終えると、春香がいそいそと準備をして演奏していく
 先ほどと同じ曲

「優しくも力強い……でも、どこか紳士的で包み込むような感じですね」

 難しくないか、それは?

「美夏さん、どうかしました?」
「『さん』要らないよ」

 そういって、のほほんと俺の隣に座り込む
 先ほどの続きをしていく……多分春香の一冊の本は特別な思い入れがあるんだろうな
 間違いなく楽譜の類ではないだろう

「ううん、でも、お姉ちゃんが嬉しそうだなぁって」
「そうか?」
「うん」

 楽しそうなのか?
 一曲3分程度のピアノ曲……普通のより短いか長いかサッパリだが

「美夏様、紅茶どうですか?」
「うん……お姉ちゃんの分は?」
「準備しますよ」
「おに〜さんも一緒に飲も」

 さそわれてテーブルに乗せていく
 春香はピアノを片付けて、戻ってくる

「初めての曲でしたし、練習しないと恭也さんのようには弾けませんね」
「いや、別に弾き方は人それぞれだと思うんだが」
「そうかもしれません……でも、先人の思いを伝えるのも、演奏者としては必要だって先生は仰られてました」
「そうなのか? いまいち分からないがそうかもしれないな」
「そうなんですよ、きっと」

 そして、そのまま暫く休憩をして、俺は勉強片手に
 数学から次は化学へと移った
 覚えることばかりなので、暗記していくしかないわけだが……

「あ、これ絶版された本」
「はい……もしかしたら、読まれてないと思いまして」

 『白小姓』……過去、ほんの少しだけ出た本
 俺もたまたまあったのを立ち読みした程度だから、あまり内容は覚えてないが
 その後しばらくして絶版になり、読めなくなったものだ
 その時は買うべきだったかなぁと考えたものだが

「恭也様だとほかの本を読まれてるかと思いまして、ちょっと変わったのしてみました
 三冊ですが、どうぞ」
「ありがとう」

 お礼を言って受け取る
 暫く雑談の後、勉強へと移ろうとしたとき、横からゲームを持ってきた美夏
 そのままなし崩し的に勉強会は流れることになった







 つづく








 あとがき
 いや、本当、どこから書き直しってくらい大変なわけでして
 シオン「4話その2に入って、かなりの書き換え」
 しかも、美夏登場だからね
 ゆうひ「そういえば、葉月さんって恭也の事どう思ってるの?」
 憎からずは
 シオン「そういうんじゃなくて、異性として」
 ノーコメント
 ゆうひ「いえ」
 のー、こ、コメント……あのな、人の首筋に剣を当てていうのを人は脅しって言うんだぞ
 シオン「ちっ、正論を振りかざしたな」
 まぁ、でも、このことは言えない
 ゆうひ「なんで?」
 言ったら、繋げられないから
 シオン「何に?」
 秘密だ
 ゆうひ「……何か考えてるな」
 何かね
 シオン「ま、面白可笑しくできるなら良いけどね」
 努力します
 ゆうひ「でわ、また〜」
 ほなね〜(^^)ノシ
 あわやキスシーンと思った方、自分もやろうと思ったけど、ストーリー終るので止めました〜
 流石に直ぐは恭也の理性が勝ちます……でも、恭也も春香も何時理解するんだろう?
 そのあたりが凄く不安でなりません……本当にどうしたものか……少しだけ恭也の青春レベルがアップ程度?
 でも、小学生中くらいって所ですかね(ぉぃ
 最近の子は進んでるからなぁ……ほんと驚きです



お勉強会開始〜。
美姫 「のはずが、勉強は最初の方だけね」
いやいや、結構やったよ、うんうん。
美姫 「はいはい。さてさて、このままどんな展開が待っているのかしらね」
だな。
美姫 「気になる次回はこの後すぐ」
それでは、また後で〜。



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