とらいあんぐるハート×魔法少女リリカルなのは








魔法少女リリカルなのは〜守りたいものありますか?〜

第七話 恭也vsクロノ










 恭也は階段へと降りると、後ろを振り返り飛んできたクロノを見る
 それを視界に入れても恭也は周囲の人の気配がなくなったことが分かり
 クロノ目掛けて黒い針を飛ばす
 大きな針がクロノの肩目掛けて飛ぶ
 クロノはそれを杖ではじくが、じぃぃんと腕にしびれる
 凶器……それも、一撃で相手を平伏させるほどの威力を秘めたものであると分かる

「なのは、高町恭也って人のデータないの?」

 なのははアースラに返す

『分からないの……お兄ちゃんがどんな特訓してるかなんて分からないから
 木刀を少し振り回してるくらいしか見たことないし、私にはさせたくないって……お兄ちゃんもお父さんも』

 それは敵を事前に知らないという事実……それこそ、恐ろしいものだった
 だが、恭也は分析していた……総合型のクロノであると
 恭也はすくっと立ち上がり空中浮遊しているクロノを見る
 1本の小太刀を左手に携え、右手には何も持っていない

「武器」
「まぁ、これ1本しか持ってないがな……下手に突っ込むなよ、斬るから」

 その剣気とも呼べるものにクロノは少し驚く
 魔力の気迫と似た気配

「スナイプショット!」

 恭也へと非殺傷魔法を放つが、恭也はそれを聞いてすぐさま走り出す
 扉を斬り倒し自分の盾としたのだ……防がれるとは思わなかったのか意外そうな顔をするクロノ

「速さだけだな、威力が足りない」
「だが、距離を開けてれば、あなたの攻撃は届かない」
「そうかもしれないな」

 だが、それだけに意識を向けるのが危険だとクロノは気づいていない
 そして、後ろからフェイトが狙う

「サンダーレイジ!」

 魔法の言葉の発動にクロノは驚き、フェイトを見る
 そして、狙われた事にクロノは瞬時にシールドを張る
 恭也から完全に意識を奪われた状態で
 恭也はすぐさま走り出し、クロノの後ろへと走る
 そして、恭也とクロノの決着は付く結果となった
 クロノの最後に見た光景は、黒い服の男だった

「かはっ」

 声が漏れる……フェイトは恭也の元へと駆けつける

「すまない、敵を呼び寄せてしまったようだ」
「いえ……でも、どうして恭也さんが狙われるんですか!? 理由も無く連れ去ろうとするのが
 管理局なんですか!! それなら、私は連れて行ってほしくありません」
「そうだね……私も同じ意見だよ」

 アルフも犬の状態のまま声を荒げる
 恭也はクロノを鋼糸でくくる……それに反対しようとユーノが行こうとするが
 フェイトのバインドがユーノを絡め取る
 すらっと小太刀がクロノの首へと伸びる

「さて、話してもらいましょうか? どうして、俺が狙われたのか?」

 言葉を聴きリンディはため息をつく

「あなたが、フェイトさんとなのはさんが戦った後にそこに居たからでは可笑しいですか?」
「どういうことですか?」
「気づいてないと?」
「こんなこと巻き込んでおいて……」
「クロノはそれでも結構な強さを持ってるはずなのに、二人係で圧倒しておいてですか?」
「だが、あなたは俺を捕まえ何をしようとしたのか?」
「大したことじゃありません……ただ、石を拾ってきているようなので、何か知ってるのかと思ったまでです」

 リンディの声は凛としている
 だが、クロノがぴくりとも動かないことに少し動揺をしている
 息はあるのが分かるが、エイミィも焦って念話を飛ばす
 答えが返ってこないのを考えると、完全に意識が落ちてると捕らえるべきだろう
 そして、それを行える恭也の技量に戦慄すら覚えている

「ただ、拾っていただけですよ
 フェイトさんが探してると聞いて、じゃあ、渡そうって考えただけです」
「それをなのはさんが集めてると知ってましたか?」
「……そこまでは、知りません
 ですが、なのはが何かをしてるのは知ってました」
「分かりました」

 リンディは此処までかと思い、ため息をついた
 恭也は交渉なれしてるのだ……この若さでとリンディは唇をかむ
 自分たちの負ける要素がそろっている。まず第一にクロノの事、更には恭也自身がなのはの兄であること
 その要因は大きい

「では、交換条件です……フェイトさんとアルフさんを捕まえないで貰いたいのですが」
「それは無理です……聞きたい事もありますから」
「では、この場は見逃すで良いんじゃないですか? プレシアとか言う人を探すために」
「分かりました」

 恭也の言葉にフェイトは驚いた

「多分だけどな……フェイトは悪く無い。でもプレシア・テスタロッサを見逃すつもりは無いだろう」
「だけど、その子は重要参考人なんだぞ」
「大事の前の小事だろ? 何より、泳がせた方が良いときもある」
「くっ」
「恭也さん」
「フェイトのこと、もしも変な意味で捕まえるなら、俺は徹底抗戦します」
「そんなにしてもフェイトさんを守りたいと」

 恭也はそれを聞いて、頷いた

「ええ。ただ、優しい子だって分かるからこそ、守りたいって思うこともあります」

 リンディはその言葉に押し黙った……それは、恭也が信頼してると取れるから
 いや、恭也はフェイトに信用され、フェイトは恭也に信用されてるように見えた
 絆があるように……その光景は見えた

「なのはが、フェイトという子の話を聞きたいと、言った。過去、俺や家族はなのはと遠く離れ
 留守番などをなのはにさせてしまい、一人の時を与えてしまった
 それはまだ若いなのはには辛かったと思った……」

 『お兄ちゃん』小さくもれた言葉は、すずかやアリサには聞こえてなかった
 ただ、優しい兄の言葉に、なのははじんとくるものがあった
 恭也の左の小太刀がぎゅっと握られる……自らが犯した愚行だと

「だから、同じような目をしているフェイトに少しでも温かさを分けようと思った
 何より、俺自身が出来ることなんて高が知れてることでした
 同情なんかじゃない、ただ誠意を見せたかっただけです
 ビルを見つけたのはたまたまでした……でも、その目と姿が忘れられなかったから」

 なのはにとって、兄は年が離れていて分かりにくい人で怖いと思ったことも多々あった
 だが、本当は優しい人だと分かったのは、物心付いて一人で居たときだった
 恭也は謝り、なのはを抱きしめたのだ
 桃子も士郎も居ない。家族の大黒柱である士郎の大怪我
 恭也はなのはが大丈夫と思うまで、出来るだけ早く帰ってきたりして無理をしていた
 なのはにはそう見えた……一人で寝るのが寂しいとき、無理やり恭也と一緒に寝たりもした
 恭也は嫌な顔をせず付き合ってくれた

「優しい子を守ろうとして、何が悪いのですか?」
「分かりました……こちらも無駄な血を流したくありません。何より
 恭也さんの言葉を深く受け止め、フェイトさんの方のことも私たちは罪などは
 保護観察処分くらいに収めるつもりです」
「分かりました。俺は帰ります」
「……恭也さん、今日のことを言うつもりですか?」
「どうでしょうか? 俺は、ただ父さんと母さんに頼まれただけだし
 フェイトさんのことは、なのはと同い年に見えたから、気になったんですけど
 それだけじゃないのは確かですけどね」

 フェイトの頭を軽く撫でて恭也は小太刀をクロノの首から遠ざける
 クロノは立ち上がると、そのままくらくらする頭だが、壁に手をついて立ち上がる
 鋼糸も恭也はすぐさま解いていた

「それだけのために危険を顧みず、彼女を守ったというんですか?」
「悪いことをしてない……確かに小さく見たら悪いことなのかもしれない
 だが、それが彼女はだまされてるとしたら?」
「……母さんが?」
「プレシアが!」

 その言葉に皆、少し考えさせられる……確かにフェイト自身に悪い部分は少ない
 だまされ、利用されたと考える方が良い
 悪い子なら、ここまで他人を信じて助けに入らなくても逃げたら良かったのだ
 恭也とクロノが戦ってる間に
 それをしなかったのは、恭也を助けようと思ったからだ

『お兄ちゃんは、フェイトちゃんのこと考えてくれてたんだ』
『そうみたいだね……なのはちゃんの様子を見て、気づいてたんだよ』
『……はい』
『優しい人だよね、それにしても、どうして魔法を受け入れられるのかな?』
『多分、お兄ちゃんにとっては、それが現実として受け入れたからじゃないでしょうか?
 私も最初凄く不思議で驚いたのですけど、これも現実の一つと受け止めたら、平気でしたから』

 そう思い、自分の最初の魔法との出会いを思い返す
 魔導師としてはまだまだでも、あの時ユーノは凄い魔力があると褒められて
 それでも怖かったときもあるし、危ない目にもあった
 怪我をした自分の手当てをして、フェイトの所にも顔を出していたのだろう
 声を聞いて分かる。恭也のことを信頼してると……アリサやすずかも似たような部分があるから

「フェイトさん、悪いですが、プレシア・テスタロッサの捕縛を手伝ってください。
 あなたには辛いこととなるでしょう。ですが、お願いします」
「分かりました……ですが、お願いがあります」
「何かしら?」
「ジュエルシードの数教えてもらえませんか?」
「ええ、そちらの数も教えてくれないかしら?」
「はい」

 そして、それぞれの数を言う……21個あるはずのジュエルシード
 だが、その13個が無い状態で、4個が管理局、3個がプレシアの場所、残り1個がフェイトとなった
 恭也はそれを聞いて、残り3個と数えた……10個は自分の中に消えた
 残り3個……フェイトは場所の予測を言った

「海にあると思います」
「海か」
「はい」

 それぞれが考えてる間、恭也は声をかけずらいと思いつつも言葉をかける

「ところで、俺は帰してくれないのですか?」
「何故か裏がありそうなのですが、良いでしょう……本当はあなたの行動も監視したいですが
 なのはさんが止めてと訴えてるので止めておきましょう」
「どうも……なのは、ありがとう。それと、いつか話してくれ
 俺は父さんが気づいたから調べてはいたが、こんな大きなこととは知らなかった
 それを全て信じさせて話せるほどには言えない。だから、今度は自分から話してくれ」

 その言葉になのはは『はい』と返事した
 何より自分から話すべきだと理解していたのだ

「でわ、俺はこれで……玄関の方に向かいます
 フェイトさん、アルフさん、俺のせいですみません」
「いや、私は気にしてません」
「私もだね……フェイトにどう説明するか考えてたけど」

 クロノの隣を通り過ぎる恭也
 だが、クロノがバインドを唱えようとする
 恭也の手が動く

「ばい」

 止まった声。恭也の手はクロノの首に伸びていた

「次は無い」

 その言葉を言って、恭也はクロノを放す
 気道から頚動脈まで止めたかと思えるほどの力
 首に赤く跡が残っていた
 諦めが悪い……だが、もっとも油断してると思ったのだろう
 通り過ぎた瞬間が

「フェイトさん、また来るから」
「はい」

 そして、恭也は歩いていった。途中思い出したのか、戻ってきてユーノを拾い上げる

「お前を送らないとなのはが心配するからな」

 恭也に言われ、仕方なく肩に乗るユーノ
 本当ならクロノに言えば送ってくれるだろうが、恭也に言われるままに連れて行かれるのだった





 そして、夕方、なのははアースラに泊まるという事で了解を得るために話し始めた
 恭也は桃子と士郎に、悪いことはしてるわけじゃないし、大丈夫だと思うと伝えた
 そのことにもっとも感謝したのは、リンディとユーノだった
 恭也には事細かに説明したなのはは、その日早くから寝るのだった

「恭也」
「なんだ? かあさん」
「あなた、何か変わった気がするのだけど、誰か気になる人でも出来た?」
「気になると言えば気になるが、母さんが思ってるようなことじゃない」

 その言葉に桃子は小さくため息をついた
 普段なら士郎と話すが、士郎はお風呂に入っているため恭也へと話し続ける

「実際ね、なのはが出るのを心配してるわけじゃないのよ
 私が心配してるのは、あなたのこともなのよ」
「大丈夫だよ、俺は」

 鍛錬から返ってきた恭也
 だが、桃子からしたらどこか雰囲気の違う恭也に驚いても居たのだ
 魅力が増したとも取れる恭也……もともと魅力はあったほうだが、更に増した気がするのだ

「良い傾向に向かってるし良いわ
 でも、あまり無理したら駄目よ……」
「分かってるつもりだ……父さんがお風呂から上がったみたいだし、俺も準備して寝るよ」
「ええ、お風呂の栓抜いておいてね」
「ああ、いつもどおりだ」

 そう、いつもどおり……それが、いつかいつもどおりじゃなくなる日が来るかもしれない
 恭也はそんな予感しつつも、顔に出さず風呂に入り、寝るのだった







 つづく









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